BELIEVE~夢の先へ~

藤原葉月

文字の大きさ
11 / 13

11

しおりを挟む
どんどん過ぎていく楽しい毎日。
笑い合う声。
時々泣いたり怒ったり、なんでもない毎日が過ぎていく。
みんなの色んな表情を見ながら・・・。
感じていたんだ。
みんなの笑顔をあとどのくらい見ていられるんだろうって。
そればかり思うようになってしまった。
それがいつしか辛くなり始めている自分がいることに僕はまだ、気付かないふりをしていた。

でもある日また、例のあの男が来た。

「聞いたよ。お前、東條って言うんだよな?
「・・・・・」
「お前さぁー・・・・」
不気味な笑みで彼は言った。
「死にそうなんだって?」
「・・・・」
(そんなのどこで・・・どこで知ったんだよ!!)
でも僕は黙っていた。

まだ誰にも・・・・いや・・・
西田君となっちゃんしか知らないはずなのに・・・!!

「宏人!逃げて!」
「なっちゃん・・・。来ちゃだめだ!」
「ほぉ、お前の彼女?かわいいじゃん」
僕はなっちゃんの前に来て・・・
「彼女には手を出さないで」
「死にそうなお前が何を言ってるんだよ」
「宏人に手を出さないで!!」
なっちゃんは、逆に僕の前に来た。
震えている。
「女に守られるなんて情けない男だな」
「あなたのほうがみっともないわよ!西田さんの彼女を死に追いやるなんて最低だわ!」
なっちゃんは彼を押し倒した。
「何しやがる・・・」
 
「宏人、今のうちに走るわよ!」
「うん・・」
「おいこら!まて!!」
だがそこでタイミングよく西田君が来て・・・
「また来たのか・・・。東條!理子さん!」
思わずなっちゃん名前を出してしまった西田君。
「理子・・・。へぇ・・・君は理子さんって言うんだ」
明らかになっちゃんの方を見て・・・
「西田の忘れられない女と同じ名前・・・・・」

そんなの自分もそうなんじゃないの?
「東條、にげろ!走れ!みんなを連れて逃げろ!」
「でも、西田君をほっておけないよ!」
「俺はいいんだ。お前が生きてさえいてくれたら・・・。お前とみんなが生きていれば・・・・」

「西田君」

彼は、あの彼とふたりきりで話をつけようとしたのかドアを閉めようとした!!
そんなこと言わないでよ!!
今の発言はまるで僕が・・・

「お前さぁ?死にたいの?西田。」
「俺のことを殺したいほど憎いんだろ?」

「それは、お前のほうじゃないのか?
まぁ?俺も同じ気持ちなのは確かだけどな。」
「俺が憎いのなら気の済むまで好きにすればいい。だけど、彼らには、手を出すな。これだけは約束しろ」
「さぁ、どうしようっかなぁ・・・」

「ダメだよ西田君!きみは死んじゃダメだ!」
「東條・・・・」

「生きてよ!こんなやつの言うことなんか聞いちゃダメだよ!」
だって!・・・そんなことされたら・・・・僕が・・・

「うるさいよ。死にかけのやつに言われたくない。ならば、2人まとめてあの世に送ってやるよ。覚悟しな」

そいつは、そう言い放った!
「ワンワンワン!」
「ラッキー・・・・」

僕と西田君は同時にラッキーをみた。
ラッキーは、西田君の元親友って人に歯を剥き出している。
あんな顔・・・見たことない・・・。
むしろ、ラッキーが人を信じていない時の顔だ。
きっとラッキーは人と同じ心を持っているんだ。
「なんだよこの犬!うるせぇよ」

「2人を殺すなら、僕も殺して下さい!」

その先にたっていたのは・・・

いつのまにか来ていた東さん。
目が見えないはずなのに、ちゃんと前にいる・・・・。
ラッキーが、導いたのかな?
そして、東さんが前にいた時、
「東さん!」
西田君と同時に答えていた。
僕たち、気が合うのかな。

「僕たちも、殺して下さい!あなたの気が済むなら」
いつのまにかみんなが来ている。

「何言ってんだよ。お前ら頭がおかしいんじゃねぇの?」
「これが僕たちの絆です。信じるって絆。
あなたには絶対に芽生えないもの・・・・・」

榊さんが手話でそう言いきった。

だが、その手話をなぜかあいつは読めていた。

「絆・・・・・」
みんなは僕と西田君となっちゃんを守るように立ってくれていた。
本当は怖くて怖くて仕方ないだろう・・・・。
足は震えて、立っているのがやっとなのに動こうとしなかった。
「お前らバカかよ。本気で殺しなんかやるわけないじゃん」
「バカって言われてもいい!僕らは信じ合っているんだ。その絆は壊れたりしないよ?」
斎藤さんは、震えながら言った。

「フン!本当にバカバカしい!」
そう言って、彼はドアを蹴破って部屋から出ていった。

でも、彼はきっと・・・・。
僕は何故か彼を直ぐに追いかけた。
説得すればもしかしたらわかってくれるかもしれないとおもったんだ。
「待って!」
「・・・・」

彼は立ち止まった。
「フン!どうせ俺にはいないよ!親友と呼べるやつなんて・・・・」 
そう呟く彼がいた。
やっぱり・・
「ねぇ?君にとっての本当の親友って誰?」
「えっ?お前どうして・・・・」 
ついてきているのに気が付かなかったらしい。
「ねぇ?いないの?もしかして、本当は、西田君に謝りたいんじゃないの?」
「はぁ?誰が謝るかよ」 
と、こちらを見ずに言う。
そうなるよねー。
「・・・・見つかるといいね。西田君以上に親友と呼べる人。」
「・・・・・どうせ見つかるわけないよ。俺みたいに心が汚れちまったもんは、朽ち果てて死ぬだけさ」
と、なぜか寂しそうな横顔をぼくは見逃さなかった。

「見つかるよ、君にもきっと!生きていれば、きっと!」
「慰めの言葉を言われたって俺の心は変わらねぇよ」

そう言って背を向け行ってしまった。
僕は、彼の後ろ姿を静かに見送った。
 
           
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...