絆物語

藤原葉月

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第16話

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魔物がヨシに攻撃しようとしたまさにその時だった!

1本の矢が飛んできてその魔物の攻撃をはね飛ばした。

「!?」
ヨシは驚いて、矢が飛んできた方角を見た。
「タネヨシ様・・・・」
その矢を放ったのは、紛れもなくタネヨシ様だった!!

「何やつだ!」
「ヨシ、お前を心配して皆さんが来てくれたよ」
「・・・・・」

「ヨシさん!」
「そんな身分も名前もわからないやつらと・・・・」
「いいか?ヨシ、どんな身分であろうと仲間は仲間だ。大切にしなさい。この出会いを、必ず大切にしなさい」
「僕は一人で生きてきた。これからも1人で生きるんだ!!」

「やはり、死ぬのは怖いんだな?」
「あなたには関係のないことだ」
【小癪な!私の攻撃の邪魔をするとは!】
魔物はさらに強い攻撃を7人に向かって放った!!
「・・・・・・」

タネヨシ様は力を振り絞り、剣にその攻撃を当てた!!
「タネヨシ様!!」

「今のうちに逃げなさい!!私を残していって構わないから!みんな逃げなさい」
「でも、タネヨシ様!!」

どうやら攻撃を剣で止めているようだ。
だが、時間の問題だ!

「ヨシのことを頼む!」
「わかりました」

ヒロはそう言うとヨシの手を引くと、


「言う通りにしますよ?」

「えっ?でも、ヒロさん」
ゴウはタネヨシ様を1人で残すことに納得がいかないようで・・・・

「・・・・・・」

ヨシはと言うと無言で従っている。

「こんなの嫌だよ!!タネヨシ様を援護しなくちゃ!」
「俺もそう思うよ、ヒロさん」
「ヨシさん、ここは協力してくれますか?戦士として」
「僕は・・・」
「人、1人の命がかかってんだよ!あんた同じ人間だろ?助けるのが礼儀だろ!あんたの父親なんだろ?あの人は!!」
ヨシの胸ぐらをつかみ、説得しようとするゴウだった。
「・・・・・」
「喧嘩をしている暇はありません!タネヨシ様、未熟な私達ですが援護いたします!」
「みんな・・・・」

「これが俺たち戦士の指名のひとつだ!」

「はい!!」

ヨシも、仕方なく剣をかざす。

7人の力をひとつにして、魔物を倒したかに見えたが・・・・


次の瞬間、

「うわぁぁぁ」

7人は、吹き飛ばされてしまった!!
【ふふふ。未熟なおまえたち。死ぬがよい】
魔物はまた更に力を加えた!!
「・・・くそ・・・・負けない・・・」

傷たちきながらも立ち上がり、尚も攻撃をしようとするゴウ。
「ゴウ、やめるんだ。それ以上、使うな・・・・」
マサは、ゴウをとめた。
「あいつが生きてるなんて気に食わねぇよ!」

しかし敵は既にその場にいなかった。
「・・・・・!?」
「どうして?心をひとつにしたはずなのに」
「違うよ。ひとつになんてなってなかったんだよ」
ゴウはヨシの方を向いた。
「かれがまだ、俺たちを信じちゃいねぇだろ?」
ヨシにはそれが聞こえていたようで、
「信じるだって?あんた達のことをどうやって信じろっていうんだよ!!もう、俺に構うな!!」
「あんたは、命をかけて護ってくれた父親をまだ信じられないのかよ!!」

そしてそこには、倒れたまま動かないタネヨシ様の姿が・・・・。
「タネヨシ様!しっかりしてください!」

「みんな、すまぬ・・・・」

「・・・・・・!?」
「まさか、タネヨシ様が全ての攻撃を自分おひとりで?」

ヨシは、自分の傷が浅いことに初めて気がついた。
「えっ?」

無論みんなもだ。
「ヨシさん、あなたは戦士失格だよ」
ケンがそう言い放った。

「ケン・・・・よせ」
「自分の父親が命掛けてるのに・・・・」
「だから、その人は父親では・・・」
「まだ、言ってるのかよ!自分の子供を命掛けて守らない親がどこにいるんだよ!!なんでそれがわからないんだよ!!」
「この人は、小さな弟と、母親を捨てて旅立って行ったんだ。今更父と名乗られてもどうやって信じろというんだよ!戦士失格?なんとでも言えよ!!僕は戦いなんかしない!!」

「ヨシ、すまないな。私は国に蘇ったという魔物を調べて戦士として生きていくことを誓った。幼いお前とリュウ、そして母さんには辛い思いをさせた」
「あんたのせいで2人は死んだんだ!!だから僕はあなたを許すことは出来ない」
「あぁ、私のせいだ。いくらでも私を憎みなさい。」
「タネヨシ様」
「二人を殺した真の魔物を追いかけるために私は旅に出ることを決意した」

「真の魔物・・・えっ?」
「もう少し早く帰ればよかった。しかし、仲間が傷ついて動けずにいたんだ。この私も・・・・・」

「では、帰ろうとはしていたのですね?」
「そんなの信じない!!」

「母さんは言ってくれたのだ。信じて待ってるからって。」
「えっ?母さんが?・・・そんな」
「リュウは言っていた。兄ちゃんみたいに強くなるから心配しないでと・・・・」

「では、あなたは2人には報告をしにいったのですね?」
「ヨシには色々やりたいことがあったようだから話さなかったな」
「・・・・・・」

ヨシは背を向けている。

「ヨシ、弓がだいぶ上手くなったじゃないか。」

「どうしてそれを!」
誰にも見られてないはずなのに・・・・。
「遠くからいつも見ていた。お前が上達していくのを」
「・・・・・・」

「ヨシさん、あんたはずっと守られていたんだ。タネヨシ様の力でずっと・・・ずっと!」
そして、再び自分の剣を差し出し
「ヨシ、この剣を・・・・」
「・・・・・」
「今こそ受け取る時だ。うっ・・・・・」

タネヨシ様の様子が変だ。

「・・・・・」

「タネヨシ様!!しっかりしてください!」
彼は吐血してしまった。

「こんな僕でいいのですか?」
「お・・・・前に・・・渡すために・・・力を込めておいた・・・」
「タネヨシ様!!」
「ヨシ・・・仲間を大切にするのだ・・・ゴホゴホきっとお前は強く・・・なれる」

だんだん弱々しくなってきたタネヨシ様の声・・・・。

「・・・・・父さん!!」
ヨシは、初めてタネヨシ様の手を握った。

「やっと・・・・呼んでくれたな・・・・」
「父さん、僕は・・・・」
「ヨシ、強くなれ・・・・。必ず平和を・・・・」


だが、タネヨシ様はそれきり話さなくなった。

「タネヨシ様!!」
「死んじゃダメですよ!!タネヨシ様!!」
「・・・・・・」


6人の声がひびいていた。


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