絆物語

藤原葉月

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第23話

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ゴウは1人花を売るリリカを、密かに影から見守っていた。

「リリカ、ゴメン」

そう、呟いていた。

その彼女の背後に邪気が近づいていた。
【ふふふふ】
「えっ?誰?」
【ふふふ、小娘よ、そのネックレスを頂く】

「だめよ、これは」
リリカはネックレスを隠した。
「えっ?リリカ?」
リリカが魔物に囲まれている異変を感じたゴウ。

そして、後ろから
【ふふふ】

同じく魔物の気配!?
「誰だテメェ」
【お前もしかしてあの小娘の想い人か?】
「な、なんだと?」
どういうことなんだ?背後から声しか聞こえないなんて!
「リリカ!」
思わず叫んだゴウはリリカの元へ走っていき
「えっ?ゴウ?どうしたの?」
「逃げろ!」
「何よ!逃げろって」
「お前、ネックレスどうした」
「あれ?ない。さっきまであったのに」

「くそ!盗られたのか?・・・・とにかく、逃げよう。ここにいたら危険だ」
ゴウは、リリカの手をとると走り出した!
「待って、ゴウ・・・・あのネックレスは・・・・」
「とにかく、この場から離れよう」
ものすごい邪気が近づいている。

右なのか?左なのか?
ゴウは、慎重に気配を感じようてしていた。
「ふふふ」

「!?上!?」
ガッシャン


魔物とゴウの剣が触れ合った!!


そして、リリカを背中に回すと・・・・
「リリカ、ここから走りされ!」
「でも!!」
「いいから、走るんだ!振り向くなよ?」
「ゴウを置いていけない!」
「バカっ」
リリカの背中を押した瞬間!!

ザッ

魔物の剣がゴウの背中を切った!!
「っつ・・・・」

「ゴウ!!」

「・・・リリカ、走るんだ・・・っ」
痛みに耐えながらながらリリカに伝えるゴウ。
「でも・・・ゴウ、ケガしてる!」
「いいから走れ!!」
そう言うと、リリカははしった!

「・・・・・・・」

リリカが走り去ったのを見て、ホッとするゴウ。

そして、リリカは、泣きながら走った。

さっきの仲間という人達に伝えなきゃ!!

ゴウが死んじゃう!!

私を助けたせいであんな大怪我して・・・・


【へぇ?愛しい女を逃がして自分が戦うなんて。なんて愚かな人間】


「愚かかどうかは俺が決める・・・・」
と、剣を抜いた。


【フフっ、そんな体でどう立ち向かう】
「人間はつよいぜ?力をだす源は何か知ってんのか?あんた」
【フン、知るかよ】

「それはな、『怒り』だよ。あんたを倒す力くらいは残ってんだよ!!」

ゴウは、残っている力を全部出し切り、剣をかざして魔物を切りつけた!!

【バカな・・・・・】

魔物は消え去りながら言う。
「あいつに手を出すやつはこの俺が許さない!!」
そして、魔物が盗んだリリカのネックレスを手に持つと・・・・・


ズキン

背中に激痛を感じた。

「・・・・くっ、ちくしょう・・・」

ゴウは膝まづいてしまった。
「毒が塗ってあったのかよ・・・・そんなのに気づかなかったなんて・・・・」
だんだん体も痺れてきて、立っているのも辛くなってきた。

なんとか歩いては来たが・・・・

「ハァハァ・・・・」

体に熱も持ってきた・・・・。

「リリカが無事ならそれでいいか・・・・」

ドサッ


ゴウは力尽き倒れてしまった。



その頃・・・・

「助けて!!旅の人達!ジュンくん」

リリカは、ジュン達がいる村に走ってきた。
「リリカさん、どうかしましたか?」

「ゴウが!ゴウが!」
泣きながら訴えるリリカさん。

「落ち着いてください。ゴウ君がどうかされましたか??」
「リリカさん、今まで兄さんと一緒だったんですか?」

「・・・・ゴウが、私を助けようとして、魔物に切られたの・・・・ハァハァ。私を逃がしてくれたけど、このままじゃ死んじゃうよ!」


きがどうてんしている。
それにただ事ではない。

嘘を言っているようにも見えない。

「兄さん・・・・」

「大丈夫です。僕たちで探しに行ってきます。ケンとヨシさんで、彼女を見ていてあげてください」

「はい」
「うん、わかった」

「いいえ!私も行きます!ゴウの居場所が分かるのは私だけだから」

「しかし・・・・」
「リリカさん、敵の狙いはおそらくあなたです。だからゴウくんはあなたを逃がしたんです。大丈夫、ちゃんと見つけますから」
「・・・・・・」

「大丈夫、ぼくたちを信じて?」
と、優しく言うケン。

「・・・・・・お願いします」

と、頭を下げるリリカさん。

「よし、行こう」
マサさん、ヒロさん、ジュンの3人でたすけにいった。


「・・・・・・」

祈るリリカさん。

「大丈夫ですよ、リリカさん。ゴウはこんなことくらいで死ぬやつじゃないですよ。あなたがいちばんよく知ってるでしょう?」
と、ケンはリリカを慰めたが、

「それは、どうかな。いくら彼でも・・・」
と、ヨシさん。
「ちょっと、ヨシさん!!」
「あなたが敵に狙われたのは?」
「私と言うより、このネックレスです。祖母の形見で・・・・」

「敵の狙いがそのネックレスだけだとしたら・・・・」

「ヨシさん!大切な人が大変な目に遭ってるのにそんな言い方・・・・」
「僕はただ・・・・」
「ヨシさんにはわかると思っていたのにな・・・。大切な人がいない時の苦しみとか・・・目の前でそんなことがあったら誰だって・・・・・」


「あぁ、わかってるよ」
わかっているはずなのに、なぜこんな言い方しか出来ないんだろう。
どうやって言葉にして伝えればいいんだ。

彼らの苦しみを同じように感じるようになりたいと思い始めているのに上手く伝えられないんだ。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

しばらく3人は無言でいた。


そして・・・・

「ちくしょう・・・・」

ゴウは動けなくなり・・・・
「リリカ・・・・」


とだけ呟き・・・・気を失ってしまった!!


「この気・・・・!?」
一瞬血の匂いがした。

「兄さん!」

ジュンは、走り出した!
「ジュンくん!」
マサとヒロも、ジュンについて行った!!


草をかき分け、覗いてみると血だらけで倒れているゴウがいた!

「兄さん!!」
駆け寄るジュン。

「・・・・うっ・・・」
「大丈夫だ。生きている。しかし、毒でやられているようですね。熱を持っています」


「・・・・みんな・・・リリカは?ハァハァ」
「大丈夫、無事ですよ?」
「ネックレス・・・ハァハァ取り返したって・・・・」

ゴウは、力なくネックレスを見せる・・・・

「伝えますから・・・・」

「兄さん!しっかりして!!」
「お前、大袈裟なんだよ・・・・」
「だって・・・・」

そんなに弱ってる兄さん見た事ないから!!

ゴウをおぶったヒロ。

「まだ、邪気が残ってますね」
「ヒロさん、ここは俺たちがなんとかします。早く彼の手当を!」
「はい、頼みましたよ?マサさん、ジュンくん」
「任せといて!」
「いや、まだ、戦える!」
とゴウは、背中から下りようとした!
「何を言ってるんですか!命を縮める気ですか?」
「それでも俺は・・・・」
だけど力が入らないらしい。


「そんなこと、させませんよ?君の大切な人が待っているんですから。待っている人がいるということは、生きて戻らなきゃいけないんですから」
と、ヒロさん。

「・・・・・・・」

それ以上は何も言えなかった。

「彼女、あなたの帰りを待ってますよ?」
「・・・・・わかったよ」
渋々OKしたゴウだった。

「兄さん、任せといて!」
「・・・・怪我すんなよ?」

ヒロさんはゴウと共に走り去った。

「マサさん、行きますよ!」

「あぁ、望むところだ!」

【(・д・)チッ例のものがないぜ?】
【まぁ、お相手してやるかぁ。弱っちそうだし】

だが、敵の読みは甘かったようだ。
魔物は2人の周りに来た。

しかし、マサとジュンは敵が思っているより強くなっていて、相手の動きを確実に読んでいのだ。

「弱っちいのはあんたたちの方だろ?」
「ホントやな」
そう言って、魔物を倒し・・・・

「よし、急いで戻ろう」
「はい!」


2人は、みんなが待っていると思われる宿へと急いで戻って行った。








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