絆物語

藤原葉月

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第24話

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宿でゴウの手当をしているのは、なんとヨシさんだった。

「こんな体で普通歩くかよ」
「うるさい(*>Д<)」
「うるさいのは君だ」


なぜか会話が成立している。みんなはハラハラしながら様子を見守っていた。

「小さい頃、父さんがよく教えてくれたんだ。覚えていて良かった」
ヨシはよく知っていた。
傷によく効く薬草のことを。
「しばらく休まなくなくてはダメですね」

と、ヒロさん。
「はっ?もしかして、戦えないのか?」
「兄さんってば、こんな体になっても戦うことしか頭にないの?」
「・・・・・悪いかよっ」
と、そっぽを向く。
「リリカさん、ずっとあなたの帰りを待っていたんですよ?ずっと泣いていたそうです。ちゃんと謝りましたか?」
「・・・・・・」
「少しは慰めの言葉とか掛けてやれよ」
そう言ったのはヨシさんだった。

「・・・君は、謝るとかお礼を言うとかの礼儀を知らないのか?」
更にヨシさんはゴウの額を小突いた。

ヨシさんがそんなことをするなんて!!

「う、うるさいな・・・・イテテ。けが人に何すんだよ」
「あはは!それくらいされて当然だ。ヨシさんは悪くない」
と、マサさん。
「・・・仕方ないですね。しばらく二人きりで話しなさい」

と、ヒロさんは部屋の外に出た。
「ちょっと!2人きりって・・・」
まさか
そう言って他のみんなも外に出てしまい、

入れ替わりにリリカが入ってきた。

「!?」
泣き顔が一気に怒った顔になる。

「り、リリカ・・・・」
「バカっ」

耳元で叫ばれ・・・・
「バカとはなんだよ、バカとは!イテテ・・・・・」

「良かった!生きていて」

何故か抱きつかれ・・・・
「・・・・《ドキン》」

「・・・・・」
「冷たくして、ごめん」
とだけ言った。
なんだ、ラブラブなんじゃん。

「ううん・・・・ぐすっ」
抱きついたまま離れないリリカさん。
そしてそれを抱きしめたままいるゴウ。

「へぇ?あの子がゴウの好きな子なんだ」
ケンは、ジュンから聞いて、2人の様子をちょっと覗きに来たのだ。
「(可愛い子だな)」
と思った。

「バカだな、彼は・・・」
その様子を見ていたのはいつのまにか隣にいたヨシさんで。
「えっ?バカじゃないよ!ゴウは、カッコイイ」
「どうして・・・・」

「だって、好きな人のために命を掛けるって男になった印だもん。ゴウは、カッコイイよ」
ケンの正直な気持ちだった。

「へぇ?じゃあ君はゴウみたいになりたいんだな」
と言われ・・・・

「ヨシさん、さっきはごめんなさいあんなこと言って・・・・」
「えっ?」

なぜ謝られるんだろう。と、ヨシは思った。

さっきの会話で
「ヨシさんにはわかると思ったのに!」

彼に・・・たしかににそう言われたな・・・

「いや、僕も悪かったよ。あんな言い方しか出来なくて・・・・」

「ねぇ?ヨシさんにはいないの?命を掛けて守りたい人」
「・・・・さぁな。僕にはまだ居ない。だから、あんな無責任なことを言った」
「そうなんだ・・・。あっ!でも、きっとすぐ出来るよ!」
「えっ?すぐって・・・・」
「例えば、あの女王様とか?」
「えっ?Σ(゚д゚;)なぜみんな、レイナの話を持ってくるんだ」

(レイナ様の話を出すと、ヨシさんの顔が変わると、密かに聞いたからだ。)
とは、ケンは言わずにいた。

もう少し、見ていたいと思った。
彼の心の変化を。

「なぁ?ヨシさん、あんたはもっと知るべきなんじゃないか?」
と、話に入ってきたのはマサさんだ。

「うわっ、聞いていたのか?」
「ごめん、声大きかった?」
「・・・・人を愛することがどういうことかを知るべき時かなって」
「人を愛することか・・・・」
「その前に、人を信じることも大切だよ?」
と、ジュン。なんだかんだ話を聞いていたらしい。

「そうだよ、ヨシさん!俺たちを知ってください」
「大丈夫だよ、きっと!だって僕たちもう仲間じゃん!!1人じゃないんだよ?」
と、ケンはにっこりと笑い、ヨシさんの手を取った。


「1人じゃない・・・・か」
ヨシはみんなの様子を見ながら、密かに呟いた。

一方、ゴウとリリカはと言うと・・・


「ゴウが死んじゃうかと思った・・・・」
涙をまだ、流し続ける。
「バカだなぁ、大袈裟なんだよ。俺が丈夫なのはお前がいちばんよく知ってんじゃん。だから、泣くなよ」

「だからこそ心配なの!心配しすぎて眠れなくなる!」
「大丈夫だよ。ほら、ネックレス・・・取り返したから」
「バカっ!!」
リリカは、ゴウの胸を叩いた。
「いや、だからバカって・・・」
「これは大事な形見だけど、でももっと大切なことあるでしょう!!」
「なんだよ大事なことって」
「お願いだから無理をしないで!!」
「リリカ・・・・」
リリカはゴウに再び抱きつき・・・・

「これだけは約束して・・・・」

と、つぶやいた。

ゴウは抱きしめ返すと、
「・・・・わかったよ」
そう言って静かに抱き合いながら、約束を交わしたのだった。


そんな様子を密かに見守りながら、
「本当に世話のやける兄だな」
と、ヨシは呆れながら呟いた。

「うん。でもね僕は兄さんを尊敬してるよ?だって、血は繋がってなくても家族として迎え入れてくれたから・・・
「家族か・・・。僕の弟も生きていたらきっとゴウかケンぐらいの歳だな。僕はダメな兄貴だったけど・・・・」
「えっ?どうしてダメな兄貴だなんて言うの?」
「弟が死んだのは、僕のせいだからさ」
沈んだ顔をしたヨシに
「じゃあ、僕たちがヨシさんの家族になるよ」
と言ったのはケン。
「えっ?」
「仲間であり、家族でもある!だから、ヨシさんも僕の兄さんだ」
なぜか明るく言うジュン。
「・・・・・」
「僕は幸せ者だな!兄さんが、5人もいるから!ちょっとした自慢だ!」
そう言ってジュンは、ゴウとリリカの元へ走っていった。

「家族・・・仲間・・・・大切な人・・・・」

そうひとりつぶやくヨシに
「大丈夫、あなたもきっと笑顔になれる日が来ますから。僕はそう信じてますよ?みなさんか無事に生きて帰ることも・・・・」
ヨシさんの肩に手を置くとヒロも3人の元へ行った。

「俺も信じるよ。俺だって幸せにはなりたいし、約束も果たしたいから」

マサもヨシの肩をポンと、軽く叩いた。


3人は、ゴウとリリカの仲を冷やかしながら笑っていた。

「ヨシさん、実はね?僕はこの使命を受けてよかったと思ってるよ?」
「・・・・・」
「だって、苦しいことばかりじゃないじゃないからさ!」
ケンはにっこり笑うとみんなの輪の中に入っていった。





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