絆物語

藤原葉月

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大切な人との時間

第36話

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「ケン、大丈夫か?」
何故かまだ毒が抜けない身体のケンを気遣うヨシがいた。
「うん、大丈夫」
「やはり、僕のせいだ。あの時矢を放たなければきっと・・・・」
ヨシは後悔していた。
「ヨシさんのせいじゃないよ!あの時僕らを助けようとしてくれていたんだから!あの力のせいでコントロール効かなかったんでしょ?それに、怪我していたんだし」

「でも・・・・」

朝には元気になると聞いていたのに・・・・

「それ以上、自分を責めないでよ」
「・・・・わかった。だが、この借りは必ず返す」

と言うヨシ。

「ねぇ?それって僕に命を預けるってこと?」
「そうとも言う」
その答えに、
「それはダメだよ!」
と言うケン。
「なんでだ。そうでもしなければ・・・・」

「だってヨシさんの命は、ヨシさんのものでしょう?あと、そういう力は男に使うものじゃないよ」
「・・・力って。何の話だ」

「その力は、ヨシさんが命をかけて守りたい人のために残しておいてね」
と、笑うケン。

「そんな人はまだ、いない」

と答えるヨシ。
「まだって・・・。もういるじゃん」

「・・・・・・」

「まだは人を信じないで生きてたりする?」

「・・・・さぁな」

「・・・・・」

「お前は、昨夜言ってたな。愛する人がもし、操られていても《信じる》と」

「うん、信じるよ。この気持ちは変わらない」
「だけど、本当に目の前に現れた時に信じられるのか?理想と現実じゃ違うかもしれないよ?」

「けど、ヨシさんのお父さんは、信じていたよ?」

「・・・・・・」

「ヨシさんがきっと戻ってくるって」
「・・・・・そうだったな」

少し忘れていた。

「ごめん、思い出させて」

「ケン、君も目の前で家族を殺されたんだったな。辛かっただろ?」
「うん・・・・。でもね?そのあと僕を家族として迎えてくれた今の父上に誓ったんだ。強くなって絶対戻るって。だから、こんな所では逃げないよ?」
「そうだったな」


彼を強い心の持ち主だとヨシはこの時思った。


すると・・・・・


【そう、逃げないのね】

「えっ?この声・・・・」



聞き覚えのある声が響いた。

「その声は、キョウカ?」
ヨシと、ケンが振り向くと・・・・・

僕が知っているキョウカがいる。

でも、なんだか様子がおかしい!!

「ケン、あの子がキョウカって子か?」
「うん。でも・・・・」
でも、なんか違う。
あの人と同じく邪気の匂いがする!!
ヒロさんの恋人《カナ》って人と同じにおい。

「どうやって入ってきた。ここは2階だ。普通の人間はでは登れないはずだ」
【あら、わたしがどうやって入ろうといいわよね?ケン】
だが、声が変わった。

「ケン、みんなに知らせてこい!!」
ヨシは、ケンを守るようにして言う。

「でも、ヨシさんは?」
「こけは僕が引き寄せておくから」
「ダメだよ!キョウカはきっと僕を狙ってきたんだ」
まさかこんなに早く来るなんて。
【フフフ。無駄話はここまでよ】
「・・・・」
キョウカは手を差し出すと

【ケン、その剣を渡してくれる?】

「キョウカ、僕は君を取り戻す!元の優しい心を持つ、僕の好きなキョウカに!」
僕は、迷わずキョウカを抱きしめた!!


ヨシは

「ケン!やめろ!!」
止めようとしたが止めれなかった。

【な、何をする!】
「キョウカ、僕がわからない?」

ケンは話しかける。

「・・・・・ケン・・・・」

「・・・・・」
彼は必死で彼女の正気を取り戻そうとしている。

あの時、この僕が操られていた時、今の仲間と父が戻してくれた時のように・・・・。


「父さん、僕は見ていることしか出来ないのでしょうか。真の力とは何でしょうか・・・・」

そして、悩むヨシの後ろから・・・・


「ケン!ヨシさん!!」

後ろを振り向くと、いつもの仲間が僕らを助けようとしている。


「キョウカ、思い出して!君は操られているだけなんだ。君の敵はここにいる僕や彼らじゃないよ!」

【離せ!】


「離さないよ!」

そして、その様子を見て・・・・

「彼女・・・・」

「あぁ、操られてるな」
「しかもこの邪気は・・・・・」

そうどこかで彼女をコントロールしているカナ自身の邪気だとヒロはおもったのだった。


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