voyager~不思議な船旅~

藤原葉月

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旅の始まり

仲直り

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次の日、僕は、ネックレスを、握りしめ、昨日の、プールのある場所へ、向かっていた。
「おはようございます。健斗さん、早いんですね」
「イオンさん!あの!!これ、プールで、拾いました。」
「あら、そのネックレス」
「これ、イオンさんのではないですか?おれ、すごく考えたんです。イオンさんしか、いないって。」
「人魚が、いるって、騒いでいたそうですね。」
「うわ!なんでそれを!」
「酔いは、覚めましたか?」
「覚めてます。!もちろん!」
「そう。なら、はなしが、早いわ。その、ネックレス、わたしも、同じのを持ってるわ。だから、残念ながら私のではないわよ」
彼女は、ネックレスを見せてくれた。同じようにブルーに光っている。
「ほんとだー。じゃあ、誰のだろ?イオンさん、返しておいてください。きっと、探しているだろうし。」
「それ、あなたから、渡してくれないかしら」
「えっ?」
「運命の出会いって思ってくれたんですよね」
「運命っていうか、いや、綺麗なフォームで泳ぐ人だなって、思っただけです。」
「それが、あなたにとって、運命の人とおもったのなら、あなたから、渡すのがいいと思います。」
「いや、でも、だれかわからないし。」
「彼女は、きっと探しに来るわよ、その場所に。大事にしているものだから。」
「そんなに、大切にしているんですね。」
「好きな人から 、もらったら、大切にするわよ」
「好きな人?」
「なんでもないわ。とにかく、あなたから、わたしてあげて。」
「でもなぁー、なんか特徴とか、」
「じゃあ、ヒントを与えましょうか?」
「イオンさん、知ってるなら、もったいぶらないで教えてくださいよ」
「彼女は、わたしに似ているわよ?」
「えっ?イオンさんに、似ている・・・・・」
「わたしに、似てるなら、ひとりしかいないと思うけど?」
かなりの、ヒントなのに、僕は、全然ピンとこなくて、そればかりか
「えー?誰だろ?」
ほんとに、思い浮かばない。
プールの、場所に着いた。
「僕ってすごい」
こんな、簡単に着いちゃうなんて。
イオンさんに、似てる人かー。
ほんとに、思い浮かばなくて、プールのそばで途方にくれていた。
昨日の、人魚に会いたいな・・・・・
そう、思っていたから。
「健斗?」
「えっ??」
不意に、名前を呼ばれて振り向くと、
そこにいたのは、イナンだった。
だけど、あまりにもビックリして僕は、バランスを崩してプールに落ちてしまった!
「うわぁー」
バッシャ~ン
「なにやってんの?」
「なにやってんのって!ビックリさせるなよ!」
「なによ!こんどは、押してないから!」
「知ってるよ」
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ!助けろよ」
彼女が、手をさしのべると、僕は、ちょっと意地悪したくなった。
グイっと、彼女を、ひっぱると、
「きゃーっ!」
バッシャ~ン
彼女を、プールに落としてやった。
「ちょっと!なにするのよ!」
「この前の仕返しだよ」
「なにそれ!レディに失礼よ!」
「イナンのどこがレディなんだよ!」
「なによ!意地悪!」
「うそうそ!これで、仮は、なし。」
「・・・・・・・」
「ねぇ、昨日さ。」
「もう、信じられない!せっかく出掛けようとしたのに」
「えっ・・・・ごめん」
「それより、ネックレス見なかった?」
「ネックレス?」
「昨日、ここに落としたみたいで、探しに来たの。いつも、身に付けてるお守りなの。」
おれは、ドキドキしていた。
まさか、まさか
「健斗?」
「ネックレスって、これ?」
おれは、ネックレスを、恐る恐る差し出す。
「あー、それよ!よかったぁー拾ってくれたんだ。ありがとう。」
って、昨日いた人影って、健斗だったんだ。
「・・・・・・・」
「健斗?」
「濡らしちゃって、ごめん。」
あまりにも、動揺していて、イナンの顔が見れない。
「いいの。泳ぐときも身に付けてるし。」
まさか、昨日の人魚が、
イナン?
「これ、レンにもらったものだから」
「そっか。」
そういえば、言ってたっけ、イオンさんが、
「好きな人から、もらったのなら、大事にするでしょ?」
って。
「ほんと、ありがとう。」
「・・・・そんなに、すきならさ、告白すればいいじゃん。」
「・・・えっ?」
「まえから、思ってたけど、そんなに好きならさ、レンさんにさっさと、告ればいいんだよ。」
僕は、そう言ってた。
なんだか、悔しくて
「そんな簡単にできていたら、苦労しないわよ」
「えっ?」
なんだか、イナンの様子が変だ。
「レンは、レンは・・・・」
「イナン?」
「レンは、イオンが、好きなの。イオンしか、見てないの」
見ると、イナンは、泣いていた。

ものすごく、悲しい顔で泣いている。
そのとき、僕の鼓動が動いた。
イナンを泣かせてしまった。
いままで強気でいた女の子が、
強気で向かってきていた女の子を、泣かせてしまった。
俺は、いたたまれなくなって、思わず彼女を、抱き締めていた。
「イナン、ごめん、」
「・・・健斗・・・・」
「・・・ごめん。僕イナンを傷つけていたんだね。ごめん」
涙を流し続ける彼女を、俺は抱き締めていた。
その姿を、見てしまったのは、和彦だった。
「えっ?イナンさんと、健斗?なんで?なんで抱き合ってんの?」
困惑を、隠せない。
そして怒りがこみ上げる
「勝手にしろって言ったくせに」
抜け駆けされてなんだか、拍子抜けだ。
やっぱり、ふたりは、できていたん。
そう思った和彦は、その場から、静かに、去っていった。
「健斗?」
「あっ!あっ!ごめん!」
「どうしたの、急に優しくなるなんて」
「ひどいなー、おれは、女の子には、基本優しいの!」
「そうかしら?」
「そうだよ」
「フフっ」
「よかった。笑ってくれた。」
「健斗」
「今だけ、泣いてもいいよ」
「それも、他の子にいってるんでしょ?」
「まさか。」
「いいのよ、別に。わたしを、好きになる人なんて、いないから。」
「そんなことないよ」
「えっ?」
和彦のことだ。
「イナンのこと、好きだ!っていってくれる人きっといるよ。」
「ふふ、ありがとう。」
きっと・・・・・・。
「いいのよ、へんになぐさめてくれなくても。」
「同情とかじゃないよ!ほんとにいるから!ちゃんと。」
和彦兄さんなら、きっと、イナンを泣かせないはずだ。
このときの、僕は、そう思っていた。
このときは・・・・・・。
「朝食まだでしょ?いきましょ?」
「うん・・・・」
びしょ濡れのままだったから、
「くしゅん」
小さくくしゃみをする。
「ほら、かぜひくわよ?」
イナンがタオルを、被せてくれた。
このとき、初めてイナンと、目があった。
そして僕たちは、少しの間だけ見つめあって・・・・・

「あ、ありがと」
照れて、そっぽを向いてしまった。
「健斗って」
「えっ?」
「泳げるの?」
「うん!僕は、泳ぐの好き!」
「じゃあ、あとで、泳ぎましょ?」
「うん!やった!」
「ふふっ」
このときは、僕たちの間に、喧嘩はなかった。僕たちの関係が、変わり始めた瞬間だった。


    
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