墓守の主食は命(タマ)と肉 〜死ぬ未来を約束された令嬢は藁にも縋る思いで未来を変えたい〜

果汁未完

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第一章

旅立ちの日に

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ウ~サ~ギ~お~いし、か~の~や~ま~♪


というわけで俺は今日もスライムと一緒にウサギを狩っている。

朝の挨拶にホーリースライムにまとわりつかれたら昨日よりちょっと痛かった。何故だ。

ホーンラビットを食えば食うほど、俺は元気になった。

たった数日で手慣れたもので、今日はウサギ10匹も取ってしまった。いくら原っぱが広いとはいえ取りすぎていないか心配だ。

昼過ぎに加工を終え、二人?でごちそうさまをした。

スライムが思い出したかのようにぴょんぴょんと跳ね始めた。

「急にテンション高くして、どうしたんだ?」

そう聞くとスライムはいそいそと自分の身体から何かを取り出し始めた。見覚えのある白い毛皮だ。

「どうやって作ったんだ、普通に売り物になりそうだぞこれ」

そう聞いてみたが秘密だと言われてしまった。

「スライムはすげぇなぁ…、俺はこんな事出来ねぇもん」

スライムの頭?をポムポムして褒めちぎる。
プルプルと嬉しそうに震えるホーリースライムを見ると、非常に和んだ。

「あ、そういや、俺も報告したい事があったんだ!」

昨日の夜見つけた墓守小屋の話をする。
自分は今日からクレイと名乗る事、墓守の仕事を引き継ごうと思っている、等をスライムに伝えた。

するとホーリースライムが、一緒に住みたいと伝えてきた。
ウサギの皮を加工する場所が欲しいのだという。

俺は二つ返事で了承した。夜になってからスライムがいなくて寂しい思いをしなくて良くなったのだ。

スライムが加工の仕方はまだ秘密にしたいと言ったので、墓守小屋にスライム専用スペースを作ることにした。

人間がいないか確定してから小屋に連れて帰る。
庭に1mほどの木箱が置いてあるのを見つけたスライムはそこを住処に決めたようだ。

小屋の壁側に横倒しにした木箱を寄せ、入り口が外部から見られるのを防ぎつつ、スライムが出入り出来る程度のスペースを確保した。

「絶対に見ないで下さい、後悔しますよ?おう、わかった。うん」

お前は鶴なのか…?そうツッコミたくなった俺であった。

スライムと一緒にいたいから絶対見ないぞ。



そうして、スライムとの共同生活を始めてから毎日同じような事をして一ヶ月が経った。





「スライム~……そろそろウサギ肉もスローライフも飽きてきたよ~……。死なないから例の肉も食えないしよぉ~~……」

ウサギ肉を焼いたり、刻みに刻んでハンバーグにしたり、様々な加工を施してウサギ肉を加工してきたが味に飽きた。
塩や胡椒は無いし、香草代わりにしていたのは雑草だ。
物足りないにも程がある。
しゃぶってたシュールさんの骨はもうただのカルシウム棒だ。辛い。

墓等も雑草を毎日抜いて、霊園外にある白い花をあらゆる墓の周りに植えまくった。
墓石となる巨岩を集めるべくホーンラビットの角を使って亀裂を入れ、切り出しまで始めたのがつい2週間も前の事。

エネルギーの為にウサギを狩り、墓守小屋のジョウロで花に水を撒き散らし、岩に角をハンマーで打ちつけて巨岩を割る。
墓守小屋の裏手の木を勝手に伐採して霊園の外に出れるよう細工を施し、採石置き場も作った。
スライムが舐めしてくれたウサギの皮のストックもエグい量になってきた。
霊園付近のウサギが見当たらないレベルに狩ったからだ。やり過ぎた。

ベッドの上でスライムと蝋燭の灯りに照らされながら退屈と飽食をどう凌ぐか議論する。


ホーリースライムはウニョンウニョンと左右に撓み、突然ビョンと跳ねてプルプル震えた。

「次の賃金が出たら、街に降りる?」

スライムがウンウンと頷く。

確かにありかもしれない。
それまでこの怠惰な楽園で辛抱だ。

そうと決めたら早速行動だ。闇が薄れた空が窓枠の隙間から見える頃、作業を開始した。

俺はこのウサギの毛皮ん売り捌く皮屋に化けて売り込みをするつもりだ。

幸いシュールさんの来ていた綺麗な服や靴はまだ取ってある。商売において清潔感は基本中の基本だ。

必要なのはスーツと、靴と、目立つワンポイントと、カバンだ。


小屋にあった針と糸でウサギの皮を使ってウサギの襟巻きを作る事にした。
玉結び、ボタン止めは出来るのでひたすらチクチク縫う。

乾いた皮が硬い時はスライムに柔らかくしてもらう。

俺の肌が傷つく事はない。一番嫌なのは、なけなしの貴重な針が折れたり曲がったりする事だ。

ウサギ皮と格闘し続ける事8時間、自分で満足の行くウサギの襟巻きが完成した。

「ボロ雑巾にならなくて良かった……」

襟巻きはホーリースライムの為の隠れ場所だ。

襟巻きを止めるボタンはシュールさんの身につけていたワイシャツの一番下をもぎ取って取り付けた。
厚みのある貝殻を使用したボタンなのかシャボン玉のような光沢がうっすら見える。

取った箇所は不恰好になったがシャツインして仕舞えば問題無いだろう。

もう空の一番天辺に太陽が登っている。

「ガワだけ整えば良いから……っと」

ウサギの皮を入れる為のバッグを作成しようとしたその時だった。


チリンチリン!チリンチリン!

外から鈴か鐘がもわからない音がする。

黒いローブを急いで羽織り外に出ると、茶色の馬に引かれた馬車が霊園に入ってくるのが見える。

墓守小屋の近くで馬車から降りてきたその人物は霊園を見て呆けた顔をしながら墓守小屋に歩いてくる。身綺麗な事から恐らく役人なのだろう。

「こんにちは」

そう声をかけると役人は黒いカンカン帽を軽く外して会釈をする。

「久しぶりに来てみれば、随分と綺麗な墓になったな、えーっと……クレイ君。亡くなった領主、クリムエット公爵様もさぞ喜んでおられる事だろう!」

そう言ってニッコリと微笑む役人は思いの外感じの良い中年の男だった。
付け加えて凄い良い匂いもする。なるほど、これがイケオジか。
強いて残念な事といえば俺の名前を紙でチラッと確認したぐらいだ。

「恐れ入ります……」

「これが今回の給金だ。今回も銀貨の方が良いかね?」

「すいません、金貨でお願いします」

「あい、わかった。少し待ってくれ」

馬車からアンティークなトランクケースを取り出すのを見た俺は役人に尋ねる。

「そのカバン、素敵ですね。お幾らぐらいのモノなのでしょう?」

素人が適当に作った毛皮のトートバッグよりトランクケースから商品が取り出された方が数段マシだろう。これは是非とも手に入れておきたい。

トランクケースという名前が通じない時の為にカバンという表現を使ったが気運に終わった。

「このトランクケースかね?何そこまで高いものでは無いさ、精々20万Gだ……君の給金だと大金だな、失言を詫びよう」

ウサギ皮のカバンよりうんと見栄えの良いものがそこにはあった。

「いえいえ、本当の事ですから……ちょっとご相談なんですが、結果から言うと給金よりそのトランクケースを望んでおりまして」

「ほう?構わんが、生活は大丈夫なのかね?」

「前回の給金を頑張って節約しましてね、しばらくは大丈夫です。いやはや助かります。ずっと持っていたカバンが壊れてしまって途方にくれていたんですよ……」

嘘八百をスラスラと紡ぐ。嘘とバレないように節約したという本当の事も混ぜながら会話を進める。

「今回の給金36万Gの内、6万Gを金貨でもらい30万Gでそちらのトランクケースを購入したいのですが。10万Gは手数料とでも思って下されば」

「ではそれで行こうか」

交渉は成立した。

「ありがとうございます、私めのような者への配慮恐れ入ります。……もし良ければ名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「私の名前かね、ジェームズ・ドルトだ。アムネシア王国税務部に所属しておるから、金で何か困った時に来ると良い、ではまた」

本当に良い人だった。

霊園から出て行く馬車に向かって最後まで礼をして見送った俺は支度を始めた。

小屋に行き、トランクにウサギの皮を入るだけ詰め込み、襟巻きをして黒髪を水で撫でつけてオールバックに整える。
上から黒いローブを羽織ればまだ上等な人間に見えるだろう。
スライムがにょろりとよじ登ってきて俺の髪を食べて更にしっかり整えてくれた。
一家に1匹ホーリースライムだな。

金貨6枚は胸ポケットに2枚、ズボンのサイドポケットと靴下の中に1枚ずつ入れた。

スリに合わないとも限らないから備えは万全にしておこう。

「スライム、行くぞ」

霊園にひと時の別れを告げて、俺とスライムは街へと繰り出した。

歩いて。


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