墓守の主食は命(タマ)と肉 〜死ぬ未来を約束された令嬢は藁にも縋る思いで未来を変えたい〜

果汁未完

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第一章

狩りの時間

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呉服店の店主に教えて貰った"紳士の紅茶亭"に辿り着いた。欠けたレンガの外装に歴史を感じる宿だ。

扉を開けるとドアベルがチリリンと揺れ、奥から宿台帳を抱えた給仕服の女将が現れる。

「"紳士の紅茶亭"にようこそいらっしゃいました。当店は一泊銀貨5枚で朝食と夕食を提供させて頂いております、何泊のご予定でしょうか?」

女将が一礼をして滞在日を伺ってくる。

古いが赴きのあるレストランを併設したこの宿は、値段だけあって清掃も教育も行き届いているようだ。

(手持ちの金は金貨6枚…この後の事を考えると無駄使いは出来ないからな)

「2泊で頼む」

「かしこまりました。料金は先払い制になっております。金貨一枚、又は銀貨10枚を頂きます……はい、確かに。お部屋は一階の角部屋をお使い下さい。大切な物はクローゼットに収納をお願いいたします」

そう言われて案内された部屋は、しっかりと木目まで磨かれ、チリ一つ無い綺麗な部屋だった。
ベッドとテーブル一式、クローゼットしか置いていないものの、清潔感溢れる部屋に大満足だ。

「お出かけの際はフロントで申して下されば鍵をおかけします。食事は一階のレストランをご利用下さい。他に質問はこざいますか?」

「宿の話じゃないんですが、……この街で治安が宜しく無いのはどこら辺かわかりますか?」

「お気になさらずに。冒険者ギルド周辺の裏路地はあまり良くありませんね。加えて奥に行くほど貧民街が増えるので危険度が上がります。ご注意下さい」

「わかりました、丁寧にどうも。もう大丈夫です」「それでは失礼致します」

女将が丁寧に教えてくれたのでありがたかった。そうか貧民街もあるのか。

その言葉に自然と口角が上がった。



俺は早速ウサギ皮をクローゼットに40枚入れ部屋を出て、女将に鍵をかけて貰い冒険者ギルドに向かった。

様々な人に尋ねながらようやく現れたその建物に心躍らせる。

扉を開けるとクエストボードが目の前に現れる。右手が受付、左手が買取カウンターと装備販売所らしい。

冒険者になりたくないかと言われたらなりたいと思う。だが俺はゾンビだ。
ステータス制度がある場合、俺の種族名が出てきたらその場で討伐されかねない。

悲しいが今回は冒険者登録は無しで。

真っ直ぐ買取カウンターに行くとスキンヘッドの厳ついマッチョが対応してくる。

「いらっしゃいませ、本日はどのような品を持ち込みで?」

あの店主みたいにタメ口で話してくるかと思っていたので意外だった。噂は本当なのだろうか?

「ホーンラビットの皮を査定して下さい」

そう言ってトランクから中身を見せないように1枚取り出す。

「お預かりします。……ここが少し雑にカットされていて買取価格が落ちますねぇ。銀貨3枚って所でしょうか、まだあったりします?」

店主の言った通りか。雑にカットされてるとは酷い言いがかりだ。一ヶ月で100匹以上は狩って解体しただけあって作業はもう完璧なんだぞ。しかもスライムのお陰で後処理は最高な筈だ。
だが、俺の真の目的はこれじゃあない。

「まだ40枚ほどあるんですが、他と比較してみます。ありがとうございました。」

「……またのお越しをお待ちしております。」

さぁ、餌は見せたぞ?

冒険者ギルドから移動して裏路地へと歩みを進める。

だんだん日光が当たる道が少なくなり、ボロ屋が増えていく。


ぐるりん、ポポポポ。

「来たか。」

後ろから複数いるとスライムが教えてくれる。

ここでやると目立つ。足を大きく動かして走り出す。

「逃げたぞ!!」

もっともっと、足を貧民街へ。

角を曲がろうとするほどその角に待ち伏せしているかの如く盗賊が配備されている。
いつもこうやって追い詰めているのだろう。

青空すら見えないぐらいの違法建築になったボロ屋通りについに終わりが来た。

「ククッ、行き止まりだぜ?」

「ヘーッ、ヘーッ、ヘー……はぁ、手こずらせやがって!」

「もう逃げられねぇぞぉ!!」


物騒な武器を片手に有象無象が5人。

ウサギ皮40枚分、呉服店の店主の試算が相場通りなら金貨20枚分の獲物だ。
墓守が一ヶ月生活するのに必要なカネは金貨6枚。
20枚を5人で割れば4枚。次の3分の2は遊んでいられる金だ。

さて、アンデットの力を試そうか。

男が首に刃を当てながらニタリと笑う。
刃物も一応試したんだよなぁ。

「ほらほらぁ?さっさと獲物をこっちに寄越しな、痛い目見たくな…い?ァッブェぇっ?!」


ホーンラビットを捕まえる要領で男が握っている武器の持ち手に触れる。

バキボキッと嫌な音が空間に響く。

「あヒェェぇぇえ!!」

「っ何したコイツ!!」

ホーンラビットより硬いが、筋力は無いな。
あぁ、美味そうだ。

「コイツまさか俺たちを?!」

「ヒョロガリが無一文襲ったって得無いだろ!!火事場の馬鹿力だ!!」

「殺せぇ!!!」


次々と襲いかかる盗賊に体当たりでしがみ付き抱きしめる。愛の抱擁だ受け取れ。

ボキボキボキィッ!!

「ぁああああ!!!」

後3人。

背骨が折れた盗賊を盾に押し迫り、死角から太腿を握る。

「だすけてくれぇぇ!」

ホーンラビットより簡単に抑え込める。
ちゃんと捕まえれば問題無いな。

片足の骨を砕く。
痛みで悶絶する男を転がして残った2人に襲いかかる。

「がァッ!!!」

バキバキッ!!

先に逃げようとした大柄な男に後ろから組み付いて抱き潰した。
肋骨を折ったからか、一見して明らかに肺が凹み呼吸が出来ずに痙攣して床に転がる。

後1人。

「ひっ…」

目があった瞬間小柄な盗賊の男が怯えた声を上げる。下手に背を向ければ殺されると分かったのか、俺を見ながらジリジリと後ろに下がっていくが……。

トンッ……

「っいやだぁ!!来るんじゃ無い!!ガハッ……!」

壁が後ろにあるのを忘れていたのか、堪えていた絶望を露わにした。その隙に喉を捕らえる。

「行き止まり選んだのが運の付きだなぁ、背後が壁で残念。アンタで最後。逃げようとした奴からモグモグすっからよろしく!最後に残った奴にはアジトを案内してもらうからなー?」



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