【改稿版】この世界の主人公が役にたたないのでモブの私がなんとかしないといけないようです。

鳳城伊織

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6話 役割と世界の意思。

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「いや、その、言っている事は理解出来たよ?でも僕はその元々アニメとか漫画は良くわからないし、園田さんが言うこともなんというか………」

ツバサは困惑しているようだ。まあ、無理も無い。もともとアニメや漫画などに触れて来ていない元おっさんなら、理解するのに時間が掛かっても仕方ない。

「………はぁ、とりあえずもう少し詳しく説明するね。」

この【オワセカ】の物語は主人公であるツバサがヒロインを助けて特別クラスへと編入する事から動き出す。この世界は元は普通の地球で、今から二百年前に異次元からの侵略者、【魔物】や【魔獣】達によって国や文明が滅ぼされている。だが異次元が開いた影響か、神が人類を見捨てなかったのか?それは分からないが魔法や不思議な力に目覚めた人間の生き残り達が国を起こし、軍を作り人類の存続を賭けて魔物達と戦っている。今なお地球の3分の2は魔物や魔獣に支配されているが世界を取り戻すべく、魔法適正が有る軍人を育てるために、軍学校が存在していると言う設定である。魔法が使えない者達も存在して居てそう言う人々は普通に働いていたり、奴隷制度などもある。所謂ごちゃまぜファンタジーだ。アニメの設定なので結構ふんわりして居る。

大きく分けて国は4つ。今居るこの国【ジパン】は元々は日本の有った場所で最初に、出来た国でもある。
なので文字や会話は日本語だ、日本のアニメならではの設定だ。ざっくりとした世界観はこうだ。このアニメは主人公、ツバサ視点で進むのでメインはほぼ軍学校の特別クラスだ。アニメならではのお約束でめっちゃ強い学生達揃いで、ほぼ皆チートである。二百年も進展の無かった魔物達との戦いをわずか20人弱で終わらせるのである。そして何故主人公がこの世界の命運を握っているかと言うと、これは物語後半まで明かされないのだが、主人公のツバサ・ブラウンは実は人間ではない。ツバサの祖父、【源一郎・ブラウン】が昔妻を目の前で魔物に殺されて憎しみを糧に編み出した禁術から生まれた、唯一魔物の親玉を滅せると言われる存在【人工精霊】である。その実全くの無から生まれたわけでは無い。自分の娘である【静香・ブラウン】の腹に宿った胎児を依代に使ったのだ。だが代償は大きく、生まれた赤ん坊は静香の命とその夫の命を奪ってしまった。その後は普通の赤ん坊として育てる傍ら、幼いツバサに戦いを教え込み、いつか来る魔物との戦いに備えていたのだが、源一郎はいつしか孫としてツバサを愛してしまった自分に気づく。なのでツバサには本人の出生の秘密を明かさぬことにして、墓場まで持って行く事にした。その筈だった。だがアニメ二期の終盤で源一郎は魔物に襲われて瀕死の状態に陥る。ツバサが駆けつけたがもう助かる見込みは無かった。源一郎は朦朧とする意識の中で涙ながらにツバサに全てを話して逝くのだった。そして主人公は心の底から魔物を滅ぼすことを決意し、なんやかんやで最後にはそれを成し遂げてしまうのだ。ハッピーエンドだ。完‼︎

「え、ひどいネタバレじゃないのそれって?」

真っ青な顔で震える声を出すツバサは今にも死んでしまいそうな顔をしていた。

「………お祖父様死ぬの?え嘘でしょ?」

「………ごめんね。一応アニメはそう言うストーリーなんだよ………なんかごめんね。」

なんだか申し訳なくなってツバサから目をそらす。ツバサは絶望した様な顔だ。二人の間に流れる空気は、まるでお葬式の様だ。暫く黙っていた二人だったがツバサが口を開いた。

「あの、でも、その………君の話が本当だとしても今の僕はその主人公の【ツバサ】とは全然違うわけだし、今日だってストーリーが変わったんでしょ?だ、だからきっと園田さんの言うアニメとは違うんじゃないかな?」

縋るような目でこちらを見るツバサにミライは答える。

「うん、その可能性もあると思うよ」

「そ、そうだよね?やっぱり……「でもね」

ホッとするツバサの言葉を遮るように言葉をかぶせる。

「もしストーリー通りだとすると、このまま何もしなかったら絶対に世界は滅ぶんだよ?」

そう。もしストーリーの細かい部分が転生者のツバサと言うイレギュラーで変わったとしても2年後に起こる魔物の【大侵略】を防げるとは思わない。今日エリカのイベントは起こった。助けたのはユアンだったが、きっとツバサが関わらなくても人が変わってイベントは起こる筈だ。

【大侵略】それは映画のラストストーリーだ。魔物の大群がジパンを攻めてきて、特別クラスの生徒も戦場へ駆り出される。メインキャラの何人かは死ぬ。そして攻めて来た敵の中にはこの物語のラスボスが存在する。全ての魔物、魔獣の親玉。【マザー】と呼ばれる化け物だ。マザーはどんな攻撃や魔法でも倒せない。直ぐに超再生して。どんな傷も立ち所に治ってしまう。だが主人公のツバサだけは違う、マザーに癒えぬ傷を負わせる事が出来る。更にはその命をぶつける事でマザーを滅ぼすことが出来るのだ。

マザーは全ての魔に連なる物と繋がっている。だからマザーを滅ぼせば全ての魔物が滅ぶのだ。逆を言えばマザーを倒さない限りは魔物も魔獣も永遠に湧いて来る。そして映画では命を賭けて主人公ツバサがマザーを倒す。ツバサも死ぬかと思われたがヒロイン達の愛の奇跡で、新たな精霊として生まれ変わり、世界は緑に包まれてハッピーエンドだ。

そう、それで本当にオワセカは終わるのだ。思い出しながら、ふと頭に浮かぶ。何故自分がモブとして知識を持ってこの世界に来たのかを。 

もしかしたらそれは………。ふと頭に浮かんだ考えはスラスラと口から出ていた。

「これは、私の勝手な考えだけど、きっとストーリーは多少のズレが有っても殆どその形に沿って進んで行くと思うんだ。何故なら、少し結果は変わってしまったけど、実際にヒロインが絡まれるイベントは発生したし、助ける相手は変わったけど。でもそれはストーリーの強制力というか、そういうのがあって無理やりストーリーに沿うように出来てるんじゃないかと思う、私がこの世界に来たのはそれすら強制力が働いた結果なんじゃないかと私は思う………」

ミライの言葉にツバサはゴクリと唾を飲んだ。

「それはなんでそう思ったの?」

「今までは、小さなイベントなら他の誰かが代われたかも知れないけど、マザーを倒せるのは人工精霊のツバサだけだから、誰もその代わりは出来ない、………今は丁度アニメ本編の始まる時期、そんな時に原作知識を持った私が現れるなんて都合が良すぎるでしょ?きっとストーリー通りに進める為にツバサ君のサポートをする為にこの世界に呼ばれたんじゃ無いかな?ね?しっくり来ない?この考え………」

そう、あり得ない話では無い。何故主人公のツバサに何も知らない田中一郎が生まれ変わったのかはわからないがそれによって色々と物語の進行に問題が起きた。そして小さな事であれば強制力で歪んだ形で、なんとか取り繕って来ていたがいよいよ、アニメ本編が始まるにあたってどうにもならない程の歪みが生まれてしまい、その結果ストーリー通りに進める為に【園田ミライ】としてこのアニメのファンであり設定を知っている『私』が世界の意思に呼ばれたのだとしても何もおかしなことは無い。ピースがカチリとハマったような気がした。

「と言うわけだけど、ツバサ君はどう思った?この話を聞いて」

「う~ん、いや、納得は出来るけど、でも実際じゃあ主人公やりますとは、ならないかなぁ………。大体僕に戦いなんて無理だし。というか人工精霊とかもなんかそんな気はしないっていうか………、だって僕君にも負けるくらい弱いし………」

「まあ、いきなり言われても困るよね?それに今の話だって殆ど私の妄想だしね、それこそ此処はアニメとは似ているけど別物の世界だって事もあり得るわけだし」

空になったトレーを眺めながら、食後の紅茶をすする。

「それに、まだ時間は有るわけだし。まずツバサ君が特別クラスに編入しないことにはストーリーが進まないから、それは私にはどうする事も出来ないしさ」

そう問題はそこである。今のツバサはただの通常クラスの落ちこぼれ。しかもフリでは無くて本当にそのまま落ちこぼれなのだ。ヒロインイベントも取りこぼしているわけだし、もしまたエリカが安藤に絡まれているのを助けようとしても、今のツバサでは無理だろう。

「そろそろ出ようか?遅いしもう今日は帰ろう?」

神妙な顔で静かになったツバサに声をかける。

「うん………、そうだね」

色々と考えているのだろう、ツバサは眉間に皺を寄せて唸っている。少し人相が悪くなっていてその顔はアニメで見知ったツバサに似ているなと思い、ミライは苦笑した。

「とりあえず、今日はこの話は一旦保留でまた明日の放課後も時間取れる?ちょっとまだ聞き足りない事もあるし、元日本人同士仲良くしようよ?」

「あ、うん大丈夫。放課後は暇だから。………そうだね、僕園田さんに会えて本当に嬉しかったし、あ、寮の近くまで送るよ。」

「ありがと」



◇◇◇◇◇◇



世界の強制力が本当に有るんだと次の日私達は理解する事になる。


「特別クラスへ編入ですか?」

朝早く先生に指導室に呼ばれてそう告げられた。隣には真っ青な顔のツバサも居る。

「待ってください!!私達の実力では到底無理です‼︎何かの間違いでは?」

ミライがそう言うと先生は目を泳がせた。

「あー、まあそうなんだがな………推薦なんだ、悪いがもう決定なんだ。」

先生は気の毒そうな顔をしている

「…………推薦ですか?」

「そう、とある方からのな」

「その方とは?」

「悪いが答えられんな。あーはっきり言うがこれは君たちに拒否権は無いから、観念してくれ。」

本当に申し訳なさそうに先生は言う。先生もミライ達が特別クラスに編入になるのをおかしいと思って、困惑して居る様だ。

「これ、ネクタイと書類な、とりあえず今日は授業出なくて良いから準備とかしておけよ?明日から特別クラスに行ってもらうからそのつもりでな。……おら、ツバサ・ブラウンしっかりしろ」

ミライの隣で真っ青で震えているツバサはここに来てから一言も発しない。今にも倒れそうだ。先生に肩を叩かれてビクリと肩を揺らしたがまたすぐに震えだす。

「先生、ツバサ君の書類とネクタイも私が預かります。」

「おー悪いな。園田。じゃあ俺は授業行くから、ついでにブラウンも寮まで送ってやってくれ。」






◇◇◇◇◇◇





震えるツバサの手を引いて誰も居ない中庭のベンチに腰掛ける。

「やっぱり始まっちゃうね……」

そうミライが呟くとツバサはビクリとしてこちらに視線を向けた。

「うっ……」

ボロボロと涙を流し始める。本当にこのツバサは泣き虫だなとミライは思う。

(やっぱり……、アニメ本編が始まってるのかな)

ツバサが泣き止むまで空を見上げる。嗚呼、空は何処の世界でも変わらないなぁなんて思いながら隣の泣き声に耳をすます。スンスンと鼻を啜る音に目をやればなんとか泣き止んだツバサが居た。

「…本当に僕が主人公なんだね」

「うん」

「戦わないと、皆死んじゃうんだよね…」

「うん」

「戦っても、死んじゃう人も、居るんだよね?」

「……」

その問いには何も答えられなかった。

ストーリー通りに進めるのなら、何人かは必ず死ぬ。私はアニメでそれを見てきたのだ。

「そんなの…嫌だよ…ぅっ」

そう言ってまた泣き出すツバサを見ていると、湧き上がってくる気持ちが有った。

「…ない」

「ぐすっ…?…っ何?」

「死なせない!!」

そしてそう叫んでいた。

私だってアニメで死んでいくキャラクターを見ていた。 悲しかった、死んでほしくなかった。だけどアニメは画面の中の出来事だ。あの時は見ているだけしかなかった。でも今は違う。この世界に私も居る。それにストーリーだって知っている。そうだ、強制力は確かにある。でも小さな事なら変えられる、その筈だ。

突然叫んだミライに驚くツバサの手を握りしめて宣言する。

「絶対に仲間は、家族は、大切な人達は死なせない‼︎私の知識で必ず何とかするよ‼︎だからツバサ君も私を手伝って!!私にもハッピーエンドにも主人公が必要なの‼︎‼︎」

一度そこで言葉を区切ってから大きく息を吸って吐く。それからニッコリとツバサに笑いかける。

「これから一緒に頑張ろう!!最高のハッピーエンドを迎えるために!!」


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