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24話 転寮。

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今ミライとツバサは職員室を目指している。先程ツバサが二人で職員室に来るようにと他の生徒から伝言されたからだ。別に何かやらかして、呼び出しをくらったわけでは無い。寮の鍵を取りに来いと言うことらしい。

「失礼しまーす。」

職員室に入ると初老の先生が一人居る。そしてこちらに気づくと手招きして来た。

「あー、君達。こっちこっち、今井先生から鍵預かってるよ」

「あ、ありがとうございます。」

「すみません」

鍵を差し出されて受け取る。

「部屋は、綺麗に使ってね。それからこれに特別クラスの寮への地図と寮のルール書いてあるから。ちゃんと読んでね」

プリントも渡された、ふと横を見るとツバサがこっちを見ていた。生温い眼差しだ。


用が済んだので職員室を後にしてミライはツバサにビシリと指を突きつける。

「誤解があるけど!!部屋を汚部屋にしたのは、前のミライだからっ!!」

そう、ここに来た時にはすでに汚かった。大体3日であの腐海は出来上がらないわい。ミライがプンプンしているとツバサはクスクス笑う。

「ふふ、わかってるよ。………少しからかっただけだよ。ふふ…」

凄く柔らかい笑顔だ。アニメのツバサとは大違いだ。その笑顔にミライは何故だか少しドキリとした。

(そんな風に笑うとか………ずるい。流石天然………、はあ。でもごめんツバサ君。前世の私も汚部屋の住人でした)

そっとツバサから目を離し次は綺麗に過ごそうと、決意するミライだった。



◇◇◇◇◇◇




ミライとツバサは一度教室に戻ろうかと言う話になって教室へと向かっていると前の方からエリカとにゃん子が駆けて来た。その手には鞄や荷物が持たれていた。

「あーナイスタイミングやー」

「ミライ、迎えに来たわよ」

「ん?迎え?」

「さっき今井先生がミライは寮の引っ越しで色々あるだろうからってもう今日は寮へ戻ってもいいっておっしゃったの」

「それでうち達が寮まで一緒に連れてってあげてーって言われたんよ」

「あー、そうなんだ。ありがとうございます。助かります」

地図によると特別クラスの寮は男子と女子で校舎を挟んで反対側に位置している。なので必然的にツバサとは別れる事になる。一人で行くのが不安だったミライはエリカとにゃん子に感謝した。

「いーよいーよ‼︎あ、プリント見せてーや、うち無くしたしちゃんと読んでへんしー」

「あら?ミライの部屋。私の隣の部屋だわ‼︎」

プリントをにゃん子と眺めてエリカは嬉しそうにしている。

「あ、ほんと?良かった。近くに知り合いが居て」

(エリカちゃんとお隣さんか………、仲良くなって損はないよね)

「うちはその下の階やぁー。上で騒いじゃあかんでー?」

にゃん子は少し残念そうだ。

「ツバサさんはライアンが教室で待ってるから来て欲しいって言ってたわ。」

「あ、そうなんだ。伝言ありがとう一乗寺さん」

ツバサはナチュラルにエリカの頭をポンポンしてる。本人的には親戚の叔父さん気分なのだろうか?お使い出来て偉いねーと言った雰囲気である。

「はい、ちゃあんと鞄も持って来たしー」

にゃん子が手にしていた鞄はミライの物だった。

「あ、ありがとうございます。にゃん子さん。」

「いーよいーよ」

「じゃあ、今日はここでお別れかな?それじゃあ皆また明日」

そう言うツバサにミライが声をかける。

「うん、お疲れ。あ、明日は8時に教室来てね」

「うん、わかったよ」

手を振りツバサを見送る。ツバサも手を振って教室の方へ向かって行った。

「はーい、エリカちゃーん?幸せそうに固まって無いではよう行くでー?」

にゃん子がエリカの肩を叩く。エリカはぼうっと放心していた。また少し煙が出ている。

「ぴゃあ?!あ…、あら?ツバサさんは?」

「もう帰ったしー。あー、そや!!今日はエリカちゃんの部屋でごはん食べよーや」

にゃん子が言う。

「え?何で私の部屋なのよ?」

エリカは不思議そうだ。

「うちの部屋は、なーんも無いしミライちゃんの部屋は荷解きしないとだもんねー?」

にゃん子の言葉にミライも頷く。

(あ、荷解きか……、なんか面倒くさいなぁ)

「私の部屋もそんなに良いものじゃないわよ?」

「いーからいーから」

にゃん子とエリカの間で話しが纏まったみたいで今日はエリカの部屋で鍋をすることに決まった。







◇◇◇◇◇◇





「スーパー?校内に?」

「うん、寮のすぐ近くにあるんだけどそこでなら買い物にパスチケット使えるのよ?ミライは余り自炊はしないの?結構皆利用してると思ったけど、知らなかったなんて意外ね、校外の人もたまに利用してるわよ?まあ通常クラスの寮からだと少し遠いし、パスチケットも無いならわざわざ行かないかしら?他にも小さな売店がちょこちょこ有るものね…そっちを利用してたの?」

「あー、えっと、うん。そんな感じかな、食事も殆ど外食だったし、まだ入学して一ヶ月だし……」

(記憶にもあんまりスーパーのことは無いんだよね………。にしても本当広いなー此処。)

「うちも全然スーパーは行かんよ?だってお釣り出ないやん?なんか損してる気になるもん」

「確かにそう言う考え方も有るわね。………一万円分も買うことって無いものね?」

「あーじゃあ、お食事券でだと割り勘できない感じですか?」

ミライがそう言うとエリカがドヤ顔でお食事券を指二本で挟んでポーズをとる。

「今日の支払いは私に任せなさい」

(おー、エリカちゃん、太っ腹!!んーでも)

「え、でも悪いし。私も持ってるよ券」

「いいのっ!!今日のお昼だって本当はご馳走するつもりだったのよ?編入祝よ」

そう言われたら断るのも失礼な気がしてミライはゴチになりますと笑うのだった。

「いやー、今日はいい日やわぁー」

にゃん子も嬉しそうに笑ってる。奢って貰う気満々だ。

「にゃん子さん貧乏なんですか?」

ミライの問い掛けに、にゃん子はすねた様に言った。

「大人の女には色々あるものなんだよー」

「ゲームに課金してるってライアンが言ってたわよ」

すかさずエリカが突っ込む。






◇◇◇◇◇◇



なんだかんだと買い物を済ませて、特別クラス専用の寮の下に着いたミライはあ然とした。

(うわ……すごい……。)

「こ、高級ホテルみたい……。」

「ん?そうかしら普通よ?」

「いやいや、ミライちゃんの反応が正しい反応なんよー?エリカお姫様?」

にゃん子は苦笑いしている。やっぱりにゃん子は庶民的感覚だ。実家が貧乏なのかもしれない。

「何よ?とりあえず食材は私の部屋に一旦置いておいて。ミライの部屋に行きましょ。隣だけど」

「うん…。あれ?」

「どしたのー?ミライちゃん?」

小さく疑問の声を出したミライににゃん子は不思議そうな視線を向けた。

「あ、いえ」

(あの人……)

ミライが何となく周囲を見ていると人影が見えた。お昼にお食事券を届けに来た執事さん?が歩いて行くのが見えた。

「あー?あの人職員さんなんかなー?見やん顔だけどー」

にゃん子も覚えていた様でそう言う。

「何?……。確かに知らない顔よね。学校の雑用係じゃないかしら?用務員では無さそうだけれど、関係者も多いもの、きっと学校の人よ」

エリカはそう言う。

「うん。そーかもね。お食事券もくれたし……」





◇◇◇◇◇◇




自分の部屋に入ったミライはまたもや、あ然とする。 

「格差ひど過ぎない?」

「?」

「しゃーないよ。世の中そんなもんそんなもん」

キョトンとするエリカにまた苦笑いのにゃん子。

(はー、同じ寮なのにこの差って……。やっぱり特別クラスって優遇されてるなー)

通常クラスの寮はワンルームだったが特別クラスの寮は3LDKはある。

しかもお風呂とトイレが別である。しかもおっきなベッド付きだ。

「うわぁ花束まであるんだ。これも学校からの編入祝かな?」 

ベッドサイドにカードと花束が置いてある。カードには『編入おめでとうございます』と書いてある。

「へー。そんなん貰えんの?いいなー編入した方がお得やんかー」

にゃん子が花束を突きながら言った。

ふわりと甘い香りがした。


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