38 / 72
36話 任務。
しおりを挟むなんだかんだ楽しく過ごしていたら、実習室の扉が急に開いた。
「あー、おい。ユアン、ちょっと来い」
担任のジョーンズが入口から、ユアンを手招きで呼ぶ。その手にはプリントを持っているようだ、ジョーンズは部屋を見渡してから、また口を開く。
「園田、ツバサ、ルージュ兄妹、あと。あー、ミシェルには渡さなくていいから。…………残りの奴らは目を通しておけ」
ジョーンズは、ユアンに数枚のプリントを押し付けると、そのままさっさと出ていった。
「ユアン。なにそれ?」
ミライがユアンに近づくと、ユアンはニッコリと笑う。
「これは?えっと。強制任務のお知らせかな……」
ユアンはプリントをチラリと見て、そう答えた。
「あらぁ?それ全部同じ所なん?随分大人数やねぇ。初めてちゃう?」
ライアンも近づいて来て、ユアンの手元を覗き込んでいる。
「とりあえず皆に配るよ、各自で読もう?」
苦笑してユアンが皆へと、プリントを配る。
「強制任務なのに、なんで私達は除外されたの?」
(………行かなくて良いなら助かるけど)
ミライは疑問に思って、そうユアンに尋ねる。
「ああ、流石に学校側も、行かせても問題無い生徒を選んでるんだよ。ほら、いくら皆、能力が有ると言っても、現場によっては向き不向きがあるからね。後は怪我や病気の時も行かなくて良いんだよ。」
「ミライちゃん達は編入したばかりで、まだ学校側も、よぉわからへんから保留してるんとちゃうかなぁ?その内ちゃあんとテストが有るし、強制任務はその後になるんと違う?」
「あー。なるほどね」
(…………テストも何も……、私は絶対無理そうだけどなぁ)
そういえばにゃん子も暫く行ける任務が無かったって話してた気がする。チラリと見るとツバサもこちらの話を聞きながら、ウンウンと頷いていた。。
「今回は、にゃん子ちゃんも一緒に行けるねぇ良かったわぁ」
ライアンがにゃん子に声を掛ける。
「やー、昨日からなんか運が向いて来たしー!!」
にゃん子は嬉しそうだ。
「あらまあ、国沿いの壁が崩れたみたいですわよ!!」
桜がそう言って無駄に胸を寄せている。ミライはイラッとした。
「あー、なるほどねぇ。長距離間に渡って壁が崩れてしもたんやね、私らは、その修復の間の護衛って所やなぁ」
壁の外には魔物や魔獣がうじゃうじゃ居る。
魔法適正が土の人間で、壁を修復するのだが、修復中は無防備になるので、それの護衛任務らしい。
「ああ、他の学校からも結構来るみたいだね。………へぇ、凄いな」
ユアンはプリントを見て、驚いた様にポツリと零していた。かなりの距離で崩れたみたいで人手が欲しいのだろう。
「いつから行くの?」
「昼食を食べたら中庭に集合って書いてあるから、今日、すぐみたいだね」
「あらぁ。ほんま!!じゃあ早く用意しぃひんとやね」
ライアンがそう言って頬に手を当てている。
「長くても3日程みたいだから、荷物は少なくて済むわね。着替えくらいで良いんじゃないかしら?」
エリカもふむふむと頷いていた。
◇◇◇◇◇◇
今ミライとツバサは中庭に来ている。特別クラス側の中庭は庭園並みだ。ユアン達とは解散となった。
「暫く会えないのは寂しいけど。任務だから仕方ないね」
困ったように笑うユアン。
「あー頑張って」
ミライはユアンの肩をポンポンしておいた。ユアンは嬉しそうだ。
エリカがツバサをお兄ちゃんと呼んでいて皆二度見したが、
(あ?なんか文句あんのか?あん?)
エリカからの無言の圧に、そっと目をそらした。
その後は、皆それぞれ準備やら何やらがあるので、解散となったのだ。
ルージュ兄妹は任務へは呼ばれていなかったが、他に行く所があるらしく中庭に行く途中に別れた。
ミシェルは知らん。
皆を見送ってから、ミライとツバサはこれからの事や、また新たに接触したキャラ達の情報交換をすることにした。
なので、折角だからと中庭に移動したのだ。
「あー、ちょっと……、風が強いね」
「そう?私はこれくらいなら気持ち良くて好きだけどな」
ベンチに腰掛けて、二人は早速情報交換に取り掛かる。
「あー、えっとね。実は昨日二人接触したよ。伊吹虎京介と西園寺椿」
「え!!早速あの二人とかー。何もされて無い?大丈夫だった?」
「なんか西園寺君にチワワとかあだ名?つけられちゃったよ。」
「へー。いいじゃん、チワワ可愛い」
「えー、やだよ」
「なんで?可愛いのに…、それにアニメだと、スケベ丸だったよ?」
「チワワで良いです。」
ツバサはスンッとなった。
「えっと、一応西園寺椿には注意しといてね。まだ問題無いけど、ちょっと西園寺椿に関しては色々アニメでもわからないことが多いんだよね。………ミステリアスキャラだから」
「へー?そうなんだ。園田さんでも知らないんだね。……わかったよ。でも二人も任務に行っちゃったから、園田さんは、暫くは会わないかもね」
「そうなんだ。なら、暫くは安心かな…………ん。さっきよりも風強くなってきたね」
風が前髪を揺らしてうっとおしい、流石にこれにはミライも困る。
「座る場所変わろうか?僕がそっち行けば少しは風避けになるでしょ?」
「ううん。……そんなの悪いし。でも、ありがとう。ツバサ君」
礼を言ってからミライは思い出す。
「あ、そういえばミシェルイベントは結局無しになったみたい。流石に、皆任務に行っちゃったら起こらないと思う。……桜志穂と先に仲良くなったからかな?少しアニメとは変わっちゃったけど、無事に仲良くなれたし。これからは色々志穂も助けてくれる筈だよ」
「はー。良かったよ。む、胸を揉んだりしなくて良くなって」
赤くなるツバサを見ながらミライは思い出す。桜志穂から去り際に
「また、あの素晴らしい、光景を見せてくださいましね、なんなら次はユアン様にツバサ様が揉まれてる所が見たいですわ」
そう言われたことは今は伏せておこう。
(ごめんねツバサ君、志穂のおっぱいは揉まなくて良くなったけど、これから君が揉んだりユアンに揉まれたりする事になるんだよ。御愁傷様………)
そっとツバサを拝んでたら怪訝そうな顔をされた。
それからミライはミライで昨日発覚した安藤の新情報を、一応ツバサに伝える事にする。
(もう。あんまり関係ないだろうけど、一応ね………)
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる