44 / 72
41話 風魔 ※挿絵有り
しおりを挟む次の日の朝、道場へ向かう途中でミライはツバサと合流した。
「おはよー、ツバサ君」
「おはよう。園田さん」
「いやー、それにしても昨日は、なんか大変だったね。でも何とかなって良かったよ」
「そうだね。それにしても安藤君が、まさか協力者になるなんて、最初は絶対思わなかったよ。思ったより怖い人じゃなくてホッとしたよ」
クスクスと笑うツバサ。
「いやー、それな。てかあいつキャラ濃すぎて、むり。設定生えまくりだもん。私も驚きだよー」
茶化すようにミライは言う。でも、仲間が増えたのは正直嬉しかった。二人で笑い合いながら、道場に入ると先客が居た。
「あー?………遅かったなお前ら」
「「どちらさまですか?」」
思わずミライとツバサはハモった。
ツバサとミライの目の前には、ピッチリとした黒の戦闘服を着た、細身で長身の男が汗をかきながら立っていた。艶のない黒髪は頭頂部は短めで、ウルフカットとまではいかないが、襟足が少し長い、右側で分けた前髪の下には雲の様な模様の入れ墨が浮かんでいる。目元が涼やかな美青年が、ミライ達を不思議そうに見ていた。着物が似合いそうである。知らないキャラだ。
「はあ?安藤だろーが、なに言ってんだ?」
男のその言葉にミライは思った。良く見ると左の二の腕に豹柄のバンダナが巻いてあった。
(いい加減にしろ安藤!!設定生やすな!!)
「え……、安藤さん?確かに声は、そうですけど……」
エリカにアルバムを見せて貰っていたので、確かに面影はあるな?とミライは思ったが、ツバサは知らないので、めっちゃ驚いて居た。
「えー!!大改造○的ビフォー○フターみたいっ」
ツバサは叫んだ。瞳がキラキラしている。
(確かに。……なんと言うことでしょう……)
そう思うミライ。安藤は不思議そうな顔をしている。こっちの世界には、大改造○的ビフォー○フターは無いようだ。
「で、なんでそんなイメチェンしてるんですか?」
ミライが尋ねると安藤が答える。
「ケジメだ。」
「……へー、それ髪は染め直したの?安藤君」
ツバサが問うと安藤は、髪をかき上げた。
「おー、元は黒髪なんだよ、俺はよぉ。昨日染めた。まだ臭え」
確かに、ほんのりとカラー剤の匂いが漂って来る。
(………、イケメンじゃん、ふーん)
安藤だとは理解出来た。
「それで、今日はどうしますか?」
ミライがそう言った時、バン!!と凄い音を立てて、道場の扉が勢い良く開いて、泣きながら男が二人飛び込んで来た。
「若ー!!!」
「若!!やっと昔の若に、戻ってくれたんですねー!!」
取り巻きの汚い金髪の二人だ。その後ろで嬉しそうに珍妙丸がこちらを見ていた。
(安藤、いい加減にしろ!!)
思わずミライは内心で突っ込んだ。
◇◇◇◇◇◇
「加藤!!金田!!なんでここに居やがる?」
泣きつく二人に、安藤が顔を顰めてそう言った。
「アンドニから聞いたっすよ!!昨日若が刀を貰いに来てたって」
「某は珍妙丸である」
「人に教えるなんて久しぶりじゃないすかー!!それにそのお姿!!やっぱ若はそうでなくっちゃ!!」
二人はそう言って泣き笑いである、珍妙丸は無視されていた。
安藤に加藤と呼ばれたのは、燻んだ金髪の片目が隠れた鬼○郎ヘアの男だ。それから、金田と呼ばれたのは染めた様なパシパシの金髪の根元が黒いプリンで、無精ひげの男だ。その二人の男達が床に突っ伏して、おいおい泣いているのでミライとツバサはドン引きだ。安藤は嫌そうにため息を吐いていた。珍妙丸だけが、うむうむと頷き、感動している。
「それ、印も、もう隠さないんですね?虎一郎様も喜ばれますよ!!」
「あー?うるせんだよお前ら、兄貴は、関係ねぇよ」
「印って、安藤さん、印持ちなんですか?」
ミライが尋ねると加藤が凄い勢いで、答えた。
「そうです!!若は風魔憑何すよ!!凄いんですよ!!」
「おい、加藤、勝手にバラしてんじゃねーよあほ。大体何が印持ちだよ、しょぼくて使えねーっての。凄くも何ともねーよ」
安藤が吐き捨てた。
「へー?その額の入れ墨は印だったんだね」
ツバサはうんうんと納得した様に頷いている。
「風魔憑きって何が出来るんですか?」
ミライが聞くと更に嫌そうな顔で安藤は答えた。
「昨日みてぇに、風を使って人の会話を聞いたり、離れた風景見たりだ」
「いや、普通に凄くないですか、それ?」
ミライの言葉に安藤は呆れた様な顔だ。
「あんなぁお前らが無防備過ぎるだけで、魔力有る奴ならすぐ気づいちまうっつーの。俺の魔力量は多くねぇから、風なんざ、簡単に散らされちまうんだよ」
なおも安藤は続ける。
「ユアンなんかにゃ、まず無理だな。絶対無理だ」
そう言って安藤は苦虫を噛み潰したような顔になった。
「だからツバサが魔力コントロール覚えたら、もう通用しねえよ」
「へーそうなんだ、魔力コントロールかぁ……」
ツバサはぼんやりと呟いた。
「つーわけで、今日は魔力コントロールの練習だな。刀は使わねーから、あっち置いてこい。」
安藤は壁際を指差してそう言った。
「若は、教えるの上手なんで良かったっすね!!」
金田がツバサにニコニコ顔でそう言う。
「黙れ金田」
安藤に言われて金田は黙った。凄い忠犬っぷりだ。
「ねー、私やる事ある?」
ミライがそう言うと安藤はジロリとミライを見てから鼻を鳴らした。
「今はねえな。だがよ、後で色々情報が必要だろがぁ、それまでおっさんと遊んでろ」
安藤はミライを追い払う様にしっしと手を動かす。
(むう……。)
むっとしながら、ミライが珍妙丸の方を見たらちゃぶ台とお茶菓子を用意してくれて居た。
(仕方ないか、今は大人しく見学してよう……)
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
