【改稿版】この世界の主人公が役にたたないのでモブの私がなんとかしないといけないようです。

鳳城伊織

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41話 風魔 ※挿絵有り

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次の日の朝、道場へ向かう途中でミライはツバサと合流した。

「おはよー、ツバサ君」

「おはよう。園田さん」

「いやー、それにしても昨日は、なんか大変だったね。でも何とかなって良かったよ」

「そうだね。それにしても安藤君が、まさか協力者になるなんて、最初は絶対思わなかったよ。思ったより怖い人じゃなくてホッとしたよ」

クスクスと笑うツバサ。

「いやー、それな。てかあいつキャラ濃すぎて、むり。設定生えまくりだもん。私も驚きだよー」

茶化すようにミライは言う。でも、仲間が増えたのは正直嬉しかった。二人で笑い合いながら、道場に入ると先客が居た。

「あー?………遅かったなお前ら」

「「どちらさまですか?」」

思わずミライとツバサはハモった。
ツバサとミライの目の前には、ピッチリとした黒の戦闘服を着た、細身で長身の男が汗をかきながら立っていた。艶のない黒髪は頭頂部は短めで、ウルフカットとまではいかないが、襟足が少し長い、右側で分けた前髪の下には雲の様な模様の入れ墨が浮かんでいる。目元が涼やかな美青年が、ミライ達を不思議そうに見ていた。着物が似合いそうである。知らないキャラだ。













「はあ?安藤だろーが、なに言ってんだ?」

男のその言葉にミライは思った。良く見ると左の二の腕に豹柄のバンダナが巻いてあった。

(いい加減にしろ安藤!!設定生やすな!!)

「え……、安藤さん?確かに声は、そうですけど……」

エリカにアルバムを見せて貰っていたので、確かに面影はあるな?とミライは思ったが、ツバサは知らないので、めっちゃ驚いて居た。

「えー!!大改造○的ビフォー○フターみたいっ」

ツバサは叫んだ。瞳がキラキラしている。

(確かに。……なんと言うことでしょう……)

そう思うミライ。安藤は不思議そうな顔をしている。こっちの世界には、大改造○的ビフォー○フターは無いようだ。


「で、なんでそんなイメチェンしてるんですか?」

ミライが尋ねると安藤が答える。

「ケジメだ。」

「……へー、それ髪は染め直したの?安藤君」

ツバサが問うと安藤は、髪をかき上げた。

「おー、元は黒髪なんだよ、俺はよぉ。昨日染めた。まだ臭え」

確かに、ほんのりとカラー剤の匂いが漂って来る。

(………、イケメンじゃん、ふーん)

安藤だとは理解出来た。

「それで、今日はどうしますか?」

ミライがそう言った時、バン!!と凄い音を立てて、道場の扉が勢い良く開いて、泣きながら男が二人飛び込んで来た。

「若ー!!!」

「若!!やっと昔の若に、戻ってくれたんですねー!!」

取り巻きの汚い金髪の二人だ。その後ろで嬉しそうに珍妙丸がこちらを見ていた。

(安藤、いい加減にしろ!!)

思わずミライは内心で突っ込んだ。





◇◇◇◇◇◇








「加藤!!金田!!なんでここに居やがる?」

泣きつく二人に、安藤が顔を顰めてそう言った。

「アンドニから聞いたっすよ!!昨日若が刀を貰いに来てたって」

「某は珍妙丸である」

「人に教えるなんて久しぶりじゃないすかー!!それにそのお姿!!やっぱ若はそうでなくっちゃ!!」

二人はそう言って泣き笑いである、珍妙丸は無視されていた。


安藤に加藤と呼ばれたのは、燻んだ金髪の片目が隠れた鬼○郎ヘアの男だ。それから、金田と呼ばれたのは染めた様なパシパシの金髪の根元が黒いプリンで、無精ひげの男だ。その二人の男達が床に突っ伏して、おいおい泣いているのでミライとツバサはドン引きだ。安藤は嫌そうにため息を吐いていた。珍妙丸だけが、うむうむと頷き、感動している。

「それ、印も、もう隠さないんですね?虎一郎こいちろう様も喜ばれますよ!!」

「あー?うるせんだよお前ら、兄貴は、関係ねぇよ」

「印って、安藤さん、印持ちなんですか?」

ミライが尋ねると加藤が凄い勢いで、答えた。

「そうです!!若は風魔憑ふうまつき何すよ!!凄いんですよ!!」

「おい、加藤、勝手にバラしてんじゃねーよあほ。大体何が印持ちだよ、しょぼくて使えねーっての。凄くも何ともねーよ」

安藤が吐き捨てた。

「へー?その額の入れ墨は印だったんだね」

ツバサはうんうんと納得した様に頷いている。

「風魔憑きって何が出来るんですか?」

ミライが聞くと更に嫌そうな顔で安藤は答えた。

「昨日みてぇに、風を使って人の会話を聞いたり、離れた風景見たりだ」

「いや、普通に凄くないですか、それ?」

ミライの言葉に安藤は呆れた様な顔だ。

「あんなぁお前らが無防備過ぎるだけで、魔力有る奴ならすぐ気づいちまうっつーの。俺の魔力量は多くねぇから、風なんざ、簡単に散らされちまうんだよ」

なおも安藤は続ける。

「ユアンなんかにゃ、まず無理だな。絶対無理だ」

そう言って安藤は苦虫を噛み潰したような顔になった。

「だからツバサが魔力コントロール覚えたら、もう通用しねえよ」

「へーそうなんだ、魔力コントロールかぁ……」

ツバサはぼんやりと呟いた。

「つーわけで、今日は魔力コントロールの練習だな。刀は使わねーから、あっち置いてこい。」

安藤は壁際を指差してそう言った。

「若は、教えるの上手なんで良かったっすね!!」

金田がツバサにニコニコ顔でそう言う。

「黙れ金田」

安藤に言われて金田は黙った。凄い忠犬っぷりだ。

「ねー、私やる事ある?」

ミライがそう言うと安藤はジロリとミライを見てから鼻を鳴らした。

「今はねえな。だがよ、後で色々情報が必要だろがぁ、それまでおっさんと遊んでろ」

安藤はミライを追い払う様にしっしと手を動かす。

(むう……。)

むっとしながら、ミライが珍妙丸の方を見たらちゃぶ台とお茶菓子を用意してくれて居た。

(仕方ないか、今は大人しく見学してよう……)



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