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47話 チート野郎 ※挿絵有り
しおりを挟むミライは倒れているツバサに駆け寄る。ちゃんと息をしている。ただ、気絶しているだけで、ホッとした。
そう言えば、これまでも怪我は治るけど、気絶とかは普通にしていたなぁと思っていると、安藤が近づいて来た。額に青筋が浮かんでいる。
「起きろ、あほ」
安藤が軽く蹴飛ばすと、ツバサは目を覚ました。
「うわ、え?何?いきなり目の前が真っ暗になったんだけど?」
ツバサは状況を理解出来ていない様で、キョロキョロしている。
「お前、やりすぎ、適当にとは言ったけど、限度があんだろがぁ?ああ?殺す気かよ」
「え?いやいやいや、待ってよ。僕が使おうとしたの、通常クラスで習う初期の火魔法だよ?ちょこっと火をつけるやつ」
ツバサは慌てている。その顔は青い。
「あ?……おいチビ。どういう事だよ?」
すぐ側のマロンへと安藤は尋ねる。
「ん。ちぃあにさまは。うまれてからまりょく。ほとんどつかってない。だから、いりょくすごくなった。いっぱいたまってるから」
ミライは唖然とした。
「え?アニメでも、ここまででは無かったよ?いや、強いは強いけど……えぇ?」
どうやらアニメの方のツバサは幼少期から魔法をよく使っていたが、ここに居るツバサは、ほとんど使わずに、溜め込んでいたので凄まじい魔力量になっている様だ。
アニメよりも、チートである。
(ツバサ君の癖に生意気だ)
ミライがぐぬぬとしていると、ツバサが呆れた目線をこちらに向けていた。
最近ツバサの態度がひどい。ミライの自業自得なのだが、ちょっぴり泣けた。
「あ、それより珍妙丸さん。ありがとうございます」
ミライがハッとして、傍らの珍妙丸にお礼を言うと、気にするなと返って来た。
「あれ?そういえば、珍妙丸さんは土属性なんですよね?任務呼ばれなかったんですか?」
ふと、そう思って聞いてみた。
「うむ、コレのせいで今回は留守番とあいなった」
珍妙丸は剣道着の様な格好をしている。その袴の裾を少し捲ると、足首から上に黒い影のような物が巻き付いていた。
(あ!!これアニメでも、確かリリンがなってたやつだ)
リリンとは、今は居ないが主人公のメイドである。本来なら、一人目のヒロインだ。
「不覚にも、こういう次第である故」
これは、影憑きと呼ばれる穢だ。この穢れを受けると、四六時中かなりの激痛にさいなまれる。回復魔法。光魔法は効かないので、自然に治るのを待つしかない。幸い、大体一週間も有れば子供でも治るので、問題は無い。まあかなり痛いが。
だが珍妙丸は平気そうな顔をしている、我慢強いみたいだ。
「ああ、なるほど」
ちなみに安藤達が任務に呼ばれなかったのも、まだユアンにつけられた傷が治りきってないからである。
「はあ、びっくりしたよー」
ツバサは項垂れている。
「んー、でもまあ、コレで俺つえー作戦はバッチリクリアじゃない?」
ミライの言葉に珍妙丸や、ルージュ兄妹は不思議そうな顔をしている。まあ、彼らは何も知らないので当然である。
(はあ、良かった。これならなんとかなりそう)
ミライは安堵していた。これなら4話は楽勝だろう。
いやー、今回私は楽できそうで良かったなとこの時はそう思っていた
そうこの時は……である。後にその考えの甘さに苦虫を噛むことになる。人生とはそんなに都合よく行かないものなのだ。
◇◇◇◇◇◇
ちょこちょこと謎の単語を話すミライ達に珍妙丸達は首を傾げていたが、特に追求される事は無かった。ミライは安藤にコソッと声をかける。
「あのー、安藤さん。あの三人にも協力者になって貰えないですかねー?」
そう、安藤みたいに全てを話して味方になって貰えれば百人力だとミライは考えた。その提案に安藤は険しい顔をした。
「……やめとけ、向こうからしたら意味不明すぎる。頭おかしいと思われるか、最悪、人死にが出るぜ」
「え、でも。安藤さんみたいに信じてくれるかもですし」
なおもミライが食い下がると、ため息を吐かれた。
「あのなぁ、俺のは、まあ、事故みたいなもんで、俺の能力が有ってこその結果なんだよ、ばーか」
実際、安藤は、あの日ミライにムカついていて、何か弱みを握ってやるつもりで二人の話を盗聴していた。そうしたら兄が助かるとか聞こえて来て、それでよくよく話を聞いてみたらアレだったわけだ。
自分から動いて結果信じることになるのと、いきなり、こちらから話をするのとでは訳が違う。それに、その場では信じると言っても、人間は嘘をつく。だから安藤は誰も信用しない。
「お前はもう少し、嫌な奴になれよな」
安藤がミライの鼻を摘む。
「んがぁっ?!いきなりなにすんですかー?!」
キッと安藤を睨みつけると安藤は真剣な顔をしていた。
「人間は、お前が思ってるより、醜いぞ」
「あ……はい」
安藤の真剣な、それでいて少し寂しそうな顔に、ミライはそれ以上、この話を続けられなかった。
「おい、園田。言っとくが、まだ解決してねー問題があんだろがぁ」
「?……問題ってなんですか?今の所、結構良い感じに進んでますよね?」
安藤はチラリとルージュ兄妹に質問攻めされてるツバサを見やって、もう一度ミライへと視線を戻す。
「ツバサはな。でもよ、お前自身はどーすんだ?戦えねーだろーが」
「あ」
ミライは間抜けな声を出すのだった。
そう、何故か特別クラスに編入になったが、正真正銘ミライには戦う力は無い。それこそちょっと(5分くらい)身体強化は出来るが、それでも強化も魔法も使っていない状態の安藤にも勝てないだろう。光魔法もめくらましをかける程度だ。チカッと光るだけだ。本当に、何故それで編入出来てしまったんだろう?世界の強制力には驚きだ。
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