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48話 女のプライド
しおりを挟む「はあ、やっぱりな。忘れてると思ったぜ」
呆れたように安藤が言う。
「あはは……」
ミライは笑うしかない。
「あー、まあ、俺が居るときは守ってやるよ。ツバサも、どうせそんな事言ってんだろがよ」
「はい。言われてます」
たははとミライは苦笑する。しかし安藤まで守ってくれるとは意外だ。
「基本、任務には俺か、ツバサと一緒に行けばなんとかなんだろ?試験の結果が悪かろうと、強制力がありゃ、お前が任務に連れ出される事もあるだろうからな」
そう。試験結果で任務に着くには不合格だとしても、戦えないミライが今、ココに居る。その事実が恐ろしいのだ。
「だが、二人じゃ足りねぇ。まあ、ユアンあたりもお前の事気に入ってるみたいだがな?ありゃ何したんだ?お前の為だけに俺の事ボコリに来やがったんだぜ?あのボンボン優等生がよ」
(それについてはすまんかった)
ミライは申し訳なくなる。
「やー、なんか、好意もたれてるぽいです。けど理由はいまいち謎で……」
そう、ミライは何故ユアンがあんなに自分に対して好意的なのか謎なのである。変態アピールをしても、ブレないユアンに、はっきり言って引いた。
「もうちょい、人数欲しいな。女共でも良いが、戦闘力的には不安があっからな」
安藤は顎に手をやり考え込んでから
「よし、お前ブラン誘惑して来い」
と言った。
◇◇◇◇◇◇◇
今、ミライはブランと二人きりである。
安藤がツバサ達を連れて道場に篭り、ブランとミライは締め出された。
「くっ、安藤め。密室に姫を連れ込むとは!!むさ苦しい男共でどうするつもりだ?!」
ブランがなんか言ってる。
(こいつブレないな)
「あー、ブラン?」
「なんだ?」
「………………」
「?」
名前を呼んでから、だんまりのミライにブランは怪訝そうな顔だ。
(いや、こいつに誘惑とか無理でしょ)
ブランはアニメでも凄まじいシスコンだったのだ。マロンが捨てたパンツをごみ捨て場から拾おうとしているのを、主人公とヒロイン達に見つかって袋叩きにされているギャグ回があったくらいだ。
ミライは遠い目になった。
~~回想はじめ~~
「はあ?頭大丈夫ですか?安藤さん」
冷ややかな目で見てくるミライに、安藤の額に青筋が浮かぶ。
「あのなあ、なんだかんだ仲良さげだろ、お前ら。他の知ってる男の中なら一応成功率は一番高いだろが」
(はあ?あのシスコンが?)
ミライは首をかしげた。
「いや、あの人、誘惑とかそういう男女の事に興味示さないと思いますけど。鼻で笑われてお終いですよ」
「はあ?あいつだって健全な男子だろが。とりあえず上目遣いで服の端でも掴んで、守ってくださいとでも言いやがれ。最悪乳でも触らせればいいだろが」
安藤は最低だった。
しね
その後も安藤にレクチャーを受けた。指示が具体的でドン引きした。え、?そう言うのが好きなの?
安藤の好きなシチュエーションとか知りたくなかったんだが。
~~回想終了~~
(や、やるしかないか)
まあ、鼻で笑われて終わるだろうとミライは覚悟を決める事にした。
「あ、あのブラン?」
クイッとブランの服の端を掴む。そして恥ずかしそうに上目遣いをする。
(えーと、安藤はこうしろって言ってたな、次は)
ブランとミライの身長差は15センチ程である。なので下から見上げる形でコテンと首を傾ける。
「わ、私、ブランに守って欲しいな……?」
ミライは頬を染めてそう言う。ちなみに羞恥心からのガチ赤面である。心なしか瞳も潤んでいる。悔し泣きである。
「………………」
「……………?」
即、鼻で笑われるか怒鳴られるかするかと思ったが、反応がない。ブランの顔からは、一切の表情が抜け落ちて人形の様だ。なまじ顔が良いので余計怖い。そのまま、口元を抑えて、ゆっくりと回れ右したかと思うとブランは走り去っていった。
ミライは思った。
アレには心当たりが有る。最近自分もなったばかりだ。アレは吐きそうなのだ!!!
ミライの女のプライドはガラガラと音を立てて崩れた。
(安藤。………しねッッッッ)
暫くして様子を見に来た安藤は立ち尽くすミライを発見した。
真っ白になっているミライを見て、全てを察した安藤が、申し訳なさそうな顔をしている。
謝るなよ、謝られると余計辛い。ミライは安藤に目で訴えた。
「あー、とりあえず、中入れよ」
ションボリして道場に入ると、ツバサとマロンと珍妙丸でちゃぶ台を囲んでいた。ミライはそこに突撃して煎餅を奪ってモリモリ食べた。ヤケ食いである。むせていたら、お茶をくれた。珍妙丸さん優しい。
「あにさまは?」
マロンには安藤が答えた。
「あー、帰ったぽい。チビも帰るか?」
「ん。まだ、へいき」
そう言ってマロンも煎餅を食べている。
「園田さん、大丈夫?何してたの?」
ツバサが、心配してくれたので経緯を話すと何故か冷たくなった。
(え?なんで、いきなり怒ってるの?)
泣きっ面に蜂である。
「あねさま。だいじょうぶ?」
マロンが頭をヨシヨシしてくれる。
(私の方が年下だけど、もうあねさまで全然良い。むしろありがとうございます)
ミライのマロンへの好感度はMAXになった。マロンはミライを攻略した!!ハッピーエンドである。
【完】
その後は皆で煎餅を食べてからお開きとなった。煎餅おいしい。
◇◇◇◇◇◇
次の日登校すると、意外にもブランから声をかけて来た。気まずいなーと思ったミライだったが、ブランの顔を見たらそんな考えも吹っ飛んだ。ブランはグラサンをかけていたのである。
(なんでグラサン?)
ミライがポカンとしていると、おずおずとブランが切り出した。
「昨日は失礼をして申し訳ない。ミライ、き、君を守るのはやぶさかではない。安心して私に守られると良い」
「ええ?」
ミライはなるほど?ボディーガード気取りか?とグラサンinブランを見て思い、そしてハっとした。
そう、今日は皆が、帰って来る日だ。キャラの濃い面々ばかりの中、自分で新たなキャラ付けをして、テコ入れするとは、ブラン恐ろしい男だ!!
と斜め上のことを思うミライだった。自分の推理にミライが慄いていると、マロンがやって来た。
「おはよう。あねさま」
「おはよう。マロンちゃん」
「あ、あねさま?!」
驚きの声を出すブランにミライは、ハッとした。
(そうだったコイツ。シスコンだった。自分以外に、ドンドンあねさまや、あにさまが増えるのはいい気はしないだろうな)
だが、ミライは今マロンルートなので知ったこっちゃない。宣戦布告だ!!とでも言うようにブランにニッコリ笑いかけてやる。ブランは怒りで震えているようだ。グラサンの隙間から見える肌が、怒りで赤く染まっている。
(おっと、あまり揶揄うと、面倒な事になるかも。……自重しないとな)
その後ツバサと珍妙丸がやって来た。珍妙丸は今日は、ちゃんと制服を着ていたので変な感じだ。
「おはよう二人とも」
「うむ、おはよう」
「園田さん。おはよう……」
ツバサはブランをじっと見ている。わかる。だってグラサンだもの。
「あーだりぃ」
バンッと扉を開けて安藤が入って来た。
だるそうだ。
安藤は、こっちに来るでもなく、入口近くに座ると、寝る姿勢に入った。
(寝ちゃうんだ?まあ、今は用事もないし、いっか。……ユアン達はまだかな?)
暫くしてもユアン達来ないなーと思っていると、にゃん子と桜志穂がやって来た。
「やー、なんかめちゃ久しぶりやー」
「おはようございます。ミライ様、ツバサ様、あと残りの方々」
「おはよう、3日ぶりだね。他の皆は?」
ミライが尋ねると志穂が答える。
「ユアン様方は、一度実家に寄られるようで、遅れて帰って来られますわ。御三方とも無事ですので、安心してくださいまし」
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