【改稿版】この世界の主人公が役にたたないのでモブの私がなんとかしないといけないようです。

鳳城伊織

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49話 神様は酷い

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「んー、昼くらいには帰ってくるんちゃうかなー?」

にゃん子は楽しそうに言う。

「にゃん子、ご機嫌じゃん?なんで?」

ミライが問うと、聞いてくれてありがとうとでも言う様に、にゃん子は話しだした。

「うふふん!!実は褒賞金が出たしー!!」

にゃん子はポケットからバッと、大量のお食事券を取り出して、団扇の様に扇いでいる。

ミライは、なんかイラッとした。

「ほー?褒賞?活躍したのか?」

ブランが割り込んで来た。

「ええ、にゃん子様、大活躍でしたのよ」

ニッコリと志穂が言う。

「や、やー、やめやー。照れるしー、大した事は、ないんよー?」

謙遜しながらも、にゃん子は、にやけている。

「うむ、謙遜の必要は無い。大儀である」

珍妙丸も加わって来た。


現場で給料以上の働きをしたと評価されたら、また別に褒賞があるらしい。

「やー、これで、しばらくは安泰やー」

にゃん子はクルクル回っている。何故かマロンも真似して回っている。

(はー、マロンちゃんクソ可愛い)

ミライ達が和やかに過ごしている間にも、他の生徒達が登校して来た。そろそろ先生も来る頃だろう。

「おらー、座れー」

来た。


ジョーンズは教室に入って来ると、ツバサを二度見した。

「は?」

ポカンとした間抜けな顔だ。眉間の皺も無くなっている。

珍しいなとミライがぼんやり思っていると、いきなりジョーンズは般若のような顔になった。

(ひえ!!何?こわっ)

情緒不安定とか言うレベルでは無い、その変わりように教室が騒めく。

ジョーンズは、ドシドシと足音を立ててツバサに近づくと、手首を掴んだ。

「……これは、没収だ」

そう言ってツバサの腕から銀色の腕輪を抜き取ると、ポケットにさっさと仕舞った。ジョーンズのその行動にはミライ達も、ポカンとした。そして教室が静寂に包まれた。

それを破ったのは安藤だった。

「おい、そりゃねえだろが」

寝ていた筈の安藤が、いつの間にか移動して横からジョーンズの腕を掴んでいる。

周りから誰?アレ誰?カッコいいー(野太い声)と聞こえる。

志穂の目が光った。

「安藤。離せ」

ジョーンズが静かに言う。

周りから、ウソ!!アンドウ?!アレ、アンドウ?!カッコいいー(野太い声)と聞こえる。
今や教室は、お祭り騒ぎだ。

「理由も無く没収で、はい、そーですかとは、ならねえだろうが」

なおも安藤はジョーンズの手を握り続ける。ギリギリと言う音が聞こえる。尊い尊いと言う呟きも聞こえる。志穂落ち着け。

「おい、聞こえなかったのか。離せ、上官命令だ。嫌なら出て行け、学校ここからな」

なおも、静かにジョーンズが言う。

睨み合う二人だったが、それをツバサが止めた。

「あ、安藤君、僕なら大丈夫だから、ね?ごめんなさい。先生。……お願い、安藤君」

「はあ……。わかった」

安藤は手を離してツバサの隣に腰を下ろした、そして小声でツバサに告げる。

「………わりぃな」


「志穂ー!!!落ち着いてー!!!」

ミライは興奮する志穂を、羽交い締めにしていた。


「ちっ、今日は午前は自習。午後からは座学の授業をする。13時には全員教室に居ろ。……以上」

安藤に掴まれていた腕を擦りながら、ジョーンズは出ていった。


それを見送り、ミライは絶望していた。楽勝とか言っていた自分を殴りつけたくなっていた。

(嘘ぉ、ひどいよ、神様ぁ)







◇◇◇◇◇◇






安定の自習なので、ミライ達は、とりあえず皆で実習室へ行くことにした。

前ほどでは無いが、そこそこ広めの部屋だ。部屋の作りは大体は同じような感じだ。



「うーわー、安藤ヤバー、ホンマに安藤なん?」

にゃん子がニヤニヤしながら安藤の周りをぐるぐるしている。

「おい、クソ女。じろじろ見んじゃねえ」

「あー、たしかに安藤やしー」

納得したのか、にゃん子は安藤から離れた。

志穂は化け物モードなので、ミライの少し後ろでひたすらトオトイ…トオトイ…生徒と教師……禁断の愛……とぶつぶつ言っている。


ツバサとミライは浮かない顔だ。

「また。つくる?」

心配そうにマロンが聞いて来た。

「いや、また同じ事の繰り返しだろ、ありゃ」

安藤が吐き捨てるように言った。

「うん、それには僕も同意見かな」

ツバサも安藤に同意して、頷いている。

「はあ、なんで先生が……」

ミライは頭を抱えた。ジョーンズ先生については、アニメ知識は最早打ち止め。ミライには、どうする事も出来ないのだ。

「もっと上に掛け合ってみるか?私物を理由も無く没収など、おかしいだろう」

ブランが言う。

「あ?てかなんでお前、室内でサングラスなんかかけてんの?」

誰も言わなかったのに安藤が言った。

(猛者か、こいつ)

「で、どうなのだ?」

ブランは安藤を無視するらしい。

「おい」

「ふー、ふー、……おほん。それは難しいのでは?良くわかりませんが、先生が没収と言ったのならば、ワタクシ達はそれに従わなければならない決まりですもの。上官の命令は絶対。これが校則として存在している以上、上に掛け合っても無駄ですわ」

志穂が、人間に戻ってそう言う。

「む、桜殿の言う通りだ」

珍妙丸もそう言って頷いている。

「はー、しゃあねえな。なら、自力で最低限戦える様には、してやるよ」

コキコキと首を鳴らしながら、安藤は立ち上がりツバサに近づく。

「え、何するの?」

「とりあえず、身体強化は出来てんだ。効率良く魔力を体に回す方法教えてやるよ」

そう言って、安藤は、またツバサの背に手を当てる。ツバサも、もう慣れた物で、何も言われなくとも目をつぶっていた。

志穂が崩れ落ちた。

(良かったね。志穂)

安藤とツバサの事は、暫くそっとしておくことにする。

ちらりと見ると、志穂は崩れ落ちて、そのまま五体投地している。そして、その上に何故かマロンが乗っていた。にゃん子はそれを面白そうに眺めている。なんだかんだ、皆、仲が良い。

(ん?)

ふと気づくとミライの側にはブランが居た。

何故か、めっちゃ近い。肩が触れているのに、ブランは何も言わない。

(ち、近いな、おい?)

流石のミライもこれには動揺した。

「……ミライ、マロンにあねさまと呼ばれるのなら、それ相応の覚悟をして貰う。まずは勉強からだ!!」

ブランから話しかけて来た。

「え……あー、成程。わかりました」

確かにミライは余り知識が無いし、成績も良くない方だ。きっとブランは馬鹿にマロンと仲良くしてほしく無いのだろう。なるほど、と思って返事を返す。


「……あと、普通に話せ。他のやつにはもっと砕けているだろう?」

「え、うん。わかった」

警護対象として、少しは歩み寄ってくれているのかな?とミライは思った。ブランがボディーガードのつもりなら色々頷けるなとミライは納得した。

勉強を見てくれると、ブランが言うので、二人で並んで勉強机に腰を下ろす。そして分厚い本を開いた。書かれているのは、この国の成り立ちや歴史だ。ほとんどミライの知るアニメ導入の説明通りだった。

「ふーん。なるほどなぁ」

パラパラとページを捲りミライはぼんやりと文字を眺める。

しかしそれにしても

(さっきから、近すぎるんだけど?!なんなの?)

並んで座ったブランと、太もも同士は触れ合い、顔も息がかかる距離である。身じろぎした時にスリッと、ブランの手が、ミライの太ももの際どい所を掠った。

「ひっ?!」

動揺するミライに比べてブランは落ち着いた様子だ。

「……手を出したりはしない、心配するな」


ブランの言葉にミライはスンッとなった。

(そうだよ。コイツ昨日、色仕掛けに吐いてたじゃん。自意識過剰過ぎた)

意識しているのは、ミライだけ。そう思うと、途端に恥ずかしくなって顔が赤くなる。ブランに見られないようにミライはそっと顔を反らした。


暫くそうしていたら、にゃん子が、ニヤニヤしながら近づいて来た。

「やー、お二人さん。なんか仲良くなってるねー。もしやお付き合いしちゃってるのー?」

「はあ?無いから、やめてよねー。ね?ブランからも言ってよ」

「…ああ、そんな関係ではない。邪推するな」

「えーなんや、つまんないしー」

にゃん子はつまらなそうにそう言って安藤達の方へと行った。


やれやれと息を吐き、ミライがブランの方を見ると、サングラスの隙間から、鮮やかなピンクに染まった瞳が覗いていた。











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