【改稿版】この世界の主人公が役にたたないのでモブの私がなんとかしないといけないようです。

鳳城伊織

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64話 野良猫が、ないた

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にゃん子は、胸がポカポカして居た。ライアンとお揃いのシュシュを見る度に、ポカポカしていた。

(ずっと、こんな毎日が続けば良いのになー。……………でも、そんなの無理って分かってるしー)

ポカポカしていた心が冷えるのを感じて、にゃん子はシュシュを握りしめた。







その日、にゃん子が自室に帰ると、鍵が空いていた。

(………っ)

嫌な予感。冷や汗が背中を流れる。カチャリとドアノブを回して、部屋に入る。

「あー?遅かったね。野良猫ちゃん?」

女が居た。嫌な予感は、案の定、当たった。

「…………なんで」

ポツリと呟き、にゃん子は震える手を握りしめて、目の前の女を見つめた。

醜い女だ。片目が潰れ、頭の上には、片方が千切れた猫耳がついている。銀色の長い髪はボサボサで、不揃いだ。

その女は、ニタリと笑みを浮かべると、にゃん子の髪を掴んで、その場に引きずり倒した。

「はあ?なんで、だぁ?わかるだろうがぁ?!お前、何盛ってんだ?クソ野良猫の分際でよぉっ‼」

女は、凄まじい形相で、にゃん子へと、唾を飛ばす。

「誰のお陰で、お前は生きてられると思ってるんだ?ぁあ?聞いてんのか、おぃ、このクソメス猫がよぉ?人が優しくしてやったらよ、はあ?何?シュシュとか買っちゃってんの?金は全部こっちに寄こせって言ってるよねぇぇえ?なんでかなぁ?バレないと思った?全部知ってんだよぉ」

女の怒声は止まらない。にゃん子は、ただ床に丸まり、震えていた。

「しかもお前、なんか面白い話し方してんだろう?ハハハ、好きな男の真似かよ?きめぇんだよ!!」

女は、にゃん子の髪を掴んで、顔を床に擦りつける。

「しーかーもーさー、お前、なんでツバサ・ブラウンと仲良くしてるわけえぇぇぇ?あいつのせいで、お前こうなってるんだよ?わかってんの?ねぇ?ねぇ?」

にゃん子は何も答えられない。唇が震えて、荒い息が漏れるだけだ。

「はぁ。全部、あいつのせいだ、あいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだ」

女はブツブツと呟き、髪を掻き毟ると、ブチブチと音を立てて髪を引き抜いた。

そして、にゃん子のシュシュを奪うと

踏みつける
踏みつける
踏みつける


「……………はぁ。わかってるのかな?にゃん子ちゃん?早くアイツを殺さないと、私があの、お前の好きな男、殺すよ?ねぇ?ねぇ?良いのかなぁ?………………ちっ、だんまりかよ。マジでつまんねーな、お前。あの方もお待ちなんだ。早くソレで、あの化け物を殺せよ。わかったよなぁ?」


そう言い、女はいつの間にか消えていた。

「っ………ひ……………ぁ」

にゃん子はブルブルと震えて、そしてか細い声を出した。

「………ライアン。助けてよぉ、うち、殺したくない」












◇◇◇◇◇◇




「え?」


目の前に突然現れた源一郎に、ミライがポカンとしていると、いきなり頬を打たれた。

「?!……………いた………」

「この小娘のせいで、ツバサが死にかけたと言うのかッ!!!」

源一郎は凄い形相でミライに掴みかかろうとする。それをジョーンズが間に入って止めた。

「落ち着いて下さい。ブラウンさん。俺が彼女を連れて来れば、危害は加えない。そう言う約束では?」

ジョーンズは、源一郎へと静かな声で告げる。だが源一郎は、ジョーンズへも、怒声を浴びせた。

「黙れっ!!貴様も誰のお陰で、生きていると思っている!!下がれ!!」

「……その借りは、もう充分お返しした筈です。頭を冷やして下さい。今回の件に彼女は関係ありません」

ジョーンズと源一郎が睨み合っている。それをミライはぼんやりと眺めた。

(え?何……。どう言う事……。ツバサ君は何処?………っ………痛い)

打たれた頬がジンジンと痛む。


「とにかく、お孫さんは無事なんですから。落ち着いてください」

なおもジョーンズは冷静に源一郎へと告げる。

「クッ、……だが、多少の責任はその娘に有る筈だ。それで、ただで帰せると思うか?おい、連れて行け」

源一郎が苦虫を噛み潰した様な顔でそう言うと、控えていた屈強な男が二人、ジョーンズを押し退けてミライの腕を掴むと、無理やり手を引いた。

「いやっ!!!」

「止めてください!!そんな事をお孫さんは望んでいません!!」

ジョーンズは慌てたように、ミライの腕を掴んだ男を止めようとするが、源一郎がそれを許さなかった。

「黙れっ!!契約に従え。………ノワノワール」

源一郎がそう言った瞬間、ジョーンズの首に光の輪が現れて、ジョーンズは首を抑えて、苦しみ出した。

「お前は契約に逆らえない?そうだろう。ノワノワール」

源一郎は歪んだ笑みを浮かべそう言う。

「くっ、今の、俺は………ジョーンズですよ。ブラウンさん………ぐっ……」

ジョーンズは息も絶え絶えに、源一郎を睨みつけた。だが、体から力が抜け、床へと倒れ込んだ。気絶したようだ。

それを視界の端に捉えながらミライは、引きずられて行くのだった。







連れて来られたのは、地下牢の様な部屋だった。頑丈な鉄格子に囲まれ、ベッドが一つと桶が置いてある。それだけで、後は何も無い。

明かりは、小さな松明が壁に等間隔に並んでいて、全体的に薄暗い。


ミライは、次々に起こった出来事に頭がついて行かず、ベッドに腰掛けて、ぼんやりとしていた。

(…………もう、なんなの?ああ、でも、ツバサ君は無事だって先生は言ってた。………それなら、ツバサ君は大丈夫だ。良かった。………でも、私はどうなるの?)

ここに入れられてから、すでに半日は経っている。きっと、もう外は夜だろう。

(時間もわかんないし……、此処が何処かもわかんないし……、怖いよ)

ミライは自分の体を抱きしめる。

(ほっぺたも、痛い……)

打たれた頬は、今や熱を持ち、赤く腫れ上がっていた。

(ツバサ君。安藤さん。………皆)






「っ……!!私、寝ちゃって……っ………誰ですか?」

泣きつかれて、自分が眠ってしまっていたのだと気づいたのは、足音がして目が覚めたからだ。ハッとして、足音の主に声を掛けると返って来たのは、ジョーンズの声だった。

「おい、大丈夫か?」

そう声を掛けて来たジョーンズだが、何故か鉄格子から拳2個程離れて立っている。

「ジョーンズ先生?」

ミライが鉄格子に近づくのと比例して、ジョーンズは後ろへと下がった。

「っ……悪いな園田。契約でお前には、これ以上近づけない。そこから動くな」

「あ、スミマセン」

「………」

「………」

気不味い沈黙が続き、先に口を開いたのはジョーンズだ。

「………さっきも言ったが、ツバサは無事だ。俺が助けた」

「助け……?なにがあったんですか?」

「アイツの核に傷をつけたヤツがいる。それが誰かは、……今は教えてやれない。そう言う契約だ」

そう言うと、ジョーンズは、悔しそうに唇を噛んだ。

(……核、ジョーンズ先生は知ってるの?……源一郎側なら、当然か。………契約。さっき、源一郎は、先生をノワノワールって呼んでたよね?なんで?)

「……先生はノワノワールなんですか?」

ミライが尋ねるとジョーンズの顔が歪んだ。

「そうでも有るし。違うとも言える。それ以上は契約で話せない」

「……私は、どうなりますか?」

「………必ず助ける」

ジョーンズは眉間に皺を寄せている。

(大丈夫、とかじゃなくて、助ける、か。この状況は結構ヤバいかもしれない)

ふるりとミライは震えた。

「……はあ……………伝言だ。『園田さん、絶対に助けるよ』だとよ、それから安藤もなんか動いてるみたいだな。良かったな」

「へ?………あ……何でぇ?」

それを聞いた瞬間、ミライの瞳からは、涙がボロボロと溢れ出した。

今まで、何処か現実感が無かった出来事が、一気に押し寄せて、感情がぐちゃぐちゃで、何がなんだか、自分でも分からない。

泣いているミライを見てジョーンズは、痛々しい物を見るような目をした。それから、怪訝な顔をして、指を指した。

「お前、ポケットに何を入れてるんだ?」

(ポケット?)

止まらない涙を袖で拭いながら、ポケットの中をまさぐると、そこに有ったのは笑い袋だった。

「……………」

「お久しぶりです。お嬢さん」

(そうだった。ずっと入れっぱだった。……一人じゃなかったんだ)

ミライは笑い袋をぎゅっと握った。

「………おい、園田。ちょっとそれ、投げろ。こっちに」

「え?これをですか?」

「え?おやめくださいっ!!ああ!!」

ミライが投げ渡すと、ジョーンズは上手くキャッチして、まじまじと笑い袋を眺めている。

「こりゃ、初めて見たぞ。天然の精霊が宿ってる」

ジョーンズは、驚きに目を見開いて、そう言った。

(ファッッ?!)

「え?これ、ただの笑い袋では?お土産の品ですよ」

「はあ?土産?なんだそれ?………これは間違い無く精霊だ。どんな魔法を使っても、ここまで思疎通出来るもんは作れないぞ」

ジョーンズが眺めている間も笑い袋は、相変わらずの良い声で、止めてくださいとか助けてくださいとか言っている。

ジョーンズは笑い袋をニギニギして、それから、なにかを唱えている。

(何してるんだろう?)

ジョーンズの手の中でポワっと光ったかと思うと少し可愛くなった笑い袋が居た。花柄だ。

「なんですか?!この柄は一体!!」

声は変わらなかった。

(えぇ?)

「少し、俺の魔力足しといたから。お前になにかあれば、こいつ伝いですぐにわかる。とりあえずは、助けが来るまで、良い子でおとなしくしてろ」

ジョーンズは、笑い袋をミライに投げて返すと、足早に出て行ってしまった。

「えぇ?」

「しりとりでもしますか?お嬢さん?」









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