68 / 72
63話 神剣組
しおりを挟む「安藤さんの家……ですか?」
「俺の家は刀使う奴らばっかだからな。部屋も空いてるし、夏季休暇は俺の家で、修行つけてやるって言ってんだよ。一応園田も来い。つーか、来たい奴は全員呼ぶか?」
安藤はケロリとそう言う。
「え?でも安藤さん、お家帰れるんですか?」
ミライは思った。確か、家からは放り出される筈では?
「あー、その事だけどな、加藤達に出してた使いっつーのがソレだ。もし、兄貴の手術が失敗したら、これまでの態度を改めて、家は素直に継ぐって先に言ってあんだよ。んで、手術が成功した場合は、兄貴の補佐として働くとも伝えてあってな、親父からも了承の手紙が届いてんだ。後は俺が一度、頭下げりゃ問題ない」
ボリボリと頭を掻きながら安藤は言った。ミライがポカンとしていると安藤は、苦笑した。
「なんだよ。その顔、ブスに見えるぜ?」
「そんな事ないよ?」
何故かツバサが即答した
「お、おぅ………。でだ、どうする?」
安藤はツバサをチラリと見てから、ミライに言う。
(安藤の家かぁ……。ヤクザじゃないって言ってたけど……なんか怪しい……)
「というか、安藤さんの家って何やってるんですか?」
アニメで、安藤の家についての詳しい描写は無い。それなりの名家?だと言うことくらいしか、情報が無いのだ。
「あー、そういや、教えるって言ったっきりだったな。………俺の家は神剣組つー組織だ」
「神剣組?」
ツバサが復唱すると、安藤は頷く。
「まあ、簡単に言うと国に与してない剣客集団だ。俺の親父が頭で、下の奴らに仕事を与えてる。……まるっきり国との繋がりが、ねぇわけじゃ無い。軍から要請がありゃ、協力くらいはすんぜ?金次第でな」
ニヤリと笑い、安藤は言う。
ミライは、やっぱりヤクザでは?と思った。
「丁度、広い離れもあっから、20人くらいなら余裕で寝泊まりも、世話も出来るぜ」
「へー、合宿みたいで楽しそうだね」
ツバサはニコニコしている。
「確かに、有りですね。それ、……えっと、じゃあ皆が帰って来たら聞いてみましょうか?」
ミライはそう言って立ち上がり、ポンと手を叩いた。
「とりあえずは、一応話がまとまったね、今日は解散で良い?ツバサ君」
「うん。僕も、この後は少し出かけるから、それで良いよ」
「おー、俺も今日は、ゆっくりすんぜ」
道場から出ようと入り口に向かうと、いつの間にか出ていっていた珍妙丸が戻って来る所だった。
「あ、珍妙丸さんも、今誘います?」
ミライが安藤に聞くと、安藤は首を緩く振った。
「いや、あいつは元々うちの人間だからな。休暇になれば普通に帰ってくんだろ」
(なるほど、だから仲良いんだ。ふーん)
◇◇◇◇◇◇
また数日が経った。
「ユアン、全然帰って来ないね。………大丈夫かな?」
ミライが呟くと、すぐに返事が返ってくる。エリカだ。
「仕方ないわよ。ユアンは優秀だから、軍もこれ幸いにと使い倒すつもりかもね」
「もー、エリカちゃん、クールなんやからぁ。まあ、ユアンちゃんに限って何事も無いやろうし、心配する必要は無いやろうけどねえ……、そやけど寂しいやんなぁ」
ライアンは、そう言って、ふうと息を吐いている。そう、ユアンは一ヶ月近く、帰って来て居ない。
(うん。ちょっと………寂しいな)
ミライは少し、しんみりした。ユアン以外の面々は、ちょこちょこ帰って来ては、また任務に行ってと、その繰り返しだ。
(魔物が増えてる影響で皆忙しそうだし、大変だなぁ。でも、調べてもどうしてなのか、活発化が何なのかも、わかんないし……。はあ)
結局金田に調べて貰った。活発化の事は、良くわからず、少し魔物の数が増えているようだとだけ報告された。
(ブランとマロンちゃんにも、暫く会ってないなー。元気にしてるのかな?)
ミライは、ブランに貰ったサングラスをいじりながら考える。一応皆からは、来月は休みをとって安藤の家に行くと言う良い返事が有った。志穂なんかは興奮し過ぎて鼻血を出していて流石のミライも、かなり引いた。志穂はブツブツと、朝チュンがどうとか言ってた。
(まあ、あと少し頑張れば、また皆で楽しく過ごせるしね。我慢我慢)
寂しいが、今は仕方がない。ミライはそう頭を切り替えて、少し散歩をする事にした。
ライアンとエリカに別れを告げて、歩いているとまた、見知った人を見つけた。
「あ、執事さーん。……………また、怪我してるんですか?」
手を振り駆け寄り、ミライは眉を顰めた。執事は、また顔に傷を作っていた。
(あれ?なんか雰囲気変わった?)
「あ、……ああ、ミライ様ですね。こんにちは」
「こんにちは、はい。手当てしましょ」
慣れたものである。
「今回は、なんか細かい傷いっぱいですね?大丈夫ですか?……どうやったら、こんな風になるんですか?」
顔中に、小さな切り傷がいっぱい出来ている。
「顔からガラスに突っ込みましたからね」
執事の返答にミライは、目を見開いた。
(なんでっ?!なにがあったし?!顔からガラスって………っと…。そんな事より手当手当!!!)
ミライは青い顔で震えながらも、手当を進めた。
(よし……。とりあえず終わりっと……はあ……)
「手当ては、終わりましたか?撫でないのですか?」
手を止めたミライに執事はそう言う。心無しか、嬉しそうに見える。
「ミライ様?」
(撫でられるの気に入ったのかな?意外………)
「はいはい。いい子いい子」
仕方ないので、よしよしと撫でると、執事は目を柔らかく細めた。
(え)
初めて見る、執事のその表情にミライは驚く。
(は?……今、笑ったの?)
思わずじっと見つめてしまう。そして、執事が、またクッキーを手に持っているのに気づいた。
「あれ?もしかして、また味見とか………」
「………はい、どうぞ」
執事はクッキーをミライへと差し出した。
(あー、やっぱり来たか。これ、苦手なんだけどなぁ)
そう思いながら手を伸ばす。いつもの甘い匂いがフワリと香る。
(匂いは、美味しそうなのにね)
苦さを感じないように、一口で食べてしまおうと、大きく口を開く。だが、クッキーはミライの口に届く事は無かった。何故なら、口に届く寸前で、執事にクッキーを持つ手を叩き落された。
「え?」
クッキーは無残にも地面に落ちて、ボロリと砕ける。
「あ………」
執事はミライの手を叩いた自身の手を、あ然と見つめて、それから地面に落ちたクッキーを眺めてから、真っ青な顔で走り去っていった。
「は?………え?なんだったの?」
ジンジンと痛む手の甲と、ボロボロに砕けたクッキーを交互に見やり、困惑するミライだった。
◇◇◇◇◇◇
ふとライアンが、窓の外に目をやると木の陰に、にゃん子が座り込んでいるのが見えた。最近は黄色のシュシュで高く結んでいる筈の髪が、下ろされているのに気づいて、ちょっと声をかけることにした。
今ライアンの手首にも、お揃いで色違いの赤いシュシュがついている。
「にゃん子ちゃん?どないしたのぉ?」
声をかけると、にゃん子の肩がビクリと震えた
「あ、なんやぁ。ライアンかぁ。びっくりしたしー、なあに?」
にこりと笑ってにゃん子は答える。
「今日は髪、してへんの?シュシュも無いねぇ」
そうライアンが尋ねると、一瞬、にゃん子の表情が曇ったように見えた。
「?」
「いやー、ちょっぴ汚してしまったんよー!!今洗濯中だしー」
いつも通りのにゃん子の笑顔に、先程の表情は見間違いかとホッとする。
「そうなんやね。もうすぐお昼やし、一緒に行く?」
「んー。………………まだここにいる。先に行ってて」
にゃん子はそう言って、俯いた。
「そう?なら、食堂で待ってるねぇ」
「…………ライアン」
「ん?なぁに?」
「………なんでもないしー」
にかっと笑って手を振られた。
「はいはい、ほな、また後でね」
◇◇◇◇◇◇
ツバサは満面の笑みを浮かべて、ご機嫌で歩いていた。何故なら、やっと昨日、二人へのプレゼントが買えたからだ。何日か掛けて、色々と良さそうな物を探して、やっと見つけた。
「えへへ……」
手の中のお揃いの3つのストラップを見てツバサは思わず、笑い声が漏れる。
(ピンクの石が付いたやつが園田さんで、青いのが僕。黒いのを安藤君にしよう)
「?……鈴の音……?」
ふいにチリーンと音がして、あれ?聞き覚えあるなぁと思って振り向くと、少し離れた位置に、真島にゃん子が居た。
「真島さん?」
でも、この音って初めて会った時と今しか聞いた覚えがないな?とツバサが考えている内にも、にゃん子はこちらへ近づいて来る。
「ツバサくん、…………こんな所で、一人っきりで、何してるんー?」
ニンマリと赤い瞳が弧を描いた。
ぞわりと何故か鳥肌が立つ。
「真島………さん?」
にゃん子が耳についているイヤリングを外すとまた、チリーンと音がした。
(あ、イヤリングの音なんだ)
ツバサがそう思った時、鈴のイヤリングが、グニャリと歪んだ。
「え?」
その瞬間、ツバサは腹に熱い物を感じた。
「ツバサくん…………死んで」
◇◇◇◇◇◇
「はぁ………はあ………っ………は……」
ミライは今走っていた。
(嘘っ!!!うそ………うそっ!!!どうして、……どうして!?)
コケて膝から血が出ても、そんなの気にしないで走っていた。
「安藤さん!!!ツバサ君が刺されて、死んだって、どう言う事ですかっ!!!」
バンッと道場の扉を勢い良く開けた先には、安藤が立って居る。その手に血まみれのストラップを3つ持って居た。
「落ち着け、園田。……ツバサは……一応は生きてる。ただちょっと色々不味い事になってんだ」
「え………でも……先生が……今井先生が………」
ミライは、震える声でそう言う。
少し前、いきなり教室に来た今井先生は、ツバサ・ブラウンが刺されて亡くなりました。と告げて来たのだ。
何処で、とか、どうしてとかなんの説明も無く、それだけ言うと、先生は引き止める時間も無いくらいの早足で、その場を去って行った。
ミライは走り回って、人に聞きまくって、ようやくツバサが血まみれで運ばれて行ったのを見たと言う生徒の証言を聞いた。更にその近くに安藤が居たと聞いたのだ。それで必死に安藤を探していた。
「うぅ………う……生きてる……良かった」
ミライはカクンとその場に座り込む。腰が抜けたのだ。涙もボロボロと溢れ出す。
「おう、命の心配はねえよ。ただ……」
「おっと、安藤。そこまでだ」
会話に知った声が割り込んで来た。
「は?………ジョーンズ先生?」
ミライはポカンと目を見開く。
ジョーンズ先生は、つかつかとミライに近づいて来た。そして腕を掴んで、無理やり立たせる。
「おい!!」
安藤が声を荒げるが、ジョーンズは、冷ややかな声を出した。
「黙れ安藤。この件は、お前には関係ない、全て忘れろ」
「え?先生……何を……っ?!」
腕を掴まれたミライと、ジョーンズの周りが光り、足元に魔法陣が展開された。
(っ!!!眩しい!!!!)
ミライは思わず目を瞑る。そして次に目を開くと、知らない場所に居た。
そして目の前には、源一郎・ブラウンが険しい顔で立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる