【改稿版】この世界の主人公が役にたたないのでモブの私がなんとかしないといけないようです。

鳳城伊織

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66話 好きになる魔法

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「謝って済む問題では無いのは、承知しております。ああ………わたくしは、なんて事を……」

執事はブルブルと震えている。

今までで、一番感情を顕にした執事に、ミライは戸惑った。

(なんで、こんなに……?)

「あ、あの、もう少し詳しく説明して貰っても良いですか?」

「………詳しくは、ご存知ないのですか?」

「あ、はい」

ミライの返答に、執事の瞳がほんの少しだが、泳いだ。

「……では、ご説明させて頂きます。ミカエル様からの指示で、ミライ様には何度か、とある呪術が、かけられていました」

(え?)

「そしてわたくしが、それを実行しておりました……」

執事の声は震えている。

「最初は薔薇の造花でした。アレは強力な呪で、対象に強制的に発情、愛情を抱かせるものにございます。その次は、クッキーに呪を仕込みました。その次は、………クマのぬいぐるみに。そして………わたくしは……」

手まで震えて、今すぐにも気絶しそうな程に、執事の顔は真っ青だ。

(呪術……)

要するにだ。何度か校内で執事を見かけたのや、接触したのは全て、偶然では無く、仕組まれていた。その呪術をミライに掛ける為に。

(なるほど………)

「あの呪術は、甘い香りがします」

駄目押しされた。

(心当たりしかない……。あれ?でも、全く効いてないような?だって私、別に何とも無いし)

「あのー、でも、私全然平気ですけど?ミシェルは薬って言ってましたけど、呪術って薬じゃないですよね?」

「……それが不思議です。わたくしは、ミライ様に呪術が効かない事で、失敗を疑われ、何度も罰を受けました。……薬と仰ったとの事ですが、ミカエル様はアレを惚れ薬だと思われてます」

そう執事は言う。ふーん。なるほどねと思って、それからミライは2度見した。

(え!!私のせいで罰を?……あの怪我って………うそ……)

ミライが顔を青くしてると、執事はゆるく首を振る。

「こちらが、全面的に悪いのです。ミライ様がお心を痛める必要など有りません………」

(執事さん、自分も大変なのに、優しいな)

執事の気づかいに胸が暖かくなる。

「とりあえず、座りませんか?まだ聞きたい事が色々と有るので」

ミライがソファーを指差すと、執事は大人しくそれに従い、二人は並んで腰掛けた。

「あの、………命じられてたんですよね?なのになんで、クッキーを叩き落としたんですか?」

ミライが尋ねると、執事は困った様な顔をした。

「………自分でもわかりません」

(分からないか……。流石に、罪悪感でも湧いたのかな?)

「お食事券は、なんでですか?あれって……学校からじゃ無いって事ですよね」

「はい。仰る通りにございます。あれは学園からではなく、ミカエル様からのご指示です。ミライ様がお困りのご様子だったので。お一人だけだと周囲に怪しまれてしまうので、一緒に編入された男子生徒の方にもお渡ししました」

(なるほど……。でもなんで、ミシェルは私に?………うーん。わからん)

黙り込むミライ、執事も何も言わず、数分の時が流れた。そして、唐突に執事は口を開いた。その声は、哀れなくらいに震えて居た。

「ミ、ミカエル様は、ミライ様に……っ、こ、子供を産ませる、つもりです」

(こ……?こども?………………子供?!産ませるっ?!)

「先程の様に、ミカエル様がおかしなご様子なのは、お父様の仕業なのです」

「え?」

(あ、……執事さんも、やっぱりおかしいと思ってるんだ?)

「あのぅ、それって?」

「……わたくしにも責任があります」

執事は一度深く息を吐くと、ミライをじっと見つめて言った。

「ミカエル様のあれも呪いなのです」





◇◇◇◇◇◇






「呪い……ですか?」

「はい、お父様が、ミカエル様におかけになりました」

執事の言葉にミライは驚く。

(親が呪いを?なんでまた)

「………ミカエル様は幼少の頃から、あの様に麗しい方です」

(まあ、確かに、アイツって黙ってたら、前の人生合わせて、今まで見た男の中で顔の造形は一番かなぁ?)

そうミライは思う。だけど好みでは無いな、とも思った。

失礼すぎるミライである。

「ですので、女性にはお困りにはなりませんでした。………いいえ、寧ろ女性が、ミカエル様に群がっておりましたね」

執事は苦笑する。

「………ミカエル様が10歳の頃……今から8年前ですね。数人のご婦人に暴行を受けまして……」

執事は、とても苦しそうな顔だ。ミライもブルブルと震えた。

(……それってやっぱり性的な方だよね?)

「………、それからは、女性に大変怯えられる様になられました。ですが、今王家にはミカエル様しか跡継ぎがおりません。すでにお父様も、子を作るのは無理だそうです」

「なるほど……。あの、続けてください」

ミライが先を促すと執事は頷き、話を続けた。

「……このままでは、ミカエル様が妻を貰って子を成すのは一生無理だと、皆思いました。ですが、それでは王家の血が絶えると、お父様が呪いまじなをかけると決められたのです。女性に性的に興奮する呪い。それから、女性をみたら好意を抱く呪い。それから反転の呪いです。恐怖心を愛情へと無理やり置き換えるのです」

「え?そんなに呪いをかけて大丈夫なんですか?」

執事はチラリとミライを見て首を振る。

「大丈夫ではありませんでした。呪いは暴走して、あの様に……。先程の、おかしな言動のミカエル様になられました。………女性を前にすれば、あの様になられますが、それ以外では、まともな方ですよ」

「……まとも?何処がですかっ!!執事さんに酷い事するのにっ……」

ミライは、ぎゅっと手を握りしめた。

「……?それは普通の事ですから。酷いことなど何も……」

執事は不思議そうにそう言う。

「え?いやいや、あんなのおかしいですよ!!」

「……名無しの出来損ないを生かしてくださるだけ、…お優しいです。ミカエル様は」

「………名無し?出来損ないって、なんでですか?……そんなの」

(そう言えば、さっき……名無しってミシェルは言ってた)

執事は困った様に笑うとミライの心を読んだかのように、言う。

「………わたくしの事です。名無しとは、そのまま、名前が無いことですよ。王家に生まれた黒髪の子供は不吉の象徴。魔物との子供と言われています。魔力を持たず、しかし、化け物じみた力と回復力を持つので、本来なら産まれてすぐ殺されます」

ミライは目の前の執事の髪と瞳の色をよく見る。

(黒髪……。ピンクの瞳は……ミシェルと同じ色……?)

ミライはハッとした。

「え?王家に産まれって……。執事さん、ミシェルのお兄さんですか?」

「兄などと……口にすると不敬にあたります」

執事は苦笑しているが、否定はしない。

「……それに、わたくしに、あの方が酷くあたっている様に見えるのも、仕方がない事です。わたくしはあの方が数人のご婦人に連れられて行くのを、黙って見ていたのですから。止めようと思えば出来たのに、それをしなかった。恨まれておいででしょう。それでも、こうして生かして頂けている、お優しいのです。あの方は」






◇◇◇◇◇◇




今、ミライは黙り込んでいる。

(なんなの?知らない設定ばっかりじゃん。えっと……)

入って来た情報量が多すぎて、一旦整理しているのだ。

(ミシェルが王子なら、執事さんも本来なら王子様なの?それに、私に、対しての呪いについても、ミシェルのあの言動についても、大体は、わかったけどさぁ。相手が、なんで私なの?チョロそうだから?)

うーん。うーんとミライが唸っていると執事が口を開いた。

「……ミライ様、わたくしを軽蔑なさいましたか?」

執事は震えている。ミライはハッとして執事の手を握った。

「軽蔑なんてしてません!!それに、命令に背いて、途中で止めようとしてくれましたよね?そんな事したら罰を受けるのに……、私の事を助けてくれました」

クッキーを食べさせない様に叩き落としてくれた。あの時は意味不明だったけど、色々と話を聞いた今なら、わかる。執事はわからないと答えたが、それでも、ミライにはわかるのだ。執事は、ミライを助けようとしてくれていた。

(さっきだって……。自分より、私の心配をしてくれてた。本当に優しいのは、執事さんだよ)

「ありがとうございます」

ミライは、にこりと、微笑む。その瞬間、強く抱きしめられた。

(アレェ!!………)

でも、ミシェルの時みたいに嫌じゃなかった。

(……執事さん。………なんか私の周り泣き虫ばっかりだなぁ)

泣いているのか、小さな声を漏らして震える執事の背中を、ポンポンと優しくて撫でる。

暫くして、執事が落ち着いたので

「よし!!じゃあ、逃げます!!」

そうミライは言った。

それに執事はブンブンと首を振る。

「そう出来れば、良いのでしょうが。ミカエル様の結界が張られているので、ミライ様は屋敷からは出られません」

「結界?」

ミライが、首を傾げると、何故か執事は、クッションを窓に投げつけた。

窓に当たる寸前でジュワッと音がして焦げ臭い臭いがする。ポトリと床に落ちたクッションは、焼け爛れていた。

(ヒェぇぇぇぇぇ‼!‼!)

「………こうなります。ご理解頂けましたか?」

ミライは真っ青な顔で頷いた。

「………王家と言っても、実情は名前だけなのです。実際に国を治めているわけでもありません。ただ、この結界魔法は王家に連なる者にしか発現しないのです」

だから血を絶やすわけにはいかないのだと執事は言った。

国でそれなりの、地位についてるのも、結界魔法がこの世界では、かなり貴重な物だかららしい。

(こう聞くとちょっと、ミシェルが可哀想だな……プレッシャーとか凄そう)

「あの、でも、なんで、ミシェルは私を?」

「……ミカエル様が、どうしても妻を娶らなければいけないのならば、花嫁はご自分で探すと仰られて、それで学園で身分とお名前を隠し、お探しになられてました。そして選ばれたのが、ミライ様です」

(ふーん。なるほど。それでアニメでは、女の子(ヒロイン達)にセクハラかましてたんだ。嫁探しねぇ………。私が今回標的になったのって、やっぱりチョロそうだから?なんとか説得とか無理かなぁ、あの顔なら他にいくらでも相手見つかるでしょ。ユリさんとかどうよ?ファンなんだよね?……私は子供産むとか、無理だし。それに……そう言うのは、本当に好きな相手じゃ無いとって………きっと、ツバサ君なら、そう言うよね) 

「あの、……なんとか説得とか無理ですか?……子供が欲しいなら、他に良さそうな子とか心当たり有るんですよ、私。紹介しましょうか?」

そうミライが言うと、執事は苦しそうな顔をした。

「…………ミカエル様は、言動こそ呪いの影響を受けておられますが、呪いとは関係なく、本当にミライ様に恋をしておいでです。………説得など、無意味です。貴女で無ければ駄目なんです」












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