もしも、記憶力日本一の男が美少女中学生の弟子を持ったら

青キング

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SCC開幕!2

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 全国方々とはいかなかったが、交通アクセスの利便性が高い都心や都外から十人を超える出場者が集まり、SCCは開会した。

 SCCは参加者でAとBの二つのグループに分かれて、Aグループの選手が挑戦している時はBが審判を担い、Bの時はAが審判と交互に入れ替わって、挑戦回数の五回までそれを繰り返す。

 両グループの選手が三回まで挑戦したところでランチタイムとなり、中間発表がホワイトボードに貼りだされた。

 貼り紙には、単発記録と平均記録の順位とその選手名とタイム、が書かれている。

 単発記録とは、挑戦した中で五十二枚記憶に成功しなおかつ最速のタイム。平均記録は挑戦した中で最高タイムと最低タイムを除いた三回の平均タイム。中間発表では三回分の平均タイムを割り出している。

 単発記録一位は弥冨楓の35秒55、二位に小牧梨華で40秒45。

 平均記録一位は弥冨楓で39秒47、二位に小牧梨華で42秒94。

 二人が頭抜けて好成績を残し、他の出場者のタイムは一分台や二分台が軒並み続く。

 蟹江は自身も作成を手伝った貼り紙を見て、弟子の総合優勝が厳しいことを悟った。

 前回のSCCより弥冨の記録は単発平均どちらも三秒ほど短くなっており、大会前は前回の記録から小牧の一位優勝に高い可能性を視野に入れていたが、弥冨が想像を超える上達ぶりだった。

 それでも、という気持ちもある。初出場で総合二位、それだけでも鮮烈なデビューだ。それこそ新参選手の目を瞠るような記録に、他の参加者は揃って驚嘆するだろう。



「師匠。手伝いの方は終わりました?」



 蟹江の手が空くのを待っていた小牧が、選手達が一時引いた会場に顔を出す。



「終わったよ。お前はもう何か食べたか?」

「まだです」

「別に俺を待たなくてもいいんだぞ」

「師匠と一緒に食べたかったので」



 小牧は少し気恥ずかしげに答える。



「それにどこで買えばいいのか、不案内なので」

「それもそうだな。よし、俺が連れてってやる」



 蟹江はホワイトボードから離れて、入り口の前に立っていた小牧と並んで歩き出した。

 興味にまみれた瞳で、小牧は伺う。



「どこに連れてってくれるんですか?」

「コンビニ」

「へ、コンビニですか」



 意表を衝かれたように頓狂な声を出す。

 蟹江は仕方ない、という顔で苦笑した。



「近くに飲食店がないんだよ。どうしても飲食店がいいなら、ランチタイムの早くからここを出なきゃ、午後に間に合わない」

「不便ですね。もっといい場所あったと思いますけど」

「俺に不満を言っても、建物は移動しないぞ。それにここに開設を決めたのは師匠だからな」

「何を考えてるんですか。師匠の師匠は?」

「日本じゃ知名度の高いスポーツじゃないからな。開設するのにもそれなりに苦労したと思うよ」



 そうなんですね、小牧は納得の表情で言った。

 そんなこんな話しながら屋外に出て、徒歩数分のコンビニまで歩く。

 建物の立地の話題から小牧の成績、それから午後へむけての話し合いに移った頃、蟹江と小牧がコンビニの自動ドアを潜ると、偶然も偶然。レジで支払い中の弥冨に出くわした。それも先日とは違い、ヘアゴムで髪を頭の後ろでまとめたポニーテールの格好だ。

 自動ドアのセンサー下で足を止めた二人に、弥冨はちらと目を寄越した。

 言葉がないまま視線を交わす。

 いつまでもドアの前にいる訳にはいかなかった蟹江が、彼女に近づき話しかける。

「よう。弥冨、また記録上げてたな」

「それは、褒め言葉として受け取っていいのかしら?」

「そりゃそうだよ。他にどう受け取るんだよ」

「わからないわ。あんたに褒められてもあまり嬉しくないのよ」



 気難しい奴だな、と蟹江は思って、続ける言葉に窮した。

 小牧が周囲に申し訳ない目を配りながら、横から嘴を入れる。



「師匠も弥冨さんも、レジの前にいると他の客の邪魔ですよ」



 小牧から注意された二人は、そそくさと商品棚の間へと逃れた。

 気に入らない少女から詰まらないことで注意を受けたことに苛立った弥冨は、目の前の蟹江を不満をぶつける。



「陽太のせいで、年下に注意されたじゃない」

「俺のせいじゃねえよ」



 いわれのない憤懣をぶつけられて、蟹江も言い返す。



「お前の話が長いんだよ。褒められても嬉しくないって、思っても口に出すなよ。結構悲しい気持ちになったぞ」

「だって私はまだ、自分の記録に満足してないもの」

「それはいい事だが、人が褒めてんだからそのまま受け取ってくれよ。挨拶みたいにもんなんだから」

「師匠。目的を忘れたんですか?」



 蟹江の背後から服の裾を引っ張って、弥冨との口論寸前の会話に口を挟む。

 そうだったすまん、と小牧に軽く詫びてから弥冨へ告げる。



「それじゃあ、午後にまた会場でな」



 何の含みもない言葉を残して、蟹江と小牧は弁当コーナーへ歩いていく。

 弥冨は小牧の背中に、内なる対抗心の燃え滾る視線をしばし注いでから、軽食の入ったビニール袋を片手にコンビニを後にした。
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