2 / 2
君のためのマリオネット 解答編
しおりを挟む
「……
お
か
え
り
三月三日
九時
ですか!?」
「そうさ、
それに九時を指している
ひな壇の上には、
御膳があっただろう。
だからあれはご馳走を用意して待っていると解釈できる。
そして今、時刻は、午後八時五十五分。
実は朝も、店を臨時休暇にして、ここへ来てみたんだが、朝には誰も現れなかった」
「先生、じゃあこの人形店の店主は、
今日午後九時にここへ来る誰かを待っているというわけなんですね。
先生、凄い。
あっ、ですけれど、ここの女店主、
一体誰を待っているんです」
「昨日、君を寮まで送った後、ネットや知人の記者に頼んで、この人形店で昔、何かなかったか調べてみたんだ。
すると、今からちょうど七年前、
ここの店主がギャンブルに溺れたことで、借金で首が回らなくなった。
そして、その借金の返済の目処も立たぬまま、妻にも見放され、そのまま離婚……。
婿養子であった店主は、人形店を追い出されたらしい。
そして、強盗まで働いてしまったみたいなんだよ……。その強盗先が質が悪く、
運悪く、実刑で、刑務所送りへと……。
その事実がわかったんだよ。
だけどね、その刑期も終え、彼は晴れて出所することになったんだ」
「そ、そうだったんですか」
「ほら見てごらん」
先生は、吉備人形店の向かいにある電柱の方を指差した。
「あっ、あの人は、昨日の帰り際にすれ違った野球帽の男の人!」
電柱の背後に隠れる男性が見えた。
「あの店の女店主はね、
彼の帰りを待っているんだよ。
そう、七年前に別れた昔の旦那をね」
「そうだったんですか」
しばらく私は考え込んで、ふっと顔を上げた。
「先生、それが、本当なら、
なんだか私、応援しちゃいたくなりました」
「そう思ったんだね」
「はい」
「でもね先生、一つだけ疑問が……。
どうして、そんなにややこしい暗号なんかを使ったんでしょう」
「これはネットで調べたんだけどね、
あの旦那って昔、
パスル本の作家だったらしいよ。
だから彼女は、こんな洒落たね、おもてなしを考えたんじゃないかな?」
「あぁ、なるほど」
「それよりもほら、時刻は午後八時五十九分」
「あっ、元旦那が動きだした」
野球帽を脱いだ元旦那らしき男は、
店の方へと歩きだした。
すると、玄関のドアが内側から開いて、
奥から見覚えのある女店主の顔が。
気のせいか、二人の頬に、光る粒子のようなものが見えた気がした。
「ほら、二人むつまじく奥へ入っていくよ」
「本当ですね」
「それとね、これは、ちょっとしたサプライズなんだが」
「なんです」
「あの女店主の名前はね」
「はい?」
「君と同じ名前なんだ」
「かおり。ですか。ええっ」
「まさに、君にも縁がある不思議な出来事だった。
ということかもしれないね」
「ああっ、ホントですね!」
「それじゃあ、
よそ者はこれぐらいにして、
そろそろ退散、退散」
「そうですね、
でも先生、本当に驚きました!」
「うん、右に同じだよ」
その時、私たちの頭上に、
星が流れた。
お
か
え
り
三月三日
九時
ですか!?」
「そうさ、
それに九時を指している
ひな壇の上には、
御膳があっただろう。
だからあれはご馳走を用意して待っていると解釈できる。
そして今、時刻は、午後八時五十五分。
実は朝も、店を臨時休暇にして、ここへ来てみたんだが、朝には誰も現れなかった」
「先生、じゃあこの人形店の店主は、
今日午後九時にここへ来る誰かを待っているというわけなんですね。
先生、凄い。
あっ、ですけれど、ここの女店主、
一体誰を待っているんです」
「昨日、君を寮まで送った後、ネットや知人の記者に頼んで、この人形店で昔、何かなかったか調べてみたんだ。
すると、今からちょうど七年前、
ここの店主がギャンブルに溺れたことで、借金で首が回らなくなった。
そして、その借金の返済の目処も立たぬまま、妻にも見放され、そのまま離婚……。
婿養子であった店主は、人形店を追い出されたらしい。
そして、強盗まで働いてしまったみたいなんだよ……。その強盗先が質が悪く、
運悪く、実刑で、刑務所送りへと……。
その事実がわかったんだよ。
だけどね、その刑期も終え、彼は晴れて出所することになったんだ」
「そ、そうだったんですか」
「ほら見てごらん」
先生は、吉備人形店の向かいにある電柱の方を指差した。
「あっ、あの人は、昨日の帰り際にすれ違った野球帽の男の人!」
電柱の背後に隠れる男性が見えた。
「あの店の女店主はね、
彼の帰りを待っているんだよ。
そう、七年前に別れた昔の旦那をね」
「そうだったんですか」
しばらく私は考え込んで、ふっと顔を上げた。
「先生、それが、本当なら、
なんだか私、応援しちゃいたくなりました」
「そう思ったんだね」
「はい」
「でもね先生、一つだけ疑問が……。
どうして、そんなにややこしい暗号なんかを使ったんでしょう」
「これはネットで調べたんだけどね、
あの旦那って昔、
パスル本の作家だったらしいよ。
だから彼女は、こんな洒落たね、おもてなしを考えたんじゃないかな?」
「あぁ、なるほど」
「それよりもほら、時刻は午後八時五十九分」
「あっ、元旦那が動きだした」
野球帽を脱いだ元旦那らしき男は、
店の方へと歩きだした。
すると、玄関のドアが内側から開いて、
奥から見覚えのある女店主の顔が。
気のせいか、二人の頬に、光る粒子のようなものが見えた気がした。
「ほら、二人むつまじく奥へ入っていくよ」
「本当ですね」
「それとね、これは、ちょっとしたサプライズなんだが」
「なんです」
「あの女店主の名前はね」
「はい?」
「君と同じ名前なんだ」
「かおり。ですか。ええっ」
「まさに、君にも縁がある不思議な出来事だった。
ということかもしれないね」
「ああっ、ホントですね!」
「それじゃあ、
よそ者はこれぐらいにして、
そろそろ退散、退散」
「そうですね、
でも先生、本当に驚きました!」
「うん、右に同じだよ」
その時、私たちの頭上に、
星が流れた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる