美味しくて切なくて優しい、ちいさな恋物語

かみゅG

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サマー・ベジタブル

であい(その9)

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「最近、晴れの日が多いと思わないか?」

 気づいてはいたのだが、口にするのは避けていた。
 下手に期待して、裏切られるのが嫌だったからだ。
 だが、徐々に高まる確信に、堪えきれずに口に出した。

「そうね。もうそろそろ梅雨も明けるのじゃないかしら」

 その言葉に心が浮き立つのが分かる。
 晴れの日が多く、たまに雨が降る。
 過ごしやすい季節だ。

「ところで……」

 少し気になることがある。

「良い天気だと思うのだが、なにか心配ごとでもあるのか?」

 小娘の声に少し元気がないような気がする。

「別に何もないわよ。ただ、ちょっと身体が怠くて」

 いつかを思い起こさせる言葉だ。

「身体が怠い?」

 そちらの方が心配だ。
 手で創る養分は充分なはず。
 足から吸い上げる養分が足りないということもない。
 それにも関わらず怠いということは、どこか身体の調子が悪いのではないだろうか。
 小娘の身体を観察する。

「……手に斑点ができていないか?」

 今回は虫に憑かれているといったことはなかった。
 だが、それよりも、明らかに気づく変化があった。

「あれ?」

 自分のことだというのに、小娘は気づいていなかったようだ。

「あれ? ではない! 大変ではないか!?」

 吾輩の方が焦ってしまう。

「これは……べと病かしら?」

 小娘は妙に落ち着いている。
 だが、そんな状況ではない。
 吾輩たちがかかる病気は進行が早い。
 気づいたら手遅れということもあり得る。
 それどころか、早めに気づいても、進行を止められないという場合もある。

「病に強いのではなかったのか!?」

 そんなことを言っていたのを覚えている。

「わたしの一族が強いのは、うどんこ病で……」

 本人よりも吾輩の方が慌てている。
 以前、虫に襲われたときは、半狂乱になって取り乱していたというのに。
 小娘がなにを考えているのか分からない。

「なぜ、そんなに落ち着いているのだ!?」

 そのことに苛立ってしまう。

「だって……」

 小娘がこちらを見つめて答えを返してくる。

「同じ夢を持つ、あなたがいるから。もし、わたしがここで倒れたとしても、あなたが夢を叶えてくれるでしょ?」

 そして、逆にそんなことを問いかけてきた。

「それは……もちろん、叶えるつもりだが」

 そもそも種族が違う。
 たとえ吾輩が夢を叶えたとしても、本当の意味で小娘の夢が叶ったことにはならないだろう。
 なぜ、それで納得できるのだ。

「それに、たぶん大丈夫よ」

 小娘が視線を移す。
 吾輩にも分かった。
 足音が聞こえてきたのだ。

『あらあら。梅雨の間に病気になっちゃったのかしら。すぐに治療してあげますからね』

 ニンゲンが何やら呟いた後、足音が去っていく。
 だが、絶望はしない。
 戻ってくると確信しているからだ。
 そして、その予想は正しく、戻ってきたニンゲンによって、小娘の身体は正常な状態に回復してもらえた。

「やれやれ、本当に主人には足を向けて寝れないな。命の恩人だ」

 理性だけではない、感情でもそう思うことができた。

「そうね。でも、甘えちゃ駄目よ。ちゃんと、恩は返さなきゃ。恩を返すには……」

 そこから先は言われるまでもない。

「ああ。吾輩たちの夢を叶えることが、恩を返すことになるのだろう」

 共存共栄。
 ありがたいことだ。

「いっぱい子供を創りましょうね」

 吾輩たちが子供を創る時期が近づいている。
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