美味しくて切なくて優しい、ちいさな恋物語

かみゅG

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サマー・ベジタブル

いとなみ(その7)

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「ニンゲンがオレを連れまわすおかげで、多少は外の世界を見ることができた」

 吾輩たちでは無理なことだ。
 親友は身体が大きく育たなかったことを嘆いているようだが、外の世界を見れるということは、それを差し引いても羨ましいことだと思う。
 だが、親友は無条件に喜んでいるわけではないようだ。

「川や森……オレが憧れた自然はあった。だが、ニンゲンがいない場所はなかった。少なくとも、オレが子孫を解き放つことができる範囲には」

 それは、親友の望んだ世界ではなかったということか。

「それは……」

 昔の吾輩は知らなかった。
 だが、今の吾輩は知っている。
 小娘から聞いたことがあるからだ。

「それに、熱心に世話をされれば情も沸く。オレはもう昔ほどニンゲンから逃れたいとは思っていない。いや、思えないんだ。信念を貫けない軟弱者だと、笑ってくれていいぜ」

 自嘲気味に、そう語る親友。

「……そうか」

 それが悪いことだとは思えない。
 そう言いたいのだが、慰めるのは違う気がする。
 親友の想いに対して、あまりにも陳腐に思えてしまうのだ。

「そんなの当たり前じゃない」

 だが、小娘はそんなことはおかまいなしだ。
 あっさりと、そう言い放つ。

「わたしたちは独りでは生きてはいけないわ。たとえ、ニンゲンから逃げたとしても、それは変わらない。蜂に蜜を提供する代わりに受粉を手伝ってもらったりね。要はだれを共存相手に選ぶかよ」

 初対面の相手に対しても、自分の思ったことを、はっきりという。
 思えば、吾輩も初対面のときは、小娘のことを高飛車だと感じたものだ。
 だが、それは自分の芯を持っているということなのだと、長く付き合ううちに分かった。

「蜂に受粉してもらうのは、オレたちの知恵だ。あいつらを利用しているだけだろう?」

 親友もそう簡単に自分の考えを変えられないのだろう。
 反論する。
 だが、頭から否定しないところを見ると、小娘の話に興味があるようだ。

「蜂にだって選ぶ権利はあるわ。わたしたちより甘い蜜を提供できる存在もいるのよ。量が足りないから、わたちたちにもよってきてくれているだけ。一方的に利用していると考えるのは傲慢よ」

 小娘も感情的になっているわけではなく、正しいと思うことを相手に説明しているだけのようだ。

「……」

 親友もそれが分かっているのか、感情的になることはない。
 静かに話を聞いている。

「独りで生きていけるなんて思うのは、周りにお世話になっていることに気づかない、薄情者ってだけよ。わたしに言わせれば、ただの甘えね」

 言い方はキツイが、諭すような話し方だ。

「……なるほどな」

 しばし、黙考していた親友だが、理解の声を出す。

「だが、それでもオレが外の世界に憧れていることは変わらない」

 それはそうだろう。
 長い間の夢なのだ。
 簡単に諦められるわけがない。

「それは別にいいと思うわ。ニンゲンが必ずしも最適な共存相手とは限らないもの。わたしは良い相手だと思っているけどね」

 相手を否定するわけではない。
 自分の意見を主張するが、相手を否定するわけではない。
 小娘も成長したものだ。

 吾輩はどうなのだろう。
 成長できているだろうか。
 小娘は良い相手だと思ってくれているだろうか。

「あんた、いい女だな」

 親友の小娘に対する評価は、高いようだ。

「あら♪」

 小娘も満更でもなさそうだ。
 だから、一応言っておく。

「やらないぞ」

 親友といえど、譲れないものはある。

「♪」

 吾輩の言葉を聞いて、小娘は嬉しそうな顔をする。
 これなら、浮気の心配はないか。

「ふっ……お似合いだよ、お前たち」

 どうやら、親友と小娘は互いのことを気に入ったようだ。
 少し嫉妬しないでもないが、なんにせよ良かった。
 大切な人たちに険悪になって欲しくはないからな。
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