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エルフを創ってみよう
026.きょうだい喧嘩
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エルは木の影から様子をうかがうようにしたようだ。
悪くない選択だと思う。
ぼたんの近くには大量の豚達がいるので、近付くのも大変だろう。
そんなエルの行動に合わせるように、ド○ーンから映像が送られてくる。
映像の中心は、エルの視線の先にいる、ぼたんの姿だ。
『……ぷぎーっ……いい男ってなかなかいないなぁ……』
ぼたんが目の前で正座している全裸男を足先でツンツンしながら溜息をつく。
そして、鬱憤を晴らすように、腰掛けている四つん這いの全裸男の尻をペチーンと叩く。
尻を叩かれた全裸男が、ブヒッと鳴く。
叩かれて恍惚としているように見えるのは気のせいだろうか。
「ねえ、教授。あの男の人なんだか……いえ、なんでもありません」
「たぶん、Mだな」
「言葉を濁したんだから、わざわざ言わないでください!」
我が助手も同じことを思ったようなので、気のせいではなかったようだ。
まあ、どうでもいいことだが。
『……ぷぎーっ……パパみたいなイケメンって、なかなかいないってことね……』
ぼたんが、ペチンペチンとリズムよく尻を叩く。
それに合わせるように、ブヒッブヒッと全裸男が鳴く。
なんというか、嫌なオーケストラだ。
「ぼたん、男の趣味まで悪くなって……教授のことをイケメンだなんて」
「イケメンじゃなくて悪かったな」
「きっと、会えなくて美化されているんですね」
ずいぶんな言われようだ。
吾輩は自分のことをイケメンなどとは思っていないが、平均的な容姿だとは思っている。
それに、体調管理には気を付けているから太ってはいなし、清潔にもしている。
そこまで言われるほど、ひどくはないと思うのだが。
『……繁殖に必要なものを手に入れようと思ったのに、どうしようかな……』
吾輩と我が助手の会話とは関係なく、映像の中のぼたんは語り続けている。
ぼたんの目的は、やはり繁殖のようだ。
豚達に連れて来させた男の中から相手を選ぼうとしているようだが、気に入った相手がいないといったところか。
別に悪いことではない。
優秀な子孫を残すために、相手を選ぶのは当然のことだ。
しかし、語っている内容からすると、ぼたんはまだ繁殖に関する行為をしたことがないようだ。
今もどうするか考え込んでいる。
『……やっぱり、パパを……』
『姉様!』
そんなぼたんの思考を、別の声が遮る。
言うまでもなく、エルだ。
木の影から出て、ぼたんに届くように大声を上げている。
その声に反応して、ド○ーンがエルとぼたんが映るように位置を変える。
「教授、この映像ですけど、映画みたいに都合よくカメラの位置が変化していませんか?」
「変化しているな」
「……たまたまですか?」
「たまたまではないぞ。対象の行動や周囲の状況から判断して、見所を逃さないようにする機能を搭載しているからな」
「そんな無駄な機能を搭載するくらいなら、音声を届ける機能を搭載してくださいよ!」
「情報処理系の機能はセンター側に機能を持たせることができるが、音声を届ける機能はスピーカーが必要になる。重量が増すと飛行時間や飛行速度に影響が出るから、搭載を見送ったのだ」
「そのせいで、エルちゃん、囲まれちゃっているじゃないですか!」
「次回は搭載を検討しよう」
ちなみに、我が助手には言わなかったが、搭載を見送った理由は重量だけではない。
研究のために生物を観察する場合、対象にはできるだけ干渉しない方がよい。
干渉してしまうと、本来の行動とは違う行動をしてしまう可能性があるからだ。
そういう理由もあって、スピーカーは搭載しなかった。
ただ、この場でそれを言うと、我が助手が騒ぎそうだったので、言わなかったのだ。
それに、どちらにしろ、今からではどうしようもない。
送られてくる映像を見るしかないのだ。
『ぷぎっ? 誰?』
『姉様! 父様と母様が困っています! 帰ってきてください!』
映像の中では、豚達が統率の取れた動きでエルを包囲していた。
エルはその中心で怯えることなく、ぼたんに向かって叫んでいる。
ぼたんは、そんなエルをじっと見ていたが、やがて何かに気付いたように、顔を笑みに変える。
『そっか……そっかそっか……君がそうなんだね♪』
『ボクは姉様のおと――』
『君が私からパパを奪った泥棒猫なんだね♪』
『え?』
そういえば、ぼたんはエルに嫉妬して飛び出したのだった。
その相手が連れ戻しに行ったとしても、説得に応じるわけがない。
『ぷぎーっ! 全員突撃!』
『姉様!?』
ぼたんが号令をかけると、エルを包囲していた豚達が、エルに向かった殺到する。
エルは驚いた声を上げながらも冷静だった。
隠れていた木に素早く登ると、弓に矢をつがえて、迫ってきていた先頭の豚を射る。
『プギッ!』
矢の刺さった豚が悲鳴を上げ、それを聴いた豚達の足が止まる。
そこへ威嚇するようにエルが再び矢を放つ。
その矢は豚に刺さることは無かったが、矢を放ったのがエルであることを豚達に教えていた。
良い手だと思う。
動物は危険を感じたら本能的に逃げる。
家畜である豚とて例外ではない。
ただし――
『ぷぎーっ! 敵は泥棒猫一匹! 怯むな!』
『わあっ!?』
――訓練された豚は、その限りではない。
悪くない選択だと思う。
ぼたんの近くには大量の豚達がいるので、近付くのも大変だろう。
そんなエルの行動に合わせるように、ド○ーンから映像が送られてくる。
映像の中心は、エルの視線の先にいる、ぼたんの姿だ。
『……ぷぎーっ……いい男ってなかなかいないなぁ……』
ぼたんが目の前で正座している全裸男を足先でツンツンしながら溜息をつく。
そして、鬱憤を晴らすように、腰掛けている四つん這いの全裸男の尻をペチーンと叩く。
尻を叩かれた全裸男が、ブヒッと鳴く。
叩かれて恍惚としているように見えるのは気のせいだろうか。
「ねえ、教授。あの男の人なんだか……いえ、なんでもありません」
「たぶん、Mだな」
「言葉を濁したんだから、わざわざ言わないでください!」
我が助手も同じことを思ったようなので、気のせいではなかったようだ。
まあ、どうでもいいことだが。
『……ぷぎーっ……パパみたいなイケメンって、なかなかいないってことね……』
ぼたんが、ペチンペチンとリズムよく尻を叩く。
それに合わせるように、ブヒッブヒッと全裸男が鳴く。
なんというか、嫌なオーケストラだ。
「ぼたん、男の趣味まで悪くなって……教授のことをイケメンだなんて」
「イケメンじゃなくて悪かったな」
「きっと、会えなくて美化されているんですね」
ずいぶんな言われようだ。
吾輩は自分のことをイケメンなどとは思っていないが、平均的な容姿だとは思っている。
それに、体調管理には気を付けているから太ってはいなし、清潔にもしている。
そこまで言われるほど、ひどくはないと思うのだが。
『……繁殖に必要なものを手に入れようと思ったのに、どうしようかな……』
吾輩と我が助手の会話とは関係なく、映像の中のぼたんは語り続けている。
ぼたんの目的は、やはり繁殖のようだ。
豚達に連れて来させた男の中から相手を選ぼうとしているようだが、気に入った相手がいないといったところか。
別に悪いことではない。
優秀な子孫を残すために、相手を選ぶのは当然のことだ。
しかし、語っている内容からすると、ぼたんはまだ繁殖に関する行為をしたことがないようだ。
今もどうするか考え込んでいる。
『……やっぱり、パパを……』
『姉様!』
そんなぼたんの思考を、別の声が遮る。
言うまでもなく、エルだ。
木の影から出て、ぼたんに届くように大声を上げている。
その声に反応して、ド○ーンがエルとぼたんが映るように位置を変える。
「教授、この映像ですけど、映画みたいに都合よくカメラの位置が変化していませんか?」
「変化しているな」
「……たまたまですか?」
「たまたまではないぞ。対象の行動や周囲の状況から判断して、見所を逃さないようにする機能を搭載しているからな」
「そんな無駄な機能を搭載するくらいなら、音声を届ける機能を搭載してくださいよ!」
「情報処理系の機能はセンター側に機能を持たせることができるが、音声を届ける機能はスピーカーが必要になる。重量が増すと飛行時間や飛行速度に影響が出るから、搭載を見送ったのだ」
「そのせいで、エルちゃん、囲まれちゃっているじゃないですか!」
「次回は搭載を検討しよう」
ちなみに、我が助手には言わなかったが、搭載を見送った理由は重量だけではない。
研究のために生物を観察する場合、対象にはできるだけ干渉しない方がよい。
干渉してしまうと、本来の行動とは違う行動をしてしまう可能性があるからだ。
そういう理由もあって、スピーカーは搭載しなかった。
ただ、この場でそれを言うと、我が助手が騒ぎそうだったので、言わなかったのだ。
それに、どちらにしろ、今からではどうしようもない。
送られてくる映像を見るしかないのだ。
『ぷぎっ? 誰?』
『姉様! 父様と母様が困っています! 帰ってきてください!』
映像の中では、豚達が統率の取れた動きでエルを包囲していた。
エルはその中心で怯えることなく、ぼたんに向かって叫んでいる。
ぼたんは、そんなエルをじっと見ていたが、やがて何かに気付いたように、顔を笑みに変える。
『そっか……そっかそっか……君がそうなんだね♪』
『ボクは姉様のおと――』
『君が私からパパを奪った泥棒猫なんだね♪』
『え?』
そういえば、ぼたんはエルに嫉妬して飛び出したのだった。
その相手が連れ戻しに行ったとしても、説得に応じるわけがない。
『ぷぎーっ! 全員突撃!』
『姉様!?』
ぼたんが号令をかけると、エルを包囲していた豚達が、エルに向かった殺到する。
エルは驚いた声を上げながらも冷静だった。
隠れていた木に素早く登ると、弓に矢をつがえて、迫ってきていた先頭の豚を射る。
『プギッ!』
矢の刺さった豚が悲鳴を上げ、それを聴いた豚達の足が止まる。
そこへ威嚇するようにエルが再び矢を放つ。
その矢は豚に刺さることは無かったが、矢を放ったのがエルであることを豚達に教えていた。
良い手だと思う。
動物は危険を感じたら本能的に逃げる。
家畜である豚とて例外ではない。
ただし――
『ぷぎーっ! 敵は泥棒猫一匹! 怯むな!』
『わあっ!?』
――訓練された豚は、その限りではない。
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