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獣人を創ってみよう
047.浮気は匂いでバレる
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『くんくんくんくんくんくん』
『や、やめて』
ぼたんがアルバイト要員の匂いを嗅ぎまくっている。
アルバイト要員が拒絶の意思を示すが、やめる様子はない。
吾輩の匂いがすると言っていたが、ぼたんの遺伝子に組み込んだ豚は鼻がよかっただろうか。
アルバイト要員とは、仕事内容の説明のときに会っているから、匂いが付着している可能性はなくはない。
しかし、それはとても微かなはずだ。
豚はトリュフを見つけるときに利用すると聞いたことがある。
特定の匂いに敏感なのかも知れないな。
あとは、アルバイト要員が身に着けている耳と尻尾に吾輩の匂いが付着している可能性があるか。
あれは吾輩が創ったものだ。
「……教授、アルバイトの子に手を出していないですよね?」
吾輩がぼたんの嗅覚について考察していると、我が助手がジト目で問いかけてきた。
やましいことをした覚えがない吾輩は、その問いかけに即答する。
「それは性的に手を出すという意味か? だとしたら、出していないぞ。吾輩がそんなことをするわけがないだろう」
「そうですよね。イケメンでもないし、研究費に困るくらいお金が無い教授を、若い子が相手にするはずないですよね」
「…………」
手を出していないという認識は合っているが、理由に見解の相違があるようだな。
まあ、いい。
手を出していないのは本当だ。
世界を救うための研究をしている吾輩に、そんな暇はない。
アルバイト要員に対しておこなったことと言えば、せいぜい遺伝子を置き換える耳と尻尾を渡した程度だ。
それも、別に下心があっての貢物というわけではない。
研究費を稼ぐためにグッズの売り上げを向上させる目的なので、いわば研究の一環だ。
『あなた、発情したメスネコの匂いがする』
そうこうしているうちに、ぼたんはさらに匂いを嗅ぎ分けたようだ。
そんなコメントを口にする。
『ひ、ひどい! 私、発情なんてしてない!』
そのコメントに対して、匂いを嗅がれているアルバイト要員が顔を赤くして否定する。
しかし、潤んだ瞳と火照った肌が、どことなく色っぽい。
そういえば、熱を出したアルバイト要員がいると報告があったが、匂いを嗅がれているのが該当者だろうか。
病気で熱を出したのではなく、そういう周期が原因で身体を火照らせているのだとしたら、ぼたんの指摘が正しい可能性がある。
吾輩が渡した耳と尻尾は動物としての本能を増幅させる効果があるので、そういう状態になってもおかしくはない。
『発情したメスネコにパパの匂いが……』
嗅ぎ分けた匂いをもとに、ぼたんがぶつぶつと独り言を言いながら考え事をしている。
『……パパ、浮気?』
そして結論を出したようだ。
的外れな結論だが、アルバイト要員とのスマホによる通話はいったん切っているので、即座に否定の言葉を届けることができない。
その結果、その結論はぼたんの中で事実として認識されてしまったようだ。
ぼたんの笑みが深く冷たくなる。
『その耳……そっか、あなた、パパの新しい子供なんだね。じゃあ、パパが喜ぶことをしないといけないよね』
ぼたんはそう言って、アルバイト要員の腕を捕まえる。
アルバイト要員が、吾輩が創り出した存在だというのは、ぼたんの勘違いだ。
ただし、アルバイト要員が身に着けている耳と尻尾を吾輩が創り出したのは勘違いではない。
半分正解で半分不正解といったところだろうか。
だが、どちらにしろ、ぼたんにとっては、アルバイト要員が吾輩の匂いを付けているのが気に入らないようだ。
『は、離して!』
アルバイト要員が腕を振りほどこうとするが、ぼたんによる拘束はピクリともしない。
ぼたんは逆に顔を近付けて、アルバイト要員に囁く。
『でもね。あなたがパパと子供を作るのはダメよ。パパと子供を作るのは私なの』
『ひっ! そ、そんなつもり無い!』
アルバイト要員が怯えながら、ぼたんの言葉を否定する。
アルバイト要員の言葉は本心なのだろうが、ぼたんにとっては言い訳にしか聞こえないらしい。
その言葉を無視して、一方的に伝える。
『大丈夫。あなたの相手は私があてがってあげる』
ぼたんは、慈愛に満ちた笑顔でアルバイト要員に宣言する。
目のハイライトは消えたままだったが、とてもよい笑顔だ。
『あなたは豚と子作りするのがお似合いよ♪』
そう言うと、ぼたんはアルバイト要員を肩に担ぐ。
そして、連れてきていた男達に大声で指示を出す。
『下僕達! 帰るよ!』
『離してーーーッ!!!』
ぼたんと男達がイベント会場の出口の方へ駆けていき、そのまま消えていく。
アルバイト要員は、ぼたんに担がれたままだ。
一瞬のことに、野次馬達はぽかんとしている。
「ふむ」
その様子をテレビ中継で見ていた吾輩は思った。
「ぼたんは豚の遺伝子を持っているからな。豚をあてがうというのは、ぼたんにとっては親切心なのだろう」
とはいえ、ぼたんと違って、子供ができる可能性は無い。
連れ去られたアルバイト要員が身に着けていたのは耳と尻尾は猫のものだった。
ベースの種族が違うのだから、耳と尻尾による遺伝子の置き換えが進んだとしても、子供を作るのは無理だろう。
「獣姦じゃないですか、アホーーーッ!」
吾輩の感想を聞いて、即座に我が助手が拳を振るってきた。
『や、やめて』
ぼたんがアルバイト要員の匂いを嗅ぎまくっている。
アルバイト要員が拒絶の意思を示すが、やめる様子はない。
吾輩の匂いがすると言っていたが、ぼたんの遺伝子に組み込んだ豚は鼻がよかっただろうか。
アルバイト要員とは、仕事内容の説明のときに会っているから、匂いが付着している可能性はなくはない。
しかし、それはとても微かなはずだ。
豚はトリュフを見つけるときに利用すると聞いたことがある。
特定の匂いに敏感なのかも知れないな。
あとは、アルバイト要員が身に着けている耳と尻尾に吾輩の匂いが付着している可能性があるか。
あれは吾輩が創ったものだ。
「……教授、アルバイトの子に手を出していないですよね?」
吾輩がぼたんの嗅覚について考察していると、我が助手がジト目で問いかけてきた。
やましいことをした覚えがない吾輩は、その問いかけに即答する。
「それは性的に手を出すという意味か? だとしたら、出していないぞ。吾輩がそんなことをするわけがないだろう」
「そうですよね。イケメンでもないし、研究費に困るくらいお金が無い教授を、若い子が相手にするはずないですよね」
「…………」
手を出していないという認識は合っているが、理由に見解の相違があるようだな。
まあ、いい。
手を出していないのは本当だ。
世界を救うための研究をしている吾輩に、そんな暇はない。
アルバイト要員に対しておこなったことと言えば、せいぜい遺伝子を置き換える耳と尻尾を渡した程度だ。
それも、別に下心があっての貢物というわけではない。
研究費を稼ぐためにグッズの売り上げを向上させる目的なので、いわば研究の一環だ。
『あなた、発情したメスネコの匂いがする』
そうこうしているうちに、ぼたんはさらに匂いを嗅ぎ分けたようだ。
そんなコメントを口にする。
『ひ、ひどい! 私、発情なんてしてない!』
そのコメントに対して、匂いを嗅がれているアルバイト要員が顔を赤くして否定する。
しかし、潤んだ瞳と火照った肌が、どことなく色っぽい。
そういえば、熱を出したアルバイト要員がいると報告があったが、匂いを嗅がれているのが該当者だろうか。
病気で熱を出したのではなく、そういう周期が原因で身体を火照らせているのだとしたら、ぼたんの指摘が正しい可能性がある。
吾輩が渡した耳と尻尾は動物としての本能を増幅させる効果があるので、そういう状態になってもおかしくはない。
『発情したメスネコにパパの匂いが……』
嗅ぎ分けた匂いをもとに、ぼたんがぶつぶつと独り言を言いながら考え事をしている。
『……パパ、浮気?』
そして結論を出したようだ。
的外れな結論だが、アルバイト要員とのスマホによる通話はいったん切っているので、即座に否定の言葉を届けることができない。
その結果、その結論はぼたんの中で事実として認識されてしまったようだ。
ぼたんの笑みが深く冷たくなる。
『その耳……そっか、あなた、パパの新しい子供なんだね。じゃあ、パパが喜ぶことをしないといけないよね』
ぼたんはそう言って、アルバイト要員の腕を捕まえる。
アルバイト要員が、吾輩が創り出した存在だというのは、ぼたんの勘違いだ。
ただし、アルバイト要員が身に着けている耳と尻尾を吾輩が創り出したのは勘違いではない。
半分正解で半分不正解といったところだろうか。
だが、どちらにしろ、ぼたんにとっては、アルバイト要員が吾輩の匂いを付けているのが気に入らないようだ。
『は、離して!』
アルバイト要員が腕を振りほどこうとするが、ぼたんによる拘束はピクリともしない。
ぼたんは逆に顔を近付けて、アルバイト要員に囁く。
『でもね。あなたがパパと子供を作るのはダメよ。パパと子供を作るのは私なの』
『ひっ! そ、そんなつもり無い!』
アルバイト要員が怯えながら、ぼたんの言葉を否定する。
アルバイト要員の言葉は本心なのだろうが、ぼたんにとっては言い訳にしか聞こえないらしい。
その言葉を無視して、一方的に伝える。
『大丈夫。あなたの相手は私があてがってあげる』
ぼたんは、慈愛に満ちた笑顔でアルバイト要員に宣言する。
目のハイライトは消えたままだったが、とてもよい笑顔だ。
『あなたは豚と子作りするのがお似合いよ♪』
そう言うと、ぼたんはアルバイト要員を肩に担ぐ。
そして、連れてきていた男達に大声で指示を出す。
『下僕達! 帰るよ!』
『離してーーーッ!!!』
ぼたんと男達がイベント会場の出口の方へ駆けていき、そのまま消えていく。
アルバイト要員は、ぼたんに担がれたままだ。
一瞬のことに、野次馬達はぽかんとしている。
「ふむ」
その様子をテレビ中継で見ていた吾輩は思った。
「ぼたんは豚の遺伝子を持っているからな。豚をあてがうというのは、ぼたんにとっては親切心なのだろう」
とはいえ、ぼたんと違って、子供ができる可能性は無い。
連れ去られたアルバイト要員が身に着けていたのは耳と尻尾は猫のものだった。
ベースの種族が違うのだから、耳と尻尾による遺伝子の置き換えが進んだとしても、子供を作るのは無理だろう。
「獣姦じゃないですか、アホーーーッ!」
吾輩の感想を聞いて、即座に我が助手が拳を振るってきた。
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