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殺人教唆のススメ
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今日のお客様は大学生くらいの二人組です。
男性と女性ですがカップルなのでしょうか。
男性は苦いコーヒーに砂糖をたっぷりと入れて飲んでいます。
女性は紅茶に何も入れずに香りを楽しんでいます。
今日はこの二人の会話に耳を傾けてみましょう。
「なあ、人を殺したいと思ったことってあるか?」
おっと、いきなり過激な発言が男性から飛び出しました。
向かいに座っている女性も、ぎょっとしています。
「警察に行くなら、付き合ってあげようか?」
女性が労わるように男性に声をかけます。
今度は男性の方が、ぎょっとしました。
「実際に人を殺したって言っているわけじゃねえよ!」
「じゃあ、私が人を殺したって疑っているの?」
「違うって!」
どうやら、たとえ話のようです。
女性がほっとした表情になります。
「なんだ。それで、何の話だっけ?」
「人を殺したいと思ったことはあるかって聞いたんだよ」
「そんな物騒なことを考えたことなんてないわよ」
「別に本気で殺意を持ったかなんて聞いてないさ」
男性の言葉に、女性は少し考えます。
そして、口を開きます。
「宿題をいっぱい出す高校の先生や、セクハラしてくる大学の教授に腹が立ったことはあるわね」
「おまえ、セクハラされているのか?」
「言葉で言われただけよ」
男性が怖い顔になりかけましたが、女性が上手くなだめました。
この二人の力関係を察することができる光景です。
「そうか」
「そうよ」
二人はそれぞれ手元にある飲み物を一口飲みます。
夫婦は動作が似ると言いますが、この二人もそういう関係なのでしょうか。
「そういうとき、どうする?」
「どうするって、どうもしないわよ。友達に愚痴を言うくらいね」
「その友達って男?」
「女友達よ」
二人はまた飲み物を一口飲みます。
どうも話が脱線しがちです。
でも、とっとと話を進めろとは言えません。
お客様はただ会話をしているだけであって、漫才をしているわけではないのです。
ときには、この喫茶店にいる間に話が会話が終わらないこともあります。
でも、それも醍醐味です。
そういうときは、会話の続きを想像するのも楽しいものです。
おっと、二人の会話が再開するようです。
「人を殺したいと思っても、本当に殺すわけにはいかないよな」
「そうね」
「そういうときは、他人に殺してくれって頼むといいと思うんだよ」
「なんで?」
「頼んだ相手も同じ人間を殺したいと思っていたら、殺してくれるかも知れないだろ」
「それ、殺人教唆っていう犯罪よ」
その通りです。
そして、殺人教唆は重罪です。
殺人を犯した人と同じくらい重い罪になります。
もし、男性が殺人教唆をしたのなら、大変なことです。
でも、女性の言葉を聞いても、男性に慌てた様子はありません。
実際に殺人教唆をしたわけではないのでしょう。
これも、たとえ話のようです。
「まあ、聞けって。もし自分が殺したいと思っても、他人が殺すほどではないと思ったら殺さないだろ」
「それはそうよ」
「でも、自分も他人も殺したいと思ったら、そいつは殺されても仕方がない人間ってことにならないか?」
男性に質問されて、女性が困っています。
過激な質問ですが、一理あるからでしょう。
その証拠に、女性は男性の言葉自体は否定していません。
「うーん、どうだろ。殺したい理由にもよると思う」
「理由が恨みじゃないなら、誰かが止めるだろ」
「そんなに単純かな。たとえば、お金に困っていたら、恨みがなくても犯罪を犯す場合はありそうよ」
「そういう細かい話は置いておいてさ、人を殺したくなったら、他人に頼むといいと思うんだよ」
女性が男性の言葉を肯定するか迷っている間に、男性は持論を展開していきます。
「他人に頼んでも、殺したいと思っている仲間が一人二人なら、実際に殺したりはしないだろ」
「殺人は罪が重いから当たり前よ」
「でも、殺したいと思っている仲間が何十人になったら、どうだ?完全犯罪も可能そうじゃないか?」
「罪は隠せるかも知れないけど、人道的には問題があるわよ」
「何十人もの人間に殺したいと思われる人間の方が、問題があるだろ」
「まあ・・・そうかもね」
ついに女性が男性の言葉を肯定しました。
控え目ではありましたが、否定しないだけでなく、肯定したのです。
「だから、人を殺したいと思ったら、まず他人に頼むべきだと思うんだよ。
殺人教唆は罪ってことになっているけど、推奨されてもいいくらいだと思わないか?」
ひどい暴論です。
ですが、一理あるとも思ってしまいます。
多くの人間が殺すべきだと判断して殺すというのは、裁判での死刑判決に似ています。
ときに人を死刑にする刑法も、多くの人間の価値観によって生まれたものだからです。
私はそういう感想を持ちましたが、女性は男性の持論を認めるのが悔しかったようです。
意地悪そうな顔で口を開きます。
「そうね。じゃあ、あなたが浮気をしたら、私も人に頼むことにするわ」
「おいおい、勘弁してくれよ」
それでこの話題は終わったようです。
二人は飲み物を一口飲むと、別の話題を始めました。
そして、飲み物が無くなると席を立ちます。
「お会計お願いします」
「ありがとうございました」
今日はとても興味深い話を聞くことができました。
明日はどんな話を聞くことができるでしょうか。
男性と女性ですがカップルなのでしょうか。
男性は苦いコーヒーに砂糖をたっぷりと入れて飲んでいます。
女性は紅茶に何も入れずに香りを楽しんでいます。
今日はこの二人の会話に耳を傾けてみましょう。
「なあ、人を殺したいと思ったことってあるか?」
おっと、いきなり過激な発言が男性から飛び出しました。
向かいに座っている女性も、ぎょっとしています。
「警察に行くなら、付き合ってあげようか?」
女性が労わるように男性に声をかけます。
今度は男性の方が、ぎょっとしました。
「実際に人を殺したって言っているわけじゃねえよ!」
「じゃあ、私が人を殺したって疑っているの?」
「違うって!」
どうやら、たとえ話のようです。
女性がほっとした表情になります。
「なんだ。それで、何の話だっけ?」
「人を殺したいと思ったことはあるかって聞いたんだよ」
「そんな物騒なことを考えたことなんてないわよ」
「別に本気で殺意を持ったかなんて聞いてないさ」
男性の言葉に、女性は少し考えます。
そして、口を開きます。
「宿題をいっぱい出す高校の先生や、セクハラしてくる大学の教授に腹が立ったことはあるわね」
「おまえ、セクハラされているのか?」
「言葉で言われただけよ」
男性が怖い顔になりかけましたが、女性が上手くなだめました。
この二人の力関係を察することができる光景です。
「そうか」
「そうよ」
二人はそれぞれ手元にある飲み物を一口飲みます。
夫婦は動作が似ると言いますが、この二人もそういう関係なのでしょうか。
「そういうとき、どうする?」
「どうするって、どうもしないわよ。友達に愚痴を言うくらいね」
「その友達って男?」
「女友達よ」
二人はまた飲み物を一口飲みます。
どうも話が脱線しがちです。
でも、とっとと話を進めろとは言えません。
お客様はただ会話をしているだけであって、漫才をしているわけではないのです。
ときには、この喫茶店にいる間に話が会話が終わらないこともあります。
でも、それも醍醐味です。
そういうときは、会話の続きを想像するのも楽しいものです。
おっと、二人の会話が再開するようです。
「人を殺したいと思っても、本当に殺すわけにはいかないよな」
「そうね」
「そういうときは、他人に殺してくれって頼むといいと思うんだよ」
「なんで?」
「頼んだ相手も同じ人間を殺したいと思っていたら、殺してくれるかも知れないだろ」
「それ、殺人教唆っていう犯罪よ」
その通りです。
そして、殺人教唆は重罪です。
殺人を犯した人と同じくらい重い罪になります。
もし、男性が殺人教唆をしたのなら、大変なことです。
でも、女性の言葉を聞いても、男性に慌てた様子はありません。
実際に殺人教唆をしたわけではないのでしょう。
これも、たとえ話のようです。
「まあ、聞けって。もし自分が殺したいと思っても、他人が殺すほどではないと思ったら殺さないだろ」
「それはそうよ」
「でも、自分も他人も殺したいと思ったら、そいつは殺されても仕方がない人間ってことにならないか?」
男性に質問されて、女性が困っています。
過激な質問ですが、一理あるからでしょう。
その証拠に、女性は男性の言葉自体は否定していません。
「うーん、どうだろ。殺したい理由にもよると思う」
「理由が恨みじゃないなら、誰かが止めるだろ」
「そんなに単純かな。たとえば、お金に困っていたら、恨みがなくても犯罪を犯す場合はありそうよ」
「そういう細かい話は置いておいてさ、人を殺したくなったら、他人に頼むといいと思うんだよ」
女性が男性の言葉を肯定するか迷っている間に、男性は持論を展開していきます。
「他人に頼んでも、殺したいと思っている仲間が一人二人なら、実際に殺したりはしないだろ」
「殺人は罪が重いから当たり前よ」
「でも、殺したいと思っている仲間が何十人になったら、どうだ?完全犯罪も可能そうじゃないか?」
「罪は隠せるかも知れないけど、人道的には問題があるわよ」
「何十人もの人間に殺したいと思われる人間の方が、問題があるだろ」
「まあ・・・そうかもね」
ついに女性が男性の言葉を肯定しました。
控え目ではありましたが、否定しないだけでなく、肯定したのです。
「だから、人を殺したいと思ったら、まず他人に頼むべきだと思うんだよ。
殺人教唆は罪ってことになっているけど、推奨されてもいいくらいだと思わないか?」
ひどい暴論です。
ですが、一理あるとも思ってしまいます。
多くの人間が殺すべきだと判断して殺すというのは、裁判での死刑判決に似ています。
ときに人を死刑にする刑法も、多くの人間の価値観によって生まれたものだからです。
私はそういう感想を持ちましたが、女性は男性の持論を認めるのが悔しかったようです。
意地悪そうな顔で口を開きます。
「そうね。じゃあ、あなたが浮気をしたら、私も人に頼むことにするわ」
「おいおい、勘弁してくれよ」
それでこの話題は終わったようです。
二人は飲み物を一口飲むと、別の話題を始めました。
そして、飲み物が無くなると席を立ちます。
「お会計お願いします」
「ありがとうございました」
今日はとても興味深い話を聞くことができました。
明日はどんな話を聞くことができるでしょうか。
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