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第一章 灰かぶり
021.提案
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「なっ!」
後ろから声が聞こえた。
ストーカー王子の声だ。
「何を言っているんだ、シンデレラ!いや、それ以前に、その子供は何者なんだ!」
どうやら、非日常的な光景を見せられたショックから回復してしまったらしい。
面倒な。
「この子供は、私が呼び出した悪魔です。今は契約の交渉中なので、邪魔をしないでください」
「あ、悪魔?なにを馬鹿なことを・・・」
「ガラスの靴の製造方法が知りたいのでしょう?あれは、この悪魔からもらったものなので、この悪魔に教えてもらうしかありません。あなたの願いを叶えてあげるのですから、わかったら、黙っていてください」
「違う!そんなことなんか願っていない!それに寿命を払うって、どういうことだ!」
「定番でしょう?魂と引き換えに悪魔に願いを叶えてもらうのは」
まあ、願いの価値に対して、対価がどのくらい必要なのかが分からなかったので、寿命で提案したのだ。
数年で足りるのか、数十年が必要なのかは知らない。
私にとっては、どちらも大して変わりは無い。
どうせ、人生の目的なんて崇高なものは持っていない。
もう少し生きたいとは思うけれど。
なのに、ストーカー王子が余計なことを言い出す。
「なら、僕が寿命を払う!シンデレラが払う必要はない!」
何を言い出すのだ、こいつは。
王子としての自分の立場が分かっているのだろうか。
せっかく、求めていたものが、タダで手に入るというのに、わざわざ損をしようとする態度が分からない。
それに、それ以前にストーカー王子が対価を払うことはできない。
子供を呼び出したのは私で、私が契約者なのだ。
「ほう?」
だというのに、子供がストーカー王子の言葉に興味を示した。
「何やら興味深い状況になっているよですな。私を呼び出したのは、お嬢さんですが、願いはその男のもの。そして、対価を払う払わないで揉めていると」
「・・・言っておくけど、あなたを呼び出したのは私よ?」
「わかっておりますとも。ですが、契約には抜け穴というものがありましてな。よろしければ、お嬢さんが自分の寿命を対価として払わなくてもすむ方法を教えしましょうか?」
マズい。
悪魔は契約には厳密だ。
その悪魔が契約の抜け穴を語る。
こちらに有利な内容であるはずがない。
抜け穴どころか、落とし穴にハマるだけだ。
「なんだ、それは!」
「王子!」
話を聞こうとする王子を制しようとするが、止められそうもない。
「まず、今のままでは、あなたが望む望まないに関わらず、あなたが対価を払うことはできません。しかし、お嬢さんに所有権があるものであれば、お嬢さん自身でなくとも対価として成立します」
それは事実だ。
だからこそ私は、前回の使用人達や今回の暗殺者を生贄にすることができた。
子供の言葉を聞いて、ストーカー王子が質問を投げかける。
「それは、僕とシンデレラが、その・・・結婚したとしたら、僕の寿命で払えるということか?」
ストーカー王子が顔を赤くして、そんなことを言う。
赤くなるくらいなら、言わなければいいのに。
どうせ、私とストーカー王子が結婚することなんて、ないのだから。
「夫婦ですか?まあ、互いに互いを所有していると言えなくもないですから、不可能ではないでしょう。ですが、それは二人が同意してないと契約が成立しませんから、難しいでしょうな。例えば、非所有者であるあなたが自分の寿命で払うといったところで、所有者であるお嬢さんが認めなければ、契約は成立しません」
「なら、どんな・・・」
「奴隷と主人が代表的ですな。それなら所有者と非所有者が明確です。他には、戦争で捕虜にした者や、王が納める国の国民なども・・・」
「さっきの願いを取り消すわ!」
ダメだ。
これ以上は危険だ。
私はストーカー王子と子供の会話を遮るように口を挟む。
願いを取り消してしまえば、王子が子供に話を訊く理由はなくなる。
そう考えたのだが、遅かったようだ。
「それは認められませんな。あなたは願いを言い、私の答えを待っている状態だ。今は私のターンであり、あなたから願いを破棄する権利はありません」
もし、子供がストーカー王子に興味を持つ前であれば、破棄は可能だったかも知れない。
しかし、ストーカー王子というカモを見つけた後では、答える権利を手放したりはしないだろう。
「・・・そうだったわね」
私は口を塞ぐしかない。
そのことは魔術書にも書かれていたし、師匠からも教えられていた。
だから、呼び出した者との会話には慎重になる必要があるということも。
他人を同席させるべきじゃなかった。
冷静なつもりだったけど、色々なことが起きて、感情的になっていたようだ。
後は前回の礼儀正しい老紳士の印象に甘えていたのかも知れない。
「さて、今ご説明した前提条件をもとに、私から提案があります」
「提案?」
ろくでもない提案な気がするが、私に止める権利はない。
「どちらにしろ、お嬢さん一人の寿命では、あれの製造方法の全てを教えることはできません。あれは、あなた達が考えているよりも、高度な技術が使われているのですよ」
「・・・・・」
なら、契約が成立しなかったものとすればいいのに、子供はそれをしない。
「製造方法は教えましょう。対価の支払いも、後払い、それも分割払いで結構ですよ」
寛容な提案のように聞こえるが、そうじゃない。
今は無理な支払いを、今後も続けろという意味だ。
「・・・払えるわけがないでしょう。私は貴族の血を引いているだけで、領地も持っていないし、家も出ているのよ」
悪足掻きだと分かってはいるが、そう言い返す。
「あなた一人の力では無理でしょうな。ですが、どうやら、あなたには協力してくれそうな相手がいるようだ」
子供はそう言って、ストーカー王子を見る。
やはり、それが狙いか。
ストーカー王子との縁を切るつもりで呼び出したのに、全く別の方向に状況が進んでいる。
それも、最悪な形で。
「払えるアテがあるのなら、契約は成立します。どうですかな?あなたには、このお嬢さんに協力する意志はありますかな?」
子供がそう問いかける。
ここでストーカー王子が否定すれば、全ては丸く収まる。
私一人が全ての寿命を支払って終わりだ。
願いは一部しか叶えられないかも知れないけど、それ以降に続くことはない。
しかし、ストーカー王子は、私が期待していない答えを返してしまう。
「シンデレラに協力する意志はある」
「・・・・・バカ王子」
ガラスの靴の製造方法を知るために、私を利用するつもりじゃなかったのか。
そう責めたい想いに駆られるが、私にはそれができない。
ストーカー王子は、私を助けるつもりで、そう答えたのだから。
厚意か好意かは知らないし、有難迷惑だけど。
「でも、具体的にはどうすればいいんだ?」
「お嬢さんが、他者を所有しているという状況を作ればよいのですよ。貴族として領地を与えるのでも、王の妃にして国を治める王族に加えるのでも、新たに国を興して女王にするのでも。いずれでも、構いません」
どれもこれも、無理難題だ。
そう、普通なら。
でも、ここにいるのは王族の一員だ。
簡単とは言えないが、実現する可能性が存在してしまう。
「わかった。僕がシンデレラに協力する」
「契約成立ですな」
契約者は私だ。
なのに、まるで子供とストーカー王子が契約したような状況になってしまっている。
私から契約を撤回することはできない。
私は既に願いを口にしてしまったから。
「それでは、私もあなた達に着いていくことにしましょう。お嬢さんに自殺でもされては、対価の取り立てができませんからな」
子供の言葉に、ストーカー王子が驚いた様子で、こちらを見てくる。
私は、最後の手段として考えていたことを子供に見抜かれ、目を逸らす。
どうやら、私は死ぬこともできないらしい。
「はぁ・・・」
溜息を吐く。
私は悪女として歴史に名前を残すことになりそうだ。
「わかったわよ!借金を返すために馬車馬のように働くわよ!それで、あなたの名前は何て言うの?ついてくるなら、名前が無いと不便でしょ」
子供に名前を問いかける。
悪魔が本当の名前を伝えるわけはないから、おそらくは偽名だろうけど、それでも呼び名がないと何かと都合が悪い。
「ふむ。それでは、メフィと呼んでもらえますかな」
「メフィ、ね」
「なんですかな?」
「いいえ?可愛らしい名前だと思っただけよ」
「性別は男ですが」
本当の感想は違う。
この子供があの悪魔だとしたら、安直な偽名だと思っただけだ。
もとの名前も偽名だから、そうしたのだろうけど。
「それで、まずは、どうするのですかな?」
メフィが、そう尋ねてくる。
それに答えたのは、私ではなく、ストーカー王子だった。
「王城に来て欲しい。シンデレラを婚約者として紹介したい」
「・・・・・」
まあ、ストーカー王子に協力してもらうなら、そうするのが都合がよいのは確かだ。
婚約者ならストーカー王子に会いに王城を訪れても不自然じゃない。
なんだか、釈然としないけど。
「わかりました。ついて行きますよ」
私が提案を受け入れると、ストーカー王子が嬉しそうな表情になる。
それを見て、不覚にも胸が高鳴る。
こんな状況じゃなければ、惚れていたかも知れない。
王族だけあって、顔は美形だし、性格も王族にありがちな他の者を見下す感じはしない。
・・・そう考えると、優良物件だな。
王族に関わる面倒はあるけど、そこまで拒絶しなくてもよかった気がする。
なんで私、メフィを呼び出してまで、縁を切ろうとしていたんだろう。
そうだ。
ストーカー王子が、ガラスの靴の製造方法を知るために、私を追いかけていたとか言ったからだ。
今にして思えば、あれは私を城に呼ぶための口実だったのだろう。
女の口説き方が下手過ぎる。
そう言えば、最初に逃げ出したのも、いきなり王城で一緒に暮らして欲しいとか言われたからだ。
よく知らない上に逆らえない相手にそんなことを言われたら、逃げるしかないだろうに。
「これから、よろしくお願いしますね」
もう、なんと言うか、色々と諦めた気分になった。
緊張感を解くと、自然と笑みがこぼれてしまう。
「う・・・うん!よろしく、シンデレラ!」
ストーカー王子が、顔を赤らめながら、子供のような返事を返してくる。
こうして、ガラスの靴を履いて舞踏会に行った私は、王子の婚約者としてお城で暮らすことになった。
幸せになれるかどうかは、まだ分からない。
後ろから声が聞こえた。
ストーカー王子の声だ。
「何を言っているんだ、シンデレラ!いや、それ以前に、その子供は何者なんだ!」
どうやら、非日常的な光景を見せられたショックから回復してしまったらしい。
面倒な。
「この子供は、私が呼び出した悪魔です。今は契約の交渉中なので、邪魔をしないでください」
「あ、悪魔?なにを馬鹿なことを・・・」
「ガラスの靴の製造方法が知りたいのでしょう?あれは、この悪魔からもらったものなので、この悪魔に教えてもらうしかありません。あなたの願いを叶えてあげるのですから、わかったら、黙っていてください」
「違う!そんなことなんか願っていない!それに寿命を払うって、どういうことだ!」
「定番でしょう?魂と引き換えに悪魔に願いを叶えてもらうのは」
まあ、願いの価値に対して、対価がどのくらい必要なのかが分からなかったので、寿命で提案したのだ。
数年で足りるのか、数十年が必要なのかは知らない。
私にとっては、どちらも大して変わりは無い。
どうせ、人生の目的なんて崇高なものは持っていない。
もう少し生きたいとは思うけれど。
なのに、ストーカー王子が余計なことを言い出す。
「なら、僕が寿命を払う!シンデレラが払う必要はない!」
何を言い出すのだ、こいつは。
王子としての自分の立場が分かっているのだろうか。
せっかく、求めていたものが、タダで手に入るというのに、わざわざ損をしようとする態度が分からない。
それに、それ以前にストーカー王子が対価を払うことはできない。
子供を呼び出したのは私で、私が契約者なのだ。
「ほう?」
だというのに、子供がストーカー王子の言葉に興味を示した。
「何やら興味深い状況になっているよですな。私を呼び出したのは、お嬢さんですが、願いはその男のもの。そして、対価を払う払わないで揉めていると」
「・・・言っておくけど、あなたを呼び出したのは私よ?」
「わかっておりますとも。ですが、契約には抜け穴というものがありましてな。よろしければ、お嬢さんが自分の寿命を対価として払わなくてもすむ方法を教えしましょうか?」
マズい。
悪魔は契約には厳密だ。
その悪魔が契約の抜け穴を語る。
こちらに有利な内容であるはずがない。
抜け穴どころか、落とし穴にハマるだけだ。
「なんだ、それは!」
「王子!」
話を聞こうとする王子を制しようとするが、止められそうもない。
「まず、今のままでは、あなたが望む望まないに関わらず、あなたが対価を払うことはできません。しかし、お嬢さんに所有権があるものであれば、お嬢さん自身でなくとも対価として成立します」
それは事実だ。
だからこそ私は、前回の使用人達や今回の暗殺者を生贄にすることができた。
子供の言葉を聞いて、ストーカー王子が質問を投げかける。
「それは、僕とシンデレラが、その・・・結婚したとしたら、僕の寿命で払えるということか?」
ストーカー王子が顔を赤くして、そんなことを言う。
赤くなるくらいなら、言わなければいいのに。
どうせ、私とストーカー王子が結婚することなんて、ないのだから。
「夫婦ですか?まあ、互いに互いを所有していると言えなくもないですから、不可能ではないでしょう。ですが、それは二人が同意してないと契約が成立しませんから、難しいでしょうな。例えば、非所有者であるあなたが自分の寿命で払うといったところで、所有者であるお嬢さんが認めなければ、契約は成立しません」
「なら、どんな・・・」
「奴隷と主人が代表的ですな。それなら所有者と非所有者が明確です。他には、戦争で捕虜にした者や、王が納める国の国民なども・・・」
「さっきの願いを取り消すわ!」
ダメだ。
これ以上は危険だ。
私はストーカー王子と子供の会話を遮るように口を挟む。
願いを取り消してしまえば、王子が子供に話を訊く理由はなくなる。
そう考えたのだが、遅かったようだ。
「それは認められませんな。あなたは願いを言い、私の答えを待っている状態だ。今は私のターンであり、あなたから願いを破棄する権利はありません」
もし、子供がストーカー王子に興味を持つ前であれば、破棄は可能だったかも知れない。
しかし、ストーカー王子というカモを見つけた後では、答える権利を手放したりはしないだろう。
「・・・そうだったわね」
私は口を塞ぐしかない。
そのことは魔術書にも書かれていたし、師匠からも教えられていた。
だから、呼び出した者との会話には慎重になる必要があるということも。
他人を同席させるべきじゃなかった。
冷静なつもりだったけど、色々なことが起きて、感情的になっていたようだ。
後は前回の礼儀正しい老紳士の印象に甘えていたのかも知れない。
「さて、今ご説明した前提条件をもとに、私から提案があります」
「提案?」
ろくでもない提案な気がするが、私に止める権利はない。
「どちらにしろ、お嬢さん一人の寿命では、あれの製造方法の全てを教えることはできません。あれは、あなた達が考えているよりも、高度な技術が使われているのですよ」
「・・・・・」
なら、契約が成立しなかったものとすればいいのに、子供はそれをしない。
「製造方法は教えましょう。対価の支払いも、後払い、それも分割払いで結構ですよ」
寛容な提案のように聞こえるが、そうじゃない。
今は無理な支払いを、今後も続けろという意味だ。
「・・・払えるわけがないでしょう。私は貴族の血を引いているだけで、領地も持っていないし、家も出ているのよ」
悪足掻きだと分かってはいるが、そう言い返す。
「あなた一人の力では無理でしょうな。ですが、どうやら、あなたには協力してくれそうな相手がいるようだ」
子供はそう言って、ストーカー王子を見る。
やはり、それが狙いか。
ストーカー王子との縁を切るつもりで呼び出したのに、全く別の方向に状況が進んでいる。
それも、最悪な形で。
「払えるアテがあるのなら、契約は成立します。どうですかな?あなたには、このお嬢さんに協力する意志はありますかな?」
子供がそう問いかける。
ここでストーカー王子が否定すれば、全ては丸く収まる。
私一人が全ての寿命を支払って終わりだ。
願いは一部しか叶えられないかも知れないけど、それ以降に続くことはない。
しかし、ストーカー王子は、私が期待していない答えを返してしまう。
「シンデレラに協力する意志はある」
「・・・・・バカ王子」
ガラスの靴の製造方法を知るために、私を利用するつもりじゃなかったのか。
そう責めたい想いに駆られるが、私にはそれができない。
ストーカー王子は、私を助けるつもりで、そう答えたのだから。
厚意か好意かは知らないし、有難迷惑だけど。
「でも、具体的にはどうすればいいんだ?」
「お嬢さんが、他者を所有しているという状況を作ればよいのですよ。貴族として領地を与えるのでも、王の妃にして国を治める王族に加えるのでも、新たに国を興して女王にするのでも。いずれでも、構いません」
どれもこれも、無理難題だ。
そう、普通なら。
でも、ここにいるのは王族の一員だ。
簡単とは言えないが、実現する可能性が存在してしまう。
「わかった。僕がシンデレラに協力する」
「契約成立ですな」
契約者は私だ。
なのに、まるで子供とストーカー王子が契約したような状況になってしまっている。
私から契約を撤回することはできない。
私は既に願いを口にしてしまったから。
「それでは、私もあなた達に着いていくことにしましょう。お嬢さんに自殺でもされては、対価の取り立てができませんからな」
子供の言葉に、ストーカー王子が驚いた様子で、こちらを見てくる。
私は、最後の手段として考えていたことを子供に見抜かれ、目を逸らす。
どうやら、私は死ぬこともできないらしい。
「はぁ・・・」
溜息を吐く。
私は悪女として歴史に名前を残すことになりそうだ。
「わかったわよ!借金を返すために馬車馬のように働くわよ!それで、あなたの名前は何て言うの?ついてくるなら、名前が無いと不便でしょ」
子供に名前を問いかける。
悪魔が本当の名前を伝えるわけはないから、おそらくは偽名だろうけど、それでも呼び名がないと何かと都合が悪い。
「ふむ。それでは、メフィと呼んでもらえますかな」
「メフィ、ね」
「なんですかな?」
「いいえ?可愛らしい名前だと思っただけよ」
「性別は男ですが」
本当の感想は違う。
この子供があの悪魔だとしたら、安直な偽名だと思っただけだ。
もとの名前も偽名だから、そうしたのだろうけど。
「それで、まずは、どうするのですかな?」
メフィが、そう尋ねてくる。
それに答えたのは、私ではなく、ストーカー王子だった。
「王城に来て欲しい。シンデレラを婚約者として紹介したい」
「・・・・・」
まあ、ストーカー王子に協力してもらうなら、そうするのが都合がよいのは確かだ。
婚約者ならストーカー王子に会いに王城を訪れても不自然じゃない。
なんだか、釈然としないけど。
「わかりました。ついて行きますよ」
私が提案を受け入れると、ストーカー王子が嬉しそうな表情になる。
それを見て、不覚にも胸が高鳴る。
こんな状況じゃなければ、惚れていたかも知れない。
王族だけあって、顔は美形だし、性格も王族にありがちな他の者を見下す感じはしない。
・・・そう考えると、優良物件だな。
王族に関わる面倒はあるけど、そこまで拒絶しなくてもよかった気がする。
なんで私、メフィを呼び出してまで、縁を切ろうとしていたんだろう。
そうだ。
ストーカー王子が、ガラスの靴の製造方法を知るために、私を追いかけていたとか言ったからだ。
今にして思えば、あれは私を城に呼ぶための口実だったのだろう。
女の口説き方が下手過ぎる。
そう言えば、最初に逃げ出したのも、いきなり王城で一緒に暮らして欲しいとか言われたからだ。
よく知らない上に逆らえない相手にそんなことを言われたら、逃げるしかないだろうに。
「これから、よろしくお願いしますね」
もう、なんと言うか、色々と諦めた気分になった。
緊張感を解くと、自然と笑みがこぼれてしまう。
「う・・・うん!よろしく、シンデレラ!」
ストーカー王子が、顔を赤らめながら、子供のような返事を返してくる。
こうして、ガラスの靴を履いて舞踏会に行った私は、王子の婚約者としてお城で暮らすことになった。
幸せになれるかどうかは、まだ分からない。
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