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第五章 マッチ売り
090.幸せな生活
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「ジャンヌ様の最近のお気に入りは、新人騎士のジョンくんみたいですね」
「へー、そうなんだ」
食堂でエミリーと噂話に花を咲かせる。
「甲斐甲斐しく手作りのお弁当を持って行っている姿が目撃されています」
「あの歳で初々しいっていうのは、微笑ましいとは思うけど、なんだかイラっとするわね」
「シンデレラ様のお師匠様なんですから、素直に応援して差し上げたらいいんじゃないですか」
「騎士団長のときより、歳の差が広がっているじゃない。もう少し近い年齢の相手を探せばいいのに」
「でも、ジャンヌ様は意外と人気がありますよ。色気と包容力があると、特に年下の男性に評判です」
「年の功ってやつかしらね」
他愛のない話に相槌を打ちながら、昼食を食べる。
マッチ売りの少女の件が片付いてから、平穏な日々が続いている。
もっとも、実行犯は捕まえたけど、黒幕は捕まえていないから、根本的な解決には至っていない。
だけど、黒幕であるシルヴァニア王国の王女には簡単に手を出すことができないから、現状でできることは無い。
事件は一区切りだ。
アダム王子やアーサー王子の方は、王女の目的なんかについて情報収集を継続しているみたいだけど、私は関わっていない。
いずれ関わることがあるかも知れないけど、今は専門家に任せている。
そんなわけで、平穏な毎日を送っていた。
「あの、聖女様」
声をかけられて私はそちらを向く。
私のことをこう呼ぶ人間は限られている。
というか、その呼び方は止めて欲しいと言っても、聞いてくれない。
「どうしたの、リンゴ?」
そこにいたのは、怪我から復帰したものの、まだリハビリ中であるはずのリンゴだった。
確かリハビリは妹が手伝っているはずだ。
そもそも、リハビリをする原因である怪我を負わせたのがその妹なんだけど、確執などは無いようでなによりだ。
姉妹の中が良好なのは、よいことだ。
そう思っているんだけど、なんだかリンゴの顔が曇っている。
「昼食を一緒に食べる?」
なにか、相談事だろうか。
だとしたら、それを聴くのも上司の務めだ。
私はリンゴを昼食に誘う。
重要な相談なら、堅苦しく向かい合って聴いた方がいいんだろうけど、内容が分からないうちは気を遣わせない方がいいだろう。
そう思って、昼食でも食べながら話を聴こうと考えたのだ。
「ご一緒します」
やはり話したいことがあるらしく、リンゴが私の提案に乗ってくる。
さて、どんな内容だろう。
季節は冬。
室内でも冷え込んでいる。
リンゴの分の昼食の準備ができるのを待ってから、私は身体を温めるためにスープを一口飲む。
肉体労働者である兵士達も食べにくるからか、食堂のスープは塩が多めに使われている。
少ししょっぱいけど、パンと一緒に食べるとちょうどいい。
私はパンを一口分ちぎって、口に入れる。
味はいいんだけど少し硬めに焼いてあるのは、顎を鍛える意味合いもあるんだろうか。
「それで何の話?」
リンゴも昼食は食堂で食べるけど、普段は気を遣ってか私のところには来ない。
今日に限ってわざわざ来たということは、話があることは確実だ。
急かすつもりはないけど、昼食の時間も限られているから、さっさと本題に入る。
それに私の方から声をかけないと、リンゴの方からは話すきっかけを作りづらそうだ。
「実は・・・」
自分から話に来たくらいだから、別に隠したい内容でもないのだろう。
私の問いかけに、リンゴが口を開く。
「妹のことなんです」
「妹って、雌猫ちゃんのこと?」
「えっと・・・はい」
答えるまでに一瞬の間があったのは、妹に対する私の呼び方だろう。
普通は自分の妹を『雌猫』なんて呼ばれたら怒るだろう。
けど、リンゴは怒らない。
その理由は、私がリンゴの上司だからじゃない。
妹自身が自分のことを『雌猫』と名乗っているからだ。
もちろん、本当の名前は違ってリンゴはその名前を知っているんだろう。
でも、妹自身が『雌猫』を名乗るものだから、複雑そうにしながらもそのままにしている。
「あの、妹のことを助けてくださって、ありがとうございます。二度と会えないと思っていた妹に会えたばかりか、一緒に暮らすことができるようにしていただいて、感謝しています」
「お礼は前にも聞いたから、何度も言わなくていいわよ」
感動の再開は既に見せてもらった。
そのときに何度もお礼を言ってもらった。
だからこれ以上感謝してもらう必要はないんだけど、それが今日の本題でないことは分かっている。
「それで、その・・・妹の様子が少しおかしくて・・・」
本当は少しじゃないことは予想がついた。
そして、どういう風におかしいかも。
「最近は寒いですから、夜一緒のベッドで寝ているんですけど・・・」
そこまでなら、おかしなことじゃない。
男女ならともかく、仲のよい姉妹なら、互いの体温で寒さをしのいでいても微笑ましいだけだ。
そう。
目的が寒さをしのぐためなら。
「妹が身体をこすりつけてくるんです」
「・・・・・最近、特に寒かったからね。くっついていたかったんじゃない」
私はそう解釈することにした。
けど、リンゴはそうでは無かったらしい。
「そういう感じじゃなくて、その・・・敏感なところを密着させてきたり、こすってきたりして・・・なんだか、貞操の危機を感じるといいますか・・・」
「あー・・・」
やっぱり、そういう方面か。
私は無理やりよい方向に解釈するのを諦めた。
「そのくらい許してあげたら?ほら、赤ん坊が母親のおっぱいを欲しがるのと同じようなものじゃない?」
「聖女様!?」
リンゴが信じられないことを聞いたといった感じで驚愕の声を上げる。
「だって、指を入れてこようとするんですよ!?昨日なんか、前だけじゃなくて、後ろにまで!?」
「あの、わかったから、もうちょっと声を抑えて」
周囲の人間が何事かといった感じで私達を見ている。
というか、ここは昼間の食堂だ。
アルコールを飲みながら品の無い話題で盛り上がる酒場じゃない。
「胸だって、先っぽを転がすように触ってくるんですよ!?最初は甘えてきているんだろうって思って我慢していたんですけど、私がじっとしていると段々激しくしてくるから、眠れないんですよ!?」
「ごめん、謝るから、静かにして」
注目の的になってるから黙って欲しい。
そう思うけど、珍しくリンゴは言うことを聞いてくれない。
それだけ追いつめられているということだろうけど、私にどうしろと言うんだろう。
代わりに雌猫ちゃんと寝て欲しいという要求なら、悪いけど断らせてもらうつもりだ。
そんなことを考えていると、食堂中に声が響き渡った。
「お姉ちゃーーーん!」
この元気な声には聞き覚えがある。
だから、誰なのかはすぐに分かった。
むしろ、判らない方がおかしい。
なにせ、話題の当人だ。
「あ!お姉ちゃん!」
こちらを見つけたらしく、声の主が駆け寄ってくる。
おかしいな。
そろそろスピードを落とさないといけないはずなんだけど、逆にスピードが上がっているように見えるのは気のせいかな。
「やっと見つけたーーーーー!」
「っ!」
勢いのままにぶつかってきた妹を受け止めつつも、リンゴがうめき声を上げる。
刺された場所にぶつかったように見えたけど、傷口が開いていないかな。
「ご、ごめん、お姉ちゃん!」
「だ、大丈夫だから・・・ちょっと離れて・・・」
どうみても大丈夫じゃなさそうだけど、服に血が滲んでいないようだから、傷口は開かなかったみたいだ。
脂汗をかきながらのリンゴの言葉に、妹が身を離す。
「ごめんね。でも、ひどいよ。一緒にお昼を食べようと思ったのに、いないんだもん」
妹は拗ねたように言いながら、今度は傷口に触れないように、姉の腕に抱き着く。
周囲の人間は微笑ましいものを見るような視線を向けているけど、近くでみていると分かる。
あれって絶対、抜け出せないように腕をきめているよね。
「今日はお昼に聖女様のところに行くって言っておいたじゃない」
「それは聞いたよ。でも、お昼は一緒に食べられるって思ったんだもん」
たぶん、この調子でべったりなんだろうな。
ベッドだけじゃなく、トイレにまでついていきそうな雰囲気だ。
さすがに、ちょっとリンゴが気の毒かな。
「ねえ、雌猫ちゃん」
「あ、聖女様、こんにちは!」
「ええ、こんにちは」
ずっと、このテンションなのかな。
ちょっと、うざい。
「そう言えば、あなた自分の部屋を持っていなかったわよね?」
「はい!お姉ちゃんと一緒の部屋です!」
別に部屋を与えなかったのは意地悪じゃない。
監視を兼ねてリンゴと一緒の部屋にしていたのだ。
けど、この様子を見る限り、姉がいればおかしなことをすることはないだろう。
「部屋をあげるから、そっちに移る?」
私の言いたいことが分かったのだろう。
リンゴが嬉しそうな表情をする。
部屋を分けて監視を外すということは、妹が信用されたということでもあるし、ベッドで妹に悩まされることも無くなるということだ。
嬉しそうにするのも無理はない。
けど、妹はそうではなかった。
「嫌です」
即答してきた。
隣でリンゴが驚いた顔をしているけど、おかまいなしだ。
「お姉ちゃんと一緒がいいです。一緒じゃなきゃ嫌です」
そう言ってこちらを見てくるけど、なんだか瞳に狂気が宿っているように見える。
部屋を分けるなら殺す。
そう言われているかのように感じた。
「でもね、二人だと部屋が狭いでしょ?ほら、ベッドも寝返りを打つだけで落ちそうになるし・・・」
「くっつけば大丈夫だよ!」
リンゴが必死に説得しているけど、妹は聞く耳を持たないようだ。
どうしようかな。
「じゃあ、部屋はあげるから、使うか使わないかは任せるわ。それでいいでしょ」
リンゴも妹の過激なスキンシップに戸惑っているだけで、本気で嫌がってはいないのだろう。
そうでなければ、いくら妹とはいえ、自分を刺した相手をあんなに簡単に許すはずがない。
なら、逃げ場だけは用意してあげることにする。
貞操は自力で上手いこと護ってもらおう。
「・・・ありがとうございます、聖女様」
「ありがとう、聖女様!」
リンゴは困ったように、妹は心の底から嬉しそうに、感謝を伝えてくる。
こんな感じで、小さい問題はありつつも、最近は平穏な日常が続いている。
こんな毎日が続けばいい。
そう思った。
「へー、そうなんだ」
食堂でエミリーと噂話に花を咲かせる。
「甲斐甲斐しく手作りのお弁当を持って行っている姿が目撃されています」
「あの歳で初々しいっていうのは、微笑ましいとは思うけど、なんだかイラっとするわね」
「シンデレラ様のお師匠様なんですから、素直に応援して差し上げたらいいんじゃないですか」
「騎士団長のときより、歳の差が広がっているじゃない。もう少し近い年齢の相手を探せばいいのに」
「でも、ジャンヌ様は意外と人気がありますよ。色気と包容力があると、特に年下の男性に評判です」
「年の功ってやつかしらね」
他愛のない話に相槌を打ちながら、昼食を食べる。
マッチ売りの少女の件が片付いてから、平穏な日々が続いている。
もっとも、実行犯は捕まえたけど、黒幕は捕まえていないから、根本的な解決には至っていない。
だけど、黒幕であるシルヴァニア王国の王女には簡単に手を出すことができないから、現状でできることは無い。
事件は一区切りだ。
アダム王子やアーサー王子の方は、王女の目的なんかについて情報収集を継続しているみたいだけど、私は関わっていない。
いずれ関わることがあるかも知れないけど、今は専門家に任せている。
そんなわけで、平穏な毎日を送っていた。
「あの、聖女様」
声をかけられて私はそちらを向く。
私のことをこう呼ぶ人間は限られている。
というか、その呼び方は止めて欲しいと言っても、聞いてくれない。
「どうしたの、リンゴ?」
そこにいたのは、怪我から復帰したものの、まだリハビリ中であるはずのリンゴだった。
確かリハビリは妹が手伝っているはずだ。
そもそも、リハビリをする原因である怪我を負わせたのがその妹なんだけど、確執などは無いようでなによりだ。
姉妹の中が良好なのは、よいことだ。
そう思っているんだけど、なんだかリンゴの顔が曇っている。
「昼食を一緒に食べる?」
なにか、相談事だろうか。
だとしたら、それを聴くのも上司の務めだ。
私はリンゴを昼食に誘う。
重要な相談なら、堅苦しく向かい合って聴いた方がいいんだろうけど、内容が分からないうちは気を遣わせない方がいいだろう。
そう思って、昼食でも食べながら話を聴こうと考えたのだ。
「ご一緒します」
やはり話したいことがあるらしく、リンゴが私の提案に乗ってくる。
さて、どんな内容だろう。
季節は冬。
室内でも冷え込んでいる。
リンゴの分の昼食の準備ができるのを待ってから、私は身体を温めるためにスープを一口飲む。
肉体労働者である兵士達も食べにくるからか、食堂のスープは塩が多めに使われている。
少ししょっぱいけど、パンと一緒に食べるとちょうどいい。
私はパンを一口分ちぎって、口に入れる。
味はいいんだけど少し硬めに焼いてあるのは、顎を鍛える意味合いもあるんだろうか。
「それで何の話?」
リンゴも昼食は食堂で食べるけど、普段は気を遣ってか私のところには来ない。
今日に限ってわざわざ来たということは、話があることは確実だ。
急かすつもりはないけど、昼食の時間も限られているから、さっさと本題に入る。
それに私の方から声をかけないと、リンゴの方からは話すきっかけを作りづらそうだ。
「実は・・・」
自分から話に来たくらいだから、別に隠したい内容でもないのだろう。
私の問いかけに、リンゴが口を開く。
「妹のことなんです」
「妹って、雌猫ちゃんのこと?」
「えっと・・・はい」
答えるまでに一瞬の間があったのは、妹に対する私の呼び方だろう。
普通は自分の妹を『雌猫』なんて呼ばれたら怒るだろう。
けど、リンゴは怒らない。
その理由は、私がリンゴの上司だからじゃない。
妹自身が自分のことを『雌猫』と名乗っているからだ。
もちろん、本当の名前は違ってリンゴはその名前を知っているんだろう。
でも、妹自身が『雌猫』を名乗るものだから、複雑そうにしながらもそのままにしている。
「あの、妹のことを助けてくださって、ありがとうございます。二度と会えないと思っていた妹に会えたばかりか、一緒に暮らすことができるようにしていただいて、感謝しています」
「お礼は前にも聞いたから、何度も言わなくていいわよ」
感動の再開は既に見せてもらった。
そのときに何度もお礼を言ってもらった。
だからこれ以上感謝してもらう必要はないんだけど、それが今日の本題でないことは分かっている。
「それで、その・・・妹の様子が少しおかしくて・・・」
本当は少しじゃないことは予想がついた。
そして、どういう風におかしいかも。
「最近は寒いですから、夜一緒のベッドで寝ているんですけど・・・」
そこまでなら、おかしなことじゃない。
男女ならともかく、仲のよい姉妹なら、互いの体温で寒さをしのいでいても微笑ましいだけだ。
そう。
目的が寒さをしのぐためなら。
「妹が身体をこすりつけてくるんです」
「・・・・・最近、特に寒かったからね。くっついていたかったんじゃない」
私はそう解釈することにした。
けど、リンゴはそうでは無かったらしい。
「そういう感じじゃなくて、その・・・敏感なところを密着させてきたり、こすってきたりして・・・なんだか、貞操の危機を感じるといいますか・・・」
「あー・・・」
やっぱり、そういう方面か。
私は無理やりよい方向に解釈するのを諦めた。
「そのくらい許してあげたら?ほら、赤ん坊が母親のおっぱいを欲しがるのと同じようなものじゃない?」
「聖女様!?」
リンゴが信じられないことを聞いたといった感じで驚愕の声を上げる。
「だって、指を入れてこようとするんですよ!?昨日なんか、前だけじゃなくて、後ろにまで!?」
「あの、わかったから、もうちょっと声を抑えて」
周囲の人間が何事かといった感じで私達を見ている。
というか、ここは昼間の食堂だ。
アルコールを飲みながら品の無い話題で盛り上がる酒場じゃない。
「胸だって、先っぽを転がすように触ってくるんですよ!?最初は甘えてきているんだろうって思って我慢していたんですけど、私がじっとしていると段々激しくしてくるから、眠れないんですよ!?」
「ごめん、謝るから、静かにして」
注目の的になってるから黙って欲しい。
そう思うけど、珍しくリンゴは言うことを聞いてくれない。
それだけ追いつめられているということだろうけど、私にどうしろと言うんだろう。
代わりに雌猫ちゃんと寝て欲しいという要求なら、悪いけど断らせてもらうつもりだ。
そんなことを考えていると、食堂中に声が響き渡った。
「お姉ちゃーーーん!」
この元気な声には聞き覚えがある。
だから、誰なのかはすぐに分かった。
むしろ、判らない方がおかしい。
なにせ、話題の当人だ。
「あ!お姉ちゃん!」
こちらを見つけたらしく、声の主が駆け寄ってくる。
おかしいな。
そろそろスピードを落とさないといけないはずなんだけど、逆にスピードが上がっているように見えるのは気のせいかな。
「やっと見つけたーーーーー!」
「っ!」
勢いのままにぶつかってきた妹を受け止めつつも、リンゴがうめき声を上げる。
刺された場所にぶつかったように見えたけど、傷口が開いていないかな。
「ご、ごめん、お姉ちゃん!」
「だ、大丈夫だから・・・ちょっと離れて・・・」
どうみても大丈夫じゃなさそうだけど、服に血が滲んでいないようだから、傷口は開かなかったみたいだ。
脂汗をかきながらのリンゴの言葉に、妹が身を離す。
「ごめんね。でも、ひどいよ。一緒にお昼を食べようと思ったのに、いないんだもん」
妹は拗ねたように言いながら、今度は傷口に触れないように、姉の腕に抱き着く。
周囲の人間は微笑ましいものを見るような視線を向けているけど、近くでみていると分かる。
あれって絶対、抜け出せないように腕をきめているよね。
「今日はお昼に聖女様のところに行くって言っておいたじゃない」
「それは聞いたよ。でも、お昼は一緒に食べられるって思ったんだもん」
たぶん、この調子でべったりなんだろうな。
ベッドだけじゃなく、トイレにまでついていきそうな雰囲気だ。
さすがに、ちょっとリンゴが気の毒かな。
「ねえ、雌猫ちゃん」
「あ、聖女様、こんにちは!」
「ええ、こんにちは」
ずっと、このテンションなのかな。
ちょっと、うざい。
「そう言えば、あなた自分の部屋を持っていなかったわよね?」
「はい!お姉ちゃんと一緒の部屋です!」
別に部屋を与えなかったのは意地悪じゃない。
監視を兼ねてリンゴと一緒の部屋にしていたのだ。
けど、この様子を見る限り、姉がいればおかしなことをすることはないだろう。
「部屋をあげるから、そっちに移る?」
私の言いたいことが分かったのだろう。
リンゴが嬉しそうな表情をする。
部屋を分けて監視を外すということは、妹が信用されたということでもあるし、ベッドで妹に悩まされることも無くなるということだ。
嬉しそうにするのも無理はない。
けど、妹はそうではなかった。
「嫌です」
即答してきた。
隣でリンゴが驚いた顔をしているけど、おかまいなしだ。
「お姉ちゃんと一緒がいいです。一緒じゃなきゃ嫌です」
そう言ってこちらを見てくるけど、なんだか瞳に狂気が宿っているように見える。
部屋を分けるなら殺す。
そう言われているかのように感じた。
「でもね、二人だと部屋が狭いでしょ?ほら、ベッドも寝返りを打つだけで落ちそうになるし・・・」
「くっつけば大丈夫だよ!」
リンゴが必死に説得しているけど、妹は聞く耳を持たないようだ。
どうしようかな。
「じゃあ、部屋はあげるから、使うか使わないかは任せるわ。それでいいでしょ」
リンゴも妹の過激なスキンシップに戸惑っているだけで、本気で嫌がってはいないのだろう。
そうでなければ、いくら妹とはいえ、自分を刺した相手をあんなに簡単に許すはずがない。
なら、逃げ場だけは用意してあげることにする。
貞操は自力で上手いこと護ってもらおう。
「・・・ありがとうございます、聖女様」
「ありがとう、聖女様!」
リンゴは困ったように、妹は心の底から嬉しそうに、感謝を伝えてくる。
こんな感じで、小さい問題はありつつも、最近は平穏な日常が続いている。
こんな毎日が続けばいい。
そう思った。
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