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12:慧介
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あの金髪野郎がこの学園に来てから、俺はろくな目にあっていない。
「やあ弓月。約束通り、君に会いに来た」
全校集会で恥ずかしげもなくそうのたまったあの男。あの見た目にあの行動、男と言わず女と言わず、一瞬で興味を持っていってしまった。
俺の取り巻きだったやつらも、暇さえあればあのオリバーとかいう男の話ばかり。付き合っていた彼女も、その友達も、みんなあいつの事でキャーキャー騒いでた。……正直耳障りで仕方ない。
なにより気に入らないのが、弓月が素っ気なくなったことだ。
あいつが実家では女として生活しているのを知ったのは、小学三年の時。
もともと顔立ちも言葉遣いも女っぽくて、男のくせに気持ち悪いやつだなと思っていた。
それを知ったきっかけは、舞台があるからと休んだあいつにプリントを届けたこと。
俺の家よりももっとデカい家に住んでる事に、すこし腹が立った。
だってうちは、祖父の代……いわゆるバブル時代に成り上がった実力派の不動産屋だ。
今では都心にそこそこの自社ビルだってあるし、支店だって複数ある。不動産関連の他事業だって展開している。そしていずれ、この会社は俺のものになるんだ。
なのに、そんな近衛原家一族よりも数段立派な屋敷にあのオトコオンナが住んでいるなんて、俺のプライドが許せなかったんだ。
少し躊躇ったけれどチャイムを押してみれば、中から出てきたのは使用人と思う女。
事情を話してプリントを渡して用事は終わり。
けれど、子供の頃の俺はどうにかして、その家の中を覗きたくなった。
だから家のぐるりを回って、壁と垣根の間に小さな隙間を見つけた。
そこからこっそり侵入した先で、俺は見てしまったのだ。
女児と見まごう、いや、女児そのものの香井弓月を。
庭先で、桃色の着物を着た弓月が日本舞踊を舞っていた。その視線の先には、顔色の悪い、いかにも病床にいるといったような女。
……顔が似ているから、あれが弓月の母親なのだということはすぐにわかった。
「弓月ちゃん、とっても上手ね。さすが私の娘だわ」
パチパチと拍手をしながら、あの女は今、弓月を娘だと呼んだ。
俺は察した。
香井弓月は、何らかの理由で家では女として過ごしている。
これはいいネタを仕入れた。
案の定、次の日学校で弓月を弄ったら、弓月は真っ青になっていた。
これがこいつの弱点か。そう思った俺は、こいつより優位な立場に立てたと思って気分がよかった。
それから、理由をつけてあいつの家にたびたび通っては、父親とも仲良くなった。
幼いながらに調べてみたら、香井家は華族の血筋だってことで、いわばあいつの立場は「華族のお姫様」ってとこだ。
つまり、生まれ持って地位も名声も、品格だってある。
うちは成り上がりの家。どうしたってもとより金持ちで社会的立場のあるやつらの間では、粗野な成金野郎と思われている。度々そんな嫌味を言われて、嫌気がさしていたところだ。
これは、紛れもないチャンスだ。
弓月の、いや、香井家の弱みを握って上手く取り入れば、うちの立場も磐石になる。
だからそのために、弓月を使わせて貰おうと思った。すこしばかり、おこぼれに預からせてもらう。それだけだ。
でも歳を追うごとに弓月は女なんか目じゃないほど美しくなっていって、俺は何時しか、あいつを自分のものにしたいと思うようになった。
だから最近ではパーティのパートナーに弓月を指名して、近衛原家と香井家は近しい関係だと周囲に印象付けていたというのに、結局はとんだ無駄骨だったということか。
最近、親父の様子がおかしいのはなんとなく気がついてはいた。
これまでもたまにそうなることはあったから、今回も同じだと思っていたのだけれど、答えは親父よりも早く、金髪野郎から聞かされることになってしまった。
うちの会社は、だいぶ前からかなり危ない橋を渡っていたらしい。
それを誤魔化し誤魔化しやってきたというのに、誰かがアイツに情報を流した。
社内に、関連会社に、友人に、俺の周りのどこかに、裏切り者がいる。
ところがだ。親父を問い詰めたところ、これでもマシな状況になったのだという。
あの金髪野郎に買収されて、それがマシだって?
「お前は知らないだろうが、本当は川口組の関連会社に買収される予定だった。……お前でも名前くらい知っているだろう」
衝撃だった。
川口組。外向きは大手の建築会社だが、裏では黒い噂が耐えない。いわゆるヤクザのフロント企業だ。あそこに統合された企業は、いくつもさらに酷い状況に追い込まれていると聞いたことがある。
「そんな時に何故か、川口組よりも格上にあたる神田組から待ったがかかったらしい。神田組曰く、とある外資系の企業がこの買収に興味を持っているということでな。なぜその企業がこの話を知っていたのかは知らないが……まあ、神田組から情報でも流れたんだろう。少なくとも、何か得になる状況があったんだろうと思うが……」
「それが、オリバー社…?なんだよアイツ、ヤクザなんかと手を組んでたってのか?!そうだ、そこつっつけばどうにかなるんじゃ……」
「……神田組は、確かにそっちではあるが……比較的大人しい方の組織でな。どちらかというと、昔気質で一般社会と他の組との揉め事を穏便に纏めてまわってる側だ。今回の話を断れば、間違いなく我社はろくなことにならない」
「だからって……」
「オリバー社側は、これまでの不正を洗いざらい精算して立て直しを図るなら、我々近衛原一族の首は繋げたままにしておくと言っていた。……とはいえ首の皮一枚が繋がった状態であることは変わっていない。そもそも外資系、結果が出せなければいくらでも首をすげ替えにくるだろう。……だから慧介、お前も大人しくしていろ。同じ学友の立場だと、まかり間違っても思うな」
「……」
親父から告げられた事実に、言葉を失った。
会社を奪われただけでも悔しいのに、知らないうちに最悪の状況から救われていただなんて。
なんて腹立たしい。
問い詰めてやろうと、登校してすぐにアイツのクラスに踏み込んだら、いつも俺の側に居る取り巻きたちとアイツが、なにやら楽しげにしていた。
「社長に、うちの祖父がお礼を伝えてくれと。社長の口添えのお陰で正規の値段で取引出来る企業が増えて、なんとか経営が安定しそうだということでした!」
「うちの父も、直接取引できる企業が増えてほっとしていました!今度お礼に食事をと……」
なんだこれ。
あいつらの家はたしか、うちに物品を卸していた中小企業だったはずだ。
それがどういうことだ。
「いやいや、社長なんて呼び方やめてくれよ、俺はここでは普通に学生やってるんだからさ。そもそも、実力のある企業がそれ相応の評価を得ただけのことなんだし、気にせず普通に友達付き合いしてくれないかな!」
傍から見れば、ただの学生。でも、あいつはそんな生ぬるい生き物じゃない。欲しいものは何でも喰らい尽くす、飢えた魔物のような生き物。
「やだオリバー、仕事とか言って何かしてたの!?」
「何かって、ほら、俺言ってたじゃないか。日本にもうちの支社出したいし、IT以外にも手を広げたいって。で、色々勉強させてもらおうと思って、皆の会社とか工場とか見学させてもらったんだよ。そしたら俺の知り合いの会社で欲しがってたもの取り扱ってたから、紹介したってだけで……」
あんな風に軽く話しているが、中小とはいえ一企業を立て直すほどの仕事になったのなら、おそらくは相当な規模だったはずだ。
居場所が、無くなっていく。足場が崩れていく。
「やあ、おはよう近衛原君。弓月に何か用かな?」
こちらに気付いたあの男の余裕の表情が、憎たらしくてしかたない。
翠の瞳が、絶対零度の炎を宿して揺らめく。あれは俺を、試している目だ。
「そういえば、君のお父上。話がわかる人で良かったよ。せっかく出来た縁だし、これから俺とも仲良くして欲しいな!」
「…あ……ああ……」
この状況で、それ以外にどう応えろというのか。
昨日まで仲間だったはずの奴らの、視線が痛い。
どうにもならない。もう手遅れ。
でも一つだけ。
「……どこから」
「え?」
「どこから、あの情報を…」
なんとか絞り出した声に、あいつは笑う。
「ああ!今新居建ててるんだけどさ。施行会社の社長さんがね、君のとこを心配してたんだよ!業界って結構狭いよねぇ。……あと、情報って結構簡単に集められるからさ、怖い怖い。俺も気をつけなきゃ!」
本当に、一寸先は闇とはよくいったものだ。
認めてやる。あいつはとびきりの異分子だ。魔王だ。もし俺達が練りに練った策略があったとしても、多分あいつがそれを看破することなんて容易いことなんだろう。
……これ以上、関わるのはやめよう。
なるべく目立たないように、あいつの目の届きにくいところで静かにしていよう。
そうすれば少なくとも、親父と、俺の代くらいまでは無事でいられるだろうから。
まったくもって、惨め以外の何物でもなかった。
「やあ弓月。約束通り、君に会いに来た」
全校集会で恥ずかしげもなくそうのたまったあの男。あの見た目にあの行動、男と言わず女と言わず、一瞬で興味を持っていってしまった。
俺の取り巻きだったやつらも、暇さえあればあのオリバーとかいう男の話ばかり。付き合っていた彼女も、その友達も、みんなあいつの事でキャーキャー騒いでた。……正直耳障りで仕方ない。
なにより気に入らないのが、弓月が素っ気なくなったことだ。
あいつが実家では女として生活しているのを知ったのは、小学三年の時。
もともと顔立ちも言葉遣いも女っぽくて、男のくせに気持ち悪いやつだなと思っていた。
それを知ったきっかけは、舞台があるからと休んだあいつにプリントを届けたこと。
俺の家よりももっとデカい家に住んでる事に、すこし腹が立った。
だってうちは、祖父の代……いわゆるバブル時代に成り上がった実力派の不動産屋だ。
今では都心にそこそこの自社ビルだってあるし、支店だって複数ある。不動産関連の他事業だって展開している。そしていずれ、この会社は俺のものになるんだ。
なのに、そんな近衛原家一族よりも数段立派な屋敷にあのオトコオンナが住んでいるなんて、俺のプライドが許せなかったんだ。
少し躊躇ったけれどチャイムを押してみれば、中から出てきたのは使用人と思う女。
事情を話してプリントを渡して用事は終わり。
けれど、子供の頃の俺はどうにかして、その家の中を覗きたくなった。
だから家のぐるりを回って、壁と垣根の間に小さな隙間を見つけた。
そこからこっそり侵入した先で、俺は見てしまったのだ。
女児と見まごう、いや、女児そのものの香井弓月を。
庭先で、桃色の着物を着た弓月が日本舞踊を舞っていた。その視線の先には、顔色の悪い、いかにも病床にいるといったような女。
……顔が似ているから、あれが弓月の母親なのだということはすぐにわかった。
「弓月ちゃん、とっても上手ね。さすが私の娘だわ」
パチパチと拍手をしながら、あの女は今、弓月を娘だと呼んだ。
俺は察した。
香井弓月は、何らかの理由で家では女として過ごしている。
これはいいネタを仕入れた。
案の定、次の日学校で弓月を弄ったら、弓月は真っ青になっていた。
これがこいつの弱点か。そう思った俺は、こいつより優位な立場に立てたと思って気分がよかった。
それから、理由をつけてあいつの家にたびたび通っては、父親とも仲良くなった。
幼いながらに調べてみたら、香井家は華族の血筋だってことで、いわばあいつの立場は「華族のお姫様」ってとこだ。
つまり、生まれ持って地位も名声も、品格だってある。
うちは成り上がりの家。どうしたってもとより金持ちで社会的立場のあるやつらの間では、粗野な成金野郎と思われている。度々そんな嫌味を言われて、嫌気がさしていたところだ。
これは、紛れもないチャンスだ。
弓月の、いや、香井家の弱みを握って上手く取り入れば、うちの立場も磐石になる。
だからそのために、弓月を使わせて貰おうと思った。すこしばかり、おこぼれに預からせてもらう。それだけだ。
でも歳を追うごとに弓月は女なんか目じゃないほど美しくなっていって、俺は何時しか、あいつを自分のものにしたいと思うようになった。
だから最近ではパーティのパートナーに弓月を指名して、近衛原家と香井家は近しい関係だと周囲に印象付けていたというのに、結局はとんだ無駄骨だったということか。
最近、親父の様子がおかしいのはなんとなく気がついてはいた。
これまでもたまにそうなることはあったから、今回も同じだと思っていたのだけれど、答えは親父よりも早く、金髪野郎から聞かされることになってしまった。
うちの会社は、だいぶ前からかなり危ない橋を渡っていたらしい。
それを誤魔化し誤魔化しやってきたというのに、誰かがアイツに情報を流した。
社内に、関連会社に、友人に、俺の周りのどこかに、裏切り者がいる。
ところがだ。親父を問い詰めたところ、これでもマシな状況になったのだという。
あの金髪野郎に買収されて、それがマシだって?
「お前は知らないだろうが、本当は川口組の関連会社に買収される予定だった。……お前でも名前くらい知っているだろう」
衝撃だった。
川口組。外向きは大手の建築会社だが、裏では黒い噂が耐えない。いわゆるヤクザのフロント企業だ。あそこに統合された企業は、いくつもさらに酷い状況に追い込まれていると聞いたことがある。
「そんな時に何故か、川口組よりも格上にあたる神田組から待ったがかかったらしい。神田組曰く、とある外資系の企業がこの買収に興味を持っているということでな。なぜその企業がこの話を知っていたのかは知らないが……まあ、神田組から情報でも流れたんだろう。少なくとも、何か得になる状況があったんだろうと思うが……」
「それが、オリバー社…?なんだよアイツ、ヤクザなんかと手を組んでたってのか?!そうだ、そこつっつけばどうにかなるんじゃ……」
「……神田組は、確かにそっちではあるが……比較的大人しい方の組織でな。どちらかというと、昔気質で一般社会と他の組との揉め事を穏便に纏めてまわってる側だ。今回の話を断れば、間違いなく我社はろくなことにならない」
「だからって……」
「オリバー社側は、これまでの不正を洗いざらい精算して立て直しを図るなら、我々近衛原一族の首は繋げたままにしておくと言っていた。……とはいえ首の皮一枚が繋がった状態であることは変わっていない。そもそも外資系、結果が出せなければいくらでも首をすげ替えにくるだろう。……だから慧介、お前も大人しくしていろ。同じ学友の立場だと、まかり間違っても思うな」
「……」
親父から告げられた事実に、言葉を失った。
会社を奪われただけでも悔しいのに、知らないうちに最悪の状況から救われていただなんて。
なんて腹立たしい。
問い詰めてやろうと、登校してすぐにアイツのクラスに踏み込んだら、いつも俺の側に居る取り巻きたちとアイツが、なにやら楽しげにしていた。
「社長に、うちの祖父がお礼を伝えてくれと。社長の口添えのお陰で正規の値段で取引出来る企業が増えて、なんとか経営が安定しそうだということでした!」
「うちの父も、直接取引できる企業が増えてほっとしていました!今度お礼に食事をと……」
なんだこれ。
あいつらの家はたしか、うちに物品を卸していた中小企業だったはずだ。
それがどういうことだ。
「いやいや、社長なんて呼び方やめてくれよ、俺はここでは普通に学生やってるんだからさ。そもそも、実力のある企業がそれ相応の評価を得ただけのことなんだし、気にせず普通に友達付き合いしてくれないかな!」
傍から見れば、ただの学生。でも、あいつはそんな生ぬるい生き物じゃない。欲しいものは何でも喰らい尽くす、飢えた魔物のような生き物。
「やだオリバー、仕事とか言って何かしてたの!?」
「何かって、ほら、俺言ってたじゃないか。日本にもうちの支社出したいし、IT以外にも手を広げたいって。で、色々勉強させてもらおうと思って、皆の会社とか工場とか見学させてもらったんだよ。そしたら俺の知り合いの会社で欲しがってたもの取り扱ってたから、紹介したってだけで……」
あんな風に軽く話しているが、中小とはいえ一企業を立て直すほどの仕事になったのなら、おそらくは相当な規模だったはずだ。
居場所が、無くなっていく。足場が崩れていく。
「やあ、おはよう近衛原君。弓月に何か用かな?」
こちらに気付いたあの男の余裕の表情が、憎たらしくてしかたない。
翠の瞳が、絶対零度の炎を宿して揺らめく。あれは俺を、試している目だ。
「そういえば、君のお父上。話がわかる人で良かったよ。せっかく出来た縁だし、これから俺とも仲良くして欲しいな!」
「…あ……ああ……」
この状況で、それ以外にどう応えろというのか。
昨日まで仲間だったはずの奴らの、視線が痛い。
どうにもならない。もう手遅れ。
でも一つだけ。
「……どこから」
「え?」
「どこから、あの情報を…」
なんとか絞り出した声に、あいつは笑う。
「ああ!今新居建ててるんだけどさ。施行会社の社長さんがね、君のとこを心配してたんだよ!業界って結構狭いよねぇ。……あと、情報って結構簡単に集められるからさ、怖い怖い。俺も気をつけなきゃ!」
本当に、一寸先は闇とはよくいったものだ。
認めてやる。あいつはとびきりの異分子だ。魔王だ。もし俺達が練りに練った策略があったとしても、多分あいつがそれを看破することなんて容易いことなんだろう。
……これ以上、関わるのはやめよう。
なるべく目立たないように、あいつの目の届きにくいところで静かにしていよう。
そうすれば少なくとも、親父と、俺の代くらいまでは無事でいられるだろうから。
まったくもって、惨め以外の何物でもなかった。
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