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10.敗戦国の女の運命~中編~
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「ラックルや馬の交尾を見たことがあるか?」突然の問いに、
「そんなもの、ありません!!」即答だ。レアナの声は怒りで震えていた。
「そうか?機会があれば見てみると良い。特にラックルの交尾は激しくて、参考になるぞ?」
いちいちアルダールの言葉はレアナの神経に障った。夫を戦で失ったレアナに、獣の交尾の何が参考になるというのか?
「敗戦国の王族や貴族の女は、戦利品として武功をあげた騎士や手柄を挙げた貴族たちに、奴隷として配られる。もちろん自害防止の魔道具をつけられて。気に入られれば妻や愛妾になれるだろう。だが、気に入られなければ下女か性奴隷として転売される。男を閨で喜ばせる術を知っておいた方が身のためだぞ。」
「あ・・・」そうだった。父の後宮にも、東方の姫が戦利品として送られてきたことがあった。幼く見えたが、18歳だったらしい。東方の珍しい少女を得たと喜んで後宮に渡った翌朝、処女ではなかったと父がカンカンに怒っていたのを思い出した。
国が滅んだ時、姫は敵国の兵士たちに繰り返し陵辱されていたところを救い出された。だが、傷物はいらぬと戦勝国の王族たちが受け取りを拒否したので、支援物資を送っただけのユディンに贈られたのが真相だった。
西大陸では東方人は珍しい。処女ではないと最初は怒った父だったが、それでも珍しい女に違いないと何度か後宮に通った。だが、抱くたびに姫は陵辱時の恐怖と痛みがぶり返し、怖がって泣いては震えた。何人もの男たちに陵辱された体の傷は癒えても、心の傷は癒えないまま姫は壊れてしまったのだ。
そんな女との閨が楽しいはずもなく、父は早々に嫌気がさして、3ヶ月も経たぬうちに護衛騎士に下賜した。下賜された護衛騎士もそんな女を抱いて楽しいはずもなく、同僚の平民出身の騎士に譲り渡したという。その後のことは知らない。
一国の王女として生まれたのに国が滅んで敵兵たちに陵辱され、自分の父親よりも年上の男の後宮に入れられて慰み者になったあげく、最終的に平民の騎士に下げ渡された姫。しかしレアナは同情しなかった。だって、明日は我が身なのだから。
「おしゃべりはここまでだ。もう少し、楽しませてもらおうか。」無理矢理レアナに四つん這いの体勢を取らせると、獣と化したアルダールが後ろからレアナを蹂躙した。
レアナが泣きながらもう止めてと懇願しても突き続けた。その晩、アルダールの情欲は静まることはなく、明け方になってようやく彼女を解放した。
「よかったな。おまえの弟の命は4日延びたぞ。いや、5日か。」楽しそうに言いながら、アルダールはレアナから体を離した。
「・・・」レアナは無尽蔵なアルダールの体力と精力に消耗し、疲れ果てて声も出ない。
昨夜は雲が月を隠し、アルダールは女の顔をはっきりと見ていないことに気づいた。窓からは、陽が上る直前の薄赤紫の空が見えた。
隣りで体を弛緩させ、放心したままのレアナに視線をやると、その体を抱き起こし、顔を窓のほうに向けた。だが陽が上る前の薄明かりでは、ぼんやりと力のない目も乱れてパサついた髪も、色がはっきりとわからない。
ふん、顔のわからない女か。それも一興か。だが痩せすぎだ。
レアナが食事も喉を通らないほどの原因を作ったのはアルダールだ。だが張本人であるアルダールはそんなことは棚上げし、この痩せた女に興味を持った。
アルダールはしばらく公妃を自分のそばに置くことにした。もちろん夜に伽をさせるためだ。だが、それだけではない。仮にもこの国の王女だった女だ。ユディンの戦後処理を決めるのに、元王女の知識は役に立つはず。
アルダールはベッドから降りると、素早く衣服を身につけた。公妃は全裸のまま、起きる気配もない。その痩せ細った体を見ても、アルダールは同情しなかった。かつてレアナが東国の姫の身の上を知っても同情しなかったのと同じように。
アルダールはそのまま寝所を出ようとして、ふと足を止めた。それからベッドに戻り、全裸のまま疲れて寝てしまった公妃を、布団の中に入れた。陽が昇り始め、窓から差し込む金色の光が公妃の顔を照らした。初めて見た公妃の顔は、体同様に痩せてやつれていた。美しくも醜くもない、ただやつれた顔で眠っていた。
アルダールは寝所を出ると、修練場へ向かった。夜が明けたばかりというのに、既に多くの騎士や兵士たちが剣の打ち合いや弓、体術など鍛錬に励んでいた。その中に諜報部側近のセージを見つけ、剣の打ち合いの相手をさせるために側に呼んだ。
昨夜はレアナを抱き潰して一睡もしていないのに頭は冴え渡り、セージの剣の動きがよく見えた。自分でも信じられないほどの反射神経で、セージの鋭い打ち込みをいなしていく。剣は刀身を潰して切れないようにしてある。そうでなければ、セージは少なくとも3回は死んでいた。
やがてアルダールの突きを躱して後ろに飛びすさったセージが膝を付いた。
「終わりか?」剣を構えたままアルダールが問う。
「はい、陛下。ご勘弁を。」膝を付いたまま、セージが頭を下げる。
「よい。」ふっと笑ってアルダールが剣を下ろした。セージと共に修練場の脇に設えられた水浴び場で軽く水を浴びていると、早番らしい下女が走ってタオルを持ってきた。
「昨夜の女はお前が用意したのか?」タオルで体を拭きながら、アルダールが聞く。
「えっ昨夜は特に・・・って陛下?寝所に女が入り込んだのですか?昨夜の護衛騎士は誰だ!!何をしていたんだ!!ったく。」一人で憤るセージに、「お前じゃなかったのか。」と意外そうなアルダール。
「その女が何か狼藉でも?」恐る恐る、セージが尋ねた。
「いや、悪くなかった。まだ俺の寝所にいる。」
「え、さすがに夜が明けら、もういないと思いますが。」
「それはない、王族の女が城の廊下を裸で歩く勇気があるとは思えん。」アルダールが楽しそうにくっくっと笑う。
「あー・・・」セージは以前アルダールが、女の夜着は脱がせるより破り捨てる方が早いと言っていたのを思い出した。
「女は国王の姉で元王女だ。夜伽以外にも、使い道は色々ある。城に残っている侍女に女の世話をさせろ。それと、あの女の戦死した夫と、誰があの女を俺の寝所に送り込んだのか調べろ。」
「かしこまりました。」
「そんなもの、ありません!!」即答だ。レアナの声は怒りで震えていた。
「そうか?機会があれば見てみると良い。特にラックルの交尾は激しくて、参考になるぞ?」
いちいちアルダールの言葉はレアナの神経に障った。夫を戦で失ったレアナに、獣の交尾の何が参考になるというのか?
「敗戦国の王族や貴族の女は、戦利品として武功をあげた騎士や手柄を挙げた貴族たちに、奴隷として配られる。もちろん自害防止の魔道具をつけられて。気に入られれば妻や愛妾になれるだろう。だが、気に入られなければ下女か性奴隷として転売される。男を閨で喜ばせる術を知っておいた方が身のためだぞ。」
「あ・・・」そうだった。父の後宮にも、東方の姫が戦利品として送られてきたことがあった。幼く見えたが、18歳だったらしい。東方の珍しい少女を得たと喜んで後宮に渡った翌朝、処女ではなかったと父がカンカンに怒っていたのを思い出した。
国が滅んだ時、姫は敵国の兵士たちに繰り返し陵辱されていたところを救い出された。だが、傷物はいらぬと戦勝国の王族たちが受け取りを拒否したので、支援物資を送っただけのユディンに贈られたのが真相だった。
西大陸では東方人は珍しい。処女ではないと最初は怒った父だったが、それでも珍しい女に違いないと何度か後宮に通った。だが、抱くたびに姫は陵辱時の恐怖と痛みがぶり返し、怖がって泣いては震えた。何人もの男たちに陵辱された体の傷は癒えても、心の傷は癒えないまま姫は壊れてしまったのだ。
そんな女との閨が楽しいはずもなく、父は早々に嫌気がさして、3ヶ月も経たぬうちに護衛騎士に下賜した。下賜された護衛騎士もそんな女を抱いて楽しいはずもなく、同僚の平民出身の騎士に譲り渡したという。その後のことは知らない。
一国の王女として生まれたのに国が滅んで敵兵たちに陵辱され、自分の父親よりも年上の男の後宮に入れられて慰み者になったあげく、最終的に平民の騎士に下げ渡された姫。しかしレアナは同情しなかった。だって、明日は我が身なのだから。
「おしゃべりはここまでだ。もう少し、楽しませてもらおうか。」無理矢理レアナに四つん這いの体勢を取らせると、獣と化したアルダールが後ろからレアナを蹂躙した。
レアナが泣きながらもう止めてと懇願しても突き続けた。その晩、アルダールの情欲は静まることはなく、明け方になってようやく彼女を解放した。
「よかったな。おまえの弟の命は4日延びたぞ。いや、5日か。」楽しそうに言いながら、アルダールはレアナから体を離した。
「・・・」レアナは無尽蔵なアルダールの体力と精力に消耗し、疲れ果てて声も出ない。
昨夜は雲が月を隠し、アルダールは女の顔をはっきりと見ていないことに気づいた。窓からは、陽が上る直前の薄赤紫の空が見えた。
隣りで体を弛緩させ、放心したままのレアナに視線をやると、その体を抱き起こし、顔を窓のほうに向けた。だが陽が上る前の薄明かりでは、ぼんやりと力のない目も乱れてパサついた髪も、色がはっきりとわからない。
ふん、顔のわからない女か。それも一興か。だが痩せすぎだ。
レアナが食事も喉を通らないほどの原因を作ったのはアルダールだ。だが張本人であるアルダールはそんなことは棚上げし、この痩せた女に興味を持った。
アルダールはしばらく公妃を自分のそばに置くことにした。もちろん夜に伽をさせるためだ。だが、それだけではない。仮にもこの国の王女だった女だ。ユディンの戦後処理を決めるのに、元王女の知識は役に立つはず。
アルダールはベッドから降りると、素早く衣服を身につけた。公妃は全裸のまま、起きる気配もない。その痩せ細った体を見ても、アルダールは同情しなかった。かつてレアナが東国の姫の身の上を知っても同情しなかったのと同じように。
アルダールはそのまま寝所を出ようとして、ふと足を止めた。それからベッドに戻り、全裸のまま疲れて寝てしまった公妃を、布団の中に入れた。陽が昇り始め、窓から差し込む金色の光が公妃の顔を照らした。初めて見た公妃の顔は、体同様に痩せてやつれていた。美しくも醜くもない、ただやつれた顔で眠っていた。
アルダールは寝所を出ると、修練場へ向かった。夜が明けたばかりというのに、既に多くの騎士や兵士たちが剣の打ち合いや弓、体術など鍛錬に励んでいた。その中に諜報部側近のセージを見つけ、剣の打ち合いの相手をさせるために側に呼んだ。
昨夜はレアナを抱き潰して一睡もしていないのに頭は冴え渡り、セージの剣の動きがよく見えた。自分でも信じられないほどの反射神経で、セージの鋭い打ち込みをいなしていく。剣は刀身を潰して切れないようにしてある。そうでなければ、セージは少なくとも3回は死んでいた。
やがてアルダールの突きを躱して後ろに飛びすさったセージが膝を付いた。
「終わりか?」剣を構えたままアルダールが問う。
「はい、陛下。ご勘弁を。」膝を付いたまま、セージが頭を下げる。
「よい。」ふっと笑ってアルダールが剣を下ろした。セージと共に修練場の脇に設えられた水浴び場で軽く水を浴びていると、早番らしい下女が走ってタオルを持ってきた。
「昨夜の女はお前が用意したのか?」タオルで体を拭きながら、アルダールが聞く。
「えっ昨夜は特に・・・って陛下?寝所に女が入り込んだのですか?昨夜の護衛騎士は誰だ!!何をしていたんだ!!ったく。」一人で憤るセージに、「お前じゃなかったのか。」と意外そうなアルダール。
「その女が何か狼藉でも?」恐る恐る、セージが尋ねた。
「いや、悪くなかった。まだ俺の寝所にいる。」
「え、さすがに夜が明けら、もういないと思いますが。」
「それはない、王族の女が城の廊下を裸で歩く勇気があるとは思えん。」アルダールが楽しそうにくっくっと笑う。
「あー・・・」セージは以前アルダールが、女の夜着は脱がせるより破り捨てる方が早いと言っていたのを思い出した。
「女は国王の姉で元王女だ。夜伽以外にも、使い道は色々ある。城に残っている侍女に女の世話をさせろ。それと、あの女の戦死した夫と、誰があの女を俺の寝所に送り込んだのか調べろ。」
「かしこまりました。」
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