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人生、一寸先は闇なんて言うけどホントだわ。っていうか、あたしの場合、既に闇の中で。
一寸先どころか、もう目を開けてるのか閉じてるのかも分からないほど真っ暗。一筋の光も見えない奈落の底に落ちてしまった……。
どうすんの?これからどうすんの?
10万あるかないかの貯金なんてすぐに底をつく。こんな風に暢気にホテル暮らしなんてしていられないのだ。
ホームレスにはなりたくないけど、このままじゃ来週には公園で寝なきゃいけなくなるかも……。
あ゛ー! あ゛ー! って呻っててもどうないもならない。
とりあえず、住み込みで働けるところを探すしかない。
パチンコ屋? お水?
発想が貧困で大した案も思いつかない。まずは情報取集しよう。スマホを取り出して、ググってみる。調べてみると意外と住み込みの仕事ってあるものだ。
翌朝からあちこち電話をかけ、面接に行った。
その場で不採用を告げてくれるところもあれば、追って連絡しますと言われるところもあった。正直、返事を待つ余裕はないので即答してほしかったけど、そうもいかないんだろうなぁ。
こうして面接を受けに行くだけでも交通費とか色々かかる。職探しもタダじゃないんだって初めて気がついた。
何社か受けたけど、いい返事が来ず、イタズラになけなしのお金を使っただけの一週間だった。
どうしよう……マジでヤバい。
次の仕事が決まるまでは家でのんびりと花嫁修業でもしようとか思っていたのが嘘のよう。
これじゃあ、ただの修行だ。
もう風俗とか行くしかないのかな。でもね……目線を落として胸に手を当てる。ううっ! 肉が足りぬ……。
せめて色気かテクニック的なものでもあれば話は違うのだが。いきなり石油王に口説かれたりしないかなー。
あっ……。石油王じゃないけど……いるよね?
大金持ち。あー! ダメだ、ダメだ。
何を弱気になってるんだ、あたしは。アイツには頼らないって決めたじゃないの。絶対にあんな奴には頼らないから!
髪の毛をかき乱し、ブンブン首を振ったのに、何を血迷うたのかあたしはフラフラと黒澤邸の前まで来てしまっていた。鉄格子の門の向こうに広がるのは溜息の出るような別世界……。きっとあたしには一生縁のない暮らし。
何不自由ないんだろうなぁ。アイツは目の前が真っ暗になって、一日おにぎり一個だけの暮らしなんてしたこ
とないんだろうなぁ。
気がつくと鉄格子を掴んで、中をじっと覗き込んでいた。これじゃあドロボーか囚人だな。
「おい! 何してんだ!」
ぼんやりしてたら、後ろから声をかけられて、心臓が縮み上がった。
「ご、ごめんなさい!」
怖くなって、慌てて逃げようとした時だった。
「あ! あんたは確か……」
門の前に停めた外車の窓から顔を出していたのは、紛れもなくあのフル○ン男だった。
「うちもヤクルトはいらないぜ」
憎まれ口を叩くと、奴はケラケラと嘲笑し始めた。やっぱり来るんじゃなかった、こんなとこ。余計に惨めになるだけだ。何も言い返すことなく、あたしは踵を返した。
「なんだよー、怒ったのか?ちょっと待てよ。俺に用があって来たんじゃねえのかよ」
よほど暇なのか、底辺の人間を見下して笑いたいのか、奴はわざわざ車から降りて追いかけて来た。仕事帰りなのか、スーツ姿だけど、普通のサラリーマンには見えない。チャラい。なんかホストみたい。(なんて、ホストの方に失礼だわ)
この男が着ているスーツなんて、あたしのへそくりでは足りないほど高価なものなんだろう。そう思うとムカついた。スーパーの紳士服売り場で、二着目半額のスーツとか買ったことねえだろ、このボンボンが。
「おい、無視すんなよ、ヤクルトのクセに」
少し怒ったような口調で、奴はあたしの腕を掴んだ。
ヤクルトのクセに!? ヤクルトのクセにってどういうことよ。あたしにもヤクルトにも謝れ! 咄嗟にキッと睨み付ける。
「別にあなたに用なんてありません。たまたま近くを通りかかったので、立派なお宅だなと思って見ていただけです。では、ごきげんよう」
にっこり微笑んで奴の手を振り解いた。単なる意地だった。心の中では汚い言葉で罵っておきながら精一杯上品ぶって大人の女を演じた。余裕なんか1ミリもないのに。
「住むとこ見つかったのかよ」
「ええ、まあお陰様で」
明らかな嘘に声が上ずる。
「どこだよ」
「え?」
「住所だよ。送ってやるから乗れよ」
「け、結構です。健康のために歩きますので」
ギクッ。としたあたしに気づいたのか、奴はニタリと笑った。
「まだ見つかってないんだろ」
バレたか、チクショー!
「か、仮に見つかってないとしてもあなたには関係ないでしょ」
「ああ。まあ、そりゃそうだな」
わざわざ追いかけて来たクセに、今度はあっさりそう言って、車に向かって歩き出した。も、もうちょっと粘って! 下さいよぉ。勇気出してここまで来たのに!逆方向に歩くあたしたちの距離がどんどん開いていく。
やがて、車のドアを開ける音がした。
「ま、待って!……下さい」
呼び止めた時の奴の顔には、悪魔的な笑みが浮かんでいた。
この瞬間、あたしは悪魔に魂を売るんだと理解した。
「うわー」
ベンツに乗るのは初めてだった。シートの座り心地の良さがハンパない。3mくらいはありそうな鉄格子の門が自動で開く。入るとすぐ噴水があって、車はその噴水を避けるようにくるりと周り、玄関の前へ。
うわーとかすごーいとか貧乏人丸出しの反応しかできない。だって、どうせ貧乏人だし。実家も団地だったし、一軒家にすら住んだことないんだから。
「ま、入れよ」と奴が言ったか言わないかのうちに、玄関のドアが勝手に開いた。
「おかえりなさいませ、一成坊ちゃま」
中から出て来たのは、美しいロマンスグレーの御髪が印象的な初老の紳士。っていうか、今坊ちゃまって言った!? リアルで聞いたの初めてかも。
「おや、お客様とご一緒でしたか」
「ああ、これは客じゃないから。ただのヤクルトだから」
いくら何でもただのヤクルトって紹介はないでしょうに。
「ヤクルトとはどういう意味でございますか?」
真面目な顔で訊き返されると、かなりシュール。
「いいから気にしないで。あ、この人は執事の左近さん」
し、執事!? す、すごい!初めて見た!
「はじめまして。左近と申します」
「あっ、はじめまして。星崎でございます」
いきなり紹介されて、丁重に挨拶されてどうしたらいいか戸惑ってしまった。
「立ち話もなんですから、どうぞ」
開け放たれた玄関の扉の向こうに広がっていたのは、圧巻の別次元。磨き抜かれた白の輝くような世界。シンデレラの靴がありそうな大きな階段にシャンデリア、そして、出迎えてくれているかのような豪華絢爛な花と階段の踊り場の壁にかけられた立派な絵画。
なんだ、ここは……。豪邸っていうか、まさしく城? 夢の中にいるみたいで、あたしは何度も息を呑み、手の甲を抓った。痛いから夢じゃない。この家は実在しているんだ。
とにかく目に映るすべてのものが凄いとしか言いようがない。
通されたリビングの広さも、置いてある家具や調度品の数々も……。うっかり躓いて転ぶこともできないな、これじゃあ。
「すぐにお茶のご用意を致しますので」
「え、ああ、あの、お構いなく……」
言い終える前に、左近さんはリビングからいなくなっていた。忍者のように素早い動き。
「で、あんた仕事はしてるんだっけ?」
あたしにソファーに座るように言うと、煙草を口に銜え、奴はいきなり本題に入った。
「仕事は今、探してるとこ。……です」
一応敬語使うべき? 年上か年下なのかも知らないけど。
「家もない、仕事もない、挙句に胸もない。男にもフラれて散々だな、あんた」
胸は余計だろ。ってか、酔った勢いか知らないけど、この男にどれだけ個人情報を漏らしたんだろう、あたし。我ながら情けない。
「あんた、何でもする覚悟ある?」
「えっ?」
何でもする覚悟?身体に緊張が走る。
「まさか、タダでうちに厄介になるつもりじゃねえよな?こっちだってそれなりに見返りがなきゃさー。ボランティアであんた助ける義理もねえし」
まあ、それは仰る通り。
「あたしにできることなら何でもするつもりです」
「へえ。じゃあ、そのない乳揉ませろって言ったら揉ませんのかよ」
なにさ。一度は揉んだクセに。
「ない乳でよければ」
ここは余裕ありげに微笑んでおこう。そんなのできなーいって泣いたりすれば奴の思うツボって気がする。
「乳はないのに度胸だけはあるみたいだな」
セクハラじゃない? これってセクハラでしょ?
あー! マジでムカつく。こんな大ピンチじゃなきゃぶっ飛ばしてやるのにぃぃ。
「胸のことばっかり言うなんて、さてはあたしの胸が好きなんでしょ」
「それはない」
怒りを隠し、あくまで冷静に言ったけどかぶり気味に否定された。
「俺、ビヨンセみたいなカラダの子が好きだから」
フンッ! あんなナイスバディの女がゴロゴロいるワケないだろうが。
呆れていたら、左近さんが戻ってきた。触れるのも勿体ないような、美しいバラの模様のカップが目の前に置かれた。芳しい紅茶の香りの中にフワッと甘い匂いが漂う。
「それではごゆっくり。失礼致します」
「あ、左近さん。この女、ここで雇っても構わないかな?」
「ここで、でございますか?」
立ち去りかけた左近さんは、足を止めると振り返って首を傾げた。
「ええ。家政婦として」
か、家政婦? それって、あたしのこと!?
「それは……わたくしの一存で決められることではありませんので、旦那様に伺われた方がよろしいかと」
「そうだね。今夜にでも父上に訊いてみるよ。で。もし、この女が家政婦になれたとして、仕事ってあるかな?」
「それはもう、なんなりと」
にっこりと微笑むと、左近さんは再びリビングから姿を消した。
「なんだよ、文句あんのか?」
「い、いえ」
文句も何も、あまりの急展開にまだ脳みそが追いつかない。
「ここに住まわせてやる代わりに、家政婦として働け。そして、この俺様に奉仕しろ」
う、嘘でしょ? このあたしが家政婦?
「あ、あのぉあたし家政婦の経験なんてないんだけど、資格とかいらないの?……ですか」
信じられない事態に片言みたいになってしまった。
「資格ねえ……。俺としてはサイテーでも胸はCカップ以上で、お尻がバーンとデカくて腰がキュッとくびれてて欲しいとこだな。あと、色気があって、エロけりゃ文句なしだけど、あんたにはどれもなさそうだからなー。考えたら、俺には何のメリットもねえな」
ゲラゲラ笑いながら、これでもかっていう嫌みを言われた。
う゛ー! マジでムカつく。歯食いしばり過ぎて奥歯欠けそう。
「ご期待に添えず悪うございましたね」
そりゃあたしだって、もっと肉感的なカラダがよかったわい!
カオリちゃんみたいな……おっきいおっぱいなら……。
あーヤなこと思い出したら、泣きそうになってきた。
「おいおい、マジかよ。泣くなよ。めんどくせーな」
「泣いてません!」
泣くもんか。こんな奴にイビられたぐらいで。あんな男にフラれたぐらいで。ぐっとしょっぱいものを呑み込んだ。
「そんなに嫌ならいいんだぜ」
「いえ。頑張ります」
頑張るの? 頑張るのか!? あたし。この暴君に仕えるの?……悔しいけど、今のあたしには仕える以外に選択肢はない。
「よし。じゃあ来い」
「あ、はい」
美味しいお紅茶もそこそこに、奴は立ち上がるとあたしを手招きした。お屋敷の中を案内してくれるのかと思いきや、着いたのはこの間の離れ。
「今日からここがあんたの住まいだから好きに使っていい」
「え?でも、ここには確かお兄さんが」
1人で住んでるって言ってなかった?
「ああ。アイツは二階で寝るだけだし、気にしなくていいから」
気にしなくていいって言われても……。
「何だよ。お前、まさか俺と一緒の部屋で暮らせるとか思ってたワケ?」
返事に困っていると、奴が言った。
「ま、まさか。絶対イヤですよ、そんなの。でも、ホントにいいんですか?お兄さんに許可もなく……」
「なんかサラッとムカつくけど、いいんだよ。俺がいいって言ってんだから」
どこまでも誰に対しても俺様な奴。ホントに大丈夫なのかな……。
「じゃあ親父が帰ったら呼びに来るからそれまではここで待機してろ」
「はい」
とりあえず、リビングのソファーに腰を下ろす。
まだ正式に雇われたワケでもないし、何をすればいいのか分からない。何をしちゃいけないのかも分からない。家政婦の経験なんてないから、心得のようなものもまるでない。
さて、どうしたものか。このままここでぼんやり座っていてもいいのかしら?
暫くして、お手洗いをお借りしようと廊下に出た途端、玄関が開いた。呼びに来たのかな? と思ったら知らない男性と目が合った。
この人ってもしかして……。確認もままならない、一瞬の出来事だった。
「イタタタタタッ!」
男性はいきなりあたしに向かってくると腕を掴んで背中に回し、壁に押さえつけた。
これって刑事ドラマでよく刑事さんが犯人を捕まえる時にするやつだ。腕折れそうだし、壁に押し付けられた顔も潰れそう。
「ギブギブ!」
掴まれていない方の手で壁を叩いても、放してもらえない。
「……泥棒」
背後から低い声がした。
「ちっ違います!あたしは家政婦です」
まだ違うけど、痛くて怖くて嘘ついた。
「家政婦……?」
「そ、そうです!」
男性の手が少し緩んだ時だった。
「あれ、早速お取込み中?」
玄関を開け、奴がニヤニヤと笑っていた。どこをどう見たらお取込み中なんだ!奴の言葉に、男性は手を放した。
「まったく油断も隙もあったもんじゃねえなぁ、零は。今日からこの女、ここに住まわせるつもりなのに」
「えっ……」
当たり前だけど、男性は困惑していた。この間はちゃんと顔も見てなかったから記憶になかったけど、この人が多分お兄さんなんだよね?にしても、腕が痛い……。取り押さえられたのなんて初めてだ。
「やっぱお前も家政婦が好きなのかね」
奴が挑発的な笑みを浮かべると、男性は物凄いスピードで掴みかかった。
ええっ! まさか取っ組み合いの喧嘩!? どどどど、どうしよう!
「イテーな!何すんだよ!そんなに怒るってことは図星なんだろうがよ」
馬乗りになっている男性に向かって、奴が怒鳴った。
「二度と口が利けないようにしてやる」
男性は血走った目で、奴の首を絞めた。ウ、ウソ!
「ちょ、ちょっと!そんなことしたら死んじゃいますよっ!!」
怖くて震えながらも、体は勝手に男性を止めていた。
「俺に触るな!」
「きゃっ!」
男性はあたしを睨み付けると、思い切り突き飛ばした。
あたしに気を取られている隙を見て、奴は男性の下から這い出した。
「相変わらず見境ないな、お前は。女を突き飛ばすなんてどうかしてんじゃねえの」
痛そうに首をさすりながら奴は言った。あたしは恐怖で動けなかった。
「すまない……」
正気に戻ったのか、男性があたしに近づいてきて手を差し伸べたけど、拒否反応みたいに後退ってしまった。
「あーあ。怖がられてやんの」
奴は笑っていたけど、あたしはとても笑えそうになかった。
「親父帰って来るみたいだから来いよ。お前もだぞ、零」
奴の言葉に、男性は黙って出て行った。怖くてまだドキドキする胸を押さえ、あたしはゆっくり立ち上がると、2人の後を追った。
もしかして、あたしはとんでもないとこに来てしまったんじゃないの?
あの男性の目……普通じゃなかった。人を殺す人ってこういう目なのかなって思ってしまった。そんな人とあの離れで一緒に暮らさなきゃいけないの?
考えただけでゾッとする。今ならまだ間に合うのでは? 今のうちに断る? あーどうしよー!やっぱり、世の中甘い話なんてあるワケないんだー!!
一寸先どころか、もう目を開けてるのか閉じてるのかも分からないほど真っ暗。一筋の光も見えない奈落の底に落ちてしまった……。
どうすんの?これからどうすんの?
10万あるかないかの貯金なんてすぐに底をつく。こんな風に暢気にホテル暮らしなんてしていられないのだ。
ホームレスにはなりたくないけど、このままじゃ来週には公園で寝なきゃいけなくなるかも……。
あ゛ー! あ゛ー! って呻っててもどうないもならない。
とりあえず、住み込みで働けるところを探すしかない。
パチンコ屋? お水?
発想が貧困で大した案も思いつかない。まずは情報取集しよう。スマホを取り出して、ググってみる。調べてみると意外と住み込みの仕事ってあるものだ。
翌朝からあちこち電話をかけ、面接に行った。
その場で不採用を告げてくれるところもあれば、追って連絡しますと言われるところもあった。正直、返事を待つ余裕はないので即答してほしかったけど、そうもいかないんだろうなぁ。
こうして面接を受けに行くだけでも交通費とか色々かかる。職探しもタダじゃないんだって初めて気がついた。
何社か受けたけど、いい返事が来ず、イタズラになけなしのお金を使っただけの一週間だった。
どうしよう……マジでヤバい。
次の仕事が決まるまでは家でのんびりと花嫁修業でもしようとか思っていたのが嘘のよう。
これじゃあ、ただの修行だ。
もう風俗とか行くしかないのかな。でもね……目線を落として胸に手を当てる。ううっ! 肉が足りぬ……。
せめて色気かテクニック的なものでもあれば話は違うのだが。いきなり石油王に口説かれたりしないかなー。
あっ……。石油王じゃないけど……いるよね?
大金持ち。あー! ダメだ、ダメだ。
何を弱気になってるんだ、あたしは。アイツには頼らないって決めたじゃないの。絶対にあんな奴には頼らないから!
髪の毛をかき乱し、ブンブン首を振ったのに、何を血迷うたのかあたしはフラフラと黒澤邸の前まで来てしまっていた。鉄格子の門の向こうに広がるのは溜息の出るような別世界……。きっとあたしには一生縁のない暮らし。
何不自由ないんだろうなぁ。アイツは目の前が真っ暗になって、一日おにぎり一個だけの暮らしなんてしたこ
とないんだろうなぁ。
気がつくと鉄格子を掴んで、中をじっと覗き込んでいた。これじゃあドロボーか囚人だな。
「おい! 何してんだ!」
ぼんやりしてたら、後ろから声をかけられて、心臓が縮み上がった。
「ご、ごめんなさい!」
怖くなって、慌てて逃げようとした時だった。
「あ! あんたは確か……」
門の前に停めた外車の窓から顔を出していたのは、紛れもなくあのフル○ン男だった。
「うちもヤクルトはいらないぜ」
憎まれ口を叩くと、奴はケラケラと嘲笑し始めた。やっぱり来るんじゃなかった、こんなとこ。余計に惨めになるだけだ。何も言い返すことなく、あたしは踵を返した。
「なんだよー、怒ったのか?ちょっと待てよ。俺に用があって来たんじゃねえのかよ」
よほど暇なのか、底辺の人間を見下して笑いたいのか、奴はわざわざ車から降りて追いかけて来た。仕事帰りなのか、スーツ姿だけど、普通のサラリーマンには見えない。チャラい。なんかホストみたい。(なんて、ホストの方に失礼だわ)
この男が着ているスーツなんて、あたしのへそくりでは足りないほど高価なものなんだろう。そう思うとムカついた。スーパーの紳士服売り場で、二着目半額のスーツとか買ったことねえだろ、このボンボンが。
「おい、無視すんなよ、ヤクルトのクセに」
少し怒ったような口調で、奴はあたしの腕を掴んだ。
ヤクルトのクセに!? ヤクルトのクセにってどういうことよ。あたしにもヤクルトにも謝れ! 咄嗟にキッと睨み付ける。
「別にあなたに用なんてありません。たまたま近くを通りかかったので、立派なお宅だなと思って見ていただけです。では、ごきげんよう」
にっこり微笑んで奴の手を振り解いた。単なる意地だった。心の中では汚い言葉で罵っておきながら精一杯上品ぶって大人の女を演じた。余裕なんか1ミリもないのに。
「住むとこ見つかったのかよ」
「ええ、まあお陰様で」
明らかな嘘に声が上ずる。
「どこだよ」
「え?」
「住所だよ。送ってやるから乗れよ」
「け、結構です。健康のために歩きますので」
ギクッ。としたあたしに気づいたのか、奴はニタリと笑った。
「まだ見つかってないんだろ」
バレたか、チクショー!
「か、仮に見つかってないとしてもあなたには関係ないでしょ」
「ああ。まあ、そりゃそうだな」
わざわざ追いかけて来たクセに、今度はあっさりそう言って、車に向かって歩き出した。も、もうちょっと粘って! 下さいよぉ。勇気出してここまで来たのに!逆方向に歩くあたしたちの距離がどんどん開いていく。
やがて、車のドアを開ける音がした。
「ま、待って!……下さい」
呼び止めた時の奴の顔には、悪魔的な笑みが浮かんでいた。
この瞬間、あたしは悪魔に魂を売るんだと理解した。
「うわー」
ベンツに乗るのは初めてだった。シートの座り心地の良さがハンパない。3mくらいはありそうな鉄格子の門が自動で開く。入るとすぐ噴水があって、車はその噴水を避けるようにくるりと周り、玄関の前へ。
うわーとかすごーいとか貧乏人丸出しの反応しかできない。だって、どうせ貧乏人だし。実家も団地だったし、一軒家にすら住んだことないんだから。
「ま、入れよ」と奴が言ったか言わないかのうちに、玄関のドアが勝手に開いた。
「おかえりなさいませ、一成坊ちゃま」
中から出て来たのは、美しいロマンスグレーの御髪が印象的な初老の紳士。っていうか、今坊ちゃまって言った!? リアルで聞いたの初めてかも。
「おや、お客様とご一緒でしたか」
「ああ、これは客じゃないから。ただのヤクルトだから」
いくら何でもただのヤクルトって紹介はないでしょうに。
「ヤクルトとはどういう意味でございますか?」
真面目な顔で訊き返されると、かなりシュール。
「いいから気にしないで。あ、この人は執事の左近さん」
し、執事!? す、すごい!初めて見た!
「はじめまして。左近と申します」
「あっ、はじめまして。星崎でございます」
いきなり紹介されて、丁重に挨拶されてどうしたらいいか戸惑ってしまった。
「立ち話もなんですから、どうぞ」
開け放たれた玄関の扉の向こうに広がっていたのは、圧巻の別次元。磨き抜かれた白の輝くような世界。シンデレラの靴がありそうな大きな階段にシャンデリア、そして、出迎えてくれているかのような豪華絢爛な花と階段の踊り場の壁にかけられた立派な絵画。
なんだ、ここは……。豪邸っていうか、まさしく城? 夢の中にいるみたいで、あたしは何度も息を呑み、手の甲を抓った。痛いから夢じゃない。この家は実在しているんだ。
とにかく目に映るすべてのものが凄いとしか言いようがない。
通されたリビングの広さも、置いてある家具や調度品の数々も……。うっかり躓いて転ぶこともできないな、これじゃあ。
「すぐにお茶のご用意を致しますので」
「え、ああ、あの、お構いなく……」
言い終える前に、左近さんはリビングからいなくなっていた。忍者のように素早い動き。
「で、あんた仕事はしてるんだっけ?」
あたしにソファーに座るように言うと、煙草を口に銜え、奴はいきなり本題に入った。
「仕事は今、探してるとこ。……です」
一応敬語使うべき? 年上か年下なのかも知らないけど。
「家もない、仕事もない、挙句に胸もない。男にもフラれて散々だな、あんた」
胸は余計だろ。ってか、酔った勢いか知らないけど、この男にどれだけ個人情報を漏らしたんだろう、あたし。我ながら情けない。
「あんた、何でもする覚悟ある?」
「えっ?」
何でもする覚悟?身体に緊張が走る。
「まさか、タダでうちに厄介になるつもりじゃねえよな?こっちだってそれなりに見返りがなきゃさー。ボランティアであんた助ける義理もねえし」
まあ、それは仰る通り。
「あたしにできることなら何でもするつもりです」
「へえ。じゃあ、そのない乳揉ませろって言ったら揉ませんのかよ」
なにさ。一度は揉んだクセに。
「ない乳でよければ」
ここは余裕ありげに微笑んでおこう。そんなのできなーいって泣いたりすれば奴の思うツボって気がする。
「乳はないのに度胸だけはあるみたいだな」
セクハラじゃない? これってセクハラでしょ?
あー! マジでムカつく。こんな大ピンチじゃなきゃぶっ飛ばしてやるのにぃぃ。
「胸のことばっかり言うなんて、さてはあたしの胸が好きなんでしょ」
「それはない」
怒りを隠し、あくまで冷静に言ったけどかぶり気味に否定された。
「俺、ビヨンセみたいなカラダの子が好きだから」
フンッ! あんなナイスバディの女がゴロゴロいるワケないだろうが。
呆れていたら、左近さんが戻ってきた。触れるのも勿体ないような、美しいバラの模様のカップが目の前に置かれた。芳しい紅茶の香りの中にフワッと甘い匂いが漂う。
「それではごゆっくり。失礼致します」
「あ、左近さん。この女、ここで雇っても構わないかな?」
「ここで、でございますか?」
立ち去りかけた左近さんは、足を止めると振り返って首を傾げた。
「ええ。家政婦として」
か、家政婦? それって、あたしのこと!?
「それは……わたくしの一存で決められることではありませんので、旦那様に伺われた方がよろしいかと」
「そうだね。今夜にでも父上に訊いてみるよ。で。もし、この女が家政婦になれたとして、仕事ってあるかな?」
「それはもう、なんなりと」
にっこりと微笑むと、左近さんは再びリビングから姿を消した。
「なんだよ、文句あんのか?」
「い、いえ」
文句も何も、あまりの急展開にまだ脳みそが追いつかない。
「ここに住まわせてやる代わりに、家政婦として働け。そして、この俺様に奉仕しろ」
う、嘘でしょ? このあたしが家政婦?
「あ、あのぉあたし家政婦の経験なんてないんだけど、資格とかいらないの?……ですか」
信じられない事態に片言みたいになってしまった。
「資格ねえ……。俺としてはサイテーでも胸はCカップ以上で、お尻がバーンとデカくて腰がキュッとくびれてて欲しいとこだな。あと、色気があって、エロけりゃ文句なしだけど、あんたにはどれもなさそうだからなー。考えたら、俺には何のメリットもねえな」
ゲラゲラ笑いながら、これでもかっていう嫌みを言われた。
う゛ー! マジでムカつく。歯食いしばり過ぎて奥歯欠けそう。
「ご期待に添えず悪うございましたね」
そりゃあたしだって、もっと肉感的なカラダがよかったわい!
カオリちゃんみたいな……おっきいおっぱいなら……。
あーヤなこと思い出したら、泣きそうになってきた。
「おいおい、マジかよ。泣くなよ。めんどくせーな」
「泣いてません!」
泣くもんか。こんな奴にイビられたぐらいで。あんな男にフラれたぐらいで。ぐっとしょっぱいものを呑み込んだ。
「そんなに嫌ならいいんだぜ」
「いえ。頑張ります」
頑張るの? 頑張るのか!? あたし。この暴君に仕えるの?……悔しいけど、今のあたしには仕える以外に選択肢はない。
「よし。じゃあ来い」
「あ、はい」
美味しいお紅茶もそこそこに、奴は立ち上がるとあたしを手招きした。お屋敷の中を案内してくれるのかと思いきや、着いたのはこの間の離れ。
「今日からここがあんたの住まいだから好きに使っていい」
「え?でも、ここには確かお兄さんが」
1人で住んでるって言ってなかった?
「ああ。アイツは二階で寝るだけだし、気にしなくていいから」
気にしなくていいって言われても……。
「何だよ。お前、まさか俺と一緒の部屋で暮らせるとか思ってたワケ?」
返事に困っていると、奴が言った。
「ま、まさか。絶対イヤですよ、そんなの。でも、ホントにいいんですか?お兄さんに許可もなく……」
「なんかサラッとムカつくけど、いいんだよ。俺がいいって言ってんだから」
どこまでも誰に対しても俺様な奴。ホントに大丈夫なのかな……。
「じゃあ親父が帰ったら呼びに来るからそれまではここで待機してろ」
「はい」
とりあえず、リビングのソファーに腰を下ろす。
まだ正式に雇われたワケでもないし、何をすればいいのか分からない。何をしちゃいけないのかも分からない。家政婦の経験なんてないから、心得のようなものもまるでない。
さて、どうしたものか。このままここでぼんやり座っていてもいいのかしら?
暫くして、お手洗いをお借りしようと廊下に出た途端、玄関が開いた。呼びに来たのかな? と思ったら知らない男性と目が合った。
この人ってもしかして……。確認もままならない、一瞬の出来事だった。
「イタタタタタッ!」
男性はいきなりあたしに向かってくると腕を掴んで背中に回し、壁に押さえつけた。
これって刑事ドラマでよく刑事さんが犯人を捕まえる時にするやつだ。腕折れそうだし、壁に押し付けられた顔も潰れそう。
「ギブギブ!」
掴まれていない方の手で壁を叩いても、放してもらえない。
「……泥棒」
背後から低い声がした。
「ちっ違います!あたしは家政婦です」
まだ違うけど、痛くて怖くて嘘ついた。
「家政婦……?」
「そ、そうです!」
男性の手が少し緩んだ時だった。
「あれ、早速お取込み中?」
玄関を開け、奴がニヤニヤと笑っていた。どこをどう見たらお取込み中なんだ!奴の言葉に、男性は手を放した。
「まったく油断も隙もあったもんじゃねえなぁ、零は。今日からこの女、ここに住まわせるつもりなのに」
「えっ……」
当たり前だけど、男性は困惑していた。この間はちゃんと顔も見てなかったから記憶になかったけど、この人が多分お兄さんなんだよね?にしても、腕が痛い……。取り押さえられたのなんて初めてだ。
「やっぱお前も家政婦が好きなのかね」
奴が挑発的な笑みを浮かべると、男性は物凄いスピードで掴みかかった。
ええっ! まさか取っ組み合いの喧嘩!? どどどど、どうしよう!
「イテーな!何すんだよ!そんなに怒るってことは図星なんだろうがよ」
馬乗りになっている男性に向かって、奴が怒鳴った。
「二度と口が利けないようにしてやる」
男性は血走った目で、奴の首を絞めた。ウ、ウソ!
「ちょ、ちょっと!そんなことしたら死んじゃいますよっ!!」
怖くて震えながらも、体は勝手に男性を止めていた。
「俺に触るな!」
「きゃっ!」
男性はあたしを睨み付けると、思い切り突き飛ばした。
あたしに気を取られている隙を見て、奴は男性の下から這い出した。
「相変わらず見境ないな、お前は。女を突き飛ばすなんてどうかしてんじゃねえの」
痛そうに首をさすりながら奴は言った。あたしは恐怖で動けなかった。
「すまない……」
正気に戻ったのか、男性があたしに近づいてきて手を差し伸べたけど、拒否反応みたいに後退ってしまった。
「あーあ。怖がられてやんの」
奴は笑っていたけど、あたしはとても笑えそうになかった。
「親父帰って来るみたいだから来いよ。お前もだぞ、零」
奴の言葉に、男性は黙って出て行った。怖くてまだドキドキする胸を押さえ、あたしはゆっくり立ち上がると、2人の後を追った。
もしかして、あたしはとんでもないとこに来てしまったんじゃないの?
あの男性の目……普通じゃなかった。人を殺す人ってこういう目なのかなって思ってしまった。そんな人とあの離れで一緒に暮らさなきゃいけないの?
考えただけでゾッとする。今ならまだ間に合うのでは? 今のうちに断る? あーどうしよー!やっぱり、世の中甘い話なんてあるワケないんだー!!
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