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第四十八話 九月三十日(土) バーシムレ
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コイビトか~……。
ベッドにボフッと倒れ込み、疲れた体を休めつつ、柔らかな感触を味わう。
家が隣だったし、家族ぐるみの付き合いもあったから、自然と仲良くなった女の子。
ボクが小学校に上がるか上がらないかという頃に、前世の記憶が戻ってしまい、大混乱する中、実の親も含め、周りの大人たちは心配こそすれど、記憶の混乱とお医者様にも言われ、信じてくれなかった。
そんな中、たった一人、心の底から信じてくれた君。
この世でただ一人の、ボクの完全な理解者。
思春期を迎えると、君の何気ない仕草にドキッとすることが、何度もあった。
ボクは、やっぱり本質的に男の子なのだろうか?
そんな疑問をいだき始めていた頃、学校の授業で、ジェンダーの問題について教わった。同性を好きになるのは、おかしなことではないと。
でもそれは、ますますボクを混乱させた。ボクは、女なのか、男なのか、ナニモノなのだろうかと。
この問題は、バーシにも家族にも、教師にもどうにもできなくて、一人で悩む日々が続いた。
そしてあるとき、「心の奥底を十%ぐらい、前世の男の子が間借りしている」という、自分なりの結論を得た。
これが、正しい理解なのかはわからない。
ただ、はっきりと言えるのは、女装やメイクこそ未だに抵抗があるけど、ボクは自分が女であることは嫌ではないし、決して男ではないということ。
それだけは、なんというか、魂で理解できる。前世の男の子は、心の奥底でボクに色々影響を与えているけれど、ボクから主導権は奪っていない。
その上で、バーシが好きだ。だから、これは精神的にも同性愛なんだ。
バーシ。明るくて。優しくて。……ちょっと変わっていて。そんな彼女が、好きで、好きで、大好きで。
一歩進んだ関係を、周りに打ち明けたらどうなるだろう。
お母さんは、なんだかんだで受け入れてくれそうだな。お父さんと、おじいちゃん、おばあちゃんはショックを受けるかもしれないな。
ククとシャロンは、祝福してくれると思う。ほかのクラスメイトは、どうかな? ちょっと、予想がつかない。
バーシと電話で話したいな。でも、おじいちゃんとかに聞かれたら、どうしよう。
こんなとき、この世界にもスマホがあったらなあと思う。そしたら、二人でこっそり、とりとめのない会話を、いつまでもできるのに。
体は疲れてるのに、興奮して、全然、気も体も休まらない。
バーシ! バーシ! バーシ!!
ボクの、大切な人! 愛しくて、愛しくて、心の底から愛しくて!
ベッドの上で、枕に顔を埋めながら、ジタバタともんどり打つ。
そうだ、手紙を書こう! 封をしてしまえば、さすがにおばさんたちも、勝手に読むようなデリカシーのないこと、しないだろうし。
さっそく、机に座り、便箋とペンを取り出す。
どんな出だしにしよう。「愛しいバーシへ」……恥ずかしいし、なんかガラじゃないな。
「親愛なるバーシへ」……今度は、妙に堅苦しくなってしまった。書き直し。
「大好きなバーシへ」……うん、これでいこう。
こつこつと、ときに悩んだり、消しゴムをかけたりしながら、ラブレターを書き進めていく。
……書けた! 読み直してみると、我ながら小っ恥ずかしいことが、たくさん書かれている。
でも、これが今の正直な気持ちなんだから、仕方ない。
明日、ククとの散歩に行く前に、向こうの郵便受けに入れていこう。
ボクたちの関係は、まだ話さない。それは、バーシの同意を得てから。
ボク、ククに対して、態度隠しきれるかな。ちょっと、自信ない。
書くもの書いて封もしたので、再びベッドに横たわる。ちょっと、勉強の予習・復習って気分じゃない。
ああ、恋って、こんなにドキドキ、ソワソワするものなのか。
ボクらの新たな関係は、今までの延長線。でも、恋なのだという自覚を持つだけで、こんなに違うなんて。
なんだか体が火照るので、窓を開けると、寒気がびゅうと飛び込んでくる。
お月様がきれいだ。
そういえば、ボク、お日様にはいつも感謝してるけど、お月様にはしたことないな。
「お月様、ありがとー!」
明日は、きっといい日だ! その次も、そのまた次も、きっと!
バーシ、愛してる!!
ベッドにボフッと倒れ込み、疲れた体を休めつつ、柔らかな感触を味わう。
家が隣だったし、家族ぐるみの付き合いもあったから、自然と仲良くなった女の子。
ボクが小学校に上がるか上がらないかという頃に、前世の記憶が戻ってしまい、大混乱する中、実の親も含め、周りの大人たちは心配こそすれど、記憶の混乱とお医者様にも言われ、信じてくれなかった。
そんな中、たった一人、心の底から信じてくれた君。
この世でただ一人の、ボクの完全な理解者。
思春期を迎えると、君の何気ない仕草にドキッとすることが、何度もあった。
ボクは、やっぱり本質的に男の子なのだろうか?
そんな疑問をいだき始めていた頃、学校の授業で、ジェンダーの問題について教わった。同性を好きになるのは、おかしなことではないと。
でもそれは、ますますボクを混乱させた。ボクは、女なのか、男なのか、ナニモノなのだろうかと。
この問題は、バーシにも家族にも、教師にもどうにもできなくて、一人で悩む日々が続いた。
そしてあるとき、「心の奥底を十%ぐらい、前世の男の子が間借りしている」という、自分なりの結論を得た。
これが、正しい理解なのかはわからない。
ただ、はっきりと言えるのは、女装やメイクこそ未だに抵抗があるけど、ボクは自分が女であることは嫌ではないし、決して男ではないということ。
それだけは、なんというか、魂で理解できる。前世の男の子は、心の奥底でボクに色々影響を与えているけれど、ボクから主導権は奪っていない。
その上で、バーシが好きだ。だから、これは精神的にも同性愛なんだ。
バーシ。明るくて。優しくて。……ちょっと変わっていて。そんな彼女が、好きで、好きで、大好きで。
一歩進んだ関係を、周りに打ち明けたらどうなるだろう。
お母さんは、なんだかんだで受け入れてくれそうだな。お父さんと、おじいちゃん、おばあちゃんはショックを受けるかもしれないな。
ククとシャロンは、祝福してくれると思う。ほかのクラスメイトは、どうかな? ちょっと、予想がつかない。
バーシと電話で話したいな。でも、おじいちゃんとかに聞かれたら、どうしよう。
こんなとき、この世界にもスマホがあったらなあと思う。そしたら、二人でこっそり、とりとめのない会話を、いつまでもできるのに。
体は疲れてるのに、興奮して、全然、気も体も休まらない。
バーシ! バーシ! バーシ!!
ボクの、大切な人! 愛しくて、愛しくて、心の底から愛しくて!
ベッドの上で、枕に顔を埋めながら、ジタバタともんどり打つ。
そうだ、手紙を書こう! 封をしてしまえば、さすがにおばさんたちも、勝手に読むようなデリカシーのないこと、しないだろうし。
さっそく、机に座り、便箋とペンを取り出す。
どんな出だしにしよう。「愛しいバーシへ」……恥ずかしいし、なんかガラじゃないな。
「親愛なるバーシへ」……今度は、妙に堅苦しくなってしまった。書き直し。
「大好きなバーシへ」……うん、これでいこう。
こつこつと、ときに悩んだり、消しゴムをかけたりしながら、ラブレターを書き進めていく。
……書けた! 読み直してみると、我ながら小っ恥ずかしいことが、たくさん書かれている。
でも、これが今の正直な気持ちなんだから、仕方ない。
明日、ククとの散歩に行く前に、向こうの郵便受けに入れていこう。
ボクたちの関係は、まだ話さない。それは、バーシの同意を得てから。
ボク、ククに対して、態度隠しきれるかな。ちょっと、自信ない。
書くもの書いて封もしたので、再びベッドに横たわる。ちょっと、勉強の予習・復習って気分じゃない。
ああ、恋って、こんなにドキドキ、ソワソワするものなのか。
ボクらの新たな関係は、今までの延長線。でも、恋なのだという自覚を持つだけで、こんなに違うなんて。
なんだか体が火照るので、窓を開けると、寒気がびゅうと飛び込んでくる。
お月様がきれいだ。
そういえば、ボク、お日様にはいつも感謝してるけど、お月様にはしたことないな。
「お月様、ありがとー!」
明日は、きっといい日だ! その次も、そのまた次も、きっと!
バーシ、愛してる!!
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