ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第五十話 十月二日(月) しっぽのきもち

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「そういえば、不審者捕まったらしいぜ」

「うんうん! 昨日、家族に聞いた~」

 毎度おなじみ、朝の散歩。昨夜のドキドキデートの話は伏せておいて、ククと雑談中。

「これからは、運動をもっと早い時間に戻せるな~」

 う~んと伸びをしながら、朝の陽光を満喫する。

「本来、いつぐらいの時間なん?」

「んー? 大体、日の昇り始め。ボク、いつもそのぐらいに、自然に目が覚めるんだよね」

「はやっ! いや、マジでニワトリか! さすがに、その時間に付き合うのはきついな~」

 ニワトリが、豆鉄砲食らったような顔をするクク。

「そっかー。まあ、こうやって重り着けて散歩するのも、結構いい運動になるし、ククと話してると楽しいし、今のままでもいいかな」

 腕を上に伸ばして組み、にゅいんにゅいんと左右に振る。

「ほんと元気だな~」

「ありがとう。最高の褒め言葉だよ」

 元気。それは、ボクにとってかけがえのない宝の一つ!

「おっと、出口だ。じゃあ、また学校でな~」

「はーい!」

 というわけで、出口でお別れ。さーて、帰りは走りますかー!


 ◆ ◆ ◆


「でさー。ヤマト街のジンジャがね、けっこーうなパワースポットらしいのよ」

「へー。やっぱ、行く気?」

 お昼。四人でククの机囲んで、お話し中なわけだけど。

「なー。お前ら、さっきからずっと、二人で喋ってね?」

 ククに、バーシと喋りっぱなしなことを指摘され、ハッとなる。

「ごめん。無視してたわけじゃないよ?」

「うんうん」

 むう。なーんか、ボクらを見る、ククの目が……。

「二人とも、ちょっと。シャロンは、ちょっと待っててな。あたしん席に座ってていいから」

「うす! 姉さんのカンショク、タンノーさせてもらうっす!」

「変態オヤジみたいなこと言うなや。ま、とりあえず行こうか」

 そんなこんなで、ククに肩を抱かれて、人気ひとけのないあたりに連行される。

「何、クク? こんなところ連れてきてさ」

「……オメーら、デキた・・・だろ」

 ドキーン! 思わず、しっぽがブワッとなる。

「ビンゴか。そっかー、ついにデキたかー」

 腕組みして、うんうんうなずく彼女。

「はー……。カンが鋭いですなあ、ククさんは」

 バーシも動揺から立ち直り、感心する。ボクらのしっぽというのは、どうにも正直なもので、ごまかしが効かない。

「でも、自分のことにはニブいですねえ、ククさん」

 指をちっちと振って、ドヤ顔する我が恋人。

「へ? どゆことよ?」

「シャロンが、ククに対して、友情以上の感情抱いてるの、気づいてないでしょ」

 「えーっ!?」と、ボクとククが、同時に叫び、しっぽを膨らます。

「え? マ?」

 しっぽの先をピクつかせながら、ククが尋ねる。

「マ。このバーシさんが、こと恋とオシャレで、当てずっぽうなんて、言うもんですか」

 ふんぞり返って、自信満々の笑顔。

「というわけで、お返し終了~。シャロンのこと、どうするかはククが決めなよ~。相談なら乗るからさー」

 ポンとククの肩を叩き、意気揚々と教室に引き上げるバーシ。

「はあ~……。こっちでも、恋の花が……」

 なんかつい、オシャレな言い回しをつぶやき、呆然とする。

「シャロンのこと、どーすんの?」

「どうするって、なあ……? 少し、考えるわ……」

 なんだか頼りない足取りで、教室に帰っていくクク。

 ボクも、ぼちぼちと、そのあとをついていくのでした。


 ◆ ◆ ◆


「二人とも、おかえりっすー」

 椅子と机を堪能していたシャロンが、声をかけてくる。

「お、おう。ただいま」

 声が上ずってる。明らかに動揺してるなあ。

「どしたっすか、姉さん? 様子がヘンっすよ?」

「あー、いや。ほんと、なんでもねーんだ」

 相変わらず、先っぽがピクついているククのしっぽに、視線をやるシャロン。

「……わかったっす。姉さんがそう言うなら、そういうことにしとくっす」

 そして、肩をすくめる。

 そんなことをやっていると、間がいいのか悪いのか、予鈴が鳴ったので、解散。

 どうなるのかな、あの二人。

 そういや、こんな話になっちゃったせいで、部活の相談できなかったな。帰りにしよっと。
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