ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第五十二話 十月三日(火) はじめて

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「バ~シ~! あっそびーましょー!」

 ストルバック家裏口から、バーシの部屋に声をかける。

「お、アユムち~ん。今行くから、待ってて~」

 バーシが窓を開け、返事する。

 今日は、両家とも定休日。普通なら、家族の付き合いを優先するとこだけど、今のボクらの関係は、普通・・ではないのデス。

 しばし待っていると、おばさんが出てくる。

「アユムちゃん、いらっしゃい。私たちね、これからでかけるのよ。お留守番してるバーシと、遊んであげてちょうだいね」

 おや。おばさんおじさん、それにおばあさんにおじいさんまで、車に乗り込んでしまった。完全に、二人きりかー。

「お待たせ~」

 バーシさんが、やっと現れましたよ。部屋着じゃなく、やけに気合の入った服装だ。メイクもバッチリ。

「きれいだよ、バーシ」

「やーだー! もう、キーザー!」

 ぺしっと叩かれる。ふふ、照れちゃって。

「とりあえず、入って入って」

 というわけで、おじゃましまーす。


 ◆ ◆ ◆


「なんか……二人きりだと思うと、緊張するね」

 リビングで並んで腰掛けながら、正直な気持ちを言う。

「私も。ほら」

 バーシがボクの手を取り、自分の胸に当てる。そのことに、まずドキドキしてしまう。バーシの胸に、手が当たってるんだもの。当の彼女も、心臓がすごい速さで動いてる。

 無言で見つめ合う、ボクたち。

 ただそうしているだけでも、すごく幸せな気持ちだ。

「ねえ」

 沈黙を、バーシが破る。

「一昨日の続き、しよ?」

 間違いなく、あれのことだ。こくりと頷く、ボク。

 彼女が、ゆっくり押し倒してきた。それに一切抵抗せず、受け入れる。

「アユム……かわいいよ……」

 心臓が、ドクンドクンいってる。顔を近づけてくる、バーシ。

「ちょっと恥ずかしいから、目、つぶって?」

 言われたとおりにする。すると、唇に柔らかいものが触れた。

 互いの、ファーストキスを捧げあう。

 二度目の人生にして、初めての恋人とのキス。

 彼女・・の、唇の感覚を愉しむ。柔らかいな。気持ちいいな。……あっ。バーシの舌が、ボクの唇をつついてきた。

 それを受け入れ、舌を絡ませ合う。すごい。すごく変な感じ。でも、とろけそう。

 いつまでそうしていただろう。少し息苦しくなって、唇を離す。

 目を開けると、とろんとした目つきで、頬を紅く染めたバーシがそこにいた。

 はあ、はあ、と、二人で呼吸を整える。

「もう一度」

 こくりとうなずき、再度の受け入れ。

 先ほど以上に、激しく舌を絡ませ合う。

 こうやって、受け身に任せるのが心地いい。ボクって、こういうタイプだったんだ。そして、バーシは攻めっ気が強い。

 とろける。

 互いにとろけあって、一つに混じり合いそうだ。

 いつまでも、いつまでもこうしていたい。

 実際、どのぐらいキスを交わしあったろう?

 体力が尽きたのか、「ちょっと休憩」と言って、体を起こし、反対側の肘掛けにくたりと体を預ける彼女。

 ボクは、体を寄せ、ぴたりとくっつく。

 なんとなく、互いにクスクスと笑い合う。

「すごく良かったよ、バーシ」

「ありがと。アユムの唇と舌、キモチ良かった……。初めてにしては、上手にできたよね、お互いに」

 手を絡め合い、恋人つなぎ。

 秒針の音をBGMに、気怠い時間が過ぎていく。

「でも、おばさんたち、ちょうど都合よく四人でお出かけしたんだね」

「察してくれたんだよ。……っていうか、察されるようなことが、バレたというか……」

 頬を、真っ赤にしてうつむくバーシ。ボクもなんとなく察してしまい、頬を熱くして、うつむいてしまう。

「ちょっと、飲み物取ってくる。飲も!」

「うん」

 照れ隠しか、彼女が立ち上がり、キッチンへ向かう。

 すごかったな。さっきの。

 唇に指を当て、余韻を愉しむ。

 なんだか、飲み物で流してしまうのが、もったいない。

 先ほどまでの熱戦がウソかのように、静かにちびちびと、並んでアップルジュースを飲むボクら。

 また、忘れようのない思い出が、心に一つ刻まれたのでした。
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