ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第五十五話 十月六日(金) キューピッド、がんばるぞー!

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「アユムさん、アユムさん」

「なんですかな、バーシさんや?」

 お手々つないで登校中、彼女が不意に呼びかけてきた。

「私たち、シャロンのキュ……キューペットだっけ?」

「キューピッド?」

「そう、それ。それに、なってあげるべきだと思うのですよ」

 さすがバーシ、異世界の天使だか神様だかにも、興味津々ですねえ。

 でも、確かに二人の仲を進展させたいところ。だって、ボクらこんなに幸せなんだもん! シャロンとククだって、幸せにしてあげたい!

「でも、具体的にどうする?」

「うーん、それは歩きながら考えましょ」

 というわけで、作戦会議しながら学校に向かうのでした。


 ◆ ◆ ◆


「おはよー!」

「おーう! おはよーさん!」

「はよっす!」

 凸凹コンビやクラスメイトから、挨拶が返ってくる。爽やかな朝だねえ!

「ねえねえ、クク、シャロン。帰り、寄り道してかない?」

「最近、ママそういうの、うるさく言わなくなったんで、かまわないっすよ。距離次第っすけど」

「同じく」

 やはり、レーベルト家はいい方向に進んでいる。

「いやね。帰り道の公園で、くつろぐのもいいかなあって思って」

「そのぐらいだったら、全然OKっすよ」

「あたしも」

「じゃー、決まり!」

 帰りが楽しみー!


 ◆ ◆ ◆


「なにげに、この公園でくつろぐって初めてかもなー」

 ククの髪が、そよ風になびく。こういうの、絵になるよねー、ククは。

「そだね。帰りに通り抜けるだけか、朝の散歩だけだもんね」

 児童公園ではないので、子供の頃、バーシと遊ぶこともあまりなかったなあ。

 さ・て。

 バーシと顔を見合わせ、うなずき合う。

「ククさ~ん、ちょっとこっちへ~」

「おお? なんぞ?」

 ククの背中を押し、ベンチへ連れて行く。バーシも同様に、離れたベンチへ、シャロンを連れて行った。

「なんだよ、一体」

「クク。ボクとバーシ、最近すごく幸せなんだよねー」

 にこ~と、微笑む。

「お、おう。そりゃ良かったな。おめでとさん」

「でね! ククとシャロンにも、幸せになってもらいたいわけですよ、ズバリ!」

 ぽん、と手を打つ。

「ああ、そうきたかー……。いやさ、シャロンのことは好きだよ? でも、あたしの好きってのは、あくまでも姉妹愛なんだよ」

「ほんとに、ほんとに?」

 圧迫面接。

「バーシの見立ては、本物だよ。シャロンの愛も本物だ。あとは、ククの答えひとつなんだよ?」

 ずい、と幅を詰める。

「クク、恋愛は怖くないよ。ボクらもお試し感覚で始めて、あっという間にキスまでいったし」

「えーっ!? おまえら、そこまでいったんか!?」

 ククが、大声を出す。

「しーっ、静かにね。ほかの人たちもいるから。もうね、とろけそうでサイコーだったよ。ククにも、この喜びと感覚を知ってほしいな」

「キス……キスなあ……。正直、あいつとキスっての、想像つかんわ」

 腕組みして、考え込んでしまう彼女。

「じゃあ、キス抜き純愛でもいいじゃん! キスとかなしでさ、手つなぐだけとか。手つなぎ程度なら、抵抗ないでしょ?」

「まあなー」

「シャロンにとってさ、ククはずっと心の支えだったんだよ。気持ちに応えてあげなって!」

 ずずずいと、さらに距離を詰める。

「ボクらみたいにさ、まずはお試しから。それでいいじゃん」

「んー……。まあ、お試しならいいかなあ」

 よっし! 心の中で、思わずガッツポーズ!

 バーシに向かって手を振ると、向こうもサムズアップを掲げる。あっちも、上手くいったようだ。

「じゃ、合流しようか」

「お、おう……」

 おずおずとついてくるククを連れ、バーシたちと合流。

 シャロン、顔が真っ赤だ。

「ボクら、外してたほうがいい?」

「いや、だいじょぶっす! 今、勇気百%っす! 姉さん。姉さんに対する気持ちが、いつからこうなったのか、自分でもわからないっす。でも、バーシっちに言われて、恋だと自覚したっす。そんで……コイビト、なってもらえないっすか?」

 潤んだ上目遣いで、ククにコクる。

「ああ。その、お試しから始めるんでいいなら」

 照れくさそうに、赤らめた頬を指でかくクク。

十分じゅうぷんっす! 嬉しいっす! 姉さん、大好きっす!! ……抱きつくの、NGっすか?」

「いや、構わん。うん」

「大好きっす!!」

 ぎゅーっとハグ。

 凸凹コンビは、凸凹カップルになりました。めでたしめでたし。
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