ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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最終話 十月十二日(木) ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

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「ただいまー!」

 バーシに勇気づけられて、元気に帰宅の言葉!

「おお、アユム。おかえり」

「おかえり、アユムちゃん」

「おかえりー」

 おじいちゃん、おばあちゃんとハーちゃんが、リビングから声をかけてくれた。三人で、JANGOをやっていたらしい。

「アユム。ちょっと、座ってくれ」

「うん」

 ハーちゃんに詰めてもらって、隣に腰掛ける。

「オレたち、アユムとハーちゃんが寝た後、二回話し合った。で、バーシムレちゃんとのこと、こう考えることにした」

 ごくり。つばを飲み込む。

「オレな、マエへさんとの交際、彼女のお義父さんに、何度も断られてな。何度も通って、ひたすら誠意を見せた。最後には赦しをもらったけど、一年ぐらいかかったっけな。でな、アユムにも、こんな苦労させるわけにはいかねえなって思った」

「あのときは、ほんと大変でしたからね」

「だからアユム。堂々と彼女と付き合いなさい。オレらからは以上だ。アルクたちも、仕事が終わったら、話すことがあるそうだ」

 こほんと、咳き込むおじいちゃん。

「ありがとう!」

「席を立ち、ぐるっとテーブルを回り込んで、おじいちゃんたちに抱きつく。

「おっぷ。ふふ。孫を困らせちゃいけねえよな」

 しばらくそうしていると、背後から声がかかる。

「おねーちゃん。私からも、話がある」

「うん」

 そう言われ、再度ハーちゃんの隣に腰掛ける。

「私、フーちゃんと『やけジュース』した。フーちゃんも、ショック受けててさ。ダブル失恋だよ。でも、フーちゃんとこれ以上気まずくならなくなって、良かったのかな。とにかく、いじょっ!」

 ため息一つ吐く、ハーちゃん。

「ありがとう。二人とも。ごめんね。そして、ありがとう。今度、フーちゃんに直接言うね」

「うん」

 ずー……と、ジュースをストローで吸い上げる、マイシスター。

「絶っっっ対、幸せになってよね! 私たち、同時に振ったんだからさ!」

「約束する」

 互いに、真剣に見つめ合う。そして、ハーちゃんは、「ん」とだけ言った。

「アルクたちが、仕事終わってから、飯にしよう。今日は、特別に七時で店じまいだ」

「お父さんたちに、お礼言わなきゃね」

「かわいい娘の誕生日だものよ。いつもみたいに九時じゃ、ハーちゃんが寝ちまわあ」

 とりあえず、お風呂に入っている時間はありそうなので、汗を流して、部屋着に着替える。

 お風呂上がりに牛乳を飲み、おじいちゃんたちと健康情報番組を見ていると、七時になった。

「おー。アユム、おかえり」

「おかえりなさい」

「ただいま」

 しばらくして、お父さんたちが上がってきたので、挨拶を交わす。

「じゃ、飯作るかね。二人は、ゆっくりしててくれや」

 キッチンに向かう、おじいちゃん。

「アユム。話があるのだけどね」

「うん」

 お父さんが、切り出してきた。

「バーシムレちゃんいい子だし、なんというか……アユムの人を見る目を疑うわけじゃないんだが、変な男と付き合うより、よっぽどいいって考えることにしたよ。これからも、仲良くやりなさい」

 お母さんも、静かにうなずいている。

「ありがとう。ボクたち、堂々と付き合っていいんだね」

 心の底から、じわりと嬉しさがこみ上げてくる。家族の全員から、祝福してもらった!

「ほんとにありがとう! みんな、大好きだよ!」

 満面の笑顔。

「おーう、こっちゃできたぜ。テーブルにつこうや」

 おじいちゃんの呼びかけで、テーブルにつく。テーブルの中央には、チョコレートケーキが載っていました。チョコケーキがダブっちゃった。ラドネスブルグ、チョコが名物だからねえ。

 ともかく、用意してくれたのだから、ありがたくいただきましょ。

「じゃあ、火ィ点けるぞ」

 おじいちゃんが、マッチで点火。十三の明かりが灯る。

「いくよ……。ふー……っ!」

 本日二度目の、消火活動。

 みんなから、「お誕生日おめでとう!」という言葉と、拍手をもらう。

「あの、お願いがあるんだけど!」

 三人にそうしてもらったように、みんなにも、『ハッピーバースデー・トゥー・ユー』を歌ってもらう。

「ありがとう! みんな、ありがとう!」

 深々と、お辞儀。これで、念願の、家族から十三回目の『ハッピーバースデー・トゥー・ユー』を歌ってもらうという願いが、達成できた。

 ケーキが切り分けられる。

 家族のみんな、本格的なお菓子作りは得意じゃないからお店のものだけど、それでも嬉しい。

 おいしく食べ終わると、「本日のメインディッシュだ」と言って、おじいちゃんが意外なものをテーブルに載せた。

 土鍋。

「これ、もしかして……」

「おう。アユム念願の、湯豆腐だぜ」

「ありがとう、おじいちゃん!」

 ケーキの次に、湯豆腐。変な感じだけど、念願かなって、嬉しい限り!

「いただきます!」

 フーフー息をかけて冷まし、ホフホフと味わう。

 シンプルで、素朴な味わい。今日は、いろんな念願がかなう日だ。

 おいしいなあ。おいしいなあ! 前世から、ずっと食べてみたかった!

「ごちそうさまでした! 寿命が、百日は伸びた気がするよ!」

「はっは。喜んでもらえて、何よりだ。で、プレゼントだがな……」

 おじいちゃんが、家族を代表して、包みをくれる。なんだろう?

 開けると、バーシたちにもらったのと、まったく同じものが。

「……ありがとう!」

 まあ、予備ってことで!

 こうして、誕生会・家族編は、最高に楽しく終わりました。


 ◆ ◆ ◆


 心の奥底に、前世の男の子がいるボク。

 ボクは、彼とこれからも折り合いをつけながら、共に生きていく。

 最高の友達と、最高の彼女もできて。

 この一ヶ月、あっという間で、そして濃厚だった。

 アイちゃんとの、あれこれを思い出す。天国で、元気にやってるかな。

 ちょっと、食後の軽い運動をしよう。百歳まで……ううん、もっと生きるぞ~!

 前世のお父さん、お母さん、お姉ちゃん。

 ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!
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