たくげぶ!

みなはらつかさ

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第二話 クトゥルフ一本釣り!

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「あっ、さっそく」

 鈴なりになって、一年一組の教室を覗く三人。傍から見て、不審者である。

 そんな状態で、歌留奈が声を上げた。

「あの生徒の本、見て」

 目を凝らしてよく見る二人。きいろが、「あっ!」と声を上げる。

「クトゥルフの呼び声!」

 視線の先の女生徒が読んでいたものは、小説版の、元祖クトゥルフの呼び声。

釣れる・・・と思わない?」

「いけるかも!」

 さっそく、中に入っていく三人。

「ねえ、君。クトゥルフ好きなの?」

「ええと、皆さんは?」

 三人を見上げる女生徒。髪はボブ。胸はきいろと同等。

「ボクたち、卓ゲ部。全員二年。よろしくね」

 「はあ」と、気のない返事をする女生徒。

「ねね。でさ、クトゥルフ好きなら、いいゲームあるよ!」

 女生徒が、ピクと反応する。三人は、(ミャクあり!)と、心の中でガッツポーズ。

「その名も、『クトゥルフの呼び声』! ここじゃなんだからさ、ちょっと部室こない? 実物見せるよ」

「ぜひ!」

 (釣れた!)と、再度、心の中でガッツポーズする三人であった。


 ◆ ◆ ◆


「自己紹介がまだだったね。ボクは、佐武きいろ。いちおー、部長」

「私は、奥野歌留奈」

「アタシは、大須にこ」

 順に自己紹介していく。

「わたしは、工藤くどうるうです。えと、クトゥルフだけじゃなく、ホラー全般が好きでして……」

 もじもじと自己紹介する、女生徒改め、るう。

「おっけーおっけー。よろしく、るうちゃん。でね、約束のものを……」

 棚から、クトゥルフの呼び声のルールブックを取り出すきいろ。

 禍々しいクトゥルフが描かれた表紙に、るうが目を輝かせる。

「あの、読んでもいいですか……?」

「ちょっとまってね。いきなりルールだの読んでもピンとこないだろうから……」

 神話生物のページを開いて見せる。

「ミ=ゴ! ショゴス! わわ、クトゥルフにニャル様も!」

 食い入るように見る、るう。三人は、ビッとサムズアップし合う。

「よかったら、一日貸すよ」

「いいんですか!?」

 るうの瞳が、キラキラ輝く。

「うん。それ見ながら、このゲームのリプレイ動画見るのオススメ」

「リプレイ?」

「うん、こういうの」

 適当な、人気リプレイ動画をスマホで見せる。

「へー……。こういうのがあるんですね。わ、電子魔導書が出来上がっちゃった……」

「まー、色々あるけど、意味の分からない用語は、その本見れば書いてあるから。あと、『TRPGとは? および用語解説』っていうWebエッセイも併せて読んでおくといーよ」

「なんか、色々大変そうですね」

 ちょっと、難色を示するう。

「へーきへーき、わからないことあったら、ボクらの誰かに訊いて。LINE交換しよ」

「はい!」

「じゃ、今日はもう時間もあまりないし、UNOでもちょっとやって終わろーか」

「さんせー!」

 歌留奈とにこが、きいろの提案に賛成する。

「るうちゃん、気が乗らない?」

「いえ、UNO好きですよ」

「じゃ、さっそく」

 カードを取り出し、シャッフルするきいろ。

 彼女は、UNOの作者を大天才だと思っている。

 実際、これだけの大ヒット商品を生み出したのだから大天才なのだが、きいろは「ウノ宣言」ルールが特に秀逸だと考えていた。

 ウノ宣言。普通なら忘れるはずがないと思うが、勝負が白熱してくると、これが結構忘れるのだ。

 この、盲点を突いたシステムを、きいろはいたく評価している。

 佐武きいろ。彼女は、システムを愛する卓ゲーマーなのだ。


 ◆ ◆ ◆


「上がりー!」

「るうちゃん強いねー」

「ありがとうございます!」

 るう、二連勝。特に接待プレイなどしていないが、この子、妙に勝負運がいい。

「あ、そろそろ下校時間だ。帰る準備しよ」

「わたしは教室に荷物そのままにしているので、これルールブックだけ借りて帰りますね」

「じゃあ、お先に。また明日~」

 手を振って、るうと別れる三人。

 校門を出ると、みんな家がバラバラなので、名残惜しくも別々に帰る。

「明日も、勧誘頑張るぞー!」

 拳を突き上げる、きいろであった。
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