たくげぶ!

みなはらつかさ

文字の大きさ
20 / 49

第二十話 HANABI

しおりを挟む
「ねえ! そういえば今度、花火大会あるじゃない?」

 HANABIプレイ中、突然切り出すきいろ。T川の花火大会は、大変賑わう。今年は、F市南部でこれが見られる。

「ああ、あるな」

「みんなで見に行こうよ!」

「さすがに、保護者同伴になると思うぞ」

 やや、難色を示すにこ。さすがに、保護者同伴イベントが多くて、萎え気味か。

「いいじゃん! みんなが良ければ、今ちょうど全員揃ってるし、訊こうよ!」

「わたし、大須先輩と見に行きたいです!! あ、いえ、みなさんとの言い間違いです……」

 本音が出てしまい、照れるるうに、歌留奈がクスッとなる。

「私も賛成だな~。どうする、にこちゃん?」

「う……。嫌とは言ってないだろ……。賛成だよ」

「じゃあ、リビングへGo!」

 我らがリーダー、さっそうと躍り出、慌ててそれに続く三人。

 保護者との話し合いの結果、やはり同伴の条件付きで、皆で行けることとなった!


 ◆ ◆ ◆


「お~。かるかん、相変わらず似合ってるねえ!」

 祭りに引き続き、花火大会にも浴衣で現れた歌留奈。さっそく、皆のサムズアップを受ける。

「こういう機会でもないと、まず着ないからね。まだ始まってないよね?」

「そこはだいじょーぶ! まだ、余裕あるよ」

「良かった」

 やがてアナウンスとともに、打ち上げ開始!

 光のアートが、闇のキャンバスに描かれる。

「たーまやー!」

 声を張り上げる、歌留奈。

「あ、それボク知ってる! たーまやー!」

 周囲も、大盛りあがりだ。

 歌留奈の視界の端に、にこにささやく、るうが映る。そして、二人で手繋ぎ。

(あらあら、大胆。ごちそうさま)

「たーまやー!」

(きーちゃんは、色気より、食い気とイベントよね)

 純真な我らがリーダーに、くすっと微笑む。

(私も、空の大輪に見惚れるとしましょうか)

 再びうちわ片手に、光のアートに視線を戻すのであった。

 やがて、最後の花火も打ち終わり、アナウンスが流れる。

「壮観だったねー!」

 興奮冷めやらぬきいろに、一同同意。

「わたし、今日のこと、一生忘れません!」

「そこまで!?」

 るうの、ふんすと鼻息も荒い気合に、リーダーびっくり。

 駐車場が満車になるのはみんな承知しており、バスや電車で帰る。さらば、光の祭典。また、来年。


 ◆ ◆ ◆


「というわけで、ちょっと物足りないから、近所の公園で、花火大会やらない?」

「あー、手持ちのやつで?」

 翌朝、きいろが突飛なことを言い出すが、意図を理解した、にこが返す。

「そそ。みんなはどうかなあ?」

「賛成です!」

「私も」

「同じく」

 一同、あっさり同意。

「じゃあ、親御さんの説得よろよろ~。ボク、たっぷり遊ぶためにも、課題とシステム進めなきゃ」

 Zoom終了。続いてLINEで。

「にこちゃん、昨日は優しかったねー」

「なんだよ。アタシはいつでも優しいつもりだぞ」

「それはわかってるけど、るうちゃんのこと」

 水出し緑茶をすする歌留奈。

「るう? ああ、手をつなぎたいって言うから、いいよって言って繋いだぞ。去年まで小学生だもんな。女友達と、こういうのしたいんだなって」

「ええ!? そういう理解!?」

「おかしいか?」

 鈍感なのは、きいろだけではなかったのかと、額に手を当てる。

 説明したものかとも悩むが、るうが自分で切り出したほうがいいだろう、とも思う。

「わかった。当面それでいいわ。NPCについて、もう一度三人でZoomしない?」

「なんなんだよ。それはともかく、Zoomいいぞ」

 世界観チームも、作業を進めるのであった。

 夜の花火大会は、またも各家揃い踏みで開催。

 歌留奈は、またも浴衣。

「今年、三度目の出番があるとは、思わなかったわ」

 などと、自分に言っている。

「お父さん、火、ちょうだい」

「まってまって……よっ」

 きいろの持つ花火に点火されると、光のシャワーが吹き出す。それを、次々に「おすそわけ」していく。

 それが終わると、ネズミ花火から逃げ回ったり、ヘビ花火の微妙さに、微妙な気持ちになったり、次々に楽しむ。

(大須先輩、きれいだな……)

 一通りの花火を楽しみ、締めにみんなで線香花火をやっていると、ささやかな光に照らされたにこの顔を見て、るうが想う。

 二度目の花火大会も、こうしてしめやかに終わった。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...