たくげぶ!

みなはらつかさ

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第四十一話 体育祭!

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「かるかんー。挿絵の進み具合どーお?」

「七割……はいったと思う。締め切りまでには、絶対間に合わせるから!」

「いや、急かすつもりはなかったんだけどさ」

 部室で、そんな会話をしていた、きいろと歌留奈。

「今日はエクスプやんの?」

「いちおー、そのつもり。高レベル帯のバランスも見ておきたいから」

 もう十一月だというのに、なかなか気温が下がらない。きいろが、魔法瓶の冷茶を飲む。

「ほんと、佐武先輩まめですよね」

「にひひ。ボク、これでけっこー完璧主義なのですよ!」

 ふんぞり返る。

「まー、百万狙うなら当然の姿勢よな」

「そうですね。ワタシ、なんだか緊張してきました」

 百万円と、商品化。その重みを改めて感じる、にことノヴァルナ。

「わたしたちも、なにか手伝えることないですか、奥野先輩?」

「んー。テストプレイやってくれるのが一番かな。やっぱり、絵は私じゃないとだし」

「そうですか……。もっと、お手伝いしたいのですが」

「その気持が一番嬉しいよ、るーこ!」

 にかっと、サムズアップ。

「ありがとうございます!」

「じゃ、タイム・イズ・マネーってことで、さっそくやってこーか」

 こうして、高レベル帯でのプレイを開始。

「いやー、二重判定の意味がわかってきたぞ」

「でしょー。成功率高くても、プレイが単調にならないんだ」

 語尾に音符でもついてそうな、上機嫌リーダー。

「スキルでの殴り合いになるね」

「敵にもスキル持たせたかいがあるね! やっぱり、緊張感大事!」

 さらに、鼻高々なリーダー。

「30ダメージ! 届きましたか!?」

「うん。敵ボスは、死にました。ちーん」

「はー、緊張感あったなあ」

 スポドリを飲む、にこ。

「そうですね。手に汗握るっていうんですか? そういう感じでした」

「ぬふ。好感触! これ、本気で百万狙いにいきたいね!」

「おー!」

 拳を付き合わせる一同。

「さ・て、そろそろ下校時間だね。カエルが鳴くから帰りましょ~」

 きいろ、引き続き上機嫌で、鼻歌など歌いながら帰り支度を始める。

 ゲームデザイナーとして、完成一歩手前のこの状態が、一番楽しいのかもしれない。


 ◆ ◆ ◆


「そういえば、週末体育祭だねえ。めんどいなあ」

 翌日、きいろが部室でぼやく。

 今年は例年より暑いので、この時期までずれ込んだが、最近の体育の授業は、体育祭に向けてのものが多い。

 きいろは、玉入れに出場予定。理由は、手を抜いてもバレないから。

 完璧主義は、どこへいったのか。

「私たち、インドア派だからねえ」

 歌留奈も、運動が得意な方ではないので、玉入れに参加予定。

「まー、テキトーにやろーぜ」

 にこは、五人の中では運動が得意な方だが、やはりインドア派ゆえ、玉入れ組。

「頑張りましょう! ワタシ、楽しみです!」

「わたしも、頑張ります! 大須先輩、応援してください!」

「お、おう!」

 真面目なノヴァルナとるうは、やる気満々。フィジカルが低いので、やはり玉入れだが。

「しかし、ボクたち全員玉入れだね!」

 からからと笑うリーダー。

「ほんとにな。るうにちょっと、かっこいいとこ見せるべきだったかな」

「いえ、わたしは……。リレーで活躍する先輩とか、興味なかったと言えば嘘になりますけど、そこまで高望みは」

 にこの言葉に、赤らんでうつむくるう。

「初々しいねえ。当日は、無理しない程度に頑張りましょ」

「おー!」

 歌留奈のまとめに、一同へろっと拳を突き上げるのであった。


 ◆ ◆ ◆


「この!」

 当日、クラス対抗玉入れ。リーダー、やはり根が完璧主義なもので、必死に玉を放り込んでいる。

 同じクラスのノヴァルナの存在も、心強い。

 対する歌留奈、にこも、何だかんだで熱中している。

「大須先輩、頑張ってー!!」

 あらん限りの声援を送る、るう。

 ピストルが鳴り、競技終了。

 紅組、リーダーたちの勝ち。

「ふい~疲れた~」

「お疲れー」

「どもー」

 別の競技なので、控えていたクラスメイトに労われる、きいろたち。

 そして、昼食タイム。

「ボク、頑張った!」

「さすがだなあ、きいろは」

 頭を撫でようとする父の手を、全力で回避。

 父の表情に、哀愁が漂っていた。どこかで見た光景である。

 今日は、母特製、唐揚げ弁当。運動の後には、タンパク質がいい。

「んー、美味しい!」

「たっぷり食べて、元気つけてね」

「うん!」

 そして、午後の競技。クラス対抗綱引き。これは、全員参加。

「おーえす! おーえす!」

 きいろ、やはり全力。繰り返すが、根っこが完璧主義なのだ。

 今度は、負けた。

 みんなで労い合い、控えに戻る。

 そして、花形のリレーを最後に、終会となった。

「みんな、お疲れ~」

「へばってんなあ、きいろ」

 そう言うにこも、お疲れモード。

「結局、全力出しちゃったよ。じゃあ、ボクは家族と帰るから」

「うん、また明後日ね」

 歌留奈が手を振る。明日は、振替休日。

 こうして、なんだかんだで楽しかった体育祭は、幕を閉じた。

 翌日、筋肉痛に悩まされる一同でありましたとさ。
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