上 下
25 / 60

第二十五話 ファラデーに捧ぐ

しおりを挟む
 さらに日が経過して、帝都に疎開していた者の再移住と、さらなる戦力増強が行われた。好天の中、パダールのいたるところで再建が進められつつある。そしてついに、俺がベルに頼んでいた物も届いたようだ。

「仰っていた物はこれですべてのはずですが、何にお使いになるのですか?」

 広場でベルたちと野次馬の子供が不思議そうに見守る中、この間ベルに頼んで置いた物を並べていった。磁石に長いエナメル線、やや長い銅線二本、銅板多数に亜鉛板も多数。さらに食塩水と多数の薄い布。そして鉄製の上部が上向きのU時になった、立てられる鉄器。あとは工具と丸太。さすが現代風眼鏡などというオーパーツが存在するだけあって、エナメル線が手に入ったのは僥倖ぎょうこうというほかない。


 早速工作開始だ。まず、丸太にエナメル線をこれでもかというぐらい巻きつけコイルにする。ある程度巻いたら、端の部分を伸ばして片方の端は全面エナメルを削ぎ落とし、もう片側は半分の面だけ削ぎ落とす。これを鉄器のU字部分に渡し、端っこをわかりやすいようにL字型に曲げておく。

 続いて、コイルの下に磁石を置き、銅線をそれぞれの鉄器に結んで伸ばす。一つの銅線を地面に置き、亜鉛板、食塩水を含んだ布、銅板、食塩水を含んだ布、亜鉛板……と順番に重ねていき、てっぺんの銅板にもう一方の銅線を接触させると、L字に曲げた部分がくるくると回りだした。周囲から感嘆の声が上がる。

「ルシフェル様、これは何という魔法ですか!?」

 フォルが、興味津々に至近距離でガン見しながら眼鏡のブリッジを上げる。

「魔法ではない、科学の一つだ。この回っている装置はモーター、銅板と亜鉛板と食塩水を含んだ布で作った物は電池という。磁石を強いものにしたり、エナメル線の巻き数を増やしたり、電池をもっと多くすればさらに早く回るぞ」

「さすがです、ルシフェル様……」

 恍惚とした表情で頬に手を添えるフォル。フハハハ! もっと褒めるがいい!

「ちなみに、モーターの軸を回せば、逆に電気、モーターを回してるパワーだな、それを生み出すこともできる」

 このぐらいヒントを与えておけば、あとは自力で研究が進むだろう。帝都にきちんとしたモーターが登場する日が楽しみである。
しおりを挟む

処理中です...