上 下
31 / 60

第三十一話 モレクとケモシ

しおりを挟む
「ドラス、ロシュ両竜佐は騎兵一万ずつを率いて左右に展開、天使を包囲せよ!」

 シェムの命令が伝達されていき、騎馬隊が平原を激流のように左右に流れていく。残る騎兵と軍の多くを構成する歩兵は、真正面から天使とぶつかる算段である。そして最前線で矛となり、また盾となるのは俺の役目だ。

 『獣』に続いてシャミールはすでに召喚してあり、今回はさらに悪魔学で思い出した存在の召喚を試みる。

「獄炎より生まれし鋼の機巧巨人たちよ! 魔導と業火を以て敵を焼き尽くせ!!」

 眼前の大地に二つの魔法陣が描かれ、そこから全身のいたるところから燃え盛る炎を吐き出す、無限軌道を持つ機械仕掛けの二体の巨神が姿を表した。

 名はモレクとケモシ。本来の伝説では体内の炎に生贄が捧げられたとされる青銅の巨神像である。

 黄色いときの声が上がり、四体の下僕がまずは切り込み役として下級天使を散らしていく。俺は歩を詰めながら爆炎魔法で天使を叩き落としていき、後方から山のような光弾の援護射撃が飛んで行く。天使たちも光弾を飛ばしてくるが、左右から騎馬隊の魔法攻撃を受け、大混乱に陥った。
しおりを挟む

処理中です...