カンブリアン・アクアリウム

みなはらつかさ

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第四話 それぞれの、仕事ぶり

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 初仕事。まりんは、三葉虫の一種、ナラオイアの解説を任されていた。

 良く言えば楽、悪く言えば、暇な水槽である。

 昨日、奏一人相手でもとちってしまったので、平時のアノマロカリス水槽など任せたら、パニックを起こしてしまうだろうとの判断から、この配置になった。

 ただ突っ立っているだけではなく、周囲に気を配り、道に迷っていそうなお客様を見かけたら、ご案内するという役目もある。

 しかし、こうやることがないと、昨日の織田先輩の愚痴が想起される。もしかすると、向こうの方がもうちょっと忙しいかも知れない。

「すみません。これ、三葉虫ですか?」

「はい! ナラオイアといいまして……」

 いつの間にか来ていた男性客に、驚くまりん。気が緩んでいたと、自戒する。

「ナラオイアは体節が二つしかなく、甲羅も柔らかいという、とても変わった三葉虫なんです。三葉虫の特徴である、側葉、中葉、側葉にも別れていないんですよ」

「へえ」

 彼は、しばらくナラオイアを興味深げに眺めると、去っていった。

(ふう)

 改めて、油断を自戒する。

 ふと、きょろきょろしている親子連れの客が目に入ったのでお声がけすると、オダライアの水槽を探しているというので、ご案内。

 なんだかんだで、やることがあるのだなと思う、まりんであった。


 ◆ ◆ ◆


(ネタ降ってこい~! ネタ降ってこい~!)

 企画書制作中の、あくあ。今日も、悪戦苦闘していた。

 館内生物のページをデバイスで必死に繰っていると、ピン! とひらめいた。

(人気者、ハルキゲニアを、花のようなシファッソークタムやディノミスクスの中で混泳させれば、花畑の妖精のようで、お子様や女性客に受けるのではないか)

 さっそく、デバイスに企画書としてまとめ、課長に提出する。

「ボツ」

 見出しを読んだだけで、そう言い渡された。

「せめて、本文読んでください! なにがいけないんですか!」

「これねー。昔やってコケたんだわ」

 また、このパターンか! と、がっくり肩を落とすあくあ。

「肝心のハルキゲニアが、シファッソークタムやディノミスクスの群れに隠れちまってな。ハルキゲニアを探せ! みたいになっちまったんだわ」

「はあ……」

 心底落ち込む、あくあ。

 その様子を見て、己の後頭部を撫でると、付け加える課長。

「その失敗企画な。俺が昔、出したやつなんだよ」

「えっ! 課長も、その、そんな失敗なさるんですか……?」

「するさ。人間だもの。特に、俺たち人類と、生きた古生物の付き合いは短い。知らない事ばかりなんだ」

 缶コーヒーを、一口飲む課長。

「一度実験で、三大スター。アノマロカリスとオパビニアとハルキゲニアを混泳させてみたことがあるが、オパビニアがハルキゲニアを。アノマロカリスがオパビニアを食いそうになって、緊急救助したこともあった。こういう失敗を重ねて、学んでいくしかないんだなあ」

「はあ……」

「というわけで、混泳は避けて、なんか考えてくれ」

「わかりました」

 自分の席に戻る、あくあ。

 とはいえ、混泳がだめとなると、どんなネタを出したらいいのだろう。

(あくあちゃんに頑張ってもらって、エディアカラ生物を盛り上げてもらいましょ)

 ふと、昨日の奈良先輩の言葉が想起された。

(エディアカラ生物との、ふれあいショーとかどうだろう!)

「すみません、飼育課に行ってきます!」

 弾丸のように飛び出す、あくあであった。


 ◆ ◆ ◆


「却下。認められねえな」

 飼育課の担当員に、けんもほろろに断られてしまった。

「どうしてですかあ……?」

「一、雑菌の心配。不特定多数から、べたべた触られてみろ。どんな菌をもらうか、わかったもんじゃねえ。二、やけど。こっちの方が深刻だな。人間の体温で、やけどして弱っちまうんだよ。オレたちも、触るときは細心の注意を払ってる」

「はあ……。お邪魔しました」

 一礼して、とぼとぼと企画室に向かう。

 「めげんなよー」と声をかけられたので、向き直ってもう一礼し、去っていくのであった。
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