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第五話 先輩
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「とまあ、散々でした……」
夕食の席で、大きなため息をつくあくあ。今日のメニューは、サワラの塩焼き定食。
「ふふ。エディアカラ生物を盛り上げようとしてくれて、ありがとうね。らいあも、お礼言おう」
「うむ。ありがとう」
「その点、まりんは初仕事上々だったんだろ? うらやましいなー。案内課、行きたかったなー」
シジミの味噌汁を飲む、あくあ。
「そんな。たまたま、暇な水槽を任されただけだよー」
とはいえ、悪い気はせず、照れくさそうにもじもじする。
「エディアカラ企画、なんかいいネタないですかねー」
サワラをついばむ、あくあ。
「ふむ。混泳が楽というのはあるが」
「そうなんですか?」
「エディアカラ紀は、エデンとも呼ばれていてな。まったく、弱肉強食のない時代だったんだ」
「へー」と感心する、あくあとまりん。
「エディアカラ生物大混泳……うーん、安直すぎるか」
腕組みして、考え込むあくあ。
「あ、エディアカラとカンブリア生物の混泳ってどうでしょうね?」
三人が、まりんを見る。
「エディアカラの生物って、大人しいんですよね? ハルキゲニアみたいな、無害なカンブリア生物と混泳させたらどうかなーって」
「賛成できないな」
らいあが、ぴしゃりと言い放つ。
「エディアカラとカンブリアでは、水質、水温が違いすぎる。管理に問題が生じる」
「名案だと、思ったんですけどねえ」
人差し指をつつき合わせる、まりん。
「企画って、難しいですねえ……。あくあちゃんは、ほんと大変な仕事をしてるんだなあ」
「わかってくれるか、友よ」
ぽんぽんと、まりんの肩を叩くあくあ。
その後も、食事を進めながら四人でアイデアを出し合うも、決定打となるものは出なかった。
◆ ◆ ◆
(エディアカラ……カンブリア……エディアカラ……カンブリア……)
出社前から、頭の中がぐるぐると、企画のことでいっぱいなあくあ。
(あ~~~! だめだ! 何も出てこない!)
頭を抱えると、不意に、デスクに缶コーヒーが置かれる。
「大変そうね。あまり根つめちゃだめよ? それでも一服して、落ち着こう?」
先輩社員が、優しく微笑みかける。
「ありがとうございます」
「私もねー。ボツばかりで。でも、野球でも三割ヒット出せたら、名選手なんだからーって思うことにしてるの」
その話を聞き、ふと思う。
「あの、もしかして案内課の奈良先輩と、織田先輩のご同期だったりします?」
「あら、よくわかったわね」
「はは、まあ……」
ボツばかりで悩んでると聞いたからとは、言えなかった。
「逆に、春木さんは、どうしてその二人のことを?」
「奈良先輩が、同期の友人の指導員で、その関係でご縁ができまして」
「へー。あ、私語もほどほどにしなきゃ。なんでも相談してね」
「はい!」
思案に戻るあくあ。
(三葉虫展……。地味だな。マニアックすぎる。それにしても、なんで三葉虫って絶滅しちゃったんだろ。絶滅……。絶滅展?)
科学の進歩で、エディアカラ生物も、カンブリア生物も、その絶滅理由がはっきりしている。
それぞれの絶滅について説明する、絶滅展はどうだろう?
(これだ!)
デバイスに、高速で企画を書き上げていく。
◆ ◆ ◆
「ふむ。面白いな」
課長、初の好感触!
「よし、これでいってみよう。みんな、デバイスに春木の企画を送るぞ」
「おお~」とか、「その発想はなかった」などの声が上がる。
奏・らいあの同期の先輩が、あくあにサムズアップする。
ちょっと、照れくさい。曇天に、一条の光が差したような、晴れやかな気分だった。
◆ ◆ ◆
「おめでとう! 三日目で採用は、持ってるよ、春木さん!」
定時になると、先程の先輩が、あくあに語りかけてきた。
「先輩! ありがとうございます!」
「私も、負けてられないなー。頑張るぞー!」
うーんと伸びをして、企画室を出ていく彼女。
「あ、待ってください! 一緒に帰りましょう!」
慌ててあとを追いかける、あくあであった。
夕食の席で、大きなため息をつくあくあ。今日のメニューは、サワラの塩焼き定食。
「ふふ。エディアカラ生物を盛り上げようとしてくれて、ありがとうね。らいあも、お礼言おう」
「うむ。ありがとう」
「その点、まりんは初仕事上々だったんだろ? うらやましいなー。案内課、行きたかったなー」
シジミの味噌汁を飲む、あくあ。
「そんな。たまたま、暇な水槽を任されただけだよー」
とはいえ、悪い気はせず、照れくさそうにもじもじする。
「エディアカラ企画、なんかいいネタないですかねー」
サワラをついばむ、あくあ。
「ふむ。混泳が楽というのはあるが」
「そうなんですか?」
「エディアカラ紀は、エデンとも呼ばれていてな。まったく、弱肉強食のない時代だったんだ」
「へー」と感心する、あくあとまりん。
「エディアカラ生物大混泳……うーん、安直すぎるか」
腕組みして、考え込むあくあ。
「あ、エディアカラとカンブリア生物の混泳ってどうでしょうね?」
三人が、まりんを見る。
「エディアカラの生物って、大人しいんですよね? ハルキゲニアみたいな、無害なカンブリア生物と混泳させたらどうかなーって」
「賛成できないな」
らいあが、ぴしゃりと言い放つ。
「エディアカラとカンブリアでは、水質、水温が違いすぎる。管理に問題が生じる」
「名案だと、思ったんですけどねえ」
人差し指をつつき合わせる、まりん。
「企画って、難しいですねえ……。あくあちゃんは、ほんと大変な仕事をしてるんだなあ」
「わかってくれるか、友よ」
ぽんぽんと、まりんの肩を叩くあくあ。
その後も、食事を進めながら四人でアイデアを出し合うも、決定打となるものは出なかった。
◆ ◆ ◆
(エディアカラ……カンブリア……エディアカラ……カンブリア……)
出社前から、頭の中がぐるぐると、企画のことでいっぱいなあくあ。
(あ~~~! だめだ! 何も出てこない!)
頭を抱えると、不意に、デスクに缶コーヒーが置かれる。
「大変そうね。あまり根つめちゃだめよ? それでも一服して、落ち着こう?」
先輩社員が、優しく微笑みかける。
「ありがとうございます」
「私もねー。ボツばかりで。でも、野球でも三割ヒット出せたら、名選手なんだからーって思うことにしてるの」
その話を聞き、ふと思う。
「あの、もしかして案内課の奈良先輩と、織田先輩のご同期だったりします?」
「あら、よくわかったわね」
「はは、まあ……」
ボツばかりで悩んでると聞いたからとは、言えなかった。
「逆に、春木さんは、どうしてその二人のことを?」
「奈良先輩が、同期の友人の指導員で、その関係でご縁ができまして」
「へー。あ、私語もほどほどにしなきゃ。なんでも相談してね」
「はい!」
思案に戻るあくあ。
(三葉虫展……。地味だな。マニアックすぎる。それにしても、なんで三葉虫って絶滅しちゃったんだろ。絶滅……。絶滅展?)
科学の進歩で、エディアカラ生物も、カンブリア生物も、その絶滅理由がはっきりしている。
それぞれの絶滅について説明する、絶滅展はどうだろう?
(これだ!)
デバイスに、高速で企画を書き上げていく。
◆ ◆ ◆
「ふむ。面白いな」
課長、初の好感触!
「よし、これでいってみよう。みんな、デバイスに春木の企画を送るぞ」
「おお~」とか、「その発想はなかった」などの声が上がる。
奏・らいあの同期の先輩が、あくあにサムズアップする。
ちょっと、照れくさい。曇天に、一条の光が差したような、晴れやかな気分だった。
◆ ◆ ◆
「おめでとう! 三日目で採用は、持ってるよ、春木さん!」
定時になると、先程の先輩が、あくあに語りかけてきた。
「先輩! ありがとうございます!」
「私も、負けてられないなー。頑張るぞー!」
うーんと伸びをして、企画室を出ていく彼女。
「あ、待ってください! 一緒に帰りましょう!」
慌ててあとを追いかける、あくあであった。
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