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第二十六話 家族
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ホットドッグを食べ終わり、家でくつろいでいるらしいあくあと、デバイスで通話するまりん。
とりとめのないおしゃべりに没頭し、気づけばかれこれ一時間。
さすがに話の種も尽きてきて、通話もお開きに。
なんとあくあ、イタリアを一週間旅行する予定らしい。名所巡りの他、本場のサッカーを、堪能してくるつもりだとか。
二週間、料理をひたすら作るつもりの自分は、どうにも華がないなと思ってしまう。
また手持ち無沙汰になってしまったので、織田先輩の影響で興味を持った、レトロゲームをいろいろ遊ぶ。
特にお気に入りになったのが、シムズ5。今でも、ナンバリングタイトルが出ている、老舗シリーズである。
人生シミュレーションゲームで、自由度の高さが売り。世界のいろんな料理を作れるという点が、いたく気に入った。
ゲームに没頭していると、デバイスのアラームが鳴った。もう五時だ。
お米を水に浸し、タイマーをセット。天丼の準備をする。
さらにゲームに打ち込んでいると、「ただいまー」と、えあの声。彼女は塾通いで、大体七時頃帰って来る。
そして、両親も、もう間もなく帰って来る頃。
「おかえりー」
玄関まで、出迎える。
「おー! ねーちゃん、久しぶりー! 元気してたー?」
ポニーテールの少女が、靴を脱ぎながら、返事する。
「元気、元気! えあたちは?」
「こっちも、元気だよー。ちょっと、シャワーだけ浴びちゃうね」
そう言うと、着替えを取り、バスルームに向かう。
えあはきれい好きで、暑い時期は、帰宅後すぐシャワーを浴びる上に、寝る前にも湯船に浸かる。さらに、朝もシャワーを浴びるという徹底ぶり。
シャワーを浴びているえあと入れ替わりに、母親が帰って来た。
「ただいま。おかえり、まりん!」
まりんやえあが、歳を取ったらこんな感じになるんだろうな、というルックスだ。
「おかえりなさい、お母さん」
「なんだか、一年ぶりぐらいに再会した気分だわ」
「それは大げさだよ」
苦笑する。
とか言ってると、今度は父親が帰って来た。
「おおう。母さん、どいてくれ」
「はーい」
靴を脱ぎ、夫に玄関を譲る。
「ただいま。まりん、久しぶりだねえ。おかえり」
「おかえりなさい、お父さん。さーて、みんな揃ったところで、ご飯作りますかー!」
エプロンを締め、三角巾を被る。
「今日は何作るの?」
「できてからの、お楽しみー」
母の問いに、にやりとして答えをはぐらかす。
まずは、天つゆと調味料で、タレの作成。
卵も水も小麦粉も、冷蔵庫で十分冷やしてある。これが、第一のポイント。
天ぷら種の下処理を手早く済ませると、さっそく衣づくり。あえてダマを残すのが、第二のポイント。
エアコンで、気温をかなり下げる。これが、第三のポイント。
あとは、衣を薄すぎず、厚すぎずでまぶし、手際よく揚げていく。
すべて揚げ終わったら、御飯を丼に盛り、種を載せて、タレをかけ回す。
「じゃーん! まりん特製天丼でーす!」
えあは、とっくにシャワーから上がっており、三人で「おおー」と拍手する。
「いただきます!」
美味しい美味しいと、家族に大好評。まりん自身も、満足のいくデキだ。
「いやー……。あんた、料理人向いてると思うのに、水族館の職員になっちゃうんだもんねえ。世の中、わからないわ」
母が、そんな雑感を漏らす。
「料理はうちでもできるけど、アノマロカリスはうちでは飼えないからねえ」
再現された絶滅動植物は、研究所や水族館といった、専門施設以外で飼育することは、国際法で固く禁じられている。
万が一、野生に逃がしてしまったら、侵略的外来種となるおそれがあるからだ。
「なんで、飼育課希望しなかったの?」
えあが、当然な疑問を挟む。
「いやー。餌として、大量の三葉虫扱うのがねえ……」
はははと、力なく笑う。
「私は、あのじろうのそばにいられれば、それで満足なんだ。もちろん、他の生物も好きだけどね」
子供の頃から大好きだった、あのじろう。いつか、アノマロカリス水槽を、一人で任されたい。そして、あのじろうをお客様に紹介したい。それが、ささやかな野望。
小さな野心を胸に秘め、天丼を頬張るまりんであった。
とりとめのないおしゃべりに没頭し、気づけばかれこれ一時間。
さすがに話の種も尽きてきて、通話もお開きに。
なんとあくあ、イタリアを一週間旅行する予定らしい。名所巡りの他、本場のサッカーを、堪能してくるつもりだとか。
二週間、料理をひたすら作るつもりの自分は、どうにも華がないなと思ってしまう。
また手持ち無沙汰になってしまったので、織田先輩の影響で興味を持った、レトロゲームをいろいろ遊ぶ。
特にお気に入りになったのが、シムズ5。今でも、ナンバリングタイトルが出ている、老舗シリーズである。
人生シミュレーションゲームで、自由度の高さが売り。世界のいろんな料理を作れるという点が、いたく気に入った。
ゲームに没頭していると、デバイスのアラームが鳴った。もう五時だ。
お米を水に浸し、タイマーをセット。天丼の準備をする。
さらにゲームに打ち込んでいると、「ただいまー」と、えあの声。彼女は塾通いで、大体七時頃帰って来る。
そして、両親も、もう間もなく帰って来る頃。
「おかえりー」
玄関まで、出迎える。
「おー! ねーちゃん、久しぶりー! 元気してたー?」
ポニーテールの少女が、靴を脱ぎながら、返事する。
「元気、元気! えあたちは?」
「こっちも、元気だよー。ちょっと、シャワーだけ浴びちゃうね」
そう言うと、着替えを取り、バスルームに向かう。
えあはきれい好きで、暑い時期は、帰宅後すぐシャワーを浴びる上に、寝る前にも湯船に浸かる。さらに、朝もシャワーを浴びるという徹底ぶり。
シャワーを浴びているえあと入れ替わりに、母親が帰って来た。
「ただいま。おかえり、まりん!」
まりんやえあが、歳を取ったらこんな感じになるんだろうな、というルックスだ。
「おかえりなさい、お母さん」
「なんだか、一年ぶりぐらいに再会した気分だわ」
「それは大げさだよ」
苦笑する。
とか言ってると、今度は父親が帰って来た。
「おおう。母さん、どいてくれ」
「はーい」
靴を脱ぎ、夫に玄関を譲る。
「ただいま。まりん、久しぶりだねえ。おかえり」
「おかえりなさい、お父さん。さーて、みんな揃ったところで、ご飯作りますかー!」
エプロンを締め、三角巾を被る。
「今日は何作るの?」
「できてからの、お楽しみー」
母の問いに、にやりとして答えをはぐらかす。
まずは、天つゆと調味料で、タレの作成。
卵も水も小麦粉も、冷蔵庫で十分冷やしてある。これが、第一のポイント。
天ぷら種の下処理を手早く済ませると、さっそく衣づくり。あえてダマを残すのが、第二のポイント。
エアコンで、気温をかなり下げる。これが、第三のポイント。
あとは、衣を薄すぎず、厚すぎずでまぶし、手際よく揚げていく。
すべて揚げ終わったら、御飯を丼に盛り、種を載せて、タレをかけ回す。
「じゃーん! まりん特製天丼でーす!」
えあは、とっくにシャワーから上がっており、三人で「おおー」と拍手する。
「いただきます!」
美味しい美味しいと、家族に大好評。まりん自身も、満足のいくデキだ。
「いやー……。あんた、料理人向いてると思うのに、水族館の職員になっちゃうんだもんねえ。世の中、わからないわ」
母が、そんな雑感を漏らす。
「料理はうちでもできるけど、アノマロカリスはうちでは飼えないからねえ」
再現された絶滅動植物は、研究所や水族館といった、専門施設以外で飼育することは、国際法で固く禁じられている。
万が一、野生に逃がしてしまったら、侵略的外来種となるおそれがあるからだ。
「なんで、飼育課希望しなかったの?」
えあが、当然な疑問を挟む。
「いやー。餌として、大量の三葉虫扱うのがねえ……」
はははと、力なく笑う。
「私は、あのじろうのそばにいられれば、それで満足なんだ。もちろん、他の生物も好きだけどね」
子供の頃から大好きだった、あのじろう。いつか、アノマロカリス水槽を、一人で任されたい。そして、あのじろうをお客様に紹介したい。それが、ささやかな野望。
小さな野心を胸に秘め、天丼を頬張るまりんであった。
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