カンブリアン・アクアリウム

みなはらつかさ

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第三十二話 絶滅展

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 七月も二週目に入り、いよいよ絶滅展の準備も大詰め。企画課は、目の回るような忙しさだった。

(確かに、これアタシ中心で回してたら、アタシ潰れてたかも……)

 冷静に自分が見られるようになった今、あくあはそう思うのであった。

 一方、案内課の話。

 トークショーの解説は、まりんでも奏でもらいあでもなく、かなりのベテランに決まった。

 三人は残念であったが、この大掛かりなイベント、確かに自分の身に余ったろうとも思う。

 担当者は通常業務を外れ、絶滅展の内容を頭に叩き込んでいる。

 絶滅に関するアンケートは、すでに厳選してまとめられ、教授からの回答を得ている。さすがに、ぶっつけ本番ではやらない。ただ、教授も担当案内員も、「初めて知りました」という体で、イベントを進めることになっている。

 担当は、子供にわかりにくそうなところは、事前に入念にチェックし、いかに噛み砕いて説明するかを、シミュレート。

 こうして、瞬く間に七月二十日、夏休み突入前日。

「いよいよだね」

「うん」

 絶滅展の巨大パネル設置作業を、仕事帰りに眺めながら、感慨にふけるまりんとあくあ。そして、先輩トリオ。

「ここまできたんだなあ……」

 あくあがつぶやく。各課の事前準備は、間に合った。あとは、当日の進行を必死に頑張るだけだ。

「いつまでも見てたいのはわかるけど、御飯終わっちゃうよ? 帰りましょ」

 里愛に促され、寮へ向かう一同であった。


 ◆ ◆ ◆


「そういえばさ、まりん。謝っておきたいことがあって」

 相部屋で、そう切り出すあくあに、きょとんと首を傾げる当人。

「あのじろう騒ぎのときさ、力にならせろとか、環境は整えてやるとか大口叩いといて、結局何もできなくてさ。ごめん!」

 深々と、頭を下げるあくあ。

「ううん、気にしないで。その気持ちが、一番ありがたかったよ。私のこと、心の底から心配して、何かできないか必死に考えてくれてたんだなって」

 微笑むまりん。

「ありがとう」

 同時にそう言い、強く握手する。

 明日の決戦に備え、よく食べ、清潔にし、よく眠る寮生たちであった。


 ◆ ◆ ◆


「まずは、この質問から。エデンと呼ばれた時代の、エディアカラ生物が滅んでしまったのはなぜですか?」

 らいあの質問だ。

「いい質問ですね。エディアカラ生物が滅んでしまったのは、楽園過ぎたため動物が増えすぎて、海の状態が、非常に悪くなってしまったからなんです」

「えっ!? でも、エディアカラ生物の化石って、ほとんど見つかってませんよね?」

「エディアカラ生物のような、柔らかい生き物が化石になるには、非常に好条件が必要なんです。すごく、珍しいことなんですね。また、地球の七割は海ですし、エベレスト山や南極など、非常に調査が難しい場所が、陸地にもあります」

 その後の、教授の話の続きをまとめると、海は酸欠になり、海底に大量に溜まった生物の死体から、腐敗ガスが溢れ、水質が悪化。回復まで、長い年月を要したとのこと。

 厳選された質問を、順次消化していき、話はカンブリア時代に突入。

「ここから、カンブリア絶滅の話に入ります。まず、この質問から。なぜ、カンブリア生物は絶滅したのですか?」

「はい。これは、海底火山の大噴火によるものなんです。ネプチューン山と名付けられた海底火山が、大噴火を起こし……」

 順調に進んでいく、トークショー。

 企画課は、その裏で多忙を極めていた。

(ひゃ~! やっぱ、課長の判断は正解だった!)

 課長の指揮の元、あくせく動き回るあくあ。

 これを自分が指揮していたら、パンクしてたと思い知らされる。

 一方、案内課は割と暇であった。

 客のほとんどが絶滅展に集中してるので、水槽前にいても、やることがないのだ。

 一部スタッフが、会場のご案内に動き回っているが、その数も、多くはない。

 ともかくも、企画課の奮闘で、絶滅展・第一日目は、無事終わった。
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