33 / 34
第三十三話 おかえり!
しおりを挟む
「あのじろうを、通常水槽に戻そうと思うのですが、いかがでしょうか?」
絶滅展・二日目もたけなわの頃、医療課の石田課長から、飼育課の課長に、メッセージが届いた。
その場にいるスタッフの意見を募る、飼育課課長。
満場一致で、賛成であった。
その旨返答すると、さっそく社内報を飛ばす。
しかし、現在皆仕事中。あのじろう帰還の報が広まるのは、終礼後であった。
「あのじろうが、帰ってきますよ!」
社内報を見たあくあが、声を上げる。
企画課一同、社内報を見る。
「おお! こりゃ、お祝いせにゃいかんな!」
「お祝いパネル、作りましょうよ!」
「よし! 悪いがみんな、残業だ!」
ノリノリで資材課に突撃し、「おかえり! あのじろう!」パネルの制作に取り掛かる、企画課職員たち。
絵の上手いスタッフがあのじろうを描き、ペンキが乾くのを待つ。
ペンキが乾くと、続いて字の上手いスタッフが、「おかえり! あのじろう!」と書く。
そして、どこに設置するかという話になるが……。
「正面に、堂々と置きたいですよね」
「かといって、絶滅展の邪魔になっちゃ、だめでしょう」
考えててもまとまらないので、パネルを手に、アクアリウム正面に行こうという話になった。
「ここ、そそりますよねー」
あくあが、正面ゲート上部を指差す。
「だなあ。ここが一番、見栄えがする」
課長も同意だ。
「おい、昇降車借りてこい! あそこにつけるぞ!」
免許を持つスタッフが施設課に、ひとっ走りする。
一同、そわそわ待っていると、昇降車がやって来た。
「オーライ! オーライ! ……ストップ!」
運転手を誘導し、位置を定める。ドリルでパネルに穴を開け、針金でしっかり固定する。
「いいぞー! 完成だー!」
「おおー!」と、拳を突き上げる一同。
館長許可を得ていない企画だが、事後承諾でなんとかするつもりだ。怒られたら、そのときは土下座でも何でもして、パネルを守ろうと誓う課長であった。
◆ ◆ ◆
少し時間は遡り、他課職員たちは。
「おお~……!」
薄紫のタグを付けたあのじろうが、悠然と泳いでいる!
もう、変な泳ぎ方はしていない。
それを、感動しながら眺める一同。
「ううっ……! 良かったね……! 良かったね……!」
感極まって、泣き出してしまったまりんの肩を、優しく叩く奏。
「いつまでも見ていたいのはわかるが、そろそろ帰ろう。夕食に間に合わなくなってしまう。あのじろうは、もういなくならないさ」
らいあに言われ、涙を拭き、「はい」と応じるまりん。案内課に、着替えに戻るのであった。
◆ ◆ ◆
「一緒に帰ろう。それとも、もう帰っちゃった?」
あくあにメッセージを飛ばすまりん。
そういえば、さっき水槽の周りに、企画課職員の姿がなかった。
「残業中。先に帰ってて」
里愛にも同様に、帰宅の誘いを送るが、同じく残業中とのこと。残業じゃしょうがないなと、三人で帰ることにする。
◆ ◆ ◆
「ただいまー!」
清々しい顔で、コンビニ弁当片手に、就寝時間間際に帰ってきた、あくあと里愛。
「おかえりなさい。残業大変ですね」
「へへ。まあね。明日、驚けよー」
「ねー」
不敵に微笑み合う二人を見て、首を傾げるまりんであった。
◆ ◆ ◆
「あーっ!」
出勤途中、ゲートの近くに来ると、思わず大声を出すまりん。
「おかえり! あのじろう!」の大パネル。
奏とらいあも、呆気に取られている。
「昨日の残業の正体、これでしたー!」
里愛と、両手でハイタッチするあくあ。
「うう~……! ありがとぉ~……!」
感極まって、またも泣き出してしまうまりん。
「泣かない、泣かない。化粧が崩れちゃうわよ?」
「すみません~。でもぉ~」
奏にやんわり注意されるも、涙が止まらない。
「へへ。感動してくれて、ありがとな。突貫工事でやったかいがあるぜ」
「とりあえず、出勤しましょ。遅刻しちゃうよ?」
里愛に促され、職場に向かう一同であった。
絶滅展・二日目もたけなわの頃、医療課の石田課長から、飼育課の課長に、メッセージが届いた。
その場にいるスタッフの意見を募る、飼育課課長。
満場一致で、賛成であった。
その旨返答すると、さっそく社内報を飛ばす。
しかし、現在皆仕事中。あのじろう帰還の報が広まるのは、終礼後であった。
「あのじろうが、帰ってきますよ!」
社内報を見たあくあが、声を上げる。
企画課一同、社内報を見る。
「おお! こりゃ、お祝いせにゃいかんな!」
「お祝いパネル、作りましょうよ!」
「よし! 悪いがみんな、残業だ!」
ノリノリで資材課に突撃し、「おかえり! あのじろう!」パネルの制作に取り掛かる、企画課職員たち。
絵の上手いスタッフがあのじろうを描き、ペンキが乾くのを待つ。
ペンキが乾くと、続いて字の上手いスタッフが、「おかえり! あのじろう!」と書く。
そして、どこに設置するかという話になるが……。
「正面に、堂々と置きたいですよね」
「かといって、絶滅展の邪魔になっちゃ、だめでしょう」
考えててもまとまらないので、パネルを手に、アクアリウム正面に行こうという話になった。
「ここ、そそりますよねー」
あくあが、正面ゲート上部を指差す。
「だなあ。ここが一番、見栄えがする」
課長も同意だ。
「おい、昇降車借りてこい! あそこにつけるぞ!」
免許を持つスタッフが施設課に、ひとっ走りする。
一同、そわそわ待っていると、昇降車がやって来た。
「オーライ! オーライ! ……ストップ!」
運転手を誘導し、位置を定める。ドリルでパネルに穴を開け、針金でしっかり固定する。
「いいぞー! 完成だー!」
「おおー!」と、拳を突き上げる一同。
館長許可を得ていない企画だが、事後承諾でなんとかするつもりだ。怒られたら、そのときは土下座でも何でもして、パネルを守ろうと誓う課長であった。
◆ ◆ ◆
少し時間は遡り、他課職員たちは。
「おお~……!」
薄紫のタグを付けたあのじろうが、悠然と泳いでいる!
もう、変な泳ぎ方はしていない。
それを、感動しながら眺める一同。
「ううっ……! 良かったね……! 良かったね……!」
感極まって、泣き出してしまったまりんの肩を、優しく叩く奏。
「いつまでも見ていたいのはわかるが、そろそろ帰ろう。夕食に間に合わなくなってしまう。あのじろうは、もういなくならないさ」
らいあに言われ、涙を拭き、「はい」と応じるまりん。案内課に、着替えに戻るのであった。
◆ ◆ ◆
「一緒に帰ろう。それとも、もう帰っちゃった?」
あくあにメッセージを飛ばすまりん。
そういえば、さっき水槽の周りに、企画課職員の姿がなかった。
「残業中。先に帰ってて」
里愛にも同様に、帰宅の誘いを送るが、同じく残業中とのこと。残業じゃしょうがないなと、三人で帰ることにする。
◆ ◆ ◆
「ただいまー!」
清々しい顔で、コンビニ弁当片手に、就寝時間間際に帰ってきた、あくあと里愛。
「おかえりなさい。残業大変ですね」
「へへ。まあね。明日、驚けよー」
「ねー」
不敵に微笑み合う二人を見て、首を傾げるまりんであった。
◆ ◆ ◆
「あーっ!」
出勤途中、ゲートの近くに来ると、思わず大声を出すまりん。
「おかえり! あのじろう!」の大パネル。
奏とらいあも、呆気に取られている。
「昨日の残業の正体、これでしたー!」
里愛と、両手でハイタッチするあくあ。
「うう~……! ありがとぉ~……!」
感極まって、またも泣き出してしまうまりん。
「泣かない、泣かない。化粧が崩れちゃうわよ?」
「すみません~。でもぉ~」
奏にやんわり注意されるも、涙が止まらない。
「へへ。感動してくれて、ありがとな。突貫工事でやったかいがあるぜ」
「とりあえず、出勤しましょ。遅刻しちゃうよ?」
里愛に促され、職場に向かう一同であった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる