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第三十一話 春が来て
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「ただいま戻りました~」
今日も、お仕事頑張ったー! というわけでお屋敷に戻ると、ハルちゃんとばったり出くわした……というか、待ち構えていて、「おねーさん!」と、子犬のように抱きついてきました。
季節も春になり、福祉課自体は変わらないけど、別地区の担当になりました。こうしないと、不正する職員、悲しいけどたまにいるからね。実際、昔、岡山で問題になったらしい。
「危ない、危ない! どーしたの、そのテンション?」
危うく倒れ込みそうになり、彼女を制する。
「すみません。それでですね! 完成したんですよ、歌が!」
そういえば、そろそろ締切だっけ。
「おー、そりゃめでたいね! ハルちゃん、頑張った!」
頭をなでてよしよしすると、「えへへ~」ととろけるお嬢様。かわいい。
「吾文さんも、さぞ喜んでくれたでしょう?」
「それがですね、『まだ入賞したわけではない。気を引き締めなさい』って塩対応で、お母様に、『こういうときは、素直に祝ってあげてくださいな』って、たしなめられてました」
はは。本当に、不器用な父親だなあ。大病して以降、ずいぶんカドが取れたんだけどね。
「でもとりあえず、祝賀会を開こうって言ってくれて、お屋敷のみんなでパーティーすることになりました!」
「おー、そりゃ楽しみだねえ!」
吾文さんも、リハビリのかいあって、杖が必要だけど、少しは歩けるようになっている。
「はい! もちろん、ユキさんも招かれてますよ」
「いつやるの? さすがに今日じゃないよね?」
「今度の日曜です!」
「りょーかーい! ところでお風呂入りたいな」
「じゃあ、一緒に大浴場行きましょうよ!」
目をキラキラさせる彼女。
「ミドリさんは、まだお仕事?」
「はい」
「じゃあ、お風呂はハルちゃんと二人っきりかあ~」
ひさびさかな、これも。
というわけで、楽しく流しっこするのでした。
お腹も空いてるし、さすがにリスキーなので、それ以上はしなかったけどね!
◆ ◆ ◆
「今日は、不肖の娘、ハルが……」
「あなた、ハレの場で、娘を不肖などというものではないですよ」
「こほん。我が娘ハルが、賞向けの歌をご友人と完成させた記念に、気が早いが、祝賀会を開かせてもらった。日頃の奉仕に報いる意味もあるので、今日は大いに呑み、食べ、楽しんでほしい」
奥様に、最近ツッコミを入れられがちな吾文さんの挨拶が終わると、大きな拍手が起こった。もともと、夫婦仲も悪くはなかったけど、より柔らかくなった印象を受ける。
というわけで。食前酒は、おなじみリュクグ……じゃない? もっといいお酒だ! 力強くて、華やかで……いい香りで。
「ハルちゃん、リュクグじゃないね、これ? でも、すごくいいお酒」
「ドン・ベリニョンを用意させてもらった」
代わりに、吾文さんが答える。まさかの、ドンベリ!?
ふふ。本心では、心から愛娘を祝ってるんですね。ほんと、不器用。
今回も、前回の慰労パーティーに劣らない豪華料理。春で旬ということと、めでたいということで、真鯛のカルパッチョがでてきました。真鯛でカルパッチョとは、贅沢ですねえ。旨し旨し。
その他にも、箸で切れそうなぐらい柔らかくて、ジューシーなステーキとか、素晴らしい品々がコースで運ばれてきます。
そんなこんなで、楽しい祝賀会も、もうすぐ終わり。締めの挨拶は、ハルちゃん。
「皆様、今日はわたしとユキさんのためにこうしてお集まりいただき、ありがとうございます。祝賀会は、新曲とともに締めたいと思います。曲名は『四季―未来―』。素晴らしい歌詞を作ってくださった冬川ユキさん。そして、恋人の紅アキさんと、夏野ミドリさん。偶然にも、四季を象徴する名前の四人への感謝から、イメージした曲と歌です。では、お聴きください」
一礼して、ピアノに向かう彼女。
爽やかに命芽吹く春のイメージは、この曲の初期からあまり変わっていないけど、緑繁茂する夏、それが散り、実る秋。そして、静かで厳かな冬の四楽章に進化した曲と歌を、弾きつつ歌う。ひたすらに、素敵な曲と、歌だ。そして、ハルちゃんの美声。
ピアノを弾き終わり、ハルちゃんが立ち上がって、「ご静聴、ありがとうございました」とお辞儀すると、大きな拍手が鳴り響く。
こうして、祝賀会は終わりました。
「おほん、その……立派だったぞ、ハル」
吾文さんが、照れくさそうに娘を褒めると、「ありがとうございます! お父様!」とハルちゃんが抱きつく。続いて、奥様にもハグ。
「おねーさん、わたしはユキさんと、ミドリさんもユキさんとおそらく積もる話が々あるので、あとでわたしの部屋に来てください」
「うん。私だけ、輪に入れないのは少し残念だけど」
すると、三人が申し訳無さそうな顔をする。
「ああ、気にしないで! じゃあ、またあとで」
寂しくないと言ったら、嘘になるけど、ユキさんとは、あまり接点ないものね、私。
「いえ、アキさんも、ご一緒していただけませんか?」
意外にも、ユキさんがそう切り出してきた。
「親友が今の幸せを手にしているのも、アキさんの懐の広さのおかげです。そういったこと、お話しさせてください」
「ありがとうございます! 喜んで!」
私も、やっとこの輪に入れました!
応接室で談笑し、ユキさんとも交流を深め、よい友人となった次第です。
◆ ◆ ◆
ユキさんが帰宅し、私たち三人は、ハルちゃんのお部屋に集合。
「それじゃあ、しましょうか」
「ふふ、ハルちゃん、まだ酔ってる?」
「少し」
微笑む、我が恋人。
こうして、今日も三人で肌を重ね合わせました。
果報は寝て待て……って、そういう意味じゃないか。てへ。
◆ ◆ ◆
そして、時は過ぎて、夏。
良作が多かったようで、審査が伸び、この季節での審査発表となりました。
結果は――。
今日も、お仕事頑張ったー! というわけでお屋敷に戻ると、ハルちゃんとばったり出くわした……というか、待ち構えていて、「おねーさん!」と、子犬のように抱きついてきました。
季節も春になり、福祉課自体は変わらないけど、別地区の担当になりました。こうしないと、不正する職員、悲しいけどたまにいるからね。実際、昔、岡山で問題になったらしい。
「危ない、危ない! どーしたの、そのテンション?」
危うく倒れ込みそうになり、彼女を制する。
「すみません。それでですね! 完成したんですよ、歌が!」
そういえば、そろそろ締切だっけ。
「おー、そりゃめでたいね! ハルちゃん、頑張った!」
頭をなでてよしよしすると、「えへへ~」ととろけるお嬢様。かわいい。
「吾文さんも、さぞ喜んでくれたでしょう?」
「それがですね、『まだ入賞したわけではない。気を引き締めなさい』って塩対応で、お母様に、『こういうときは、素直に祝ってあげてくださいな』って、たしなめられてました」
はは。本当に、不器用な父親だなあ。大病して以降、ずいぶんカドが取れたんだけどね。
「でもとりあえず、祝賀会を開こうって言ってくれて、お屋敷のみんなでパーティーすることになりました!」
「おー、そりゃ楽しみだねえ!」
吾文さんも、リハビリのかいあって、杖が必要だけど、少しは歩けるようになっている。
「はい! もちろん、ユキさんも招かれてますよ」
「いつやるの? さすがに今日じゃないよね?」
「今度の日曜です!」
「りょーかーい! ところでお風呂入りたいな」
「じゃあ、一緒に大浴場行きましょうよ!」
目をキラキラさせる彼女。
「ミドリさんは、まだお仕事?」
「はい」
「じゃあ、お風呂はハルちゃんと二人っきりかあ~」
ひさびさかな、これも。
というわけで、楽しく流しっこするのでした。
お腹も空いてるし、さすがにリスキーなので、それ以上はしなかったけどね!
◆ ◆ ◆
「今日は、不肖の娘、ハルが……」
「あなた、ハレの場で、娘を不肖などというものではないですよ」
「こほん。我が娘ハルが、賞向けの歌をご友人と完成させた記念に、気が早いが、祝賀会を開かせてもらった。日頃の奉仕に報いる意味もあるので、今日は大いに呑み、食べ、楽しんでほしい」
奥様に、最近ツッコミを入れられがちな吾文さんの挨拶が終わると、大きな拍手が起こった。もともと、夫婦仲も悪くはなかったけど、より柔らかくなった印象を受ける。
というわけで。食前酒は、おなじみリュクグ……じゃない? もっといいお酒だ! 力強くて、華やかで……いい香りで。
「ハルちゃん、リュクグじゃないね、これ? でも、すごくいいお酒」
「ドン・ベリニョンを用意させてもらった」
代わりに、吾文さんが答える。まさかの、ドンベリ!?
ふふ。本心では、心から愛娘を祝ってるんですね。ほんと、不器用。
今回も、前回の慰労パーティーに劣らない豪華料理。春で旬ということと、めでたいということで、真鯛のカルパッチョがでてきました。真鯛でカルパッチョとは、贅沢ですねえ。旨し旨し。
その他にも、箸で切れそうなぐらい柔らかくて、ジューシーなステーキとか、素晴らしい品々がコースで運ばれてきます。
そんなこんなで、楽しい祝賀会も、もうすぐ終わり。締めの挨拶は、ハルちゃん。
「皆様、今日はわたしとユキさんのためにこうしてお集まりいただき、ありがとうございます。祝賀会は、新曲とともに締めたいと思います。曲名は『四季―未来―』。素晴らしい歌詞を作ってくださった冬川ユキさん。そして、恋人の紅アキさんと、夏野ミドリさん。偶然にも、四季を象徴する名前の四人への感謝から、イメージした曲と歌です。では、お聴きください」
一礼して、ピアノに向かう彼女。
爽やかに命芽吹く春のイメージは、この曲の初期からあまり変わっていないけど、緑繁茂する夏、それが散り、実る秋。そして、静かで厳かな冬の四楽章に進化した曲と歌を、弾きつつ歌う。ひたすらに、素敵な曲と、歌だ。そして、ハルちゃんの美声。
ピアノを弾き終わり、ハルちゃんが立ち上がって、「ご静聴、ありがとうございました」とお辞儀すると、大きな拍手が鳴り響く。
こうして、祝賀会は終わりました。
「おほん、その……立派だったぞ、ハル」
吾文さんが、照れくさそうに娘を褒めると、「ありがとうございます! お父様!」とハルちゃんが抱きつく。続いて、奥様にもハグ。
「おねーさん、わたしはユキさんと、ミドリさんもユキさんとおそらく積もる話が々あるので、あとでわたしの部屋に来てください」
「うん。私だけ、輪に入れないのは少し残念だけど」
すると、三人が申し訳無さそうな顔をする。
「ああ、気にしないで! じゃあ、またあとで」
寂しくないと言ったら、嘘になるけど、ユキさんとは、あまり接点ないものね、私。
「いえ、アキさんも、ご一緒していただけませんか?」
意外にも、ユキさんがそう切り出してきた。
「親友が今の幸せを手にしているのも、アキさんの懐の広さのおかげです。そういったこと、お話しさせてください」
「ありがとうございます! 喜んで!」
私も、やっとこの輪に入れました!
応接室で談笑し、ユキさんとも交流を深め、よい友人となった次第です。
◆ ◆ ◆
ユキさんが帰宅し、私たち三人は、ハルちゃんのお部屋に集合。
「それじゃあ、しましょうか」
「ふふ、ハルちゃん、まだ酔ってる?」
「少し」
微笑む、我が恋人。
こうして、今日も三人で肌を重ね合わせました。
果報は寝て待て……って、そういう意味じゃないか。てへ。
◆ ◆ ◆
そして、時は過ぎて、夏。
良作が多かったようで、審査が伸び、この季節での審査発表となりました。
結果は――。
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