全裸無双はご遠慮します!~脱いだら最強令嬢のスローライフ旅~

冷夏レイ

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第一章

11:SSS能力

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 布は、あと二枚。

 彼らは、壊れ物に触れるような慎重さで、そっと最後の布へと手を伸ばした。

 視線の先には、白レースの柔らかな布地に包まれた、滑らかな二つの輪郭があった。手のひらからこぼれ落ちそうな、やわらかな半球。それは、月光に照らされた薄絹のような神秘を宿していた。

「し、失礼します……」

 リオンの喉がごくりと鳴り、周囲の沈黙の中にかすかな緊張が滲む。

 純白の布が、慎ましやかな双丘をそっと覆っている。その縁に、震える指先が触れた。

 一人が背後へ回り、ホックに手を伸ばす。だが、カチカチと頼りない音を立てるばかりで、すぐには外れなかった。

「す、すみません……っ」

「落ち着いて。ゆっくりでいいわ」

「は、はい……っ」

 私が静かに声をかけると、アベルは安堵の表情を浮かべ、慎重に動作を続けた。

 やがて──

 かちっ。

 すぅ……と締めつけが緩み、肩を覆っていた重みがふっと消える。

 アベルの手が、そっと肩紐をずらした。
 白布が、羽のようにふわりと舞い、地面に落ちた。

 その下から現れたのは、淡い肌色の曲線。支えを失った双丘が、重力に従って、やわらかく波打つように揺れた。

 頂には、かすかな桃色が差している。冷たい風に触れたことで、わずかにピンと主張を強くした。

 広場を包む空気が、凍りついたように静まり返った。

「セレナ様……そんな……私のために、そこまで……っ」

 ナターシャの声は、悲痛に震えていた。仕える令嬢が、己のために辱めを受けているという現実が耐えられないのだろう。

「ちく……っ」

 誰かが喉の奥で呻いた。幾十もの視線が、私の胸元に突き刺さる。鋭利な刃となった目線は一点……いや、二点に集中している。

 顔が熱い。羞恥が、焼けつくような熱となって内側からあふれてくる。

 逃げ出したい。

 恥ずかしい。

 羞恥と後悔で死にたくなる。

 それでも、私は逃げなかった。

 背筋を伸ばし、胸を張った。

《トップレスを確認。ステータス上昇。全能力、ランクSへ到達》

 冷淡なシステムボイスが、私の気持ちなどお構いなしに事実を告げる。

 羞恥に染まった胸が上下するたび、露わになった肌に空気が触れ、さらに熱を煽る。

 見られている。全員の視線が、私という存在をまるごと貫いてくる。

(見られちゃってる……前の世界でも、この世界でも誰にも見られたことないのに……)

 でも、まだ足りない。

(まだ……ガルムの防御は破れない)

 残るは──たった一枚。

 足の付け根にある、たった一枚の、恥を守る薄絹。

 私に残された、最後の砦。

「セレナ様……本当に、よろしいのですか?」

 ためらいを察したリオンが、祈るように問いかけてきた。

「ええ……お願い」

 私が頷くと、彼は神聖な儀式に臨む神官のように膝をつき、そっと顔を伏せて両手を差し出す。

 その指先が、布の端に触れる。

 一瞬、彼の手が止まる。緊張で汗ばむ指先がわずかに震えた。

 彼は目を閉じて、息を吸った。そして──
 するり、と。

 布が腰骨を滑り、太もものラインに沿って降りていく。

 最後の布が、静かに、あっさりと足首へと落ちる。

 柔らかな淡い輪郭が、静かに露わになった。

 風が肌を撫で、今まで感じたことがない場所に外気があたる。誰にも見られたことがない場所に視線が突き刺さる。

 強烈な羞恥心が全身を駆け巡った。

 けれど、私は何も隠さなかった。私の貴族としてのプライドがそれを許さなかった。

 全員が見ていた。

 逃げ場のない恥辱の海。私は生まれたままの姿で、立ち尽くす。

「これで……満足? これで、あなたの欲は満たされたの……?」

「はははっ! いい眺めだなぁ。舐めまわしがいのある身体してんじゃねえか。合格だ、俺様のコレクションに加えてやる」

 ガルムは、まるで戦利品でも見るように嘲笑を浮かべる。

「貴方の負けよ」

「なに……?」

 私を包むのは、羞恥と誇り、そして肌を撫でる空気だけ。

「……綺麗……」

 誰かが、ため息のように呟いた。他の生徒たちも、ただ呆然と私という存在を見ていた。

「私たちのために、あんな姿になって……」

「女神様みたい……」

 その時、天空から光が差した。

 エンジェル・ハイロゥ──神々の祝福のような光が、私の頭上に降り注ぐ。金色の粒子が舞い、銀の長髪が優雅になびいた。

 体中に熱くて優しい力が満ちていく。

 私の中のすべてが目覚める。

 この身を守るものは何もなくとも、怯えはなかった。

《衆人環視における完全脱衣を確認。全リミッター解除。全能力値がSSSになります》

 その言葉と同時に、体内の何かが爆ぜる感覚が走った。血液が逆流するような熱が、四肢の先まで一気に駆け巡る。

 そして、世界の法則が、私に跪いた。
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