灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

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五章 ラグルの呼び声

356.やり直しの魔法

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 母が戻った後、代わりにノエルが現れた。
そして、再び静かな時間が流れる。

星の明かりの下、テントの近くに腰を下ろした私たちは、言葉よりも空気の温度で気持ちを伝え合っていた。

そんな中、ノエルがふいにかすれた声で言った。

「ねぇ、アリア・・・もう少しだけ、話してもいい?」

「うん。なに?」

彼女は少しだけ口ごもり、そしてぽつりと、呟いた。

「伊原美紗。この名前、覚えてる?」

 その名前は、喉の奥を鋭く突いた。
遠い記憶。前世の記憶。もう戻ることのない教室の匂い。

私は息を吸い込んで、ゆっくりと答えた。

「・・・もちろん。前世の、あなたよね」

「うん。・・・なんか、ふと思い出しちゃって」
ノエル──いや、美紗は、小さく目を伏せた。

「・・・ごめんね。ほんとは、あの時・・・あんなこと、したくなかった」

 私は黙って耳を傾けた。
もう、幾度となく聞いた謝罪だ。

「あなたは・・・三春は、教室で孤立して、毎日泣いてた。私は・・・あなたを泣かせてる連中の一人だった」

その声は、震えていた。

「本当はね、怖かったの。自分が、標的になるのが。だから見て見ぬふりをして、時には一緒に、あなたを遠ざけた。遠回しに、あなたを・・・」

「・・・覚えてる。美紗は、直接手を汚しはしなかったよね、最後まで」

「正直言って、あの時からずっと謝りたいと思ってた。・・・ごめん。こうして生まれ変わって、あなたに会って・・・やっと言えた」

 私はそっと、魔力灯の光を見つめる。
そして、前世の記憶の底にいた自分──三春の、小さな痛みを探した。

その中に、美紗を恨んだ気持ちは・・・なかった。
いや、かつてはあった。
あったけど、それはとうに失われていた。

「・・・でもね」

 私は小さく笑った。

「今になって思うと・・・あの時、美紗の目は、最後まで私を見てた。本当は、心の奥で迷ってたんだってことが、伝わる目だった」

「アリア・・・」

「あの頃の私、今にして思うと、何もせずにただただ抱え込んでただけだった。本当は、誰かに声をかけてほしかった。・・・いや、自分から誰かに助けを求められたはずなのに」

 ふたりの距離が、そっと近づく。
魔女としての今の姿を纏いながらも、そこにいたのは、過去の少女たちだった。

「ねえ、美紗」

「・・・うん」

「今こうして、また出会えたのなら。・・・きっと、それって、やり直せるってことだよね?」

ノエル──美紗は、小さく頷いた。

「三春・・・改めて、ありがとう。許してくれて・・・ありがとう」

「私も、ありがとう。今のあなたに会えて、よかった」

ふたりの手が、自然とそっと触れ合った。




 その様子をテントの中から見ていたサラは、無言で魔力灯に火を足しながら、ぽつりと漏らした。

「二人のやり直し・・・それはきっと、どんな魔法でもできないことなのでしょうね」

そして、静かに背後から現れたセリエナも、どこか安らいだ顔で、彼女たちを見守っていた。

「だからこそ、繰り返す。過ちも、赦しも、償いも──選び直すために、生まれ変わる」

 夜の砂漠に、誰も答えない静けさが降りる。
だが、その沈黙はもう冷たいものではなかった。


そして・・・
星は、今日も変わらぬ場所で静かに瞬いていた。


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