軍人と魔女

ゆう

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 帰り道にジョゼフさんの友人が、魔女を見たという場所へ行ってみることにした。話をあまり信じなかった私だが、ジョゼフさんの話を聞いているうちに、面白そうだなと思えたからこうしてこの場所に来たのだ。

『この辺りか』

 あたりを見渡すがそれらしい人物は見つからない。

 そもそも特徴をなにも知らないのであれば見つけようもない。すこし期待した自分が馬鹿のように思えた。
 もう帰るか。

「うそだろ……」
思わず声を漏らしてしまった。
 間違いなかった。見失ったわけではない、消えた。前を歩いていた女性が確かに消えた。周りの人たちを見てみると何事もないようにしていた。私だけに見えた幻覚だったのだろうか。いや、しかし間違えなくこの目で見た。右の頬にやけどのような痕があった女性が目の前から突如消えたのを。
 一旦落ち着こう。
 今日のところはやはり家に帰ろう。家で冷静になって考えるとしよう。

 家へ帰ると、私は真っ先に本棚へ向かった。右上の方にしまっていたはずだ。
 見つけた。

 私は【魔女伝説】という本を手に取った。ここ最近は読んでいなかったため、埃をかぶっていた。そこで私は手で埃を払い、本を開いた。
 ページをめくっていくごとに本の内容を少しずつ思い出していった。この本には題名の通り魔女に関する伝説や魔女の特徴や使う魔法などが記されている。

 こうして読み返してみるとこの本を手に入れた当時のことも思い出してきた。
 この本を買ったのは、トニーさんから魔女の話を聞いた帰りだった。まだ、あの酒場がそれほど盛り上がっていなかった頃だ。よくトニーさんは私やマックに昔話や伝説を聞かせてくれた。幼い頃そういった話をほとんど聞かなかった私はとてもそういった話に興味を持った。
 内容はメルヘンな物語から冒険譚、中には恐ろしい話もあった。

 そんな数多くの話を聞いた中で最も私の興味を引いたのが魔女の話だった。
 理由としては、ここら辺一帯が物語の舞台となっていたからだろう。魔女の話を恐ろしいと思う反面、実に興味を持っていた。同じ人間が魔法を使うのだ。想像しただけでワクワクした。

 その話を聞き、もっと詳しく知りたくなった私はこの本を買ったのだ。しかし、人というのはいつまでも新鮮な気持ちで物事に向き合うことができない、いつかは飽きてしまうものだ。私も例外ではなくいつしか飽きてしまっていた。

 それからこの本を読まなくなった。

 思い出に浸りながら読み進めているととあるページに印が付いていた。はて、こんなところに印なんてつけていたか。
 覚えはなかった。
 そのページの印のついている場所にはこう書かれていた。

【いきなりあらわれ
                そのばをあらし
     そのみとともにつちていく】と。
意味がわからない。一体何のためにここに印をつけておいたんだ。
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