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自己紹介を終えた後、委員長が図書委員の活動について話し始めた。内容を要約するとすれば、基本は放課後来たければきて本を読んだり談笑したりする。特別な活動を行う場合は全員で集合するというものだった。
活動の内容説明が終わると解散と言われたが、先輩達がそのまま図書室に残っていたので、一年である俺たちも流れで図書室に残っていた。
普段、本を読まない俺からしたら本と関わるいい機会になるかもしれない。そう思い『おすすめの本』という張り紙が付いている棚から一つ本を手に取り椅子に座って読むことにした。
その本を読みはじめてしばらくしてから、委員長が声をかけてきたので、本を置き委員長の方を向いた。この委員会に慣れていない一年生に気でも使ってくれたのだろうか。
「荒木くんだったよね。君、もしかして高校二年生のお兄さんがいる」
この質問は別に気を使ってくれたというわけではなさそうだ。それにしてもどうして俺に兄貴がいると思ったのだろう。どこかで兄貴と接点があったのだろうか。
「いますよ。荒木幸太郎が」
「やっぱり、幸太郎先輩の弟だったのか。苗字も一緒だし顔もどことなく似ているからそうなんじゃないかって思ったよ」
あの兄貴と顔が似ているなんて最悪な話だ。
「兄貴とお知り合いなんですか」
「聞いてないのかい。幸太郎先輩はこの委員会で委員長をやってたんだよ。僕が一年生の頃にね」
兄貴とは家で口を利くどころか顔すらも合わせないから聞いたことなどあるはずがない。それにしてもあれと同じ委員会に入ってしまうとは、失敗してしまった。
「知りませんでした。家では何も話さないものですから」
「あんなに社交的な先輩が家では無口なのか。驚きだな」
俺としても驚きだ。あれが社交的だなんて。いや、でも……
「おっと、読書の途中に済まなかったね。これで僕は失礼するよ」
委員長は兄貴の話だけをしてどこへ行った。わざわざ話をしに来るぐらいだからそれなりに親しかったのだろうか。少なくとも顔を知っているだけの関係とかではなさそうだ。
俺は先ほどまで読んでいた本を手に取り、ページを見つめ本を閉じて棚へと戻した。どうしてか読書をしたいという意欲は消えてしまっていた。
しばらくすると6時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。タイミング的にもちょうど良かったので今日は帰ることにした。
図書室から下駄箱に行く途中で祐馬とすれ違ったが、バスケ部らしき人達と一緒にいたので、気づかないふりをしてそのまま素通りした。下駄箱には、西原さんがいた。西原さんもあのチャイムで図書室を出たのだろう。そんなことを思いながら西原さんを見ていたらあちらも僕に気がついたようで目があった。
「荒木くん……だったよね」
こくりと頷いた。
「これからよろしくね。それじゃあ」
ご丁寧に挨拶をしてくれたというのに、俺はそれに何も返さないまま上靴から通学用の靴に変えた。俺がその動作をしている間に西原さんは帰ってしまっていた。きっと無愛想だと思われたに違いない。こちらとして誰になんと思われようが気にしないつもりでいたが、同じ委員会の人に無愛想と思われるのか、と思うと少しだけ後悔をした。
今日は放課後、図書室に来ていた。流石に委員会に入ってニ日目に行かずに帰るのは、失礼だろうと思いこうして図書室にやってきたのだが、そのような配慮はいらなかったと図書室に入って痛感した。なんと一年生は神宮さんしかきていなかった。後から遅れてやって来るという可能性もないことはないのだが、俺が教室で課題をやってからきているという時点で6時間目からはそこそこ時間が経っているはず、だからこれ以上遅く来るということはあまり考えられない。
「お二人は部活に行ってますよ」
神宮さんがいきなり話しかけてきたので驚いた。
まさか、両立している人が同じ委員会にいたとは世の中は狭いものだ。それよりもどうして神宮さんは俺の考えていることがわかったんだ。勘にしては良すぎる気もする。
「そうなのか。ありがとう」
活動の内容説明が終わると解散と言われたが、先輩達がそのまま図書室に残っていたので、一年である俺たちも流れで図書室に残っていた。
普段、本を読まない俺からしたら本と関わるいい機会になるかもしれない。そう思い『おすすめの本』という張り紙が付いている棚から一つ本を手に取り椅子に座って読むことにした。
その本を読みはじめてしばらくしてから、委員長が声をかけてきたので、本を置き委員長の方を向いた。この委員会に慣れていない一年生に気でも使ってくれたのだろうか。
「荒木くんだったよね。君、もしかして高校二年生のお兄さんがいる」
この質問は別に気を使ってくれたというわけではなさそうだ。それにしてもどうして俺に兄貴がいると思ったのだろう。どこかで兄貴と接点があったのだろうか。
「いますよ。荒木幸太郎が」
「やっぱり、幸太郎先輩の弟だったのか。苗字も一緒だし顔もどことなく似ているからそうなんじゃないかって思ったよ」
あの兄貴と顔が似ているなんて最悪な話だ。
「兄貴とお知り合いなんですか」
「聞いてないのかい。幸太郎先輩はこの委員会で委員長をやってたんだよ。僕が一年生の頃にね」
兄貴とは家で口を利くどころか顔すらも合わせないから聞いたことなどあるはずがない。それにしてもあれと同じ委員会に入ってしまうとは、失敗してしまった。
「知りませんでした。家では何も話さないものですから」
「あんなに社交的な先輩が家では無口なのか。驚きだな」
俺としても驚きだ。あれが社交的だなんて。いや、でも……
「おっと、読書の途中に済まなかったね。これで僕は失礼するよ」
委員長は兄貴の話だけをしてどこへ行った。わざわざ話をしに来るぐらいだからそれなりに親しかったのだろうか。少なくとも顔を知っているだけの関係とかではなさそうだ。
俺は先ほどまで読んでいた本を手に取り、ページを見つめ本を閉じて棚へと戻した。どうしてか読書をしたいという意欲は消えてしまっていた。
しばらくすると6時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。タイミング的にもちょうど良かったので今日は帰ることにした。
図書室から下駄箱に行く途中で祐馬とすれ違ったが、バスケ部らしき人達と一緒にいたので、気づかないふりをしてそのまま素通りした。下駄箱には、西原さんがいた。西原さんもあのチャイムで図書室を出たのだろう。そんなことを思いながら西原さんを見ていたらあちらも僕に気がついたようで目があった。
「荒木くん……だったよね」
こくりと頷いた。
「これからよろしくね。それじゃあ」
ご丁寧に挨拶をしてくれたというのに、俺はそれに何も返さないまま上靴から通学用の靴に変えた。俺がその動作をしている間に西原さんは帰ってしまっていた。きっと無愛想だと思われたに違いない。こちらとして誰になんと思われようが気にしないつもりでいたが、同じ委員会の人に無愛想と思われるのか、と思うと少しだけ後悔をした。
今日は放課後、図書室に来ていた。流石に委員会に入ってニ日目に行かずに帰るのは、失礼だろうと思いこうして図書室にやってきたのだが、そのような配慮はいらなかったと図書室に入って痛感した。なんと一年生は神宮さんしかきていなかった。後から遅れてやって来るという可能性もないことはないのだが、俺が教室で課題をやってからきているという時点で6時間目からはそこそこ時間が経っているはず、だからこれ以上遅く来るということはあまり考えられない。
「お二人は部活に行ってますよ」
神宮さんがいきなり話しかけてきたので驚いた。
まさか、両立している人が同じ委員会にいたとは世の中は狭いものだ。それよりもどうして神宮さんは俺の考えていることがわかったんだ。勘にしては良すぎる気もする。
「そうなのか。ありがとう」
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